翌朝
メイプルが地図通りに作戦を始めた。マテリアルはというと
「うぅん、よく寝た。」
目覚めの良い朝、今度こそしっかり身体も動く。
「出るのか?」
クロムが話しかける。
「はい、昨日の分も働かなきゃ。サリーさんも疲れているでしょうし、皆さんは防衛に集中をお願いします。このあと、すごい数の人が来ますよ」
「ああ、任せた」
「【身体装甲】光」
朝の訪れと共に光が空から降り注ぐ。しかし、それは恵の太陽によるものではなく、次の瞬間プレイヤー達の身体が光に包まれる。
「よしっ、これで5つ目。」
マテリアルの攻撃は奇襲性能が高かった。スピードがあるので相手に気づかれるより早く相手を攻撃し、その上一撃で葬り去る。誰にも見られず、誰にも気づかれず動くその姿はある意味暗殺者の一種なのかもしれない。
「ん?あの毒飛沫は」
毒竜という叫び声がここにも聞こえる。それよりも大きく聞こえるのはプレイヤー達の叫び声だ。
「メイプルさん、調子はどうですか。」
「うん、絶好調だよ。5つもオーブ取っちゃった。」
「奇遇ですね、こっちもですよ。」
ケロッとして言っている2人であるがとてつもなく凄いことである。
「じゃ、これお願い。私の足じゃ遅くなっちゃうから」
「了解、では」
「うん、気をつけてねー」
メイプルの移動手段として機械神の一部を破壊して飛ぶという常人では絶対に気付かないことをやってのけたがそれよりもマテリアルの方が速い。まっすぐ飛ぶ光の方が速いのは当然だ。むしろ、勝てなきゃマテリアルの存在意義が一つ減ってしまう。
「ほんと、追ってこないなぁ」
空を飛び、一直線でギルドへと戻る。あちこちで戦闘が行われている様子でかなり消費しきっているイメージがある。
「って感じなので、こっちに構ってる感じじゃないですね。」
メイプルにオーブを奪われたのだ。普通だったら取り返すに行くのだが真っ向で奪われたオーブを取り戻せと言われてもほぼ不可能だ。
「そうか、私達はしばらく待機だな。」
カスミが少し不満があるような、ないような感じで言う。
「そうだな、防衛はユイとマイで足りるし」
そのご本人達はというと鉄球でキャッチボールをしている。
「すごい違和感のある様子ですね。」
「そ、そうだな」
イズとカナデは武器の点検を行っていた。とは言っても時間がかなりかかりそうなのだが
「じゃ、続けて行ってきます。」
「ああ、気をつけてな」
〜〜〜
新たにもう5つオーブを回収してきたマテリアルはメイプルを回収してギルドに戻っていた。カスミはあの後プレイヤー狩りで【崩剣】と出会い倒したようだ。その他はあまり変化がない。あ、あとはサリーがようやく起きた。
カナデとサリーとマテリアルが話していた。
「やっぱり【集う聖剣】と【炎帝ノ国】が頭抜けてるね。」
やはりと言った口調でサリーが確認する。
ついでに【楓の木】は6位である。
「ちょっと数を減らしに行きます?」
「それはトップギルドのこと?」
「はい、まずいでしょうか?」
「僕は賛成だね。次の展開のためにも大規模ギルドに圧をかけた方がいいと思うんだ」
カナデがマテリアルに賛成する。
「カナデがそこまで言うなら…」
「じゃ、こういう案はどうですか?」
〜〜〜
空を飛ぶ亀、シロップに乗って空高くから地上を見下ろす4名。メンバーはメイプル、ユイ、マイ、マテリアルである。
どうしてこの編成となったかというとメイプルのみでは火力がイマイチ足りないとのサリーのご指摘であった。ついでにマテリアルを入れることで機動力と補強をすることで更に制圧力が上がる。
「見えてきましたね、【炎帝ノ国】です。」
ユイがそういったのと同時に罠が発動し、4人と1匹を襲う。
「【結界】」
咄嗟でマテリアルが防ぐ。その間に
「【身捧ぐ慈愛】」
メイプルが更に防御を固めていく。
さて、今回の【炎帝ノ国】の防衛を紹介しよう。
