ありふれない青年が世界最悪   作:幻想者

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少し長めかも?


幻想郷の王

 

 

 

 

「よく辿り着いた。私の転生体と挑戦者。私はアンリ・マユ。裏切りの賢者、人類悪と言えばわかるか?」

 

 二人の前に立つ青年、賢者アンリ・マユはそう言うと、苦笑いを浮かべた。

 

「いや、わからないか。流石に忘れ去られてしまったか。ああ、これは記録映像の様なものだ。受け答えは出来ないから、質問はよしてほしい」

 

 アンリはそう言って、京楽のいる方に目を向ける。そして、謝るように呟いた。

 

「……私の転生体。すまないな、ろくに記憶を残すことが出来ず、知性と中途半端な記憶を与えてしまった。術式事態は禁忌に近いモノだった。それ故、完全に私と言う存在を残すことが出来ず、中途半端に私の感性や記憶を残してしまったこと、悪く思っている。許せ」

 

 アンリはそう言うと天を見上げる。懐かしむように、寂しそうに天を仰ぐ。

 

「……本当はこんな術式を使うべきでは無かったかもしれない。だが、エヒトルジェの目を掻い潜る術はコレ以外になかった。アイツを殺すためには、この手段が最良だったんだ」

 

 アンリはそう言って京楽に目をやり、そして、穏やかに告げた。

 

「転生体。今から、君に私の全てを託そう。ここ幻想郷も、私の記憶の全てを、長いこの世界の歴史の証人である私の知識の全てを君に譲ろう。この知性を持って何をするかも君の自由だ。君はあくまでも私の転生体だ。私ではない。……ただ、頼みがある。メイ達との約束を……解放者達の悲願を見届けてほしい。ティアの望んだ世界を語り継いでほしい。それだけだ。君のこれからが、自由の意思の下にあらんことを切に願う」

 

 アンリの身体が光の粒子へと変わり、弾けて京楽の身体を包む。それと同時に激しい頭痛と、吐き気を催され、アリスが京楽に近寄り背中を擦る。

 

 京楽の中に、アンリの記憶が流れ込んでくる。アンリの幼い頃の記憶から、二十年前、自分が転生するための術式を作り出して使用するまでの記憶が流れ込んできた。

 

 アンリの記憶、記録は外からやって来た偽神との争いだった。

 

 人々が神代と呼ぶ時代よりも前。原初であり、歴史に綴られることのない空白の時代。その時代に、アンリは産まれた。

 

 世界を作った創設者の子孫として産まれ、産まれながら高い知性と強い理性を持ち。世界を見据える者として、産まれながら、万物を知り人を導く賢者として産まれ落ちた。

 

 それと同時に産まれ落ちた者がいた。創設者の子孫として、人々を守るために産まれた者。産まれながら高い力を持ち、世界を守り導く勇者として産まれ落ちた。

 

 二人は兄妹のように育ち、大きくなっていった。

 

 共に成長し、共にぶつかり合い、お互いを高めあった二人。二人は基本的に考えが合わず、お互いにぶつかり合う。遠慮もなく、本気で戦う。

 

 しかし、二人共願いは同じだ。人々の幸福を、人類の、生命の繁栄を願っていた。二人で人類を導き、共に歩む。お互いにぶつかり合う仲でも、二人が別れる事など無かった。

 

 ある日、世界に異世界の人間がやって来た。その者は非常に強い力を持ち、世界に降り立ったその瞬間から人々を洗脳し、神を名乗り世界を支配しようとした。だが、二人が許すわけもなく、その者を排除しようとした。しかし、人々がそれを拒み、今まで守り導いてきた二人に反旗を翻し、襲いかかった。

 

 しかし、強力な力を持つ二人に人類が敵うわけもなく、圧倒しながら鎮圧した。その者は人類を味方に付け、人質に取った。護るべき人類に手出しが出来ず、二人は二人の持つ強大な力を世界中に散りばめ、己の命を断ち、転生した。

 

