暗黒大陸?グルメ界の間違いだろう……   作:クロアブースト

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ヘルちゃんことヘルベルの恐ろしさが分かるお話。

※ベルベルによって殺意衝動が撒き散らされてるので残酷描写やグロテスクな描写があるので苦手な人はブラウザバック推奨


ヘルちゃんの害虫駆除【閲覧注意】

五大厄災の一つ、

殺意を伝染させる魔物 双尾の蛇ヘルベル。

その脅威を知るのはV5の下、非合法で研究してる連中位だろう。

何故ならヘルベルと遭遇した部隊は文字通り一匹の蛇によってほぼ全滅させられているからである。

ヘルベルの情報を知って念能力者達は安易に操作系の能力で殺意を撒くのだろうと言う。

ならば操作系は早い者勝ちなのだから、自身を事前に操作していれば対策出来ると言った者達は容易にヘルベルの餌食にあった。

他にも精神崩壊している廃人やら念獣ならと試したが例外なくヘルベルの餌食にあっている。

そしてオチマ連邦が派遣した遠征部隊で99%が餌食にあって帰還者は僅か11名と記載があるがそれには語弊がある。

何故なら帰還者達はほぼ全員が人間不信に陥ったとされる。

イストは言う。

 

ヘルベルの本当に恐ろしいのは殺意衝動を感染させることじゃないんだよ……

 

その意味をジンはこのキメラアントの巣で理解させられることになる……

 

 

 

時は少し遡りキメラアントの巣へ着く前に狼人による仮設テントへ到着したイストとジン。そこでキメラアントと最前線で対峙していた狼人の青年と出会っていた。

 

「久しぶりだな。イストさん、こんな情けない姿で再会するのは許してくれ」

「久しぶりだねローウェル。君達で言う名誉の負傷なんだろう。気にすることないさ」

「負傷に名誉もクソもあるかよ。仲間を守れないプライドなんざいらねぇよ」

 

黒い長髪に痩せ身の青年であるローウェルは包帯で接合した右腕を固定していた。彼は狼人の中でもより人間に近い見た目であり、人間との違いは頭に狼の耳が付いているだけである。付け耳だと言われれば信じるレベルで造形が人間に似通っていた。

先日あったキメラアントへの奇襲で対峙したキメラアントの王と対峙した際にお互いの利き腕が切断されたらしい。

 

「戦況は優位に進めて俺も追い詰めたんだがアイツ、直属護衛軍の仲間を喰いやがったんだ……」

 

ローウェルは悔しそうに言う。同胞を重んじるローウェルとして同胞を喰らうなど万死に値することだろう。

 

そして二体の直属護衛軍を喰らってパワーアップした王はローウェルと実力が拮抗してお互いの利き腕が吹き飛ぶ激闘が繰り広げられたらしい。

 

「利き腕が切断されちまった以上、情けないことに撤退せざるを得なかったんだ」

 

耳がショボンと項垂れているローウェルだが、それに待ったを掛けたのがローウェル隊副隊長であるピンク髪の狼人の女性だった。

 

「それは違います!隊長が万全ならば、確実に撃退してました!それまでに王を三体討伐して消耗してなければ勝っていたのは隊長です!」

「止せ、撤退したのは事実だ。流石にローグのおっさんと比べると俺はまだまだ未熟ってことだ」

「隊長……」

 

副隊長はローウェルを悲しげに見る。ローウェルが撤退したのは、自身が負ける可能性ではなく仲間が犠牲になるのを防ぐ為であった。イストは切断されたという右腕を見るが包帯で固定されているのを見るに無事にくっつけることが可能な治癒能力者がいると理解する。

 

「腕をくっつけたのは君か?」

「はい、私は支援系能力者なのでこれくらいしか出来ませんが……」

「何言ってるんだよ。お前さんが俺の腕をくっ付けてくれなきゃ今頃は引退すらしていた。俺は寧ろ感謝しているよ」

「隊長……」

 

ポンポンと副隊長の頭を撫でるローウェルと嬉しそうにする副隊長。イストやジンをそっちのけでイチャついてるとんでもない奴らである。

 

「ローウェル達はともかく撤退してくれ、今回はヘルちゃんが害虫駆除してキメラアントを根絶やしにする予定だから離れてないと巻き添えくらうよ」

「シャー♪」

 

