土日を超えて月曜日の放課後。
淀みなく授業を終え、スクールバックを担いで早速職員室に向かうことにした。奉仕部の第一回活動日だ。少しの緊張感はあるが、自分でも意外に心持ちは軽い。それも自分の校内専用部屋が出来ると思えばまあ納得は出来る、我ながら現金だな。
「お、来たか比企谷」
職員室に入れば平塚先生はこの前と同じように自分のデスクで作業中だったようで。不意に机の上を目でなぞってみると、さながらゴジラが襲来した東京の町並みみたいにデスク上は書類や文房具で散らかっていた。意外とズボラなんだな、この人。
視線の意味を悟ったのか、平塚先生は少し慌てた様子で職員室入り口にある鍵が幾つも吊るされた鍵置き場から緑色のタグの付いたものをひったくるように取った。
「ひ、比企谷。今日からお前が奉仕部の部長という訳だが、そう気負うことはない。君が正しいと思ったことを成し給え」
「は、はぁ」
完全に誤魔化そうとしてるよな? 机の上がごちゃごちゃなの隠そうとしてたよな?
賄賂か何か渡すみたいに鍵を俺の手を掴んで握らせる。
「平塚先生」
「いや! 君は何も見なかったんだ比企谷。それだけで君は今日、胸を張って帰れる」
「いや別に良いんですけど、自宅ならともかく仕事机が散らかってたら嫌で目に入りますよ」
「……そうだな。教頭先生にも「平塚先生はもう少し整理整頓に気を使ったほうが」とかクドクド言われてしまったしな、はっはっは。……はぁ、全ての原因はお前らが若いうちは苦労すべきとか言って押し付けきた書類だろうに」
そう言って平塚先生は虚空を見上げた。やはりと言うべきか、高校教員というのはとても大変な仕事らしい。色んな問題児とも渡り合う必要があるし、何なら亜人ちゃんとも放課後仕事しながら片手間に語らなきゃならないしなぁ。俺には確実に向いてない仕事だ。でも亜人ちゃんとはちょっと語ってみたい。
死霊染みた黒いオーラを納めると、平塚先生は軽く手を上げた。
「ま、今日から頑張ってくれ。たまに私から直接依頼を斡旋するかもしれん、宜しく頼むよ」
「……うす」
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放課後の緩い時間というのは気付けば蛇口の水道みたく大量に流れ出てしまうようで、結局誰も来ることはなく午後5時を迎えた。本日も大変天候が良く、夕焼け空が窓から鮮明に覗かせている。
さて、プライベートルームを手に入れた感想は? という話になるが、結果から述べればあまり有用性を感じてなかったりする。まだ1時間半しかいないからアレだが、ここも校内。携帯型ゲーム機とか持ち込む訳には行かず、とはいえ何もない部屋でスマホを弄ってるのも何だか虚無感が湧いたから勉強をしていたが、アレ、これ部屋でやってることと変わんなくね? となった訳で。まあこのマイルームの本領が発揮されるのは昼休みの時間だしな、次は暇をつぶせるように本でも持ってくるか。
混じり気のない退屈さが闊歩する思考を宙に浮遊させていると、コンコンとドアが叩かれた。え、もう帰ろうかと考えてたこのタイミングで来ちゃうの?
