暗黒大陸?グルメ界の間違いだろう……   作:クロアブースト

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狼から知的生命体になった種族のお話。

原作がどうかは知らないけど今作では色んな動物が知的生命体になって亜人種が産まれた設定です。

※活動報告の方でオリ生物の募集やってるので、興味ある方はそちらも見て頂けると幸いです。



狼人の村

現在イストとジンは狼人(ウルフロイド)の村へと向かっていた。その道中で亜人種についての説明をジンは受けていた。

 

暗黒大陸には基本的に人間が存在しないと言われている。しかしそれは偽りである。

ヘルベルを含めた五大厄災達は明らかに知的生命体へ特化した能力を備えており、彼らがその力を進化の過程で身に着けるには大きな外敵が必要なのである。

 

「その外敵が亜人種ってわけなのか……」

「そうだ。人間がいない以上は猿以外が知的生命体になってもおかしくない。今から向かう狼人(ウルフロイド)は猿と同じように狼が知的生命体に進化したってわけだ」

「まあ猿が進化した位なんだからそれ以外が知的生命体に進化するのもあり得ない話じゃないか……」

 

ジンはイストの説明に納得する。理論上は猿が進化したというならば猿以外の生物が知的生命体になるというのは不可能ではない。それが人間達で解明できるかは別の話だが……

 

「因みに今回は立ち寄らないけど俺達とは違う猿から進化した猿の楽園とかも一応ある。モンキーレストランと言って50億頭近い猿が跋扈する大陸だ」

「凄いのは分かるが、それを聞くと猿が追いやられた風に聞こえるんだが……」

「追いやられたというよりはそこにあるスープを独占したくて移動したというのが正解だな」

「スープ?」

「そうだ。通称『表裏一体の雫』と呼ばれる至高のスープだ。大陸から湧き出るんだが、現在はそこを統べる猿人の巫女が管理している」

「『表裏一体の雫』かぁ…ぜひ飲んでみたいな」

「飲んだらビックリするだろうよ……別の意味でもな……」

 

最後は小声で言うイスト。性転換するとか言ったら飲むのを躊躇しそうだと思ったので言うのは辞めたのである。

後日ジンが飲んで弟子のカイトより先に女の子になっちゃった現象が起こるのは余談である…………

 

 

「言っておくが暗黒大陸で通貨とか使えないから基本的には物々交換になるぞ」

「だからこれだけの食材を集めてきたってわけだな」

 

イストとジンは賽の目切りした要犀以外にも草食の森で様々な草食動物を狩って袋詰めしていた。今から向かう先で物々交換をする為に。

 

「そろそろ見えて来たな」

 

イストが言うように村を囲う壁と入口があった。そして入口には狼の頭部を持つ右眼に傷跡を持つ狼人がおり手には長槍を肩に掛けていた。その狼人はジンからしても凄まじいオーラを纏っていた。

 

「このオーラ量は会長(ジジイ)並みか……」

 

亜人種は基本的には人間の上位互換、イストが言っていた通り、入口の門番が既にハンター協会のトップ並みの戦闘力を保有している時点で強さの証明になった。

そして狼人はイストに気付くと頭を下げてきた。

 

「む、これはイスト殿。お久しぶりです」

「久し振りだねローグ。お土産と長老に会いたいんだけどいるかな」

「はい、長老なら屋敷にいらっしゃいます」

 

ローグと呼ばれた狼人はイストへ敬語で話す。そしてローグはイストと一緒に来ていたジンへ視線を向ける。

 

「そちらの方は?」

「ジン・フリークスだ。よろしく頼む」

「私はローグ。この村の戦士だ。こちらこそよろしく頼む」

 

ローグは手を差し出して来たのでジンも握手する。ローグの手は狼特有の体毛こそあるものの人間と同じく五本指であり人間に進化したといっても信じられる変化であった。

 