イストの首に巻き付くヘルベルことヘルちゃんが元気に鳴く。

 

「ヘルベル巻き付けれるまで手懐けれるのはアンタ位だろうよ」

 

呆れるローウェル。狼人達にもヘルベルの恐ろしさは伝わっている。知性体にとっての天敵とも言える悍ましい惨劇を引き起こす生物としてである。

 

「まあ害虫駆除するまで辛抱してくれローウェル。すぐ終わるから」

 

 

その数時間後に狼人が撤退する。

 

 

丘の上でイストはヘルちゃんを撫でながら言う。

 

「殺っちゃって良いよヘルちゃん」

「シャー」

 

ヘルちゃんは鳴くと同時に禍々しい黒いオーラが溢れ出す。そして前方へ向けて広範囲の黒い円がキメラアントの巣へ襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

ヘルベルがオーラを放つ数刻前キメラアントの巣では王が治療を受けていた。

 

「ぐぅぅ…おのれ、狼人め…」

「王ご自愛下さい」

 

キメラアントの王は忌々しいというかのように呟く。

最後の直属護衛軍、鷲型のキメラアントであるホークスは王の切断された右腕を師団長の1人の念能力で接合させながら王を宥める。

 

何せ今キメラアントを殲滅しようとしているのは狼人最強の一角と言われるローウェル率いる部隊である。

王が直属護衛軍2匹を喰らってパワーアップしても尚、互角という怪物であり、お互いが利き腕が切断されたことで痛み分けの形で停戦になったに過ぎない。キメラアントと違って狼人は集落が他にもあり、他からローウェル級の増援がされでもすれば滅ぼされるのは容易いのである。

 

「腕が治り次第、狼人の村へ打って出る。ついて来い、ホークス!」

「ハッ、喜んで!」

 

ホークスは敬礼しながら言う。

 

ズアッ!

 

だがその瞬間、禍々しいオーラが巣を飲み込んでいく。

 

「これは……!」

 

キメラアントの巣は殺意の波動に飲み込まれる………

 

 

 

 

 

キメラアントの偵察部隊は狼人に備える為に偵察をしており、師団長へ合流していた。

 

「どうだ。敵はいたか?」

「大丈夫だ。異状なしだ」

 

兵隊蟻は師団長に報告する。

 

「気を抜くなよ、何時狼人が襲ってくるか、分からないからな」

「ああ、そうだな。何処に敵が潜んでいるか分からないもんな」

 

師団長は背を向ける。

 

ザシュ!

 

師団長の頸が地面に落ちる。

 

「え……」

「敵を警戒しないとな」

 

頸を刎ねた兵隊蟻は表情一つ変えることなく淡々と実行した。まるで頸を刎ねる行為が殺害行為だと認識してないかのように……

 

こうしてキメラアント同士の殺し合いが幕を開けるのであった……

 

 

「ガフッ!どうして……」

「報告します!こちら異常ありません!」

グシャ!

 

兵隊蟻は奇襲で重症を負わせた兵隊蟻を踏みつけながら報告をする。

 

「どうじて……味方を……殺ずんだよぉ!」

「俺達は一蓮托生の仲間だ!お互い生きて頑張ろうぜ」

 

血反吐を吐きながら悲鳴を上げる兵隊蟻へ笑顔で身体へ刃物を突き刺しながら言う師団長。

 

「警戒を怠るなよ」

ザシュ!

 

師団長は集まった兵隊蟻達に刃物を振るって切り裂く。

 

「了解」

「了解」

「了解」

ズブッ!ズブッ!ズブッ!

 

兵隊蟻は師団長に返事をしながら、三体は一斉に刃物を師団長目掛けて突き刺した。

 

「戦いを行うにはまずは食事が大事だ!遠慮せずに喰うんだぞ」

「はい!」

「腹一杯食べるぞぉ!」

 

笑顔で語り合いながら、平然と味方の兵隊蟻同士で共食いを始める連中まで出現する。

 

 

兵隊蟻、師団長問わず全員が平然と殺害行為を行う。まるで息をするかのように殺し合いをすることで数を減らしていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷えなこれは……」

 

ジンはその光景にドン引きする。何せ目の前に広がるのは夥しい数のキメラアントの兵隊蟻達の死骸である。

そしてジンは運良く生き残ったごく少数の兵隊蟻達を目撃する。

 

ガクガクガクガク

 