「ど、どうじょ」
突然の来訪に心が準備できてなかったから無茶苦茶に吃った。ヤダ恥ずかしい、小町に初めて「お兄ちゃんこんな本読んでるんだ……」とかラノベを見られたときレベル。当時はドン引きだったよ小町さん……今は無関心だけど。それはそれでお兄ちゃん悲しい。
「し、失礼しま〜す」
それは平塚先生ではなく、若い女の声だった。まあ平塚先生なら絶対ノックしないだろうしな。5ポンド掛けても良い、ポンド貨幣持ってないけど。
遠慮がちに入ってきたのは俺と同じく総武高校の制服を身に纏わせた女子生徒だった。ただし俺と違う点として、髪色がピンクで首元のリボンもかなりルーズに緩められている。姿を見た瞬間、俺の聡明たる思考回路は1つの解を導いた。
これ、アレだ。ギャルだ。その年のトレンドやら独自言語やらをいとも容易く作ってしまうJKギャルだ。俺みたいな日陰者からすれば割と平穏を崩してくる外敵みたいなとこがある存在で、意思疎通難易度はSSSである。どうすんのこれ。旅立ちの日にラスボスとエンカウントした勇者の気分なんだが。
女子生徒、訂正、ギャルは視線を彷徨わせると、この伽藍堂な教室に俺一人しかいないことを確認して口を開ける。
「アレ、ここ、奉仕部…………だよね」
不安そうに聞いてくるギャルに俺は「一応、そういうことになってるが……」と答えると「やっぱり! 一人しかいないからびっくりしちゃった」とほっと大きな胸を撫で下ろした。それとなく観察しつつ、俺も少し安堵する。どうやらコイツは根暗な奴は全員嫌いとか宣う典型的なギャルではなさそうだ。ギャルなんて大抵クラスの上位カーストで、ハブられた下位カーストに対しては日陰のダンゴムシを見るような目付きで接してくるからな。え、俺のギャルのイメージ低すぎ? それ、イメージが良すぎるって意味だよな?(イキリなろう主人公)
「えっと、今は比企谷君一人?」
「あ、ああ……」
今どころかこの先も俺一人の部活動になる確率極高なのだが、それを言う義理もないだろう。
というか俺の名前を知ってるのか……? いやまあアレか、どうせ平塚先生に聞いたとかそんなとこだろう。つまりこの依頼人は平塚先生から斡旋されてここに来たと……流石に仕事が早すぎませんかね? 婚期もこのくらい手際良ければ逃さなかったんじゃないでしょうか。
兎にも角にも、今は目の前の問題に対処しなくてはならない。
「ええと、奉仕部への相談者ってことで良いん……ですよね」
「うん、あっ! あたし、1年C組の由比ヶ浜結衣、宜しくね!」
「ど、ども。知ってる通り、俺は1-Fの比企谷八幡、です」
「敬語なんて抜きで良いよ〜。同学年じゃん」
「あ、ああ。分かった」
どうにもギャル相手にどうこうした経験がないから調子が戻らない。しかしこの、由比ヶ浜とかいう女のコミュ力はヤバいな。何というかグイグイ来る。マジヤバい。でもプリコネの年末年始もヤバいわよ!
「ええと……んで、依頼内容を聞いても良いか?」
「あ、そうだった! お願いがあってきたんだけど……クッキーの作り方を教えてほしいの」
「クッキー?」
それって菓子のクッキー? 或いは芸人のくっきー? それともクッキー☆? はたまたCookie? どれですかねぇ……。
と思考を深めていると「私、なんか料理の才能がないっぽくて……全然上手く行かないんだよね」と一言。どうやら菓子のクッキーで合っていたようである。当たり前だろ俺、クッキー☆動画を編集するギャルとかいねえよ。ぷはーっ、今日は良いペンキ☆
「クッキーの作り方……とか言われてもだな。そんなのネット使えとしか」
偉人曰く「ググれカス」ということを迂遠に伝えると、困ったように由比ヶ浜は前髪を触る。
「勿論見たよ! でも全然出来ないし……」
「は、はぁ?」
ニワトリに突かれたみたいな気分を味わいながら由比ヶ浜の言葉を咀嚼してみる。クッキーなんて作るプロセスを簡略化して説明しちゃったら材料を混ぜて捏ねて焼くだけだぞ? 難しいポイントなんて無い、寧ろ菓子作り初心者向きなまである。
「ええと、アレだよな? ラングドシャクッキーとか模様入りのクッキーとか作ろうとしてないよな?」
