暗黒大陸?グルメ界の間違いだろう……   作:クロアブースト

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残り2話。本編と関係ないけど一番好きな八王はスカイディアでした。
打ち切り迫ってたのか知らないけど原作でニュースがカットされたのはショックだった。
ぶっちゃけ描写カットされたニュース、アース、アトムはどんな感じか読みたいレベルですね。
まあ無いなら書けば良い理論なのが本編ですが……

イストの人生のフルコースの一つで一章のテーマとなる食材が"流星雨のパフェ"となります。

前回:
イスト「オラ、もっとメロウコーラ出せ」
スフィンクス「キャイン!?」
ジン「やめたげてよぉ!」



流星雨のパフェ

これはかつて副料理長となる少女をイストが拾った時のこと……

 

故郷を離れての遠い旅路。嘗てのコンビを組んでた一龍を味仙人である三人に任せて旅に出たイストは道端に空腹で倒れている少女を拾う。

 

イストはその日、運命というものを感じた。

かつて一龍の為に揃えたフルコースの数々。

何せ、自分以外の世界中の皆の分まで用意しないと食べないという頑固っぷりからだいぶ苦労させられた。

今でもアイツ、マジ許さねぇと当時のことを思うと腑が煮え繰り返る思いだったが、それは置いておく。

 

彼が運命を感じた理由はフルコースの内、デザートの食材だけが都合良く残っていたからだ。

まるで食材が彼女に食べられたいと待ち望んでいたかのようだった。

 

適合食材というものがある。それはグルメ細胞の限界を超える壁だったりと広義に渡るが、イストにとって適合食材とはグルメ細胞の悪魔を復活させた際に乗っ取られない為の鍵を指す。

それはグルメ細胞が本能的に求めるケースが多く、自然と自身のフルコースに入っているパターンも少なく無かった。

 

一龍の適合食材はビリオンバードの卵、

イストの適合食材は■■■■、

 

そして少女の適合食材は間違いなく流星雨のパフェだとイストは確信したのだった……

 

 

 

 

 

「メロウコーラ、悲しい事件だったな…」

「お前が言うな!」

 

悲しそうに言うイストに突っ込むジン。寧ろ悲しむのは強要されたジンの方なのだが、メロウコーラが必要だからということで同罪だからとその件はお終いということにした。

 

「雨の大陸はどんなところなんだ?」

「とある巨木の周りで多種多様な雨が降る場所だ。スターダスト・ヒルもその一つだ」

「イストはそのスターダスト・ヒルが目的地なんだよな」

「そうだ。そこに俺のフルコースの一つである流星雨のパフェがある」

 

 

 

ヒュー、ヒュー、ヒュー!

 

ドドォン!ドドォン!ドドォン!

 

そして大小様々な隕石の雨が無数に降り注ぐ丘に辿り着く。

 

「これがスターダスト・ヒルだ」

「爆撃機の空爆が可愛く見えるレベルじゃねぇか!?」

 

ジンがドン引きするのも仕方ない。何故なら大小様々な隕石が降り注ぐ危険地帯なのである。

常に隕石が降り注ぐせいで前方に爆風が発生し続けてるせいで先が見えないというレベルだ。

 

「ここには数年に一度デザート彗星からデザート星が降り注ぐことがある」

「デザート星?」

「デザート彗星という幸運の流星で育った特大サイズのフルーツだ。まあ一つ一つが山位のサイズはあるな」

「山!?そんなデカいのか……」

「デザート彗星から降り注ぐデザート星を使うことで流星雨のパフェは完成する。要は流星群の中からデザート星を見抜いて回収すれば良いのさ。簡単だろう?」

「普通の奴は流星群が飛んできたら死ぬからな」

 

そうしてイストは迫り来る流星群の隕石だけに包丁を振るってさいの目切りにして粉々にしながら、デザート星だけは優しく片手で受け止めていく。

優しくと言ったがそれはイストが受け止める行為のことであってデザート星はジェット機が突撃するかのように急降下で突っ込んで来る。

 

ズドーン!

