ありふれない青年が世界最悪   作:幻想者

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バイトが忙しくて遅れました。かなり雑かも知れませんが、ご容赦ください。


少女の頼み

 

 

 

 

「……弟子は取っていないんだが」

「お、お願いします! 弟子にしてください!」

 

 少女は京楽にもう一度頭を下げた。京楽は溜息を吐く。人は嫌いだが、人付き合いを蔑ろにするつもりはない。しかし弟子は取っていないし、弟子が取れるような能力はないのだ。

 

「……まぁ、理由は聞いておいてやる。私の弟子に成りたいと言う理由はあるか?」

「は、はい。もちろんありましゅ」

 

 顔を上げて理由を言おうとして舌を噛み、プルプルと涙目になり痛みを堪え始めた。巨狼が少女の顔を軽く舐め、少女は顔を真っ赤に染めながら震える。少女は羞恥心と痛みで辛いだろうが、京楽は京楽でどんな反応をしたら良いのかわからない。反応に困るのだ。

 

 羞恥心と痛みで涙目の少女とそれを慰めつつ、「慰めるの手伝えよ」と言いたげな巨狼。さすがの京楽も困惑した。

 

「……ゆっくりで良い。あまり緊張して話すな、深呼吸をしろ」

「は、はいぃ」

 

 少女がゆっくり息を吸い、ゆっくり息を吐く。それを何度か繰り返して落ち着いたようだ。が、京楽の顔を見た瞬間に、ボフッ! と、擬音が着きそうな早さで顔を真っ赤にした。どうやら、少女が落ち着くのはもう少しかかりそうだ。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 しばらくして、少女が京楽をあまり視線に入れないようにしながら話せるようになった。何でも、人の顔を見たりすると、上手く話せなくなるなってしまうようだ。しかし、弟子入りを頼む人に向かって目を逸らしながら話すのは失礼だと思い、頑張って顔を見ようとしたのだが、無理だったらしい。

 

「わ、私が弟子にしてほしい理由ですよね?」

「ああ、取ると言うわけでもないが、ちゃんと理由があるなら考えても見ようと思ってな」

「理由なんですけど……私、動物とかお花とか自然が大好きなんです」

「……それで?」

「私も賢者様の伝承を読んでその場所を探したらここに辿り着いたんですけど……その肝心の賢者様は二十年ぐらい前に亡くなっているそうで、お話が出来なかったんです」

「……なんて言った? 今、何て言った?」

「ひゃ! け、け賢者様とお話が、でで出来なかったんです!」

「違う、その前だ」

「賢者様が二十年ぐらい前に亡くなって「それだ、それ」ひぅ」

 

 賢者は約二十年前に亡くなったそうだ。だが、なぜ少女が知っているのかが謎だ。この少女は賢者の事を知っているのだろうか? そう、京楽の頭に過る。

 

「何処でそれを知ったんだ?」

「え、えっと~。が、ガウさんが教えてくれたと言いますか。なんと言いますか」

「ガウさん?」

「は、はい。えっと、この狼さんです」

 

 少女が巨狼をポフッと撫でると、返事をするように巨狼が、ガフッと吠えた。

 

「……動物と会話が出来るのか?」

「ひゃ、ひゃい……」

「……話が逸れたな。で、理由はなんだ? 続きを聞かせてくれ」

 

 京楽が聞くと、少女とまた目があってしまい、少女はまたもや顔を真っ赤に染め上げ、自分の胸に手を当てながら深呼吸をして落ち着きを取り戻してから話始めた。

 

 少女は、賢者に自然について色々聞きたかったらしい。賢者はこの世界で最も賢い者とされており、天才ゆえの湾曲した考えで神に楯突いたとされている。神に反逆した理由と、自然と自分の在り方を聞いて、談義したかったんだそうだ。運が良ければ弟子にしてほしかった。だが、賢者は暇に他界していた。

 

 賢者は暇にいない。だが、元の世界に帰りたいとも思わず、ここで特に不自由無く生活を送っていると、少女の隣にいる巨狼。ガウルフのガウさんと出会い、二年程一緒にいるらしい。

 

 そこで、ガウさんに聞いたんだそうだ。賢者は死んだが、自分に復活の魔法をかけて死に、いつか幻想郷に戻ってくるのだと。

 

 それを信じて待つことだいたい二年と数ヵ月。京楽が現れ、天職を見たときに確信したそうだ。この人が自分の探していた〝賢者様〟なのだと。それで弟子入りしたいそうだ。

 