 そして、二人が産まれ直したのは神代であり、二人は黙々と力を溜め、彼の者を討つと立ち向かった。しかし、片割れであった勇者は彼の者に敗北し、彼の者は二人の手によって肉体を失ったものの、二人が復活する前に手に入れた世界に逃げ込んだ。アンリでもその世界に干渉することが出来ず、護るべき人類が敵になった。

 

 アンリにはもうなにもすることが出来ない。神性も失い、どうすることも出来ないアンリは、自分と勇者が世界に散りばめた力を持って生まれてくる者達に未来を託した。何もすることが出来ない自分を悔しく想いながらも、彼の者を討つ時を歴史の影から待ち続けた。

 

 神代が終わり、時が流れた。その頃、二人の散りばめた力に目覚める者達が増え始め、神に反旗を翻す。真実を知る者が現れるまで待ち続けた。

 

 それから数年が経ち、神に反旗を翻す組織。偽神からの解放を望む者達、解放者達と手を組、もう一度反旗を翻す。しかし、人々を使って阻まれ、失敗に終わってしまった。

 

 それからアンリは、自分の世界を作り、元ある世界を望む者達が辿り着き、過ごす場所。全ての原点であり、起源を望む者達の理想郷、〝幻想郷〟を生み出し、その中心に自身の住む塔を経て、世界を眺めていた。神に反旗を翻す機会を狙って、基盤を生み出すべく元の世界に降り立ち、時に弟子を取り世界の真実を、自分の持つ知識を継がせた。

 

 弟子を取り、月日は流れ、アンリは世界の未来を見た。神を打ち倒し、世界を元に戻す存在が現れると。特殊な目により見えた朧気な世界の未来を確実にするべく、自分の魂をその未来を拓く者が住む世界に無理矢理転生した。

 

 それからは、京楽の知る日々だった。

 

 何千年分の記憶が流れ込んできた京楽は、激しい頭痛に襲われ呻く。アリスが必死に京楽に呼び掛け、京楽もギリギリで意識を保ち続けた。

 

 数時間程すると、頭痛も吐き気も収まり、深呼吸をする。痛みは完全に退き、気分も良好だった。

 

 しかし、しばしば身体に違和感を感じる。力がみなぎると言えばいいのか、違和感と言えばいいのかわからないが、自分の姿、容姿が変わったことはわかった。

 

 異界庫から自分のステータスプレートを取り出して、確認する。

 

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アンリ・マユ(八雲京楽) 4128歳 男 レベル:100

天職:賢者

筋力:5525 [+竜化状態27600]

体力:5525 [+竜化状態27560]

耐性:5525 [+竜化状態26670]

敏捷:14365 [+竜化状態43095]

魔力:22100

魔耐:16575

技能:剣術[+斬撃速度上昇][+斬撃威力上昇][+抜刀速度上昇][+居合][+無拍子][+剣速通し][+神武不殺]・弓術[+射撃術][+射撃速度上昇][+射撃威力上昇][+連射速度上昇][+気配遮断][+気配察知][+矢製][+龍墜射]・槍術[+薙術][+棒術][+突撃速度上昇][+突撃威力上昇][+大車輪][+空突]・体術[+受け身][+柳][+流動][+無拍子]・格闘術[+身体強化][+浸透勁][+砕拳][+空拳][+界壊]・高速魔力回復[+瞑想][+深呼吸][+心滅]・並列思考[+思考加速][+情報処理速度上昇]・幻術[+身体強化付与(偽)][+痛覚緩和(偽)][+現実改竄(偽)]・縮地[+摺縮地][+震脚][+影歩]・先読[+幻視][+直観][+心眼]・言語理解・反転化[+人類悪]・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収][+循環効率上昇]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+変換効率上昇]・竜化[+半竜化][+竜鱗硬化][+魔力効率上昇Ⅲ][+身体能力上昇Ⅳ][+咆哮][+嵐纏][+命纏][+命力変換(魔)]・教術[+修得][+教導][+信頼上昇][+対象成長率上昇][+才覚開花][+才覚昇華]・千里眼[+遠見][+透視][+未来視][+空間視][+世界視][+神眼]・幻想魔法・魔法適性[+詠唱時出力上昇Ⅳ][+詠唱時効率上昇Ⅴ][+詠唱時魔力効率上昇Ⅴ][+詠唱時魔力出力上昇Ⅲ][+詠唱省略][+イメージ補強率上昇]

