TS龍娘ダクファン世界転生   作:てんぞー

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バウンティーハンターエデン

 何をするか決定したら即行動。リアとロゼはバウンティー関係には一切かかわれないのでリアとロゼも別方面でどうにかできないか考えてみると言っていた。

 

 とりあえず外出許可を得ているし、数日休んでも大丈夫なように仕事は諸々終わらせてある―――というかグランヴィル家、掃除を終わらせさえすれば日常的な部分はだいぶ暇だ。貴族としての仕事がないし、畑の面倒はエリシアとエドワードが趣味でやっている。料理はアンとエリシアがやっているし、そうなると後は掃除ぐらいしかやる事はない。近頃はリアも自発的に色々と勉強する影響もあって手間もかからない。だからグランヴィル家での日常とは割とゆっくりしていて、暇でもある。だから自由時間が欲しい時は楽に取れる。

 

 そういう訳で一旦外出の準備を整える為に部屋に戻る。

 

 着替える為に服を脱いで姿見の前に下着姿で立つ。そこに映るのはどこからどう見ても美少女と言える姿の少女だ。背丈はリアやロゼと比べると一回り高い感じはある。胸も大きく育ってきてブラジャーもジュニアではなく、通常のブラジャーを装着するようになった。髪も俺は面倒だから切りたいのだが、エリシアとリアとロゼたっての抗議で長く伸ばしている。伸ばせば伸ばすほどケアが面倒になってくるので切っちゃうのが楽なのだが、綺麗な髪を切るのは勿体ないとか言われると流石に切れないのだ。

 

 だからメッシュの入った前横髪は増々伸びていて、後ろ髪は大体の場合では首元で纏めるようにしている。気分によってはハイポニーだったり、ローツインテールだったり、髪の先で軽く結ぶような形にしたりする。だが基本的にはローポニーが楽なので纏めている。手も足も鍛えても鍛えても太くはならず細く、傷のない素肌を見せ―――変わらず、鱗が各所各所で生えている。

 

 龍殺しに付けられた首の傷は未だに消えない。

 

 だがそれを除けば誰かに傷つけられたことのない、綺麗な女の体。もう付き合って5年、だいぶ慣れて来た所があった。胸も大きく育ってまさに女の体、と言えるものになっている。それが自分の物だと思うとちょっと複雑だが……顔はどことなく、幼さをまだ残している。

 

 これが後数年もすれば抜けるかなぁ、と思っている。

 

 顔立ちはまだ幼さが残っている事から可愛い・綺麗系なのだが、角や顔立ちから段々綺麗・カッコいい系に変わりつつあるのが解る。可愛いとカッコいいの中間ぐらいだろうか? マジマジと女の成長過程を見た事がないからこういう風に成長するんだな、と年々変わって行く自分の体を観察するのはちょっと面白い。

 

 まあ、幸い体が特殊なのか種族柄なのか、生理が一切やってこない事には助かってるが。

 

 女性用ブラジャーも、女性用下着も着るのに慣れてしまった事にちょっとしたもの悲しさを感じつつもさーて、と服装に手を伸ばす。

 

 前までは外出する際には絶対にタートルネックを着用して鱗を隠そうと意識していた部分があった。それは俺が龍だってバレないようにする為の対策だったのだが、ここ数年で鱗を見られたところで疑われるという事はないって完全に理解したため、そこら辺のガードを降ろした。お蔭で服装の自由が増えた。

 

 いや、主に龍だってバレない事の原因は魔界ギタリストが俺の事を勝手に同郷だと思って騒がしくしている事が原因なのだが。

 

 後アレだ。

 

 なんでもかんでも擬人化してエッチな目で見るのは日本人の特殊な性癖だって話だ。

 

 中世ファンタジー世界になんでもかんでも擬人化する様な発想はないんだわ。

 

 ともあれ、そういう事もあり今はもうちょいファッションの自由がある。なのでまずはノースリーブのカラーシャツを着用する。タイラーが俺の鱗を布に変える事で編んだこのシャツは俺の鱗と同じ強度のあるシャツだ。これと、もう1つのインナーを着用する限り俺が戦闘の影響で服がぼろぼろになってしまうという事を気にする必要はないだろう。ちなみにノースリーブなのは単純に趣味と性癖の問題だったりする。この時、首元のボタンは開けて置き、胸元も一段だけ開けておく。

 

 こうすると谷間が蒸れない。谷間が蒸れると滅茶苦茶心地悪いのでこれは大事な事だ。ノースリーブだと横から風が入る。谷間の所をあけてると前からも風が入ってくる。これが賢い女の服の選び方。

