春風と共に歩む旅人と艦娘の物語   作:Hetzer愛好家

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予告通り、今回は鎮守府のドラ○もん明石さんとぽよです。ちなみにタグがちょびっと増えてます。ご確認を()


ぽよと明石

「あ、カービィちゃん。今は時間空いてる? 空いてるならちょっとお手伝いお願いしたいな」

 

そう明石に告げられて、特に予定もないので同行したカービィ。現在はほんのちょびっと後悔している最中だ。

 

明石のお手伝いというのは、簡単に言ってしまえばカービィの生態調査である。自分の生活習慣をわざわざ他人に晒すということが好きというわけではないし、それなりに時間も要する。お腹も空いてきたし、何より飽きてきたカービィは珍しいジト目を作っていた。

 

「ねえねえ。これって何に使うの? 僕の生態なんて調べても面白くないと思うんだけど」

「ああ、ゴメンね。この調査をする理由をまだ言ってなかったか。と言っても、そんな大したことはないんだけど」

 

ガサゴソとポケットを漁ると、明石の手には試験管が握られていた。試験管の中にはオレンジジュースのような液体が入っている。

 

「ふふふ。これはね、人間ではない生物を人間の姿にしてしまう薬なんだよ!」

「へえ、人間に変える……ええっ!?」

「例えばネコだね。ネコの飲む水やミルクにこれをチョチョイと混ぜればあら不思議! あっという間に人間の姿になるんだよ! ちなみに人語も普通に操れるから意思疎通も可能だね」

「ちょっとなにいってるかよくわからない」

 

次々と告げられる驚愕の効果と事実。一応だが、彼も「ドクター」というコピー能力で様々な薬を作れる。それこそ火薬だったり冷却剤だったり、回復薬をその場で作り出すことも可能だ。そのおかげで多少は化学方面にも理解があるのだが……今回はちょっと異次元すぎる。

 

一度死亡した生物を生き返らせる薬すらも作れるカービィが理解不能な明石の発明品は常軌を逸脱している。世界は広いということか。

 

ついでにではあるが、明石の目論見をカービィは看過してしまった。表情には出さないが、内心で彼はタラリと冷や汗を流す。

 

「えっと、つまりそういうことなの? 僕を人間にしてみたいってこと?」

「その通り! ここまでの調査は、カービィちゃんに薬を投与しても問題ないかを調べるための物だったんだよね」

 

ぽよぉ……とカービィはため息をつく。予想通りであったこともあり、比較的ショックは抑えられている。だが、それでも憂鬱な気分になる。

 

しかし「拒否」という考えが微塵も出てこないのがとてもカービィらしい。かなり嫌そうな顔をするし、ため息もつくが……嫌だとは一言も言わなかった。諦めたとも考えられる。

 

「あーもう……仕方ないね。その薬は飲めば良いんだよね?」

 

カービィ試験管を受け取って確認をすると、明石が頷いたのを見てから薬を口内に放り込んだ。

 

途端に広がるのは……。

 

「あ、普通にオレンジジュースだ。美味しいね」

 

その辺の自販機にも売ってそうな、親しみのあるオレンジジュースの味であった。

 

なあんだ。普通のオレンジジュースじゃないか。人間になるなんて明石の話は嘘だったんだ。きっとそうに間違いない……。

 

そう思い始めるカービィであったが、その見込みは砂糖とミルクたっぷりの紅茶よりも遥かに甘い。甘すぎる。

 

オレンジジュースの味をしているのは、あくまで劇物である薬を飲みやすくするためのカモフラージュでしかない。

 

少し油断をしたカービィを嘲笑うように、今度は強烈な目眩と灼熱感が襲いかかる。「ぽよお!?」と悲鳴を上げて座り込むカービィ。それをキラキラと輝く瞳で見つめる明石。助けろよ! と思ってはいけない。

 

カービィを中心に、白亜の光が爆発するように広がる。明石の視界は白一色に塗り潰された。それが人化の合図なのを知っている明石は大盛り上がりだ。工廠内に声が響き渡る。

 

光が晴れ、「カービィがいたであろう場所」に新しく転がっていたのは……。

 

「うーん……いたた。何がどうなって、るんだ、ろう……?」

 

特に変わることのない、幼さの残る高い声。サラサラとしており、男子として見るならそれなりに長さのある桃色の髪の毛。120cmあるかも分からない低身長。透き通るような青色の瞳。

 

見るところを見なければ女の子では? とも間違えてしまいそうな美少年が、そこにはすっぽんぽんで転がっていた。

 

すっぽんぽん。つまり素っ裸で。

 

素っ裸で

 

大事なことなので、あえてもう一回言おう。

 

素っ裸でだ

 

無論、大事なところも丸見えである。

 

「きゃあああああああ!?」

「うわああああ何これえええ!?」

 

工廠内に、今度は二人分の悲鳴が響き渡った。

 

───────────────────

「ご、ごめんね。姿が変わったら裸になるのをすっかり忘れちゃって」

 

彼にしては非常に珍しく、ムスッとした表情で人化したカービィは椅子に座る。

 

現在は明石の経営する店に売られている洋服に身を包んでいる。ちなみに大きさは駆逐艦仕様だ。ピンク色のパーカーと薄い青色のジーンズを着こなしている。

 

ムスッとした表情も様になっているのは元の素材が良いからだろうか。なんてことを明石は考えつつ、カービィの機嫌をどうやって直そうかを模索しようとする。とりあえず冷蔵庫に入っていたスイカジュースで当面は乗り切るつもりだ。