まずは第一回イベント7位のマルクス。ドレッドやフレデリカからも伝えられたように【トラッパー】である。第一回イベントでは上手く罠を使ったことを隠していたが、後にギルドメンバーが話していた内容から流出してしまったのだ。マテリアル曰く、「人を信用するのは難しい」とのこと。誰だよ…
次に第一回イベント10位のミザリー。【聖女】の通り名を持つその能力はやはり範囲回復だ。しかも、範囲攻撃も得意とする。まあ、今回は攻撃しても無駄になってしまうだろう。マテリアル曰く「10位まではみんなに知られてるんだよね。」とのことだ。個人的な恨み(完全に自分が悪い)を持たれているちょっと可哀想な人である。
4位の【炎帝】と8位の【崩剣】は登場した時にでも紹介しよう。とはいっても、シンとは会敵済みなので説明は省くのだが。今作では不憫なシン、可哀想に。
あとは大規模ギルドの所以の圧倒的な人数がいる。しっかりと盾役や魔法役などと分かれていて統率しやすい。
そんなことはさておき、メイプルと双子が地上に降りたようだ。【身捧ぐ慈愛】は発動したまま、罠をことごとく踏み潰していく。マルクスの準備が台無しとしか言えない。
さて、マテリアルはというと、何故か空高く登っていた。何をするのかというと
「【身体装甲】炎 爆裂炎」
空中からの大規模攻撃である。勢いを増していく炎が【炎帝ノ国】を襲う。ギルド名に炎とあるのに炎にやられていくギルドの図を見たかったのだがしっかりと盾役が抑え、魔法役が障壁で粘っている。流石と言える連携だ。消耗した盾役にはミザリーが回復させていく。
マテリアルの攻撃か失敗しているかといえばイエスとは言えない。この隙にマテリアルの攻撃すらも何食わぬ顔で進んでいくメイプルが刻一刻と【炎帝ノ国】本陣へと近づいているのだから。マテリアルの役割はメイプル達の侵攻の手伝いをすること。せっかくメイプル対策の貫通魔法を覚えたプレイヤーの手が回る気配がない。【炎帝ノ国】の皆さん、これが【楓の木】です。
側から見れば、空から爆撃を受けている【炎帝ノ国】が圧倒的にピンチだ。確かに、一人ずつプレイヤーが散っていく。大損害というに相応しい状態だった。が、彼らの犠牲は決して無駄ではなかった。
「待たせたな」
爆炎と共に現れたのは【炎帝】こと、ミィだった。ギルドメンバー達はミィが来ただけで歓声が上がり、状況が変化する。
「人が一人増えただけ、問題ない。」
自分にそう言い聞かせるも震えが止まらない。第二回イベントがマテリアルのかなりのトラウマとなってしまっているのだ。
「ミィ、何をするつもりですか?」
ミザリーが何か足元を準備しているミィに尋ねる。
「この空爆を止めてくる。【フレアアクセル】」
『!?』
フレアアクセルで上空へと飛んだミィ。しかし、マテリアルへの高度が足らない。しかも、そこに敵の爆炎が襲いかかる。ギルドメンバーでさえダメかと思った瞬間だった。
「は!?そんなのありかよ…」
マテリアルの爆炎を蹴り、利用して更に上へと駆け登る。思わずマテリアルも攻撃の手を緩める。それがダメだった。
「【炎槍】!」
炎の槍がマテリアルを貫き、落ちていく。
「【身体装甲】風 そよ風」
地上付近でなんとか着陸に成功するも、ダメージは負っている。しかも、不意な一撃、クリティカルヒットだ。
「いや、まだだ。もう一度登れば」
もう一度空へ向かっていこうとしたのだが
「貴様の相手は私だ」
ミィが空から豪快に着陸し、マテリアルを阻む。ここからは直接対決だ。
一対一ではあまり強くないマテリアルの方が悪いか…そんなこともない。なぜなら
「【身体装甲】水」
相手が最強の矛ならばこちらは自身の最硬で挑む。属性的な相性も良いのでドローだろう。
「【炎帝】」
ミィは自身の最高火力、マテリアルはというと
「水碧」
水で防ごうとするが、蒸発の方が速度がある。攻撃を直接に喰らってしまった。
「このまま退場してもらう、【フレアアクセル】【炎槍】!」