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 言葉を失うほどには自分が馬鹿げた能力値になっていた。

 

 まず、ステータスが気が付けば最高値である100になっている。技能の数が馬鹿げている。派生技能も大量に生まれており、年齢も凄いことになっている。

 

 そして、幻想魔法なるモノは最早チートだった。

 

 幻想魔法。それは、全ての魔法の起源。世界の法則を産み出し、法則である魔法を生み出すことの出来る神代の魔法。

 

 魔法を生み出すには、魔法に関する知識が求められる。既存の魔法をバラして組み替えたり、新しく魔法そのもののパーツを作って組み立てる必要がある。だが、京楽は暇に知識はある。あとは作り方さえわかれば簡単だ。現在は、何らかの原因でアンリ・マユの時代に使えた魔法は使えなくなっているようだ。まぁ、あとから作り出せば良いだろう。

 

 自分の身体に違和感を覚えたのは、自分の前世であるアンリ・マユと完全に融合したその結果、体格が少し変わったからと言うのと、自分の体内にある魔力の流れを感知し、操れるようになったからだ。試しにイメージで操ってみたが、なんとも言えない感覚にむず痒いような、でも痒くもないし届かない時のような微妙な顔になる。

 

「……まぁ、いいか。不便になったわけではないしな」

 

 京楽がそう呟くと、アリスが京楽に体調は大丈夫か。まだ、頭は痛むか心配するように聞く。別にもう痛みはない。

 

「大丈夫だ。……で、アリス。アリスは何を知りたいんだったか?」

「へ? え、えっと……私は、私が何者なのかを知りたいんです。わかるんですか?」

「……恐らく、な」

 

 京楽は若干期待を込めながら、アリスに目を遣り、〝千里眼〟を使用した。千里眼は、視界に入る全ての情報を分析して、それを使用者に視認させると言うものだ。アリスに対して発動すると、アリスの種族は簡単にわかった。驚くべき事実だろう。

 

「……アリス。お前は、……本来は兎人族だが、先祖帰りで吸血鬼族になっている」

「えっ」

「……かなり昔に、吸血鬼との交配があったんだろう。だが、生まれたのは兎人の子供だった。だから、そのまま兎人として扱われていった。しかし、長い年月が経ち、アリスに強く吸血鬼の遺伝子が出たんだろう。それ故に、兎人の特徴であるウサギの耳や尻尾がなかったんだろうな。だが、容姿は吸血鬼寄りになったが、食事は兎人のままだったんだろう」

 

 京楽はそう説明した。アリスの何十、何百代前に、吸血鬼族の血が混じり、アリスで覚醒したのだろう。それだけだ。魔力を持ったのも吸血鬼族故の種族性だ。仕方のないことだと言える。まぁ、それで本人が納得するかは別の話だ。

 

 アリスが受け止められるか、そうでないかは京楽にはわからないが、知りたいと言う真実を伝えるのが京楽だ。今さら自分のあり方を変えるつもりはない。

 

「それで? アリス。君はどうしたいんだ? 嘆くか? 憂うか? それとも、受け入れるか?」

「……私の両親は、兎人なのですか」

「ああ、そこは確実だ。安心していい」

 

 アリスは黙り込んでしまい、京楽は自分の手を見ると、自分の情報も入ってきた。ステータスプレートと同様のことが表記され、自分の親を見てみると、吸血鬼族と竜人族だった。

 

 技能の時点で予想はしてたし、ぼやっと覚えていたのであまり驚きはしないが、かなりレアだと思っている。吸血鬼族と竜人族の特徴とも言える技能を両方とも引き継ぎ、両種族の良いとこ取りをした結果が京楽だ。真紅の瞳は吸血鬼族。金色の瞳は竜人族。髪の毛や肌は生まれついた病気のせいで色がないだけだが、膨大な魔力とそれらを操る魔力操作。竜人族の竜化を持ち、あらゆる魔法のエキスパートである吸血鬼族の魔法。京楽はかなり強い部類にいたことだろう。