「……そうか。話はわかった」

「じ、じゃあ」

「お断りだ。私は賢者なんて柄じゃない。それに、ただの人違いの可能性も充分有り得るだろう?」

「そ、それはそうかも知れませんけど……」

「それで、私が君を弟子にしてしまえば、人違いだった際に激しく後悔させてしまうことになる。私は人の人生の責任が取れるような人間じゃない。他を当たってくれ」

「で、でも! それでもあなたが良いんです! あなたじゃないと嫌なんです!」

 

 京楽は少女に視線をやる。そう言えば、少女は幻想郷に二年以上居ると言っていた。となると、ここ幻想郷については京楽よりも知っているだろう。

 

 そして、幻想郷に生息する生物とも対話が出来ると言うのだ。ここを調べる上でかなりの戦力にもなり、生活についても色々知っているだろう。〝弟子〟でなくとも、良いのでは? と京楽は思い至る。

 

「……よし、こう言うのはどうだ? 私はここについてはまだまだ知らないことばかりだ。それ故、一人でなにかをすることは無理だろう。だが、君と二人でなら、生きていくとなると私の生存率も上がる」

 

 京楽が提案したのは、少女との共存だ。少女は京楽にここでの生き方を教える。京楽は少女が求めるような師弟関係を出来るだけ与える。関係としては歪だが、提案はしてみる。

 

「はい! ここでの生活を教えれば、私はあなたの弟子にしてくれるんですよね?」

「……何を求めてくるかによっては答えられないが、できる限りのことはしよう」

「はい! それでも全然構わないです」

 

 別に良いらしい。いつか悪い人間に騙されそうで心配だが、それについても教えれば良いだろう。

 

 少女が嬉しそうに笑いながらガウさんに抱き付きながら、もふもふ、わさわさと毛並みを楽しみ始めた。

 

「……で、だ。これからどうするんだ?」

「あっ、自己紹介……しますか?」

「……そう言えば、名乗っていなかったな。八雲京楽だ。知っての通り、天職は賢者だ。よろしく頼む」

「え、ええと、アリス・ヴェルカーナです。天職は……わかんないです」

 

 少女、アリスが落ち込み気味に言う。アリスはステータスプレートを持っていないそうで、天職はわからないのだとか。

 

 別に天職がどうのこうので人を差別するつもりのない京楽は、アリスに気にしないように言う。仮によくわからない天職だとしても、なんとも言わない。京楽のやることに変わることはないのだ。

 

「………特技はあるか?」

「あっ、え、えっと……、動物と会話してご飯探したり、動物と仲良くなるのは得意ですけど……人がすこし怖いんですよね……」

「……あんまりそう恐れるな。人が怖いぐらいなんとも思わん。それに、私は接触恐怖症と潔癖症だからな。他人に触れないし、触るつもりもない」

 

 一応、先に自分の体質のことは言っておき、それを聞いたアリスが頷いた。

 

 アリスは人が怖いらしい。前に何かしらあったんだろうが、あまり会話になれていない様子も見られた。対人で話したことが少ないのだろう。あるいはあがり症とか、その辺りだろう。

 

 しばらくの間、アリスが堅くなりながら京楽と話していたが、急に腹の虫が鳴く。どうやら、空腹のようだ。

 

「えっと……木の実とか、果物がここでの主流なんですけど……食べますか?」

「ああ、そうさせてもらおう」

 

 「ついてきてください」と言い、ガウルフの上に跨がると、ガウルフが歩き出す。アリスの騎獣にもなっているようだ。京楽はその後ろをとぼとぼと着いていく。

 

 少し歩いたところの木に果実がなっておりアリスが果実をもぎ取り、京楽に手渡した。どうやらこれがここでの食事のようだ。

 

「美味しいですよ?」

「……」

 

 アリスは果実を噛り、モグモグと食べる。ガウルフも果実を食べていた。京楽は軽く拭いて果実を食べる。味は林檎だった。皮も赤いし、見た目も林檎に近い。

 

「……これは、何て果実だ?」

「これはですね、え~と。……ガウさん、この果実なんて名前でしたっけ?」

 

 ガウルフが一吠えすると、「アフルの実だそうです」と答えた。林檎モドキ、アフルは美味しかった。アリス曰く、こんな感じの果実が森林地帯にはわんさかなっているらしい。

 

 他にもアリスに案内されて、食べられるものと食べられないものを教えてもらった。何でも、木になっているモノは全部食べられるのだそうだ。野草は怪しいものもいくつかあるらしい。薬の代わりになるものもそれなりにあるらしく、京楽はそれらも教えてもらった。