そして村へと入ると子供から大人まで数多くの狼人達が人間のように生活していた。

お店を開いて商売をしてたり、子供達で遊び回ったり、雌狼人らしき主婦の女物の服を来て井戸端会議をしてたりと頭部が狼なのを除けば人間と変わらない。

だが人間界の人達と唯一違うのは……

 

「全員が纏をしているのか……」

「まあ人間界と違って野生の生物ですら念能力を使ってるから念を扱えないとなす術なく殺されるってわけさ。教育機関でも念能力の授業まである位だ」

「授業で念能力を教わるなんて人間界では信じられねぇな」

「ジン、却下されたけど一度念能力の学校作ろうとしてたんだろ?」

「ああ、まあハンター協会から念の秘匿性で説教された挙げ句却下されたけどな」

「ハッハッハ、人間界では念を教わるのが義務教育で無いのですね。私達の文化では信じられませんな」

 

ローグはジンが拗ねるように言った言葉に笑って答える。厳つい見た目に対してフレンドリーな男である。

 

「まあ我々としてはイスト殿のような化け物と遭遇したくは無いので人間界には行くつもりはありませんが……」

「イスト、ここでも化け物扱いされてるぞ」

「ローグ、言っとくが連れのジンは人間界で五本指に入る念能力使いだ。メモリ制限が無い上に天才だから文字通り何でもやって来る化け物だ」

「ふむ、化け物の連れは化け物というわけですな」

「おまっ!?何てことを言いやがる!」

「事実だろうが、因みにこのローグは念槍流という念を使った槍術の師範代。狼人の中でも五本指に入る実力者だ」

「お二人と比べると私は若輩者ですな」

「若輩者はね、自分で投げた槍の上に乗って空飛んだり、落雷を受けて地面で刺した槍で電流流したりは出来ないよローグ」

「こいつも化け物じゃねぇか!」

 

自分は化け物じゃなくて他の奴こそ化け物だという議論を三人でしながら長老の住む家へ辿り着く。

そうして現れたのは髭を生やした狼人の村長だった。

 

「よくいらっしゃいましたイスト殿。そして人間の方よどうぞ召し上がりください」

 

長老の狼人はそう言ってご馳走を振る舞う。そこで目を引くのは巨大なベーコンだった。

 

「このベーコンは?」

「こちらはベーコンの葉ですね」

「植物なのか!?」

「ええ、植物栽培でベーコンを取れる珍しい植物です」

 

ジンはベーコンの葉を食べる。

 

「本当にベーコンだ。グルメ食材は本当に常識外だ……」

「まあその分美味いから良いじゃないか」

「左様。イスト殿から施されたグルメ食材は我が狼人達でも人気が高く重宝しております」

「良いのさ。俺としてはグルメ食材はもっと増えて欲しくて積極的に渡している位だ」

 

イスト自身はグルメ食材を人間界でも広めたいのだが、確実に生態系が乱れるので、仕方なく自分が買い取った土地でのみ、栽培しており鍋山だったり、アイスヘルと言った環境になっている。

 

食事を済ませた後に長老から相談が持ちかけられた。

 

 

「実は狼人の村の周辺でキメラアントが繁殖しておりましてな」

「キメラアント程度なら貴方達でも撃退出来るだろう?」

「それがキメラアントの巣が同時に発生し、いずれも王と直属護衛軍が生まれてしまったのです」

「それは珍しいな……」

「王や直属護衛軍が生まれるのは珍しいのか?」

 

イストの感心した言葉にジンは尋ねる。キメラアントの生態は本来女王蟻が直属護衛軍と王を産むのが既定路線だからだ。

 

「キメラアントは暗黒大陸において食物連鎖では下層に位置する。というより周りの生物で強い獣が多いせいで餌の確保すら不安定なのが現状なのさ」

「確かに草食の森の獣とかを見ると餌を取りに行くのに対してのリスクが多いな」

 