 

 両種族とも寿命はかなり長かったが、京楽は反転化の派生技能、〝人類悪〟と言う技能のせいで、一定年数以上年を取ることが出来ず。腕一本からでも自身を復活させられるため不死性はかなり高い。

 

「……師匠様」

「なんだ?」

「私は……化物ですか」

 

 化物。そう言ったアリスの目は震えている。

 

 流石に、千里眼でも他人の過去や記憶を覗くことはできない。だから、アリスにどんな過去があったかなどは知らないし、アリスが話してくれた意外はなにもわからない。だが、これだけは言える。

 

「化物ではない。混血であったとしても、高々先祖帰りだったとしても。自然の摂理から外れてはいない。化物なのは、世界の法則からも、自然の摂理からも外れた私のような存在のことだ。アリス、君は化物ではない。怪物でも、魔物でもない。希少な存在とううだけだ」

 

 京楽はそう言って、溜息を吐く。京楽は完全に自然の摂理からも、世界の法則からも外れた存在だ。死ぬことはなく、その存在が消えることもない。元々神性を持っていたと言うのが強い理由だろうが、気にしても意味のないことだ。

 

 京楽が台座の上に立つと、奥の方にある柱と柱の間に扉が現れ、京楽は扉に向かい、アリスはそれに追従する。

 

 扉を押し開けて、中に入ると、居住区があり、中世洋館のような作りになっていた。一階と二階があり、二階は螺旋階段で繋がっている。

 

 内部は全て清潔感があり、綺麗にされている。掃除用の自動機械人形。オートマタが部屋やら洋館内全てを掃除しているようだ。京楽やアリスを見るとペコリと頭を下げて、そさくさと掃除を始めた。

 

「なんか、すごい場所ですね」

「……そうだな」

 

 二人は、若干ひきつりながら部屋を見て回る。

 

 洋館内は、台所や寝室。リビングに暖炉。ソファー、テーブル。庭には巨大な樹が一つ植わり、その回りに花が咲いている。

 

 ここで普通に生活できそうだが、京楽が引き継いだ記憶によると、この場所は来客用で、京楽は基本は外で生活していた。つまり、京楽は殆ど居住区には居ず、常に庭や、塔の下で生活していたらしい。

 

 引き継いだ記憶を辿りながら、間取りや部屋位置を確認するように居住区内を探索する。

 

 居住区内地下には地下温泉があったり、食料庫やアンリ・マユの書斎や書庫。宝物庫がある。食料庫には肉類、野菜類を始めとする食材や、幻想郷特有の食物が保管されている。

 

 そして、京楽の目当てである宝物庫に入る。中には大量のアーティファクトが所狭しとおかれており、京楽は小箱にしまわれているアンティーク物の白銀色の鍵を手に取り、満足そうに頷く。

 

 京楽が手に取ったアーティファクトは〝帰還の鍵〟と言う鍵で、壁や床にこのアーティファクトを軽く当てると、扉が出現して幻想郷に戻ってこられる便利アイテムだ。ちなみに、座標設定で帰還場所の登録ができ、複数の場所の設定が出来る。

 

「……アリス、これで準備は整った。私は旅に出る。元いた世界に帰るために。世界を元に戻す為に力を蓄えるために……」

「そう……ですか」

 

 アリスは京楽を引き止めはしない。自分と違って、京楽に帰る場所があるのは知っている。目的があるのも知っている。だから止めない。帰るべき場所があるなら、帰った方がいいに決まっている。使命があるなら、その使命を果たす方が良いに決まっている。

 

 アリスはまた置いていかれてしまうのだ。そう思っていたが、

 

「……そこでだ。アリス、君も私と来るか?」

「えっ?」

「生きる意味が解らず死にたいのであれば、私の為に生きろと言っただろう? 私も都合が悪いからと言うだけで約束を違えるほどの外道ではない。この世界よりも幾分か生きづらい所もあるだろうが、慣れればどうとでもなるだろう。……まぁ、なんだ。私の旅に着いてくる気はないか? 一人旅は不便な点が多くてな。手伝いが欲しいわけだが」