 

 ちなみに、アリスやガウルフと出会った泉には魚が生息しているらしく、それらの魚も食べられるのだそうだ。

 

 そして、今京楽やアリスが居る森林地帯以外にも、京楽が目覚めた花園地帯。山岳地帯、湖畔地帯があるらしく、それぞれの地帯にはそこを支配する龍が居るらしい。森林地帯、〝銀狼龍〟ガウルフ。花園地帯、〝樹緑龍〟フォーレス。山岳地帯、〝黒刃龍〟リッパー。湖畔地帯、〝水蛇龍〟ウィディネ。この四体の龍が支配者らしい。

 

 ……お気付きだろうか。森林地帯の支配者である〝銀狼龍〟はガウルフと言う。そして、アリスの騎獣になったり世話をしている巨狼もガウルフだ。

 

「……もしかしてだが、ガウさんがここの支配者か?」

「ガフ!」

 

 巨狼、こと、銀狼龍が吠える。まさかのアリスの友達だ。支配者が一個人を見ていて良いのだろうか?

 

「……アリス、もしかしてだが、賢者の建てたとされる塔について何か知らないか?」

「塔、ですか?」

「……ああ」

 

 アリスは少し考え込む。そしてガウルフのガウさんに目をやる。ガウルフが遠吠えをあげると、ガウルフの周囲に白銀色のスパークが発生し、京楽達から遠く離れた場所に巨大な塔がうっすらと出現した。が、その塔は段々朧気になっていき、見えなくなってしまう。

 

「ガウさん? 今のは……あれが、今のが賢者の塔なんですか」

 

 ガウルフ曰く、他の三体の力を会わせれば完全に賢者の塔を顕すことが出来るらしいが、流石に一匹では一瞬姿を表させるのが限界なんだそうだ。

 

 だが、一つだけ特例があり……

 

「……アンリ・マユの転生体は、何の要因もなく、無条件に塔に辿り着けるのだそうです」

「……なんだその特別仕様は」

 

 京楽はそう溜息を吐く。ガウルフは京楽を見てから塔があった場所に視線をやる。

 

「……あ、あの~、師匠様なら行けるんじゃないかって、ガウさんが……」

「……まぁ、やってみる価値はあるかもな」

 

 柄にもなく、自分が賢者の転生体なのでは? と思い始めてきた京楽。理由はいくつかあり、まず一つ。初めてにしては見覚えが有りすぎた。実は言うと、野草や果物などについては全て見覚えがあった。もちろん、ここの植物が地球にあると言うのはほぼないだろう。二つ目に、たまに思い起こす七人の友人たち。もちろん、京楽は会った覚えも無ければ、見たこともない。だが、オルクス大迷宮に行ったときに、ライセン大峡谷、ハルツィナ樹海の近くにいたとき、ふと人物像が浮かび上がってくるのだ。三つ目、最後になるが、恐らく花園の支配者〝樹緑龍〟フォーレスと初めてあったときの一言だ。「アンリの転生体」と樹緑龍は言っていた。四体の龍は賢者アンリ・マユの事をよく知っているようだった。それゆえに、自分が転生体なのではないかと思ってしまう。

 

「……ガウさん。私を、塔のある場所へ連れていってくれるか?」

 

 それを聞いたガウルフが京楽が乗れるように体制を低くし、京楽もガウルフの毛に掴まるが、場所が悪くて掴みづらい。

 

「……アリス。もう少し前の方に寄れるか? 私が乗れない」

「あ、あの……嫌じゃなければ、安定した乗り方で二人乗りが出来るんですけど……どうしますか?」

「……あるならあるでそれに越したことはない」

 

 京楽がそう答えると、アリスがガウルフから飛び降りて京楽をかなり前の方に乗せると、アリスが京楽のすぐ後ろに乗り、抱きついて密着してきた。その次の瞬間。京楽は背中から恐怖感と激しい不快感。ぐにゅっと何か柔なかモノが押し付けられて潰れた感覚が同時にやって来た。額から冷や汗を流し、あまりの不快感に顔をしかめたが、仕方がないことだと自分に言い聞かせて割り切る。

 

 ガウルフが小さく唸り、咆哮する。すると、木々が揺れ、ガウルフの白銀色の魔力が稲妻のように辺りに迸り、走り出す。物凄い勢いで走りだし、跳躍すると、空中を駈け始めた。空中を走り、ガウルフが咆哮する。すると、また塔がうっすらと姿を表した。が、今度は消えずに残る。