「ら、らんぐしゃ……? 良く分からないけど多分違うよ。普通のクッキーを作りたいの、無地で甘いやつ」
甘くないクッキーなんてねえだろ、とか思いつつどうしようかと考えてみる。
クッキーの作り方を教えろとか言われても、さいですかとすんなり教えられるものでもない。俺だって料理に関してはそこらの男子高校生と同じ程度しか出来ない。はっきり言って門外漢である。しかも教える相手がレシピ見ても普通のクッキーすら作れないとか言ってる問題児だ。それこそ、家庭科室とか借りて付きっきりで教えるとかしないと無理なんじゃないかコレ。奉仕部入るの、安請け合いだったな…………。
今更ながら後悔の念を平塚先生に送っていると、由比ヶ浜はポツポツと語り始める。
「実はさ、作ったクッキーを友達にあげたいんだよね。日頃の感謝の証、的な? それにクッキーも作れないとか女子高生として恥ずかしいじゃん」
「……それ、言うほど恥ずかしいか?」
「恥ずかしいの! 男子には分からないかもしれないけど、JKとしてはありえないから!」
あり得ないのか。全然分からんけど、何なら俺だってクッキーくらい作れるしつまり自動的にJKってことになってしまうのでは? ならないか。
「まあ、何だ。理由は分かったが今は無理だ。多分由比ヶ浜のそれは実際にやってるのを見ないと駄目なやつだしな。材料とか場所とか、そういうのが必要だ」
「そっか。いつなら出来るかな?」
「それは俺にも……家庭科室の放課後の使用許可が取れるのかやら材料は部費で落とせるのかやら分からんことだらけだしな」
てか家庭科室、放課後は料理部が使ってたよな? なら駄目じゃね? とちょっと逃げ腰で様子を伺う。由比ヶ浜は「そっかぁ」と相槌を打ちながらスクールバックにゆっくり手を突っ込んだ。
「そうだ! スマホの連絡先交換しない? いつになるか分からないんなら、やるぞ〜って日に態々クラスに出向くのは面倒だし、あった方が良いよね」
意気揚々とスマホを取り出した由比ヶ浜に「ま、まあ、そうだな」と吃りながら俺はポッケに手を入れる。凄いなギャルって、最早コミュ力を越して諜報能力に感じる。たった数分で自然にメルアドを聞き出すとか超高校級の探偵ですか?
最近の連絡手段として携帯メールなど使うはずも無く、必然的にチャットアプリを開いて俺はQRコードを表示する。それを相手が読み取れば楽々連絡先を交換できてるって寸法である。これ、ほとんど開かないから開くときどこをタップすれば出るか戸惑うんだよな。由比ヶ浜はもたついた俺とは違って一瞬でシュシュッとスマホをなぞると次の瞬間にはQRコード読み取り画面を出していた。経験の差、としか言いようが無いだろう。因みにこの経験というのはスマホの習熟度ではなく対人経験のことを指すのは言うまでもない。
無事に小町と親以外の連絡先が俺のスマホに入ると、足し算的に「友達数:4」とチャットアプリ君は表示してくれた。あのねぇ、由比ヶ浜とは今知り合ったばっかだし親父とお袋は友達じゃねえし小町は友達以上だからそこんとこ読み取って? とか心の中で文句を垂れるがそれはさておき。
「比企谷君のプロフィールのアイコン画像……猫?」
「あ、ああ。そうだが」
「へー、意外。猫飼ってるんだ〜」
何故か興味深そうにしげしげとスマホを眺める由比ヶ浜に思わず「他に画像が無いからな」と言い掛けて、寸前で止める。だってそうだろ、自撮りとかナルシストみたいでやりたくないし友達とのツーショット写真が皆無なのも自明の理。だからって無設定で置いておいたらそれはそれでスパムっぽい。なので取り敢えずリビングでどっしりとデカイ図体を休ませていたペットのカマクラをパシャリと撮影してアイコンにするのは全国の陰キャラの自然の流れなのである。逆説的にペットの写真をアイコンにしてる人間は全員無趣味かつ陰キャラであるのは明らかなのだ。因みに言うまでもないかもしれないが由比ヶ浜のアイコンは複数人での集合写真だった。
「可愛い〜! 名前なんて言うの?」
「カマクラだ」
「鎌倉? 何かへ……不思議な名前だね」
