「始めましょうか。」
戦場には【楓の木】はメイプル、マテリアル。【炎帝ノ国】はミィ、マルクス、ミザリーが残っていた。ユイマイもシロップに乗せて一足早く撤退させている。ここから先は尋常ではない戦いが始まるのだから。
「行くぞ、【炎帝】!」
挨拶代わりのミィの一撃。二人を飲み込む炎は
「【悪食】」
闇夜ノ写によって吸収された。
「【毒竜】!」
メイプルがお返しに威力が増加した毒竜で攻撃する。
「【遠隔設置・反射】」
マルクスが毒竜を抑えようとするも
「【結界】」
罠ごと結界で覆われ、無力化された罠は毒竜に始末された。毒竜をなんとか避けた3人だがミィのMPが前話のギルドメンバー退避のためにかなり消耗している。
「今、回復を」
ミザリーは回復魔法のスペシャリスト、HPにMP、状態異常まで何でもできるらしい。早めに倒しておきたいかなめだ。
「どうする、マテリアル。このままじゃこっちが押し負けちゃう。」
「あれ、使っちゃいましょうか。」
「え、本当にいいの?」
「はい、背に腹はかえられないですから。」
これが、結界で相手の攻撃をものともせずに行なっているやりとりだ。もっと緊張感を持ってくれ。そんなことをしているからか
「【火炎牢】」
「「え?」」
メイプルを中心として天に向かって炎が伸び、メイプルは炎の壁で囲われた。唐突に結界が解除され、二人にスリップダメージが入る。
「これで迷いはないですね?」
「うん、わかった。【全武装展開】」
敵三人の前でメイプルの姿が変わっていく。ガシャガシャと音を立てて出来上がったのは全身武装のメイプル。マテリアルは自力で牢から出たのだが炎の姿でいればおそらく定数ダメージはなかっただろう。
メイプルに今のままでは勝てないと判断させたことにより、また一つの枷が砕けて散って新たな力が解放された。
「今度は……私が攻撃するよっ!」
そんなメイプルを見て一度退避したものの
「マルクス、どう思う?」
「無理……あれはむーりー……」
「私もそう思います……あれが奥の手だと思うので、見ることが出来ただけ良いといったところですね」
二人の意見を聞いたミィは少し悔しそうに話し始めた。
「……仕方ない、負けだ。だが、ただでは負けない」
ミィは青いパネルを出すとギルドメンバーに素早くメッセージを送った。
「行くか」
「そうですね」
ミィはミザリーとマルクスを連れてその場を離れようとする。しかし、ミィのそれとは段違いの爆発音に思わずその動きを止めて音のした方を確認してしまった。
「みーつけたっ!」
マテリアルの【探知】で居場所を伝えてもらったメイプル、最大速度で3人の元へ追いつく。そして、ミィが【爆炎】を放つよりも早く、剣と化したメイプルの左腕がミザリーを貫いた。
「くっ……!」
「【刀剣展開】」
メイプルの左腕からさらに追加で武器が展開され次々にミザリーを貫いていく。
冷静な思考が戻らないうちにメイプルはミザリーを光に変えた。
「【爆炎】!」
ミィがメイプルを弾き飛ばし、マルクスの手を掴んで【フレアアクセル】で逃げようとする。
だが走り出したミィの速度を追い抜いて、メイプルが迫る。
メイプルは自爆による勢いのままにマルクスの背中から剣を突き刺した。
ミザリー同様追撃の剣が追加で腕や足を貫いていく。
「あ……」
マルクスは胸元から突き出た大きな剣を見て、諦めたように目を伏せ散っていった。
「くっ……MPが……!」
ミィの燃費はメイプル並に悪い。
【フレアアクセル】を使い続けて駆けつけた上に大技をいくつか使っていたミィは【アイテムポーチ】の中にポーションが残っていなかった。
魔法は使えてあと一回というところだ。
「……【自壊】!」
ミィは逃げる姿勢から一転メイプルに接近すると背中側に回って密着した。
「えっ……!道連れ狙い……!?」
ミィの体を炎が覆っていく。そして、それはメイプルにも燃え広がっていく。これがミィの今できる最大威力の必殺技だった。
凄まじい爆発音と共にミィは散っていった。が
「びっくりした。いきなり自爆してくるなんて」
いや、武装展開しているメイプルも思いっきり自爆してますけど。メイプルは痛くも痒くもなかったようだ。