 

 京楽が塔の全貌を捉えた途端に、頭の中に、一つの文が浮かび上がった。そして、その言葉がなんであるかを理解し、呟いた。閉ざされた塔の入り口を開く言葉を唱える。

 

「……現実は紐解かれ、幻想に帰す」

 

 その言葉と同時に、目の前が光で覆われていき、京楽は眼を瞑った。

 

 しばらくして眼を開けると、京楽は塔の前に立っていた。傍らにはアリスが経垂れ込むように座っている。辺りを見回してガウルフの姿を探したが、全く見つからない。

 

「……途中ではぐれたか、それとも別の要因か……まぁ、今はどちらでも良い」

「い、いい今のは。そ、それにここは」

 

 アリスはあたふたと慌て始め、軽くパニックになっていたので、脳天に手刀を落とした。アリスは「あうっ!」と声と共に軽く頭を押さえながら踞る。京楽はそれを溜息混じりに注意した。

 

「急な出来事に驚くのも、パニックになるのもわかるが、少しは落ち着け」

「は、はいぃ」

 

 京楽が塔の入り口らしき場所に触れると、壁から文字が浮かび上がってくる。

 

 〝挑戦者、又は私の転生体。ようこそ、私の住処へ。私はここへ来た者に試練を与える。試練は中に入った瞬間から始まり、途中でリタイアは出来ない。それ故に、覚悟無き者は引き返せ。命を賭してでも試練の先にある真実を知りたい者のみ通るといい。

 

  賢者 アンリ・マユ〟

 

 と、書かれていた。試練の先にある真実。それは希望か、それとも絶望か。そんなもの京楽にはわからない。だが、京楽が今求めている答えはここにあるのだろう。もちろん京楽は命を賭けてでも試練に挑む。

 

 痛みが引いてきたらしいアリスが顔をあげ、京楽の見ている文章を読んでいた。

 

 文章を読み終わったようで、困ったように京楽を見始めた。

 

「あ、あのっ…………私も、付いていって良いですか?」

「止めはしない。着いてきたいならそうするといい。だが、かなり危険みたいだぞ? 最悪命を落とすかもしれない。それでも良いのか?」

「はい」

 

 アリスの顔付きがいつになく真剣になる。強い覚悟を決めた者の目だった。良くも悪くも強い意思を見せる。

 

「私は、私と言う存在を知りたい。私の種族はなんなのか、私は知りたいんです!」

「……さっきも言ったが、別に止めはしない。そうしたいなら、そうするといい」

「でも、師匠様。私は弱いんです。だから──守ってくれませんか? 全部を守ってほしいなんて言いません。私が、真実を知るために。真実を得るために手伝ってください」

「……」

 

 京楽は静かにアリスを見る。〝守る〟、それは簡単そうで難しい。だから簡単には約束しない。力があるだけでは守れず、正義だけで、綺麗事だけではなにも守れない。それを痛いほど京楽は知っている。

 

 頭が良くても、強くても、守れないものは守れない。〝力があるから〟、〝力を与えられたから〟。それだけで全てを守れる、救えるなど到底思わない。そして、京楽自身、全てを守れるなどとは思っていない。

 

 だが、アリスの目には信頼が宿っていた。今日あって間もないと言うのに、信頼されていた。この人ならと信頼するような目を向けられ、京楽の数少ない尊敬する大人である京は黙っているだろうか? 京の友人の杉下さんは無理だと諭すだろうか? 答えは否だ。信頼には誠意を返す。信頼には信頼で返すと教えたのは二人だ。そんな二人なら無理だと溜息やら愚痴やらを言いながらも助けるだろう。

 

 ならば、京楽が返す言葉も決まっている。

 

「……私は弱い。残念だが、アリス。君が思っているほどは強くない。だが、頼まれたからにはその頼み、可能な限り引き受けよう。私の最善を尽くしてアリスを守っていくよ」

「あ、ありがとうございます!」

 

 京楽が扉に触れ、軽く押すと、一人でに扉が開き、道が現れる。そして、道を照らすように松明に火が着いていった。

 

「……行くぞ、アリス」

「はい、師匠様」

 

 二人は、扉の向こう側に入っていくと、扉がしまり、中を歩いていった。






かなり急ぎで書いたので、誤字脱字がある可能性があります。報告してくれるとありがたいです。

ハジメ&ユカリsideの話を書くべきか否か

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