 

だが、そんな明石の懸念事はカービィ本人があっという間に解決してしまった。

 

「うん、まあ……仕方ないよね。明石さんも女の人だし」

 

やれやれという素振りだが、もう諦めてしまったからなのか、特に怒りも悲しみも見せることなく「もう良いよ」と告げたカービィは明石から受け取ったスイカジュースを飲む。

 

やや恐縮気味の明石を気にせずにスイカジュースを飲み干すと、カービィは彼女の目を真っ直ぐ見つめて問うた。

 

「それで、人の姿になったからには何かするの? 折角だしイタズラでもする?」

「え、それ面白そう!」

「……人間にしてからどうするかは考えてなかったんだね」

 

再びカービィの呆れ顔。言葉を発さずとも、彼が何を考えてるのか分かった明石の精神は大ダメージである。

 

カービィにしては珍しく「一度お仕置きでもしようかな?」とまで考えさせる明石は、もしかしたら称賛されるべきなのかもしれない。

 

「考えていないなら自分で考えないとね。うーん……でもこの髪の色なら、明石さんの親戚って言い張れるかな?」

「お、その線で考えるなら良い艦娘が何人か鎮守府に在籍してるよ! そうだなあ……春雨ちゃんなんかは良い反応しそうだね」

「ふむふむ……なら、今思いついたイタズラを終えたら春雨ちゃんっていう娘のところに行こうか。それで、こんなイタズラなんだけどね。ぽよぽよわにゃわにゃ……」

 

カービィからイタズラの内容を聞いた明石は目を輝かせる。テンプレと言えばものすごくテンプレだが、仕掛ける人はかなり面白い反応を示してくれそうだ。

 

悪巧みを企てる人間の笑みを浮かべると、明石はカービィと手を繋いで工廠を出た。

 

目指すは執務室。仕掛けるは提督。内容は……お楽しみに。

 

 

さて、場面は変わって執務室。提督は余程のことがない限り、一日の半分以上をこの部屋で過ごす。提督がするべき仕事は盛りだくさんなため、提督一人だと真夜中まで仕事が片付かない。

 

そんな仕事量なので、どんな提督でも秘書艦というものを設置する。秘書艦は提督の執務をサポートする他、食事の用意やマッサージをするなど彼女たち個人で提督を支えようとする。

 

「ヒトフタマルマルです、はい」

「さてと。切りも良いし、ここらで昼ご飯でも食べに行くかな。どうだ、一緒に外食しに行かないか?」

「え、司令官とお昼外でご一緒で良いんですか? 嬉しいです……♪」

 

本日の秘書艦は白露型五番艦の春雨だ。つい先日、カービィと激しい戦いを繰り広げた夕立の妹でもある。ちなみに、あの戦いで審判をしていたのもこの春雨だったりする。

 

春雨経由でだが、カービィが凄まじい戦闘能力を持っていることを聞いた提督は彼に興味津々である。軽く聞いただけだったので、今日は外食を奢るついでに詳しい話しを聞くつもりだ。

 

しかし、そこへ来襲者が二名……。

 

「提督、貴方との愛の結晶を連れてきましたよ!」

「こ、こんにちは……パパ」

 

平和な執務室……のはずだった。しかしたった今、巨大な爆弾を放り込まれた。

 

目が点になる春雨。心ここにあらずという表情であり、まるで解脱してしまったかのようだ。

 

一方、爆弾の爆発をモロに受けた提督。能面のような顔を作り、今度は分かりやすく動揺を露わにすると……。

 

「え、ちょちょちょちょ……いや待ってくれ! 俺は明石とシテないはずだけど!? てか一緒に布団入ったこともないよね!?」

 

来襲者が期待してた通りの反応をした。

 

「何を言ってるんですか! 七年前のあの日を忘れちゃったんですか!?」

「だから待ってくれ! しかも七年前って……まさか、海域突破の祝賀会か? 確かあの時は君たちに酔わされて……」

「その時にできた、貴方との愛の結晶ですって! 提督は忙しいし、何より深海棲艦の襲撃が怖かったからこれまでは女手一つで育てたんです! でも今日、この子に何度も父親はどこなの? と聞かれたのでこうして連れてきたんです!」

 

狼狽える提督。内心ほくそ笑んで提督を攻め続ける明石。それを静観するカービィ。相変わらず硬直する春雨。

 

つい数分前までは和やかな雰囲気だった執務室も、今ではカオスが支配している。

 

と、ここまで動きを見せなかったカービィが動き始めた。

 

「ね、ねえパパ。僕がパパの子供じゃダメだったかな? やっぱり僕はいらない?」

「い、いや……そんなわけないだろ。ただな、分からないことが多すぎて混乱してるんだ」

「僕、邪魔なら家に帰るよ。パパを困らせたくないんだ……」

 

超一流の演技。少年にしては儚すぎる雰囲気ではあるが、提督はすっかり騙されて慌てふためく。

 

それを見ていた明石は、ついに堪えきれなくなってしまった。

 

「ぷっ……あっははは! も、もうムリ! 提督面白すぎますって! あっはははは!」

 

腹を抱えて笑い出した明石。それに釣られてカービィもクスクスと笑い出す。

 

唖然茫然とする提督と春雨。二人が事実を知るのは、もう少し後になりそうだ。




ぽよぽよわにゃわにゃ→ごにょごにょをカービィ言葉にしたと思ってください。
擬ぽよはグーグルで検索したら出てくる画像を総集してそれっぽくした感じです。あと数話は擬ぽよのまま話を進めます。
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