グルメ界も暗黒大陸と遜色無いレベルの魔境だからヘッチャラだよねという感じなのでそんな駄作でも良ければどうぞ。
とある活火山の麓に食堂を開いている料理人がいた。そこは頻繁にマグマが噴火することから危険地帯になっているにも関わらず店には焦げ跡一つ無いという摩訶不思議な場所でもある。
そしてそこへやって来る酔狂な客もいるのである。カランコロンと扉を開く音がして店主兼料理長である青年は客を出迎える。
「いらっしゃい、久しぶりだねジン」
「久しぶりだなイスト。相変わらず人気のない場所に食堂を置いてるなぁ」
「仕方ないさ。俺が出す料理は一般向けじゃなくてグルメを探求したい強者向けだからね」
そう言ってイストと呼ばれた青年は気にせず答える。
彼はイスト・フロリア。数ある危険地帯ばかりに構える食堂でグルメ食材というこの世界のどの料理をも遥かに上回る美味な食材を使った料理を作る料理人である。
この世界で彼は”美食帝”という二つ名で知れ渡っており、グルメにまつわる職業や金に糸目を付けぬグルメ家達には有名である。
料理以外でも砂漠を緑の大地に変えたり、食糧難で起こった紛争地帯で食糧問題を解決させて戦争を終結させたなどの数々の逸話があるのだが、今回は関係ないので置いておく。
そして客としてやって来たのはジン・フリークス。二ツ星(ダブル)ハンターの称号を持つ遺跡ハンターで
その実力は世界でもトップクラスと言われている。
彼らが出会ったのはイストが紛争地帯で食糧問題を解決すべく活動していた時に偶然ジンがハンター協会からの依頼を請け負っていた途中に出会った。
イストはとある一匹の鳥を使って数万人の食糧問題を解決するという人間離れした偉業を成し遂げたことで関わりを持ったのだ。
そこでイストが振舞った料理をジンが食べてリピーターになったという経緯である。ジンはカウンターテーブルに座り待っているとイストが厨房で仕込みを終えた鍋の蓋を開ける。
「これが俺の拠点にある鍋山で取れたコンソメマグマだ」
そう言ってイストはお椀にぐつぐつ煮えたぎる赤い液体をよそって渡す。見た目は明らかにマグマであった。
「何度も飲んではいるが、本当にマグマだとは信じられないな」
「特殊な温度調節しなければ喰えないからな。きちんと人が食べれる温度にしてあるから大丈夫だ」
イストが構えるこの食堂は鍋山と呼ばれる場所で特殊な温度調整をすれば幻のスープと呼ばれる程の美味な食材である。
しかし数々の専門家達がこの鍋山まで来て挑戦するもコンソメマグマを食用レベルまで調整出来たのはイストとその弟子である副料理長のみ。因みに調理法の記した書物を盗もうとした盗人達はイストや副料理長の手で殺されている。客ではなく盗人と無銭飲食した相手は文字通り殺しているのでマナー違反はご法度がこの店のルールである。
スープを出したイストは店内に飼っている三匹のペット達にもお椀を用意してよそっている。ジンはコンソメマグマをスプーンで掬って口にする。
「!?」
その瞬間、全身がまるで煮えたぎったかのように熱量が旨味と共に浸透する。冷房が効いた店内だというのに心地よい暖かさが身体中に漲った。
「カァァァァァ、一口だけで身体中がポカポカしてくるな。それでいて辛さはそこまでないのにコンソメスープとしては絶品だな!」
「そうだろう。俺の知り合いがフルコースのスープにしているものだからな」
「これでも他の店で飲んできたどのスープよりも旨いのに、イストのフルコースにはなってないなんてな。『センチュリースープ』はまだ出せないのか?」
「予約する前に言っただろう。あれは全ての灰汁を抜く必要があるから仕込みに時間が掛かると。まだ未完成だからオーロラ出てないしな」
イストは残念そうに言う。彼の拠点の一つであるアイスヘルで取れる『センチュリースープ』はかつてグルメ界と呼ばれる世界でコンビを組んだパートナーと共に作り出したフルコースの一つであるスープだ。全ての灰汁を抜くことで何もないように見えるほど澄み切ってるだけでなくオーロラを発するというスープなのである。
「オーロラが出るなんて本当に信じられないぜ。と言っても綺麗さだったら『宝石の肉』も黄金に輝いてたな……」