 

 さあ、ここまでくると問題は下に何を履くか、という事だ。個人的には動きやすさを重視するからロングスカートがまず却下される。ならズボンか、それともスカートかという話になってくる。ここで圧倒的にズボン派なのが俺だ。だって動きやすいし、履きなれている。それに派手に動いた所でまったく影響はない。

 

 だけど此処で猛然とスカートをプッシュしてくるのがリアとロゼだ。まるで女の子らしい事をしないんだから少しぐらいは女の子らしい恰好をしてみろとの事だ。言いたい事は解るので否定し辛いのが非常に辛い奴だ。スカートはやはり長い方が女性らしさがあると言われているが、動きづらいので却下する。

 

 ここは自分の意見と連中の意見の折衷案を取って、ミニのフレアスカートを選ぶ事にする。やや短いのが気になる所だし、スカートで派手に動くと中が見える事以上に風が当たってすーすーする所が個人的にはいかんともしがたい。とはいえ、これが一番動きやすいのも事実だ。ベルト装着タイプのフレアミニスカートを履いて、足元はソックスとブーツ。

 

 さあ、これで外出準備完了! と行きたいところだが、これで出かけると今度は露出多すぎと俺がキレられる。スカートとノースリーブで露出が多すぎるという意見である。なのでこの上からジャケットを羽織る必要がある。折角のノースリーブの魅力がこれで削られていないか? とは思ってしまうが、露出が多いと痴女だと思われるらしいので渋々ジャケットを着るしかない。ここはパーカー型のジャケットを着る。

 

 何と言ったってパーカー部分に髪を押し込めるから振り回さずに済む。便利だ。

 

 これで外へと出かける準備は概ね完了する。最後に腰に巻く事が出来るように形状変化したディメンションバッグをまるでウェストポーチの様に装着し、ドレッサーからアクセサリを取り出す。1つはディメンションバッグと連動する指輪を、そして最後がお悩みポイント。

 

 リボン、もしくは角用イヤリング。

 

 ここで赤いリボンを推してくるのがリアだ。というかプレゼントされた。絶対に角に飾るならリボンだと猛プッシュしてくる。これに対抗して青い宝石のハマったイヤリングを1個、角から吊り下げられるように改造された奴を渡してきたのはロゼだ。角はチャームポイントなので是非とも何らかのアクセサリーで飾るべきだという淑女たちの主張である。

 

 そう、俺のファッション感は現在9割お嬢様方の主張によって出来ている。

 

 昔はリアが俺の方に聞いてくる側だったのに、何時の間にかロゼと結託するようになった逞しさには喜ぶべきなのか、それとも嘆くべきなのか。

 

 それともこうやって服装に一喜一憂して、アクセサリーに悩む女らしさが芽生えている自分自身を楽しむべきなのか。

 

 まあ、今日はイヤリングにしちゃおう。それともホーンリングとでも呼ぶべきなのか? 角娘専用のアクセサリー文化が存在する辺り、ここが地球とは違う異世界なんだな……と言うのを地味に感じさせる。

 

 お着換えが完了し、自分の姿を軽く姿見で確認する。軽くターンを決めて前も後ろも確認し、おかしい所がないのが解ればオーケイ。これでどこに出しても恥ずかしくないドラゴンガールの出来上がりだ。俺の見てくれが悪いとその悪評がグランヴィル家の悪評そのものへと通じる。だから俺が外に出る時はびしっと、姿を決めて行かないとならない。そこはちゃんと迷惑をかけないようにするのが大人の配慮という奴だ。

 

「―――良し、俺様可愛い。自分で言うもんじゃねぇけどな」

 

 まあ、客観的に見て美少女なのは間違いがないのだ。それで良いのかもしれない。そう思いながら姿見から視線を外して部屋の外へと出れば、出た所でアンの姿を見かけ、軽く手を振る。

 

「アンさーん、前々から言ってた事を実行しまーす!」

 

 手を振りながら外出の件を伝えると、呆れた表情を浮かべながらも溜息を吐き、

 

「全く……自分の身には気を付けてくださいエデン。貴女は貴女が思っている以上に我々に愛されているのですから」

 

「解ってます解ってますってば! 俺がいない間は色々とお願いしまーす!」

 

 手を振りながら別れを告げればやっぱり軽い笑い声が聞こえた。アンは俺が何をやろうとしているのかはっきりと理解しているからこそあんな態度なんだろう。エドワードやエリシアが知ったらどうなんだろう? まあ、あの人たちの事だからなんだかんだで背中を押してくれそうな気もする。ともあれこれで安心してギルドに行って来れる。

