「ここは…」
ダンジョンの奥深くにある大きな扉、その扉の先にはボスがいる。それは初心者のマテリアルにもわかることであった。
「HPはさっき落ちてた回復ポーションで問題なし、疲労は溜まってるよりも調子が上がってきてるくらい…うん、いける。」
そう自分を鼓舞し、扉を開けたマテリアル。その奥に潜むのは…
「鎧の、竜?」
そこにいたのは全身を硬い鱗で覆った竜。しかも、マテリアルよりも何倍も大きい。扉を閉めた音によって眠りから覚めたのか怒号する。
「あ、【探知】」
ハッと思い出し、【探知】を使う。敵の大まかなステータスや状況がわかる。
鎧竜
HP 2100/2100
MP 530/530
STR 450
VIT 350
AGI 15
DEX 15
INT 200
「………知らない方が良かったかも。」
絶望的なまでのステータス差を確認したマテリアル。
AGIとDEX以外全て負けている。STRに至っては15倍までの差がある。ここからどうするのか
「戦うか、逃げるか…」
鎧竜は戦闘準備をしているようで身体の模様が変わり始めた。
「鉄?」
どうやら準備が完了したらしく、既に扉は固く閉められている。もう、逃げる機会は失われた。しかし、
「どうすれば勝てるかな?」
初めから逃げるつもりはなかったようだが退路は取っておきたかったようだ。そのままマテリアルは剣を構えた。そして、
「もらった」
竜の首元まで跳び、大剣を一振りし勢いのまま降りる。
「やったか?」
マテリアルよ、それは完全なフラグだ。
「あー、はい。全然元気そうですね。そりゃまあ、HPもVITもあんなもんじゃできないか。」
むしろ、文字通り逆鱗に触れたのようで攻撃を開始し始めた。その爪でマテリアルを捕まえようとする。だが
「ちょ、危なかった。」
咄嗟の判断で鎧竜から離れた。結果、攻撃を避けることができた。
「攻撃を全部避けられれば勝てるはず」
鎧竜は鱗を発射させるも、装填までに時間がかかる上に方向までがわかりやすい。速さが遅すぎる。
「これなら、問題ない…!?」
油断したマテリアルの脇腹に一片の鱗が当たる。当たった部分からは少なからず赤いエフェクトが飛び散る。
「速度が変わった、のか?いや、違う」
装填までの時間は変わらず、発射の時間をズラすことにより判断を鈍らせたのだ。その上
「数が多すぎる、これじゃ近寄れない。」
マテリアルがボスとの打ち合い(一方的な攻撃)をなんとか乗り切っているのは鎧竜とかなりの距離を取って遠距離攻撃への判断する時間を作っているからである。マテリアルは初めて間もない初心者なので遠距離系の魔法などは覚えているわけがない。これではジリ貧だ。
「っていうか、こんなの要塞でしょ。デメリットなしでこんなのを打つのって…ッ!?」
マテリアルは相手の攻撃を見切れないかと【探知】を発動させると驚くことに
「さっきよりも耐久値が減っている。もしかして」
鎧竜の鱗攻撃は自身のHPとVITを費やして打っていたのだ。これを確認するや否やマテリアルは
「持久戦だ。」
〈しばらくして〉
「よし、やっと半分。」
ようやく鎧竜のHPを半分まで削り切る。対するマテリアルはなんとか8割近くに抑えている。
「相手の動きが遅くて助かった。」
単純な考え方でマテリアルは鎧竜の2倍の速さで動ける。その上、巨体なため動きが見切りやすくマテリアルはなんとか生き残れている。心なしか、鎧竜の大きさも少し小さくなったように見える。心に余裕が生まれたからであろうか。
「さて、残り半分。集中力を切らさないように」
と言った瞬間、鎧竜の身体が光り始める。
「ちょっと待って、それは聞いてない」
そして、洞窟中が光に包まれた次の瞬間、轟音が鳴り響く。
「!?」
