3日目も日が暮れ始めた。
メイプル達は無事、あの混沌から拠点に戻った。むしろ、混沌を創り出していた方なのは置いておいて。オーブをいくつか奪ってきたものの、拠点内は静寂そのもので皆ゆっくり休んでいた。
「サリー?何見てるの?」
メイプルはサリーが青いパネルを空中に出しているのを見てサリーに近づく。
「んー?ああ、えっと……凄いことになってるなあって」
「凄いこと?」
メイプルがサリーの出しているパネルを覗き込むとそこにはランキングが映っていた。
そしてそのランキングにおいて今までと違う所は壊滅している大規模ギルドがあるということだった。
「あ、また一つ……これは【集う聖剣】か【炎帝ノ国】が暴れているのかも、うん、多分」
「【炎帝ノ国】ですね。これ以上は戦えないから道連れにしてるんでしょう。ありがたい」
サリーの思惑通り、【炎帝ノ国】が大規模ギルドを殲滅している。これで【楓の木】の10位以内も安泰だろう。
「じゃあもう外に出ていく必要は?」
「まあないよね」
サリーがそう言うとメイプルはにっこりと笑いつつ座った。
「今回は今までで一番頑張ったから……ほんと疲れたなあ」
「あれ?マテリアルどうしたの?」
「いえ、何でもないですよ。ちょっと外の空気を吸ってきます。」
現状、全員の疲労が蓄積しておりぐったりとしている。これ以上戦わせるのは危険だ。そんな中
「本日は店仕舞いですよ。帰った方がいいです。」
「君が出てくるなんてねー、あ、初めまして。私はフレデリカ。よろしくね。」
「サリーさんに喧嘩を売りに来たなら代わりに買いますけどいいですか?」
「あー、待って待って。今日はね、提案しに来たの。」
「提案?」
「ほら、ペインがねメイプルに負けたのどうしても納得いかないらしくてね。再戦したいらしいの」
「結果はかわらないと思いますよ。」
「私も言ったんだけど、ああなったら止められなくてさ」
それでいいのか【集う聖剣】…
「ほら、ハンデでこっちは全員一回死に戻ってるからさ。」
「はぁ、それでいいと思ってます?」
「!?」
次にフレデリカが見た光景は予想外以外に形容し難いものだった。
「ちょっと待っててくださいね。」
落ち着いた声とは裏腹に、マテリアルの腹には氷の破片が突き刺さっていた。みるみると減少していくHPゲージ。それはフレデリカがあまりの驚きで動けない間にマテリアルは倒れた。
(え…どういうこと?敵襲、いや、さっきのは確かにマテリアル自身の技だったはず…どうして自滅なんかしたんだろう?)
マテリアルが戻るまで割愛
〜〜〜
「ふぅ、お待たせしました。一度死ぬだけでもちょっと調子が変ですね。」
「さっきのはいったい?」
「あー、そちらだけステータスが下がっているのは少し申し訳ないと思ったので一度倒れさせていただきました。」
「そ、そんなことしなくていいのに」
「え、もしかして足りないと」
人の話を聞くつもりのないようだ。あの後3回死んだ。
「ちょ、待って。これ以上はもういいから。」
「ルールを教えていただいてもよろしいですか?」
「うん、ルールは」
ルールと決定事項
・4対4の勝負
・場所は【炎帝ノ国】跡地
・【集う聖剣】からはペイン、ドレッド、ドラグ、フレデリカが選出
・【楓の木】からはメイプル確定選出
・条件を飲めないなら【集う聖剣】が総攻撃
・時間はイベント4日目正午
・勝利条件は相手の全員が戦闘不能及び降参したとき
「なんか、私の出番飛ばされた気がしたんだけど」
「…わかりました。でも、うちのギルドマスターにも聞かないといけないので夜にでも連絡します。」
「うん、前向きな検討よろしくね。」
〈以下を連絡〉
「面倒なことに巻き込まれたね、マテリアル。」
サリーに言われる。
「それより、誰を選ぶ?」
カスミが口を開いた。
「私は確定なんだよね…」
メイプルが少し残念そうに言う。まあ、選ばれたと言われれば嬉しいが強制されたのは話が別だ。
「さっきの話じゃ、マテリアルも出したほうがいいよな?」
マテリアルの4デスによってハンデが帳消しということになっているので選出はするべきだ。
「私も出る。」
サリーが手を挙げた。
「サリーさんただでさえ疲れていますし」
サリーの戦闘スタイルはかなり自身に負担をかける。わざわざ自分から行くのは止めておきたいのか
「いいよ、それにフレデリカも出るんだからさ。」
対抗意識なのか、火がついてしまったようだ。となると後一人は…
「仕方ない、私がやろう。」
カスミだった。
かくして、メイプル、サリー、カスミ、マテリアルという第二回イベントの並びとなった。
「俺が出てもメイプルに役割を取られるからな」
「そんなことはないですよ、メイプルさんは【暴虐】だの機械神だので盾役に専念できない場合だってありますから。需要は十分あるはずですよ。」
マテリアルがフォローしようとしているのだがこれはフォローしていると言っていいのだろうか?いや、メイプルの強さを際立たせているだけであった。
「何かあった時のために防衛は必要だから、ユイとマイとクロムで安定するわね。」
イズがクロムに励ます。マテリアル、これが見本だと言わんばかりに。まあ、攻めてくるギルドなんてほぼないに等しいと思うけれど。しかも、十位以内ももう確定しているけれど。
4日目正午
【炎帝ノ国】に集まった強者8名。運営もどこからか聞きつけたようでしっかりと録画をしようとしている。
「さて、始めようか。」