変って言いかけたろ今。いや別に指摘するつもりはないけども。実際カマクラって名前のネーミングセンスは分からないし名付けたのは親だしな。でも何年も一緒にいりゃもうカマクラは鎌倉じゃなく一匹の猫だと嫌でも刷り込まれる。重要なのは名前ではなく年月なのかもしれない。猫だろうが人だろうが、例えどんな名前だったとしても存在感がその名前に厚みを持たせてくれる。俺だって自分の名前には「八幡? 菩薩か何かですかね」みたいな感想を偶に持っちゃうけど基本的には受け入れて生きてる訳である。とはいえ、年一回ペットの予防注射に行くと獣医から「あ~もしかしてご出身神奈川県ですか?」と未だに言われると親父がボヤいてたし、やっぱり名前は重要なのかもしれない。今までの話なんだったんだよ。
さり気なく時計を確認すると、短針は6を指している。午後5時半、あと30分で完全下校時刻だ。
「ああ。まあ、決まり次第メッセージ送るから今日は帰っていいぞ。それにもう教室閉めるしな」
「そっか、じゃあお願い! またね〜」
笑顔で由比ヶ浜は言うと、バックを持ってさっさと退室してしまう。この辺のサバサバした感じとか多分ギャル特有のものなんだろう、変に話が伸びるよりやりやすいから良いな、八幡的に好感触だったりする。とか何とかそうやって勘違いして告って中学時代をフラッシュバックしたからこの話題は止めよう。
……はぁ、痛えな。
腕を抓って自分を戒めてみると、そこはかとなく惨めな気分になる。俺はこんなことをしなきゃ自身の想いすら統一できないのか。そもそも一体俺の想いなんて何処にあって、それが本物なのか。自分に向かってこれが嘘偽りない事実であると断言できるのか。
由比ヶ浜の残した甘い香りが、青い春の残り滓となって空中を舞っていた。
────────────────
「ほへー、お兄ちゃん本当に部活に入ったんだ」
家に帰ると待っていたのは目をまん丸くした小町だった。料理をしようと思い立った直前だったのだろう、エプロンを着てリビングでスマホを弄っていた。
俺はキッチンの冷蔵庫に貯蓄していたマックスコーヒーを一本取り出すと、プルタブを上に開ける。小気味よいアルミがめり込んだ金属音が響く。
「それは言っただろ、遅くなるとも」
「いや確かに聞いたけども。それが本当なんだと思うと小町、ちょっと感慨深くなっちゃって……ウチの八幡が大きく成長しちゃってねぇ……」
何処のおかんだ己は。カルデアのおかんだってそんな親戚のおばさんみたいなこと言わんから。
静かに涙ぐむような仕草をしたかと思えば、すぐに飽きたのか「あ、そういや」と話の矛先を秒で変えた。
「何部入ったの? お兄ちゃんのことだから、どうせ体育会系ではないんでしょ」
「流石小町、俺の事をよく分かってるな。スイート・リトルマイシスターなだけはあるぜ全く」
「あ、そういうの小町的に求めてないから本当に良いです」
言葉が冷てえ。キンキンに冷えたマッカン並みに冷てえ。
「まあ、当ててみ? もし当てれたらラーメンかなんか奢ってやるよ」
「そこは寿司とか焼肉とかピザとか言ってほしいとこだったんだけどなぁ、まあいっか。お兄ちゃんが入りそうな部活動ねぇ……もしかしてオカルト同好会?」
「なるほど。その心は?」
「目が腐っててゾンビみたいだから」
「何で見た目ゾンビだとオカルト同好会入らなきゃならないの?」
全国のオカルト同好会に失礼だろうが。あと言われ慣れてるせいで忘れそうになったが俺にも失礼だろ。
小町は「いや冗談だよ冗談〜小町ジョーク!」と舌をぺろりとさせた。出ましたテヘペロ小町! これには審査員の比企谷八幡さんも百点を付けざるを得ないでしょう。
「真面目に当てに行くなら、漫画研究会とか文芸部とか。大穴で裁縫とか料理系もあるかな?」
「あー、まあないこともあるな」
「流石お兄ちゃん、日常会話の表現すら捻くれちゃって意味不明じゃん。でも確かになあ……。お兄ちゃんって前に「放課後まで学校生活に費やすとか憂鬱過ぎるっぺ。マジ、ベーっしょ」とか言ってたし全然想像付かないなー」
「いや言ってないから。小町ちゃんの中での俺、何処の地方に住んでるの?」
千葉県に「っぺ」とか「っしょ」とかいう方言は存在しないからな。一応言及しとくが前者は仙台弁、後者は北海道弁だから。幾ら何でも田舎被れしすぎでしょ、かぁー、辛ぇーっぺ!