そこにいたのは姿の変わった鎧竜であった。大きかった身体は人間並の大きさになり、身体が光っている。
鎧竜は錯覚ではなく、本当に小さくなっていたのだ。自身の身体を削ることによって新しい姿になるために。
咄嗟に出した剣で攻撃を防ぎ切ったものの、余波によってかなりのダメージを負ってしまった。8割近くあったHPが半分を割っている。その上、大剣もボロボロでいつ壊れるかもわからない。所詮は初期装備だ。
「落ち着け、状況把握が先だ。【探知】」
HP 1050/2100
MP 200/530
STR 255
VIT 35
AGI 320
DEX 35
INT 255
【形態変化】
HPが変化すると姿が変わる。
「あれ、なんか色々変わってない?なんか、スキル見え始めたし。」
思いがけない変化に驚く。初見のプレイヤーは大体こうなり、ギャップで負けてゆく。が
「いや、ここは楽観的に考えよう。防御がかなり低くなった。一撃でも強力な攻撃が当てられれば倒せる、はず…」
と、最初と同様に自身を鼓舞する。
その時、鎧竜は光の剣を作り出し、切りかかったてきた。
「速すぎるでしょ」
マテリアルよりも10倍ほどの速さで動いてくる。当然、いきなりマテリアルの目の前に立ってくる。これでは普通の攻撃はもちろん、奇襲は決まらないだろう。
かくいうマテリアルも相手の剣を押さえ込み、蹴手繰りで相手の姿勢を倒す。その勢いで光剣は鎧竜から離れた。
「終わりだ!」
だからフラグを立てるんじゃない。
当然の如く、大剣を振り下ろす間もなく鎧竜は上空へ飛び去る。
「飛行も可能か。」
しかし、その手には光剣がない。既にマテリアルが手に取っている。ボロボロだった初期装備を外し、身軽になったマテリアルは先程よりも素早く動けるようになる。
「これ、随分と軽いな。」
光だけにライトな剣のようだ。
光剣を手に取り、構え直す。大剣よりも小さいが断然使いやすい。
しかし、それを馬鹿にするかのように鎧竜は多量の光剣を作り出す。放たれた光剣はマテリアルを集中放火する。絶望的かと思いきや
「良かった、動き方は変わってないみたいだ。」
マテリアルは相手の攻撃を見切って全て攻撃を避け切り
「食らえ!」
近くに落ちていた光剣を鎧竜に投げつける。
それは、鎧竜にあたりこそしたがかすった程度で有効なダメージにはならない。マテリアルはその場に落ちている光剣を拾い直し、また構え直した。
〈しばらくして〉
「はぁ、はぁ」
残りHPが残り1割弱になった双方、次の一撃で勝負が決まると言っても過言ではない。
「大丈夫、状況は把握した。」
マテリアルの負け筋としては、多量の光剣に身体を貫かれることである。一本ではほとんどダメージにならないのだが攻撃が上がるたびにダメージが増すようだ。
技スキル
【追撃】
攻撃が連続で当たれば威力が上がる。初発の威力は本来の1/4になるが2回目以降はその2倍に増えていく。
※技スキルは技のみに反映されるスキルのこと。この場合は〈光剣〉のみを指す。
そのため、威力が低めの大量の光剣がほぼ休憩なしで打ち続けられる。一瞬でも気を抜いてしまったら蜂の巣だ。
他の負け筋としては、鎧竜が更に変化を遂げたときである。
そして、マテリアルの見つけた弱点は2つ。1つはゲームならではの複雑な攻撃が出来ず、単調になってしまうこと。もう1つは……
「結界!」
マテリアルが叫ぶと、マテリアルの周囲1mほどに壁が張られる。
スキル
【結界】
獲得条件
自己創作スキルより
効果
自身のMPを使用することにより、敵の攻撃を弾く、もしくは防ぐ壁を作り出す。使用したMPとその時のVIT、INTの値に比例して結界は強くなる。
「間に合ったみたい。もしもの時のために申請しておいて助かった。」