以前肉料理が食べたいというリクエストがあったので保存してあった全身の身の旨味を全て兼ね備えた光り輝く『宝石の肉』のステーキを食べさせたのだ。
「ほら君達の分だよ。お上がり」
「キシャー」
「あい…」
「パブゥ」
返事をするのはジンから少し離れたところでお椀に入れられたコンソメマグマを食べる双尾の蛇やらガス生命体やらとある電気鼠っぽい着ぐるみを被った眼光鋭い獣が返事をする。明らかにこの世界で見たこともない生物達である。
「ところで……こいつらは一体何だ?」
「暗黒大陸で食材取りに行ったら着いてきた。こっちの世界じゃ五大厄災とか呼ばれてるな」
「そうか、五大厄災か。どうりで見たこともないわけだ……は!?」
ジンは思い出す。先祖であるドン・フリークスが新大陸紀行に記載している化け物達のことを……
殺意を伝染させる魔物 双尾の蛇ヘルベル
欲望の共依存 ガス生命体(霧状生物)アイ
快楽と命の等価交換 人飼いの獣パプ
着ぐるみで隠れている生物は分からないが、双尾の蛇やらガス生命体は書物に記されている特徴と一致していた。
「おまっ……何てものを飼ってるんだ!こいつらがどんだけヤバいか分かってるのか!?」
ジンは立ち上がってイストに言う。何せ一つだけでも人類が滅びかねない厄災がこの食堂に三つもあるというのは下手すれば人類崩壊待ったなしである。
「ん、殺意や欲望や快楽と知性体特化能力だろう。実際に対峙して受けたから分かってる」
「受けたって……お前の身体は何ともないのか……」
「何言ってるんだよジン。たかが感情操作の類だぞ……適応したに決まってるだろう」
「適応しただと……」
ジンは戦慄する。その程度で対応出来るならば厄災などとは言われていない。
かつてヘルベルによって自身の手で人を殺すと嘔吐してしまう程に殺生が駄目な医療部隊シスターが殺意に呑まれて同胞をナイフでめった刺しにした事例がある。
他にもアイと遭遇した結果正気を失った者達や三大欲求を完全に抑え込んだとされる僧侶を一撃で快楽依存させたとされるバプなど知生体への特化能力は桁外れているのはV5が今まで秘密裡に行ってきた実験で実証済みなのである。
それでもなお解決策は見つからず未だに隔離しか対処が出来ていないのが現状である。
それを目の前の男は適応したと言うのだ。
「俺の場合は適応出来た。まあ汎用性はないし、俺は専門家じゃないからそんなことはどうでも良い。それよりそろそろ食材が切れるから取りに行く予定なんだ」
「本当はそんなことで済ます問題じゃ、……おい、何故ここで食材を取りに行く話をしたんだ……」
ジンは冷や汗を掻く。何故なら話の流れからある流れが思い至ったからだ。暗黒大陸の厄災を連れて来た男が食材調達をしに行くと言ったら考えられるのは彼らの故郷である。
「実は暗黒大陸に作った拠点で収穫に行く予定なんだ……暗黒大陸に興味があるって話だから一緒に来ないか?」
イストはジンに旅行に誘うかのように気安く言ったのであった。
軽く人物紹介
イスト・フロリア
個体名:人間?
→オリ主。暗黒大陸も勝手に渡航して無事に帰ってこられるレベルってグルメ界の人間じゃないという発想で作られた料理人。
”美食帝”の二つ名で数々の偉業をハンターハンター世界で成して三ツ星(トリプル)ハンターの称号を持つグルメハンター。
ヘルちゃん
個体名:双尾の蛇ヘルベル
→イストが飼ってる五大厄災の一つ。実は人懐っこい個体で手を伸ばすと頭を撫でて欲しくてすり寄ってくる。因みに悪意を持って店に入ってくると殺意を伝染させた上で相手の拠点に戻らせて虐殺を行わせるハニートラップを仕掛けてくる娘。
アイちゃん
個体名:霧状生命体アイ
→イストが飼ってる五大厄災の一つ。欲望よりも食欲に目覚めた個体なので料理作って上げれば大人しかったりする。とある世界線ではアイちゃんに欲情する豪の者がいるとかいないとか……
バプちゃん
個体名:人飼いの獣バプ
→イストが飼ってる五大厄災の一つ。某日曜アニメのキャラのように「パブゥ」と鳴くマスコットの一匹。日差しを浴びたくないらしいので有名な電気鼠の着ぐるみを上げたら気に入って使っている。イメージ的にはポケモンのミミッキュ。
ジン・フリークス
個体名:人間
→イストの店にやって来たこの世界トップクラスのハンター。イストの暗黒大陸ツアーに巻き込まれた被害者である。