無題奇譚〜Untitled tale〜   作:惰眠

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#11「誰が為の異能」

天帝眼(エンペラーアイ)

 

 取り敢えず、これからの行動を決める為に一同は椅子に座った。飲み物は全員お冷のみである。

 椅子に座るなり、茨羽が亮一に眼の事をきいた。それに対して亮一は何故かドヤ顔で応えた。

 

「右目を通して世界を見ることで、脳のリミッターを強制的に解除するってシロモノです。発動すれば観察力、思考力、判断力が強化され、普段は見抜けないことを見抜けるようになる他、神経系の伝達速度も速まり身体能力も向上します。ただ体への負担は非常に大きいんで、あんまり使いたくないんですが」

「なるほどな…」

「天帝眼ね…厨二病感あるなぁ」

 

 もしかしてそっち系のヤツなのかと夜月が逆浪にきくと、逆浪は頷いてから首を横に振った。

 

「名付け親は俺なんで違いますね。ただコイツは阿呆です。頭脳明晰でスポーツも凄い出来ますが致命的な阿呆です」

「なるほど、類は友を呼ぶってヤツだな」

「おいそこの二人、酷くないか…?というか類は友を呼ぶって、お前も阿呆扱いされてるぞ?」

「何を言っているのかね亮一君。俺は元から阿呆だぜ?」

「……………」

 

 亮一は項垂れた。といってもこのやり取りは逆浪曰く「あいさつ」みたいなものらしい…それはそれでどうなんだと一同は思ったが口にせず。

 代わりに赤坂が亮一にこうきいた。

 

「つまり、その眼を使って現場検証をするって事だな」

「はい、そうなりますね」

「現場検証は俺と亮一に加えて、美雪とつばめ、そして高凪に同行してもらいます」

「泊さんだけじゃダメなのか?」

 

 暁月が逆浪にきいた。逆浪は首を横に振り、その疑問に答える。

 

「コイツの異能は万能だが万が一って事もある。だから『予備』として美雪とつばめに同行してもらうのさ。俺と高凪はおまけだ」

 

 その言葉に、美雪とつばめがハッとなる。

 

「そっか…」

「私達も『視れる』から…」

「そういう事」

 

 美雪の異能は視力の強化である。遠くまで見えたり透視紛いの事が出来てしまったりする能力で、これは亮一の取りこぼした情報を拾う役目を担うのにピッタリな異能だ。

 そしてつばめの異能は過去を視る能力。現場の「過去」を視て手掛かりを探すつもりなのだろう。

 

「オレ達はどうすればいい?」

「師匠と茨羽先輩にはめっちゃ重要な役目があります。持てる力の全てを駆使して越月家にアポを取って下さい」

 

 マジかよと茨羽が呟いた。

 

「なんで俺達なんだ?」

「有名人だからです。越月は一応名家ですからね。何処の馬の骨とも知らぬヤツが行った所で無駄になるんで」

「なるほど…まあそうだな」

「…って事は、越月家とやりあうって事か?」

 

 無銘の問いに、逆浪は頷いた。

 

「そうなりますね。夢羽が異能を持っているか否かを確認しないといけないので」

「…わかった。何とかしよう」

「なぁ光氏、俺達は?」

 

 夜月が不満タラタラな顔で逆浪を見た。

 

「体力の温存が仕事です。仮に戦闘があった場合は夜月氏と暁月くんが鍵になるので。イアさんは二人のサポートをしてあげてください」

 

 無銘や茨羽も相当の実力者だが、夜月と暁月の実力はその中でも頭一つ抜けている。なので、もしもの場合は彼らが動く事になる。

 三人は納得した様に頷いた。

 

 全員の役割が決まると、一同は早速動き出した。

 

   *   *   *

 

 二時間後。

 現場検証組は最後の現場―亮一が事件を目撃した場所へとやってきた。

 二時間で五つの現場を回ったが、事件発生から日にちが経っていたせいかめぼしい手掛かりは見つからなかった。一番頼りになるであろうつばめの異能も、制御が上手くいっていないらしく失敗続きだった。

 だが、本命は最後の現場だった。何しろ事件は、今日起こったのだから。

 現場には規制線が張られており、多くの警官が居た。先程喫茶店を訪れた二人組―榎田と治水が居なかったのは幸いだったが。

 一同は警官に見つからないように注意しながら事件現場に近付き、異能を発動した。

 まず手掛かりを掴んだのはつばめだった。彼女の脳内で、現場の過去の情景が展開される。

 一人の酔っ払いが路地裏を歩いている。

 その前に立ち塞がるのは一人の男。

 長身に彫りの深い顔立ちをしていて、その目は(あか)く輝いている。

 男と目が合った酔っ払いはガタガタと震え出したかと思うと、バタリと倒れ、そのまま動かなくなった。

 男は立ち去っていき、その少し後に亮一が現れた。

 

 映像はそこで途切れる。同時に亮一や美雪も何かを見つけた様で、あっと声を上げた。

 

「足跡だ…」

「これ、明らかに男の人のものだよ」

 

 地面には微かに足跡が残っていた。ろくに整備されていない路地裏で、地面は土だったのが幸いした。

 その様子を眺めていた逆浪は、足元に居る黒猫に向けて言った。

 

「見つかったな、証拠」

 

 黒猫はにゃあと鳴く。瞬間、その姿が人間の少女―高凪ちとせへと変化した。

 逆浪は無言でちとせに携帯端末を見せる。メッセージアプリが開かれており、ディスプレイには「アポが取れた」の文字が。ちなみに発信者名は「爬虫類」となっていた。

 

「希望が見えたわね」

「そうだな。反撃開始だ」

 

 逆浪はニヤリと笑う。ちとせも微笑み、それから気になっていた事をきいてみた。

「ねえ、その爬虫類って…」

「師匠だけど」

「………」

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