ペインの一言で空気がガラッと変わる。画面の向こう側で見ている観客にもそれが伝わるくらいに。
【集う聖剣】の作戦はこうだ。メイプルの強さは前回身を持って分かった。だから、倒すのは先送りしたようだ。当然、4人の中で1番柔いのは
「【神速】」
「【流水】!」
サリーだった。先にサリーを全員で総攻撃して倒そうと言う魂胆である。
ドレッドの目に見えない攻撃にも反応し、ダガーで攻撃をいなす。
「【土波】!」
しかし、すかさずドラグが追撃する。
「【身体装甲】砂 砂上の楼閣」
迫り来る衝撃が和らげられ、サリーのところに来る頃にはダメージは既になかった。このままマテリアルはドラグを抑える。
「【身体装甲】炎 火炎の斧」
力と力のぶつかり合い、純粋な殴り合いではSTRの負けているマテリアルに勝ち目はないのだが
「なっ!?」
放たれた炎を打ち消そうと一振り、それが仇となり炎が崩れて爆発する。マテリアルが勝つには力技にも戦略を混ぜ込まなければならなかった。
【集う聖剣】がサリーを狙うなら、【楓の木】は全員でサリーを守るまでだ。
「【一ノ太刀・陽炎】」
カスミがペインに向かって攻撃を開始する。ペインは何とか剣で受け止めたものの、カスミは攻撃する間を与えない。次々と攻撃を繰り出し、ペインを追い込んでいく。
「くっ…【破砕ノ聖剣】!」
「【三ノ太刀・孤月】!」
カスミが空中で避ける。その一瞬だった。
「【超加速】」
ペインは走った。しかし、カスミではなく
「!?」
フレデリカの遠距離攻撃で避けていたサリーを仕留めんとしたのだ。
「【カバームーブ】!」
メイプルが必死の速度でペインを止める。咄嗟の判断で移ったのだが
「今だ、フレデリカ!」
「オッケー、すぐに決めてよね。」
フレデリカが全能力を使ってバフをかける。当然、咄嗟で動いたメイプルにそれを対処する余力は残ってなく
「【断罪ノ聖剣】!」
光と共に斬られていく。ペイン達の目的はこれだ。【カバームーブ】は通常の2倍のダメージを受けてしまう。これならいくら硬いメイプルでもかなり削れると言うのだ。そして、メイプルが倒れたかに見えた。
「【天邪鬼】発動 【身体装甲】鋼 水晶の大槌」
(なっ、4デスして半分のステータスしかないのにどうして俺の攻撃を…)
ペインの脳裏をよぎったその考えは次の瞬間どこかへ消え去り、残ったのはこの化け物への対処法を考えるだけであった。
Lv.60
HP 208/240
MP 192/212
STR 1140
VIT 190
AGI 285
DEX 570
INT 285
【絶対防御】の反転でVITを半分、それ以外を3倍
【身体装甲】鋼でSTR,VITを2倍、AGI,INTを半分
そして、4デスのステータス降下を【天邪鬼】で反転させて2倍にしたのである。お陰でSTRは今回限りの4桁という化け物クラスとなった。
というのを、同じく【探知】を所有しているペインのみがわかった。メイプル並み、いやステータスだけならメイプルよりもゾッとする。1番低いVITですら3桁を超えている。【集う聖剣】4人はメイプルが化け物化したときの作戦を今使った。それは、
「【多重加速】!」
フレデリカの支援による一時撤退、4人がバラバラに移動することで時間を稼ぐというのだ。メイプル対策にはもう少し細かいものがあったのだが今はそれどころではない。
「【身体装甲】光 光剣」
マテリアルはペインを追った。それは、やはり【集う聖剣】の中ではペインが1番厄介だからであった。
距離を取られたペインに追撃をする。速さは尋常ではないのだがそれ以上に威力も馬鹿げている。一発でもまともに食らったら即アウトである。
「まだだ、【退魔ノ聖剣】!」
数の暴力を最小限に攻撃を抑え切る。しかし、流石のペインでも全ての攻撃を対処できずにダメージを蓄積していく。ここまで来たらマテリアルのMPが切れるまで耐久する他ない。
〜〜〜
「はぁ、はぁ」
満身創痍のペインに比べて、余裕があるマテリアル。だが、マテリアルのMPは残り3割を切っている。
「あと、少し」
ペインは自身を鼓舞し、マテリアルに立ち向かう。
「ここまでとは、想定外でしたよ。でも今度こそ終わりにします。【身体装甲】闇」
❇︎【身体装甲】闇 全能力を1.5倍。使用時間は10分間
闇に包まれたマテリアルは暗く、周りの光を吸収しているように見えた。
「くっ、まだ本気を」
「暗黒星雲」
光を遮ってのみ存在できるその姿はペインにとって正に天敵であった。闇は光を吸収するがために引き寄せる。重力の力場ができた。
「これは…」
一瞬だった、気を緩めたその瞬間にペインはマテリアルの目の前にいた。
「闇ノ枢軸」
ペインの身体を漆黒より黒い闇が喰らい尽くす。
「では、おやすみなさい。」
ペインはその一言を聞き目を瞑った。
ここからはあっという間だった。光に切り替えたマテリアルがドレッドをスピード対決で勝利し、メイプルも機械神でドラグを倒した。フレデリカはというと、またもやサリーにやられてしまった。
マテリアルはステータスがバグレベルで3人と合流するのであった。
作 「ふぅ、最後は思いっきり完全燃焼できたみたいだな、マテリアル。」
マ 「はい、全力でやり切れたと思います。」
作 「心残りも無いわけで次回はエピローグ書いて本編終了です。」
マ 「ここまで閲覧ありがとうございました。最終回はドキドキハラハラする2本立てだそうです。」