 

イストに激突して爆音が鳴り響くが、イストは無傷かつデザート星も無事であった。

というか山サイズのフルーツ星の直撃を片手で受け止める行為自体が人間離れしていた。

デザート星を後ろにポイっと投げてはまたデザート星以外を包丁で処理していく。

 

「ジンは後ろに落としたデザート星を避難させてくれ」

「流石にこのサイズは持てないぞ!」

 

流石のジンであっても山を持ち上げるなんてことは出来なかった。

 

「転がして大丈夫。デザートの皮は大気圏で燃えない為に頑丈な作りになってるからな」

「分かった」

 

普通の念能力者なら無理だろうが、ジンの潜在オーラ量なら確かに可能だ。ジンは十二の巨手(ゴッドハンド)を発動し、巨大なオーラの巨手でデザート星を転がす形で動かしていく。

 

こうしてイストとジンによってデザート星は無事に回収されたのであった。

 

 

スターダスト・ヒルから離れた丘で山サイズという規格外のデザート星の数々にイストが包丁を入れて調理していた。

 

「普段からイストはこの流星雨のパフェを作る際はこの流星群を対処してたのか?」

「いや流石に一人は厳しいから相棒を連れて来てるな」

「相棒?」

「そうパートナーアニマルって言う強い獣さ」

「ふーん、何度か店に行ってるが見たことねぇな」

「そうだね。3年間位故郷へ帰省してるのと、人間界だと大き過ぎるから姿を隠させてたっていうのもあるな」

「3年か、結構長くないか?」

「いや俺も相棒もかなり長く生きてるから3年なんてあっという間さ」

 

イストはなんてことないように言うが人間からしたら3年は長い時間である。

 

「そいつの名前はなんて言うんだ」

「ディアと名付けた。人懐っこいパートナーさ」

「副料理長は知ってるのか?」

「ああ、キャンピングモンスターだから移動手段も兼ねてるからな」

「ん、キャンピングモンスター?初耳だな」

 

ジンは尋ねる。キャンピングモンスターとは聞いたことが無かったからである。

 

「自らが安全場所となる猛獣のことだ。そいつらが巨大かつ他の猛獣に見つかりにくい性質を持つ為に暗黒大陸を渡航する際とかに重宝する」

「は、ハアアアアアア!?おま、ちょっと待て!そんな便利なのがあるなら何でこの旅に使わなかった!」

「いやジンは旅するの好きそうだったからキャンピングモンスターに乗って旅するよりも直接探検する方が好きかなと思ってな」

「っぐ……確かにそれはそうだな……」

 

図星である。探検に限らず自動車や電車で目的地まで着いてしまうのは、全く旅行先を歩かない為、人によっては旅行間が薄れるという人がいる。そしてジンも楽して行くのは退屈というタイプであった。

 

「だがそんな便利な奴がいるなら人間界からも進出出来るんじゃねぇか?」

「いやそう都合良くはない。まず自分より強い生物には見つかってしまう」

「そうか、そして隠れる性質がある以上は戦闘力がそこまで強くないってことだな」

「そうだ。だから拠点と移動時間短縮という点は叶うが、結局は自衛出来なきゃ話にならない。そして矢面に立つなら戦闘力と環境適応能力が無ければタダの足手まといだ」

「確かにそうだな」

 

これまでの旅をした経験から少なくとも環境適応能力が無ければまともに戦うことすら出来ないこと、そして徒党を組んで連携してくる獣すらいる以上は精鋭を揃えなければいけないことを理解していた。

 

デザート星の皮を全て包丁で剥いたイストは二人分の材料以外に残っている膨大なデザート星達の殆どを一瞬で凍結させる。食材の鮮度を保ったまま凍らせたのである。

 

「鮮度を保ったまま凍らせる力か、料理人にとっては重宝する力だよな」

「そうだな。食材の殆どは鮮度が落ちると味も落ちてしまうし賞味期限だってある。俺の氷は数百年経っても鮮度を落とさずに長期保存も可能だ。逆に鮮度保存を緩めればアイスヘルが出来上がるがな」