 

 京楽はアリスを旅に誘った。京楽だけで旅をするとなっても、特に不便はないだろう。何せ、〝帰還の鍵〟でいつでも幻想郷に戻って来られる。帰還の鍵は、あらゆる場所と幻想郷を繋ぐアーティファクトだ。アリスを置いて旅をしても、一人にすることはないだろう。

 

 だが、今の状態のアリスを一人にするのは少し危うい気がした。精神状態的な問題だ。アリスが落ち着いてくれるなら別にアリスを幻想郷内に放置してもいいだろうが、アリスはアリスで本人の自覚なしに強力な技能を持っていた。アリスの言う、自分を守る謎の壁や動物達との会話、高い危機感知能力の原因とも言える技能。固有魔法とも言うべき技能、〝自然の寵愛〟だ。

 

 魔力が不可視の壁を産み出して身を守り、動物との会話や、高い危機感知能力を与え、毒などへの高い耐性を得ると言う技能で、自然にあるものを操れるようだ。

 

 地面を隆起させたり、水の流れを変えたり、 突風を吹かせたり、と言ったものだ。しかし、樹木も一時的に支配下に置けるようで、樹木を操って根を地面から突き出させて槍のように使ったり、相手を拘束したり、植物を急成長させたり出来る。要は、複合型の技能だと言うことだ。

 

 ちなみに、アリスはまだちゃんと扱えているわけではない。感情が暴走すれば、かなりの確率で地形変動などで環境がかわる。精神状態が安定している間はまだ扱えるようなので、幻想郷の景観や環境を壊されたくないので放置出来ない。

 

「着いてくると言うのならば、私が面倒を見てやる。来ないなら来ないで君の為に色々準備をしてから出ていく。着いてくるも来ないも好きにするといい」

「……なんで、私の為にそんなことを」

 

 アリスはかなり精神に来ているらしい。自分が先祖帰りなのが余程ショックだったのだろうか? まぁ、両親と種族が丸っきり違うのはショックだろう。だが、京楽がアリスを大切にしているのにはきちんと理由がある。京楽が京楽であるかぎり、アンリ・マユと言う存在であるかぎり絶対に変わらないもの。

 

「何を当たり前のことを。私は君の師だ。弟子の為に何かしようと想うのに理由はいるのか?」

 

 面倒見の良さだ。人嫌いであっても面倒見は良く、なにかと人のために動く人間だ。京楽は知らない他人にも厳しく、優しい人間だ。その人にとっての最善を模索し、提示する。

 

 この誘いも、アリスには善いものであると考えての行動だ。だが無理には押し付けない。

 

 押し付けてしまえば、相手への不幸となる。絶対的に必要なら押し付ける場合もあるが、絶対的に必要と言うわけでもない。京楽がそうしたいからそうしているだけだ。

 

 アリスは京楽をじっと見つめる。ただ、京楽に目を向け、視線が重なるアリスは頬を赤く染めたが、京楽から目を離さない。

 

「……師匠様、アリスは、ずっと……師匠様の隣にいても良いの?」

「ああ、別に構わない」

「ほんとうに、ほんとうに良いの?」

「構わないと言っているだろう」

 

 京楽が肩を竦めながらそう返した。京楽はあまり嘘をつかない。別に、言わない訳ではないし、必要なときは平気で嘘を吐く。だが、あくまで必要なときであって、別に常日頃から嘘を吐きまくっている訳ではない。

 

「アリス。生きろ、自分の望んだ場所で」

「はいっ!」

 

 アリスが京楽に飛び付き、京楽はそれを支えた。

 

 アリスが笑っている。目尻に涙を浮かべながらも嬉しそうに笑っている。

 

「師匠様、アリスは師匠様から離れてあげませんから」

「……そうか」

 

 アリスが京楽の胸元に額を擦り付けながら泣いている。嬉し泣きなのか、悲し泣きかなのは一目瞭然だが、しばらくの間。京楽はアリスをあやすように撫でていた。

 

 

 






最近、忙しいので投稿頻度が落ちるかもしれません。ご容赦ください
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