小町がソファーに腰掛けると立って話していた俺を見上げる形になって、自然と上目遣いが俺へとクリーンヒットする。クッ……小町の小町力が今日は一段と強ぇ……!
「で、正解は?」
「奉仕部だ。奉仕活動の奉仕って書いて奉仕部」
「何その如何わしい名前の部活動。あのさお兄ちゃん、妄想は自分の脳味噌だけに留めてよね?」
「妄想じゃねえし、後それは少し思った」
「サイテー。ゴミ兄ちゃん」
ゴミ兄ちゃんは止めろ。妹から言われたら急速に死に向かいたくなるだろうが。
しかし、部活動の名前に思うとこはある。ねえ、もうちょっと何か無かったんですかねえ、援助部とかなんとか。こうやって変な誤解が生じるのは少し考えれば分かるじゃん。いっそのこと平塚先生に改名提案したら通るか? ……いや。それとなく無理な気がする。新規の部活ならまだしも既存の部活だし、親に付けられたキラキラネームに耐えられないから改名するみたいな感覚で部活名は変えられないだろう。
でもそっか〜、と感慨深そうに小町は息をついた。
「お兄ちゃんが本当に部活に……もしかして女子部員とかいたりするの?」
「居ねえよ。それどころかオンリーワンだ」
「へ? 部活なのにお兄ちゃんしかいないの?」
「俺が入るまで部員が0人だったからな」
突如、小町は深い溜息を吐いた。
「な〜んだ。それじゃいつもと同じじゃん。ぼっちってるじゃん」
ぼっちってるって何? ぼっちっていつから動詞になっちゃったの? 何かウェイが、今日はぼっちってるわ〜、とか笑いながら言ってるのが容易に想像出来てちょっと嫌なんだが。お前如きがこっちの領域に踏み出したような口を聞くなと言いたくなるから。
「お前な、ぼっちで何が悪いんだ。人間なんて一人で産まれて一人で死ぬんだからな?」
「もうそれ捻くれてるっていうかただの屁理屈ってのに気付いてる? それにさ、お兄ちゃんには私がいるじゃん。あ、今の小町的にポイント高い!」
「分かってるぞ、小町は例外だからな。進学とか就職とか失敗しても俺がどうにかしてやるし男からも守ってやる。これ、八幡的にポイント高いな」
「ごめんそれは引いた。今日から一週間くらい小町の半径50m以内に近寄らないで下さい」
「それ、家出ていけって言ってるのと同義なの分かってる?」
ある種本心なんだが、小町的には無しらしい。無しかぁ……。
立ち上がってエプロンの紐をピシリと締めると「じゃあ料理するからお兄ちゃんは配膳だけよろ〜」とキッチンへとタッタッと早足で行ってしまう。俺も何かしなきゃな、と思いつつまずは部屋で制服から着替えることにした。