一匹は敵が来ているのにも関わらず身体を丸めて怯えている狐の兵隊蟻

 

「アハハ、楽しいなぁ、また遊びたいなぁ」

 

一匹は上の空で幻覚を見ることで現実逃避する蜘蛛の兵隊蟻

 

「ひぃぃぃぃ」

 

ジンやイストを見て怯えるだけで無抵抗の兵隊蟻も沢山いた。

 

明らかに目の前で起こった同族による殺し合いによって心が折れていた。

 

「これがヘルベルの恐ろしさか」

「そう。殺意の伝染と聞いて思うのは暴走と連想する連中はいるけど、実は違う。感染者は自覚しないんだよ」

 

イストは首に巻き付いたヘルちゃんを撫でながら言う。ヘルちゃんはシャーと気持ちよさそうに目を細めていた。

 

「目に見える恐怖より目に見えない恐怖の方が恐ろしいとはよく言ったもんだな……」

 

ヘルベルの恐ろしい点は二つだろう。

一つ目は殺意の伝染と言われているが、感染者は全く思考できないわけではなく、殺害行為がいけないことだと自覚出来なくなるのである。

だからオーラを見たとしても揺らぎすらしないし、感情が変動することすら無い。

快楽殺人者のように感情が高ぶることもないし、仲間を殺して悲しみを抱くことすら無いのだ。

彼らは殺気を放つことなく、殺しを平然と行うようになるのである。挨拶や歯磨きをするかのように当たり前のように無意識に殺しを行うのだ。

 

二つ目はその光景を見た連中である。兵隊蟻が良い例で人間不信になるのは当然だろう。何せ同族殺しや共食いを平然と行うなどまともな思考があれば普通じゃないと考えるのが当然である。

常識があるほどにヘルベル感染者を見るのは地獄絵図を見るのと同義なのだ。

 

 

そして王の間まで辿り着くと蟻の王と鷲のキメラアントが相討ちになって絶命していた。蟻の王は全身に切り傷と手足が捩じ切られた痕があり、鷲の羽による剣が切断された頭部を貫通しており、鷲のキメラアントは頸に捻られた痕があり頭部が亡くなっていた。

 

「この感じだと鷲の直属護衛軍と殺し合いをして傷を負い、敵対者がいなくなって自傷行為に走ったと言う感じか……」

「うぇ…敵対者がいなくなったら自傷まで始めるってのか?」

「そうだな。流石に鷲のキメラアントにより王の身体に傷痕こそあるが、殺せる程では無いだろう。恐らく普段から共食いとかしてるせいで自身の手足を千切って食べ出し、最終的には自分で自分の頸を抉ったとかいう感じだろうな…この感じだと……」

「やっぱ五大厄災は隔離しなきゃヤバいってのが分かった」

 

ジンは改めて五大厄災の恐ろしさを思い知ったのであった。

 




ヘルベル
…本編での殺意の伝染はこちらにしております。
【条件】
①黒い円の中に入った者へ強制的に殺意衝動を植え付ける。尚操作系念能力とはベクトルが異なるので操作系で操られてようが関係なく伝染する。黒い円の範囲はピトー並みな上に、ベルベル自身は対象指定まで出来るというという敵だけ狂わせることが出来る。
②血や体液を通して殺意衝動が伝染する。
③殺意衝動を持つ者を殺してしまった場合は殺意衝動が殺した相手に乗り移ってしまう。つまり殺してしまうのは悪手。
【効果】
理性を残しながら殺意衝動のリミッターが外れる。イメージで言うと本能的に暴れるのではなく、冷静なまま周囲のいる者をどうしたら殺せるかと思考し、躊躇いなく実行するようになる。
普通に殺気を放つことなく殺害行為を繰り返すクレイジーサイコパスが量産される。
平然と虐殺行為を行い出すので目の前で見てたら人間不信に陥るレベルという感じです。



ローウェル
…狼人最強格の1人で人間に近い外見の亜人種。元ネタはテイルズで黒髪ロングで有名なあの人。ほぼ人間の外見なので頭に狼耳を付けてる感じである。仲間想いだが戦場だろうとピンク髪の副隊長とイチャつく野郎である。
因みに本編で記載したように万全なら直属護衛軍二体喰らったメルエムならタイマンで勝てるが、その前に3日間連続で王討伐三連戦をしたせいで、オーラを消耗していた。

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