それでも良ければごゆっくり。
単独スタート
「まさか、本当に当たるなんて…」
雪村聰真は貧乏な高校生。今まで運が良かったことなんて数えられるくらいしかなかったのだがようやく回ってきたようだ。なけなしのバイト代で買った小説についてきた懸賞が見事に当選したのだ。
「メールで来たときはびっくりした。詐欺かと思ったよ。まあ、そんなお金もないんだけど…おかしいな、目の前が霞んできた。始めるか。」
雪村の財布は常に風通しの良いがため、とても持ち運びに便利なのだ。現状を振り返って悲しくなったのか、目には涙が浮かんでいる。気晴らしにゲームを起動させた。
「ゲームなんていつぶりだろう…小学生以来かな?バイトもないし、時間は山ほどあるね。」
雪村はバイト先の店長から働きすぎとの警告を出されていた。勉強も既に準備をしていたがためにやることがランニングくらいになっているくらいである。
「お金は…1ヵ月もやしで乗り切ればいけるか。」
これ以上貧乏話が続いてもだれの得にもならないので早送り
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「よしっと、粗方片付いた。最近のゲームは設定が多くて大変だな。」
残る設定は名前と武器、ステータスのみであった。なお、これらは初めのほうにあったのだが悩みすぎたのでパスされていた。
「うーん、こういうときの名前ってどうすればいいんだろう?本名は流石にまずいだろうし…よし、後回しにしよう。(2回目)」
次に武器の選択に移動すると
「片手剣、盾、弓、杖…実際に使ってみなきゃ何がいいのかわからないしなぁ。まあ、やり直せばいいか。フィーリングフィーリング…」
パッと手に取ったのは自分の身長よりも大きな剣だった。一応雪村の身長は全国平均近くあるので小さいわけではない。。
「よし、これにして…って重っ」
それも当然だ。自分よりも大きな鉄の塊を持っているのだから。そうでなかったら余程の筋肉バカである。
「逆に考えよう、これでステータスは【STR】に多く振る決意ができた。うん、問題はない。」
デメリットを考え過ぎても何かと優柔不断になりがちになる。だから、こういうときは考えるよりも先に行動することを心がけているようだ。
「こんな感じかな、ちょっと重いけどいいか。」
大剣を持ったり離したりしながら【STR】を調整する。他のステータスのことを考えて重いと感じるくらいで打ち切った。次にほかの数値を弄りだす。
「耐久に速さ、あと2つはなんだろう?」
【DEX】と【INT】、普段は慣れない略語に頭を抱えているようで、
「まあいいや、全部均等に振ればいいか。」
という暴挙に出た。
「よし。名前を考えよう。うーん…」
〈しばらくして〉
「よし、マテリアルでいこう」
最近覚えた英単語でたまたま思いついた単語にしたようだ。こうでもしない限り永遠と考え続けることができることが雪村の特徴である。優柔不断の鑑といっても過言ではない。
Lv1 マテリアル
HP 140/140
MP 112/112
STR 30
VIT 15
AGI 15
DEX 15
INT 15
「ふぁーあ、眠くなってきた。後は明日でいいか」
時計は既に設定画面に入ってから6時間経ったことを示していた。
〈翌日〉
「昨日は設定だけで終わっちゃったからなぁ。今度はサクサク進めるようにしよう。」
ちなみにあの調子で進めるとなるとレベル20になるまで通常の人より5倍、第一層をクリアする頃にはトップは既に第三層に手をつけているくらいである。
(当社比較)
「確か、考えるよりも先に行動するんだったっけ?」
誰かの言葉を思い出しながら《始まりの街》へ入り込む。既にかなりの人口がプレイしているようで、ガチ勢ではもう30レベルを超えてしまっているらしい。あくまでもネットの情報なので信用ならないのだが
「よし、早速ダンジョンへ行くか。」
優柔不断は時間の無駄と割り切ったマテリアルは、「ゲームといえば」と考えて真っ先にダンジョンへ行くことを決めた。装備を揃えるわけでもなく、パーティを組むわけでもなく、真っ先に思いついたのはソロプレイである。果たして、うまくレベル上げができるのか?