暗黒大陸でキメラアントの女王蟻は王を産めないで滅ぼされるケースが多い。

理由は二つあり、一つ目は周りの生物が強過ぎるせいで安定した餌の供給が難しいからである。

獣のほぼ全てが念能力者なので栄養価こそ高いのだが、逆に言えば兵隊蟻を放っても全滅させられたりと返り討ちにあうケースも多々ある。

数の多い兵隊蟻が安定した餌を集められないせいで女王蟻へ栄養が行き渡らないケースが多く、直属護衛軍ならともかく王を産むのにはかなりの時間を要する。

 

そしてもう一つは直属護衛軍はおろか、王すらも容易く狩ってしまう獣や亜人種達が存在する。餌を取りに行かせたら直属護衛軍や王より強い敵に存在を知られてしまい、キメラアント自体が餌になってしまうことだって多々あるのである。

 

「十ある内の7つは壊滅させましたが、負傷者も出ている為に残りの3つは現在は膠着状態になっているのです」

「キメラアントとはいえ、籠城戦みたいなものだから万全を期すのは良いことさ」

「私は4日連続で王級を四体仕留めるのにオーラを大分消耗してしまいまして、現在療養期間中なのです」

「まあローグならそれ位は出来るな」

 

イストは納得する。この狼人はこの村最強候補の一人だ。今の話だと一日1拠点ペースでキメラアントの巣をローグの部隊が壊滅したということになる。

 

「イスト殿には我々が討伐予定の3つの巣の内、一つを担当してもらいたいのです」

「まあキメラアント位なら大した相手じゃないし、良いだろう」

「ありがとうございます」

「だけど担当地区の狼人は撤退させてくれ、多分皆殺しにするから避難出来てないと巻き添えになるから」

「頼もしいですな。分かりました、現在偵察中の部隊を引かせましょう」

 

 

 

 

数時間後、イスト達はキメラアントの巣へと向かうことになった。

 

「安請け合いして良かったのか?キメラアントとはいえ数は多いんだろ」

「大丈夫、袋に待機してるヘルちゃんいるから」

「ああ、それでか……頼もしいというべきか、恐ろしいというべきか……」

「今回は頼りになるだろ?キメラアントは確実に根絶やしになるし、まあ最悪俺が変わりにグルメ細胞の悪魔での威圧でキメラアント達を絶命させても良いんだけどな」

「ここに五大厄災より化け物がいたよ……」

 

ドン引きするジン。だがヘルベルと違ってイストは知性もあるが、止められる手段は人間界には存在しないのである。

 

「ところで狼人は武器使いが多いんだな」

「そりゃあ拳に硬するより周で刃先を強化した方が破壊力が増すからな」

「刃先?」

「そう。念能力者で剣全体に硬使ってる奴がいるが、実は斬れ味や貫通力を上げたいなら刃先へ集中させた方が威力が増す」

「確かにオーラを集中させた方が良いのは分かるが武器の耐久性の脆さや難易度が増すな。それを狼人は容易くやってのけてるってわけか……」

「人間界と違って仮想敵が堅や凝などで防御してくる念能力者だから少しでも火力を上げる必要性があるってわけだ」

「明らかに人間界より念能力が進歩しているな」

「人間界の科学技術の利便性には勝てないけどな。念能力だとどうしても均一化が難しいってのがあるしな」

 

公共施設や公共交通機関などと言ったものの普及率では大きく劣るのだ。そういう意味では人間に亜人種の村や国は住みにくいと言える。まあ中には人間界よりも発展している国もあるのだが……

 

そうしてイスト達はキメラアントの巣に辿り着いた。




因みにネフェルピトーだらけの猫人の村とかもあったりする。
きっと探せば「THIS WAY」と出会い頭にボ!をしてくるゴンさんの村とかもあるだろうけど本編では特に出たりはしません。

ローグ
…右眼に傷跡がある長槍を扱う狼人。ジンがネテロ並みと言ったオーラ量と槍術を極めた達人。その槍の貫通力はキメラアントの王の外殻すら容易く貫通する。
コイツだけで七つある内の4つの王を撃退したという化け物。

次回、ヘルちゃんの害虫駆除

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