マテリアルは遺跡の前で自己創作スキルを申請していた。どうやら、戦いの最中でそれが認定されたようであった。
「鎧竜の攻撃じゃ結界を壊すことはできない」
結界は攻撃1つずつに反映されるようで、強力な一撃を撃たれれば消え去ってしまうものの一撃が軽ければ壊れないのだ。
当てはめてみると、鎧竜が結界を破壊できる一撃を撃たなければ結界は破壊されないということである。そのため、大量の光剣はただのお飾りであり、結界の前では無力となる。
仮に、結界を破壊できるダメージ分の攻撃を何回かに分けて撃っても、一発一発で結界が壊れるか判断されるので結界は破れることはない。
「さて、あとは強い一撃を回避しながら相手のMP切れを狙う。」
鎧竜は【結界】の仕様に気がついたようで、光剣の生産を打ち止める。そして、先程よりも大きな光剣で結界に斬りかかる。
結界は壊れた。
しかし、マテリアルは未来を見たかのように鎧竜の攻撃をいなす。
「接近戦になると思ったよ。それなら、こっちが有利になる。動きは読めてるんだよ」
所詮は第一層、実質チュートリアルのボスの攻撃パターンを覚えることなんて難しいことではない。
〈少しして〉
互いにノーダメージでの攻防戦が続いたのだが
「はぁ、はぁ。」
相手の攻撃を見切れるものの、疲労が溜まってきたマテリアルはついに膝をつく。鎧竜も削れてはいるが、マテリアルのように身体的な疲労はない。
鎧竜は絶えずマテリアルに攻撃を続ける。
「はぁ、はぁ、まだだ…」
鎧竜の攻撃は全てマテリアルに読まれている。動くための少しの力さえ残っていればマテリアルが負けることはない。
急にマテリアルから距離を取り始める。
「何を、するつもり」
鎧竜は自身も輝きながら、光の大剣を作り出した。
「これは、防げない」
どこにどう避けてもダメージは避けられない。逃げ場も既に失われている。マテリアルにこれから避ける術はない。
鎧竜の怒号と共に、光の大剣はマテリアルに襲いかかった。
「でも、それは効かないんだ。全MPを消費、完全反射」
結界の細分化されたスキル、反射は全MPを消費するがどんな攻撃でも跳ね返す壁を作り出す。なお、反射できる回数は一回のみ。
「こっちの、勝ちだ。」
〜〜〜
「ふぅ、なんとか勝った。」
鎧竜は倒れたようで、報酬の宝箱が目の前に置かれている。
マテリアルは立ち上がり、宝箱を開いた。
しかし、その中身は空であった。
「ちょ、それはないだろ…あいつ倒すためにどれほどの労力を使ったと思ってるんだ」
残った体力で静かに怒る。気晴らしがてら、上がったレベル分のステータスをあげようとしたそのとき
「スキルの、獲得?」
宝箱の中身はなかった、のではなく既に拾っていたようであった。
「【追撃】と【身体装甲】?」
【追撃】は前のを参照していただきたい。簡単に言うならば、最初の威力が下がってだんだん上がっていくスキルだ。適用技数は1つのみ。
「さて、問題は【身体装甲】だ。文字だけ見ればかなり強そうに見えるんだけど、どうだ?」
【身体装甲】
獲得条件
一人で鎧竜を倒しつつ、戦闘開始時に使用できるスキルが一つのみであること。
効果
身体に各種属性を纏うことが可能。それに従する攻撃もできる。MPの1/10を随時使用、熟練度により消費MP軽減
現在所有の属性 鋼、光
獲得条件からの説明をしよう。マテリアルの保有していたスキルは【探知】、【新星】、【天邪鬼】の3つであったが、【新星】は運営側に返しているため、【天邪鬼】に至っては採用していないのでカウントされなかったのだ。【結界】が届いたのは戦闘開始してからかなり時間が経っていたためすり抜けられたようである。