「さて、ここらでいいかな?」
手頃そうな森に入っていき、ちょうどそこには兎型のモンスターだった。
「うさぎ、か。見た目は可愛らしいけどこういうのって強さと反比例することって多いよね。」
マテリアルよ、それはボス戦に限る話だ。序盤で初見殺しなんて余程のクソゲーじゃないとないぞ(多分)
「先手必勝!」
背中の鞘から取り出した大剣が兎を切り裂く。
昨日のSTR調整による大量の素振りは無駄ではなかったようだ。
「ちょっと罪悪感。いやいや、こんなので止まってたらキリが無い。心を無にして進めよう。」
そういうと、モンスターを見つけ次第倒していくマテリアルであった。
今までのハイライト
兎を倒した。 レベルが上がった。
百足を倒した。 レベルが上がった。
毒蜂を倒した。 レベルが上がった。
その他諸々
「よし、こんなもんかな。」
マテリアルが森に入ってから5時間が経過した。一心不乱、無我夢中に剣を振り続けた結果レベルは24に到達していた。
「ちょっと状況を確認しようか。えっと、ステータスステータス。!?」
驚いたことにステータスが微動だに変化していないのである。いや、これは語弊であった。HPは半分近く減っていた。それ以外のステータスは全く変化していない。
「これって、もしかして…運営のミスかな。」
勘の良い人はお気付きだろう、マテリアル君はVRMMOの初心者、そして旧世代のゲーマー。その上、オンラインゲームは未経験である。ここから導き出される結論は、ステータスは自動に上がるという誤認であった。先程の理由の他にも原因として、隠れゲーマーなこと、ゲーム内でも他人との接触がないことが挙げられる。この時のマテリアルの判断は
「まあいいや、今はまだ困らないだろうし。」
保留、であった。もやし生活のマテリアルにとってこの程度の縛りプレイはもはや縛りにすらならない。
レベル1だって、ある程度までなら戦える。なお、本人のプレイヤースキルが必要なためお勧めはしない。
そう考えたマテリアルは画面を閉じようとした瞬間
「あれ?これは」
おっと、ここでマテリアル選手、ステータスについて気づいたのでしょうか?
「スキルって何?」
残念、スキルでした。
「えっと、全部で3つか。使えるスキルでありますように」
そう念じつつ、スキルの確認に入る。
【探知】
獲得条件
一々周囲を確認しながらモンスターを50体倒すこと
効果
周囲100m以内のプレイヤー及びモンスターの位置情報などがわかる。隠れ道を発見しやすくなる。MP消費で範囲拡大可能。
【新星】
獲得条件
レベル1のステータスのままモンスターを100体以上倒すこと
効果
自己創作スキルの取得権利が可能(1つのみ)
【天邪鬼】
獲得条件
通常プレイヤーのうち0.5%に満たない行動を5回連続で行うこと
効果
スキル等による能力変化が真逆になる。
レベルアップ、装備によるステータス上昇には適用されない。
「うーん、ちょっとよくわからないなぁ。【探知】は文字通りの意味だからパスとして、自己創作スキルって何?文字通りだったら運営とは違うスキルをなんか作ることができるってことかな?あたり…なスキルだよね。」
自己創作スキルとは…
運営の「こんなことするプレイヤーはないだろw」という無意味もしくは不可解な行動をすることによって取得することができる。酒の席で賭け事として設けられた、言い換えればただのおふざけ。制作者のボーナスが賭けられている。
「ほう、説明どうも。いや、酒の席で仕事の重要事項決めちゃダメでしょ…お金も絡んでくるし。まあいいや、その副産物をありがたくもらっておくとしよう。で、次に【天邪鬼】か。これはちょっと納得できないな。」
マテリアルが不満な点は獲得条件の通常プレイヤーのうち0.5%に満たない行動を5回連続で行うことである。
「絶対そんな行動してないし、」
マテリアルの適用された行動
1.設定時、6時間以上時間をかける
2.始まりの街から直行でダンジョンへ向かう
3.回復なしで100体以上のモンスターを倒す