 

 まずは軽く走ってグランヴィル家を出て、街へと続く道を数百メートル程進む。そこまで進んだ所で足を止める。無論、最近では俺が走った方が馬よりも早く街へとたどり着ける感じがあるし、俺が馬車を引っ張った方が実はコスパが良いのでは? と思っている部分もある。だが実際のところそんな距離を走って行くのはメンドクサさの極みだ。

 

 だから馬を使えば良いという話だが、アレはグランヴィル家の所有物だ。俺のじゃない。緊急時はサンクデルの所へと向かうのにも使う馬なのだから、俺が使う訳にもいかない。

 

 だから俺は考えた。

 

 そこら辺の野生動物使えば良いじゃん。

 

「暇な奴でてこぉ―――い!!」

 

 大声で叫んでみる。これで声が届く範囲に野生動物がいるなら声に反応して寄ってきてくれるのだが、

 

「お、来た来た。今日は何が来るかなー」

 

 土煙を上げながら此方へと向かって全力疾走してくる野生動物の姿が見えて来た。

 

 此方へと向かって全力疾走しているのは―――熊だ。それも全長3メートルぐらいある奴。直ぐ横を野生の馬が走っているが、それを走りながら横キックで蹴り飛ばして一番最初にゴールしてきた、凄い熊だ。

 

「ヴォー」

 

「よしよしよし、声に応えたのは良いけどキックは良くなかったと思うぞぉ」

 

 やって来た熊の頭と顎を撫でてやると目を細めながら喜んでくれるが、蹴り飛ばされた馬の方は何バウンドしてから跳ね上がるように立ち上がり、アイツ……! みたいな恨みの視線を熊へと向けている。野生動物の社会も色々あるのかなー? なんて思いながらも大して気になる事でもないので、さっさと忘れてしまう事にする。

 

「よーし、街に行くぞー。行けるなー?」

 

「ヴォ」

 

 熊の返答に頷きつつ四足になって体を下げてくれる熊の背に乗る。

 

 まるで馬に見せつけるようにその横を走り去る熊。そしてそれを半ギレの表情で見る野生の馬。

 

 野生動物にも個性が求められる時代を俺はひしひしと感じ取っていた。

 

 

 

 

「熊に乗って街にやってくるのは恐らく歴史上でも君ぐらいでしょうね」

 

「えー」

 

 街道を熊で駆け抜け、街の前で降りたらそれを野生に返す。ばいばーい、と軽く手を振って別れを告げてから街の入り口を固める衛兵にそんな事を言われた。何時も通りの制服姿は変わらず、武器も携帯している。だが体は自然体で油断も慢心もない。実力を付けたからこそ解るが、街の入口を担当している衛兵というものはかなり強い人が担当しているようだ。

 

 考えてみれば賊の襲撃やモンスターの襲撃がある場合、一番最初に反応して対応できるのがこの位置なのだ。そりゃあ強い人を回すわ。たぶんこの衛兵、純粋な技量だけなら完全に俺を上回っているだろう。

 

「熊乗れるなら乗るでしょ」

 

「普通は乗れないからね? ほら、入った入った」

 

「ういーっす。お仕事お疲れ様です」

 

「ありがとう」

 

 手を衛兵に振って街に入る。春になると人が街中に増えて動きやすくなるのが良いよな、と思いながら手を空へと向かって伸ばし、背筋を軽く捻る。体の調子は悪くはない。このままギルドへと向かうか。そう思ったところで煩い電子音が街中に響くのを聞いた。

 

「おぉ、今日も演奏なさってる」

 

 ぎゅんぎゅんぎゅいーん、というエレキ音を響かせるのは前世で聞きなれたエレキギターの音だ。あの魔族ロッカーが今日も街中で無料ライブを開催しているようだ。ドラマーとベーシストは確保できたのだろうか? いや、ロックの概念が早すぎて見つかる訳もないだろう。世界の辺境でバンドメンバーを探しているロックな魔族の姿を思い出し軽く笑いを零し、今度こそギルドへと向かう。

 

 この作戦はまず俺が冒険者として登録しなければ何も始まらないのだ。

 

 だからまずはギルドへ。




 感想評価、ありがとうございます。ついに評価数300です、本当にありがとうございます。

 クマに乗る女エデン。実はこの女ちょくちょく街へ買い出しとかで顔を出しているので町民からの覚えからも良かったりする。

 それはそれとして今回の話5000文字中大体3000文字はTS娘が着替えてるだけで終わってる。

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