倒れ込んだマテリアルに容赦なく接近し追い討ちを掛けようとする。が
「【身体装甲】複合 水+風 暴雨の剣」
体勢を立て直し、なんとか【炎槍】を抑える。
「まさか、人間相手にこれを使うことになるとは」
言ってることが完全に悪役なのはさておき、相性不利が故にマテリアルよりもMPを消費しなければならないミィ。長期戦になればなるほど不利となる。速攻で決めたいがマテリアルには隙がなかった。
「【爆炎】」
槍と剣が接しながら、互いに動けない状況でミィが仕掛けた。
「水球」
負けじとマテリアルも攻撃を防ぐ。高水準の技の応酬が続いたときだった。
「くっ、」
我慢比べはミィが先に音を上げた。ミィの欠点として燃費がメイプル並みに悪いところがある。ひとまずはマテリアルの勝ちと思えたのだが
「【リザレクト】!」
ミザリーだった。後援にきたのだ。削れたHPが瞬く間に回復していく。
「私のことはいい、それよりメイプルを」
「回復したところ悪いですがもう一度倒れてもらいます。」
剣から放たれた一撃がミィとミザリーを襲う。もう少しくらい待ってやれよマテリアル。
「【遠隔設置・反射】!」
貫くと思われた一撃がマテリアルの元へと返ってくる。マルクスの罠が発動したのだ。
「【結界】」
結界で防いだが自分の一撃で死にかけるというのは気分が良くない。
「マルクス、お前まで」
「ごめんね、ミィ。でもミィがここでやられるのはもっとダメなんだ」
マルクスは怒られることを承知の上でここに駆けつけたのだ。ミィがやられればメンバー達の士気にも支障が出る。その判断があってこそだったのだろう。
「お前達が抜けたらメイプルが」
止められないと言おうとしたのだがメイプルの方を見ると
「あれを見てもまだそんなことが言えますか?」
メイプル相手に善戦するメンバー達。ノックバックをうまく駆使してユイとマイを追い詰めている。
ここで焦ったのは当然マテリアルである。このままではまずいと思ったのか
「メイプル、ユイとマイを上空に退避させて!」
珍しく大声で叫ぶ。そして敬語も抜けている。余裕のない証拠だろう。
「でも、罠が…いや、大丈夫だね。」
マテリアルの判断で何かを確信したのか、シロップを使ってユイマイを上空へと避難させた。
「さて、もうひと暴れしましょうか。」
その一言で空気がガラッと変わった。プレイヤー達も何か得体の知れない寒気が襲う。
「【毒竜】!」
「【身体装甲】毒 【毒竜】」
2匹の毒竜が【炎帝ノ国】を翻弄する。【毒耐性】がある者はなんとか耐え切れるものの、それ以外には凄惨な結果だ。10位以内の3名も避けるのが精一杯だ。
「一時はどうなるかと思ったよ。」
毒竜の暴れているうちにメイプルの元に合流したマテリアル。メイプルに話しかけられる。
「ええ、全く。想定外の方が多すぎましたよ。」
とはいえ、その更に想定外のプレイヤーが隣にいる。
「皆、撤退だ」
ミィもギルドメンバー達の元へ戻り指揮する。
「しかし、」
一人が反対意見を言おうとしたが
「大丈夫、僕たちでなんとかするから」
「皆さんは最悪の事態を考えて下がっていてください。これ以上無駄な犠牲は出したくありません。」
マルクスとミザリーの言葉で引き下がらざるを得なかった。
「2人とも、いくぞ」
3人を残して全員を退避させた【炎帝ノ国】の反撃の時間だ。
作 「キリが悪いけど、本日はここまで。」
マ 「え、めっちゃ中途半端じゃないですか。もっと戦わせてくださいよ。」
作 「ここから先、書き直したんだよ。元々なかった展開だから作るので手一杯なんだ」
マ 「マジですか。」
作 「うん、マジ。本当は変なオリキャラ混ぜてたけど途中で訳分からなくなっててやめた。」
マ 「だから【炎帝ノ国】を強化したのか。なるほど。」
作 「そう、ちなみにシン君は君のせいで8位に降格してるから。」
マ 「では、また明日。」