4.5時間以上続けて同じダンジョンに居続ける
5.スキル【新星】の獲得
完全にアウトです。普通のプレイヤーはこんなことはしません。という割には、スキルによるステータス上昇の反転、といういつ使うのか全く見当のつかない効果である。
「【探知】は即採用。【新星】はダンジョン出た後になんとかするとして、【天邪鬼】は一旦保留。使い道があるかもしれない。ん?そういえばさっきの説明で…」
【天邪鬼】の画面を見て重要そうなことに気がついたマテリアル、急に表情が深刻になり始めた。
いや、【天邪鬼】使うのって一体いつに使うんだ。
それはさておき、画面をよく確認して触れると
「増やせる、だと…」
触れているのはステータス、どうやらポイントが振れることにやっと気がついたようだ。
マテリアルは驚いているようだがこれは至極普通のことであった。
「流石に振るか。」
【天邪鬼】の取得は本人にとってはかなりのダメージだったようでこれ以上おかしなことはしたくないようだ。
「そんなに変なことしたのかなぁ…」
本人も少し気がついていた。自分が周りとはちょっと違うことを。まあ。それを本人が誰かに肯定するとは思えないが
現在のマテリアルのステータス
lv24 マテリアル
HP 140/140
MP 112/112
STR 30
VIT 30
AGI 30
DEX 30
INT 30
「よし、これで5つとも綺麗に並んだ。」
というガチ勢には1ミリも理解できないようなところで満足したところを見ると、やはり変わり者のようである。
「さて、戦闘を続けるとしよう。といっても、ここら一帯はかなり倒しちゃたからなぁ。もう少し奥へ行くとしよう。」
森の奥底へ向かっていると、クマが現れた。体長はマテリアルよりも一回り大きく爪はかなり尖っている。
「ちょ、これは」
マテリアルも動揺しているようで頭の中では
(くくくくクマと遭遇したときって、どうするんだっけ。確か死んだフリが有効だったような…いや、ゲームだから襲われるわ。)
としているうちに、クマは雄叫びを上げて攻撃を開始する。
「あー、もうどうとでもなれ!」
大剣を取り出し、クマに向かって一直線に突く。
その一撃はクマの真正面を貫き、クマは倒れた。
「そういえば、ステータスのおかげでかなり動きやすいんだった。誰だよ、ステータス振らなくても困らないだろうって思ったやつ」
お前だよ、ステータスの振り方がわからなかった時のお前の発言だよ。
「それはそうと、なんか出てきた。これは、知ってる。」
モンスターを倒すとたまにドロップでアイテムが出てくるのだが先程までは何故か一つも出てこなかった。流石マテリアルである。
(性格とドロップ率は関係しない模様)
「えっと、指輪か。効果は…」
〈魔除けの指輪〉
モンスターの攻撃を1/4軽減する。状態異常も同様
「これは、なかなか使える方…だよね?」
迷っているようだがこれはかなりの当たりのアイテムで対モンスターには強力なアイテムである。なお、第一回イベントは対人戦らしいので無意味。
マテリアルは左手に〈魔除けの指輪〉をつけた。
〈装備〉
【装飾品】魔除けの指輪
「へぇ、装備に装飾品なんてあるんだ。つけられるのには制限がある、のか。確かに上限なかったら身体中重そうな人が出てくるもんね。ふふ」
マテリアルは1人で腕輪や指輪、ブレスレットなどの装飾品をカンストさせた人を想像したようでかなりツボに入ってしまったようだ。
〈数分後〉
「ふぅ、やっと落ち着いた。そういえば、装備はこれ以外全部初心者用か。まあ、初心者だししばらくはこのままでいいか。買うにも手持ちはそんなにないし。」
そんなことを考えながら歩いていると、とある場所に着いた。
「ここは…」
マテリアルの目の前に広がっていたのは遺跡の入り口であった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。楽しめていただけたら光栄です。次回はボス戦果たして勝てるのだろうか...