「なるほど、結構いいスキルな気がする。だって、各種属性って炎とか水とかもできるはずだし。うん、これは強い…と思う。」
予想外のことが起こりすぎて疑心暗鬼になってしまっているマテリアル。そう簡単には信用しないようだ。
実際、このスキルは運営が手に入るとは思わなかったスキルの一つである。そもそも、1つしかスキルを持ってないのは普通はあり得ない。敵を倒せば何かしらのスキルは手に入り、それらは大抵採用される。それ以前に、スキルを街で買うことすらあるだろう。
「MP回復してっと。試しに、【身体装甲】鋼」
マテリアルの身体に鋼の鎧が現れる。中世の甲冑のような見た目だ。そして、手には
「まさか、武器もついてくるなんて。ちょうど欲しかったんだ。」
Lv.24 マテリアル 【鋼の鎧】
HP 12/140
MP 39/112
STR 60
VIT 60
AGI 15
DEX 30
INT 15
装備
【右手】鋼鉄の剣
【左手】鋼鉄の盾
【身体】黒金の甲冑
【靴】アルミブーツ
追記 鋼の姿のとき、STR,VITが2倍になり、AGI,INTが半分になる。
「いや、なんで靴だけアルミなんだよ。まぁ、動きやすからいいんだけど。ステータスが変わってる、確かに少し動きにくい。もう一つは…」
Lv.24 マテリアル 【光の鎧】
HP 12/140
MP 28/112
STR 15
VIT 15
AGI 60
DEX 30
INT 60
装備
【右手】なし
【左手】閃光槍
【身体】光速の鎧
【靴】輝くスニーカー
追記 光の姿のとき、AGI,INTが2倍になりSTR,VITが半分になる。
「なるほど、ステータスは変わると。」
驚愕しつつ、少し喜ぶ。槍からも何かできないかと試してみると槍が光出す。
「発射」
大声で叫んでみるも変化なし。しかし、そのまま槍は光り続けている。
「どうやったら止まるのかな?一度素振りでもしてみるか。」
そう思ったマテリアルは槍を岩に向かって空振る。すると光がとてつもない勢いで飛んでいき、岩を砕く。
「この槍、岩に何か恨みでもあるのかな…」
そんなわけもなく、ただマテリアルが武器を使ったからである。
「でも、これでかなり戦いやすくなった。これなら飛べる気すらする。」
と言い、軽くジャンプすると宙に体が浮く。
「え、本当に飛べるのかよ。」
〈しばらくして〉
「飛ぶのにもやっと慣れてきた。やっぱりこれでかなり強くなったと思うし、他のボス戦も行ってみるかな。やっぱり、ゲームは周回が大事だからね。」
そして第一回イベントへ続く
作 「さて、なんとかボスを倒せたマテリアル。次は第一回イベント、どこまで順位を伸ばせるのでしょうか?」
マ 「いや、何を言ってるんですか。っていうか誰です?」
作 「作者です。マテリアル君の性格を知ってもらうために軽く雑談をしようかと。」
マ 「確かに、前回も今回も誰とも喋ってなかったですね。」
作 「まあ、ソロプレイヤーだからしゃあない。次回はちゃんとプレイヤーと話せるから。」
マ 「CPUとかいうオチはないですよね?」
作 「あ、やべ。書き直さなきゃ」
(もちろん、平気に決まってるでしょ。)
マ 「逆になってますよ。それに、何で自己紹介文とかじゃなくて対談なんですか?」
作 「え、私の実力がないからですが」
マ 「そ、そうですか。」
作 「というわけで次回は第一回イベント、何位を目指しますか?」
マ (え、そのまま話題変えるのかよ。)
「そうですね、10位以内には景品があるそうなのでちょっと高めに7位くらい目指します。」
作 「そこは1位って言えよ!!」
マ 「初心者にできるかっての!!」
作 「すまない、睡眠不足で。最近は「はい、次回も楽しみにしていただけると光栄です。」