さて、オーブを取りに向かったメイプルなのだが
「あれ…………オーブを持って逃げた?」
先程、ミィの判断によってメンバーがオーブを持って逃げていたのだ。それを受けたメイプルの反応は
「まあ、予想通りだね。マテリアル。」
誰もいない方向に向かってつぶやく。当のマテリアルは
「ふぅ、結構疲れた。」
足元には【炎帝ノ国】が何十人も光に変わっており、その手にはメイプルが取ろうとしたものがあった。
マテリアルは【火炎牢】を脱出した後、真っ先にオーブの奪取に向かっていた。メイプルの新技に気を取られていた3人には気づかれないことであった。
「良くも悪くも、メイプルさんの方が目立つってことですか…」
不満があるようなないような、そんな声で言う。
「まあいいや、何かあったら嫌だし合流しよう」
〜〜〜
光の姿のマテリアルがメイプルの元へと戻る。
「よかった、回収できたんだね。」
手には【炎帝ノ国】のオーブがある。
「はい、首尾はどうですか?」
「もちろん、仕留めさせてもらったよ。」
「なら、安心です。戻りましょうか。」
「うん。」
機械神の姿でそのまま爆発移動しようとしたメイプルだったがマテリアルに止められる。
「武器が勿体無いですよ。捕まっててください。」
「わかった」
というと、メイプルはマテリアルの手を掴む。はい、本拠地まで割愛。
〜〜〜
「お疲れ様、流石だね。」
サリーが出迎えに来てくれたようだ。
「サリーも体調が治ったようで良かったよ。」
「現状はいかがでしょうか?」
「うん、まずまずってところかな。この調子だったら【楓の木】の十位以内は堅いと思うよ。」
「そう、ですか。」
中に戻るとカスミとカナデ、クロムは既に出払っていた。ユイとマイは防衛の準備、イズは武具の生産をしていた。
2日目も日が落ち始め、メイプルも元気を取り戻した頃
「じゃ、次の作戦に移りたいんだけど…マテリアル体調悪いの?」
通常では表情がほとんど変わることのないマテリアルが少し具合が悪そうである。
「何ですか…装備なら万全ですよ」
会話が成り立たない。かなり疲れているようだ。
「疲れてるなら休んだほうがいいよ。昨日から働きっぱなしだったし」
サリーに身を案じられ、防衛に残されることとなったマテリアル。これが単なる疲労だけだったら良いのだが…
「本当に大丈夫かしら?」
防衛組のイズとカナデが話し合っていた。オーブの周りで結界を張ってぐったりとしているマテリアルを見て。
「本人も気にしないでくださいって言ってたし、僕たちは防衛に集中しよう。おっと」
噂をすればなんとやら、入り口からぞろぞろとプレイヤーが入ってくる。
プレイヤー達は遠目で二人の装備を見て生産職と後衛であることを把握した。
「いけるぞ!前衛無しだ!」
剣と盾を構えたプレイヤー達が前線を上げ始める。
「さて、やりましょうか」
「そうだね」
イズは両手に爆弾をカナデは浮かぶ本棚をそれぞれ出した。
この後、プレイヤー達が油断したのを後悔するのは少しだけ先の話。
さて、場面は打って変わって【集う聖剣】では
「よし、皆準備はいいな?」
ペインが【集う聖剣】の精鋭、十数名を率いて【楓の木】に侵攻しようとしていた。彼らにわざわざメイプルを倒す必要性は微塵もない。が、ペインを含めた数名は【楓の木】と戦って勝利したいという単純な欲求があったのだ。ランキングに大きく影響することはないにしろ、少なからずは良くも悪くも変わるかも知れない。
「では、行くぞ」
【集う聖剣】と【楓の木】への道のりは長い。運営もこのカードを早めに切りたくなかったのか、敢えてやったのかも知れない。全ては神のみぞ知るだ。
ペイン達は防衛が少し不安定になるために、昨日のようにまぐれでオーブを取られないように完全な配慮をしている。しかも、自分たちの我儘で行っていることなのでより一層細心の注意を払っているようにも思えた。
作 「次回は【集う聖剣】が襲ってくるかな」
マ 「2日目忙しすぎやしませんか?」
作 「大丈夫だ、4,5日目はボーナスステージみたいなものだから。」
マ (嘘にしか聞こえない。)