「あの人間界に作った極寒の環境だな。全くあそこはお前が買い取るまでは普通の島だったはずなんだがな」

「まあ企業秘密だ」

「企業になんか属してねぇだろうが」

 

ジンも流石に相手の能力を暴こうという気は無いのでこれ以上追求はしなかった。

 

「さぁこれが流星雨のパフェだ」

「これが流星雨のパフェか!ダイス状にカットされたフルーツが宝石のように輝いているだと……」

「そうだ。デザート彗星の中にある幸運の流星のエネルギーを吸って育ったデザート星は宝石のような光沢を放ち、それ単体で鮮やかに輝くんだ」

 

イストが出したのはデザート星をふんだんに使ったフルーツパフェであった。

デザート彗星のフルーツ達をダイス状にカットされており、デザート一つ一つが宝石のように輝いていた。

イチゴはルビー、キウイはエメラルド、ミカンはトパーズと言った風にそれぞれのデザートが対応した色の宝石の如く輝いていた。

 

そしてジンがスプーンで掬って口にした瞬間、流星群の如く甘味が全身へ行き渡る。

 

「!?」

 

流星群が夜空を流れ落ちるように甘味が全身を駆け巡りながらもイチゴとキウイとミカンがそれぞれ独立しながらも互いを高め合うかのように折り重なったハーモニーをジンは味わった。

思わず涙が流れていた。

 

「ったく、相変わらずお前のフルコースは旨さで涙が出ちまう。勝手に身体が旨味に感動しちまうんだからな……」

「良いじゃないか、食の感動程素晴らしいことはあるまい」

 

そしてジンにはオーラとは異なる輝く流れが見え始めた。全身を星々のような輝きがまとわりついていた。

 

「これは一体?」

「手にしたのさ。この暗黒大陸を渡り歩くに当たって必須スキルの一つ。食運を!」

「これが食運なのか……」

「この流星雨のパフェは願い星と同等の幸運を蓄積しているんだ。故に俺がデザートラビリンスで隠し通路を見抜いたように正しい道筋を見抜いたり、本来なら見えなかったり、理解出来ないものすら把握したりと文字通り万能な力とも言える」

「それが食運…」

「どんな強者が望んでも手に入れられなかった才能とも言える。何せ強くたって食運が無ければ美味なる食材には辿り着けないからね」

「美味なる食材か……確かに、こんな美味しい食材を求める者達にとっては喉から手が出る程に欲しい才能だな」

 

ジンは納得する。旨い料理を食べたいという原始的な欲求はどんな人間をも魅了するのだとジンは改めて思ったのだ。

 

「さて……では次の目的地へ……」

 

イストが言葉を口にしている途中で……

 

ゾクッ

 

「!?」

「!?」

 

その瞬間、イストとジンへと向けて周囲が歪んで見える程の威圧感がぶつけられる。

 

ズオォォォォォ!ビリビリビリビリ!

 

まるで重力のように、上から押さえつけるかのような威圧感と電流を浴びているかのような、身体中に走る刺激にジンはかつてない悪寒を感じていた。

 

「一体何が……起こってるんだ……」

「まさか、向こうから来るとはな……」

 

イストは側面を向きながら呟く。その方角から何かが来ているのだろう。

だがジンの身体中に伝わる危険信号が振り向くなと言っているかのように激しく警告していた。

 

「訂正、俺には幸運なんだが……ジンには不運かもしれない」

 

その言葉にジンは喉を鳴らして覚悟を決めて側面へ顔を向ける。

 

数百km離れた遠方からでも感じ取れる程の凄まじいオーラと威圧感を纏って山をも踏み超える巨大な馬が悠然とこちらへ向かって来ていた。




馬王「私が来た!」

次回 一章 最終話

To Be Continued…

クロアブーストの次回作にご期待ください。

ドン=フリークスが新大陸紀行の西を出版しなかった理由は?

  • まだ見つかっていない
  • 志半ばに挫折して本になっていない
  • 今も書き続けている

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