ありふれない青年が世界最悪   作:幻想者

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すいません、更新遅れました。失踪はしていないので、安心してください


ゆっくり、ゆったり

 

 

 

 

 幻想郷を拡げ、エルを拾った日の夜。あれからかなり色々あった。

 

 エルに食事をさせた後、京楽は幻想郷各エリアを廻って一応戻ってきたことを支配者達に告げた。支配者達は京楽を見て一様に「そうか」とだけ告げた。別に興味もないらしい。

 

 そして、今。京楽は夜空に浮かぶ星を眺めていた。

 

 アリスとエルは寝室に案内して暇に寝ており、京楽の近くにはいない。

 

「……星を眺めるのも久しぶりだな」

 

 京楽は今、庭に出ていた。そして、庭に生えている巨大な樹の枝に飛び乗り、腰掛ける。

 

《──やぁ、お帰り。アンリ》

「久しいな、ガオケレナ」

《ああ、本当に久しぶりだね。二十年ぶりかな?》

 

 巨大な樹、ガオケレナが枝を揺らしながら答えた。

 

 ガオケレナ。この巨木は、アンリ・マユが幻想郷を作ったときに生まれた樹で、アンリの居住区の支配者でもある。性格は温厚で、動植物全てに対して友好的だ。自分の周囲の植物を活性化させたり、植物を操ったり出来るので弱い訳ではない。

 

 夜になると毎日のように枝に座り、夜空を見上げて星を見ていた。その星を眺める間は良く話をしていたのだ。なんの中身もない会話だが、アンリ・マユの数少ない友だ。話しやすくはある。

 

「そうだな。二十年は会っていないみたいだな」

《やっぱり記憶は曖昧なのかい?》

「……ああ、魂の姿で世界を渡ったのが原因だろうな」

《じゃあ、魔法に関する知識とかも無いのかな?》

「ああ、ある程度はある。だが、理論とかはさっぱりだ。思い出しながら調べるしかないだろうな。じゃないと、魔法を造ることが出来ないからな」

 

 アンリ・マユの神代魔法、幻想魔法は魔法に関する知識が必要だ。座学訓練では、魔法の概念について教えられた。が、教えられたのは、〝魔法がどの様に発動するのか〟と言うものだ。

 

 幻想魔法に必要なのは、その知識だけでなく、魔力と魔法の関係性。魔法と言うものがどの様に産み出されるのか、魔法がどの様に構築されるのか、現象化するのか。と言う知識が必要になる。深く掘り下げていかなければならないので、まともに扱えるようになるには時間がかかる。

 

 しかし、幻想魔法の本質が魔法を生み出す魔法であるだけで、基本的な効力は法則に介入することだ。言ってしまえば、相手が使おうとしている魔法の式に介入して引っ掻き回し、魔法を暴発させたり出来る。そして、その妨害魔法を使うのに必要な適性は持っているので、だいたいの魔法は京楽の前で無意味になる。不発したり、方向が逸れたりするだけだが、人間族や魔人族は魔法をメインに戦う。なので、京楽は天敵とも言える。

 

《じゃあ、これから殆んど毎日勉強になるのかな?》

「そうだな。まぁ、こういうときのために書籍にして残してはいる。後は、私の理解力と発想力の問題だろうな」

《解読できるかな? 暗号化してるんだよね? 認識阻害とか、思考妨害とかその辺りも色々着けてるって聞いたけど?》

「そこは、執念だろうな。どれだけ必死になってかじりつくかの問題だろう。それにだ、解読はできるさ。私が自分で書いたんだから、私がわからない訳がないだろう?」

《自分が一番自分を知っているけど、自分を一番知らないのは自分じゃなかったのかな?》

「ああ、そうだとも。私は、私のことをよく知らない。だがな、私は私に対して無知であることは知っている。わかったならば、自分を解き明かせばいい。解き明かすのは私の十八番だからな」

 

 京楽はそう答えながら星を眺める。ガオケレナの枝葉の隙間から見える星も、枝葉に邪魔されず見える星もキレイだ。

 

「……あいつらも同じ星を見上げてるんだろうか」

《ここで見える星は、この空間特有のモノ。君がそう作ったんじゃないか。知らないうちに、ロマンチストにでもなったのかい?》

「……ユカリの影響だろうな」

 

 ユカリはロマンチストだった。京楽に運命だとか、赤い糸だとかを入れ込み、気が付かないフリを決め込む京楽にひたすらアピールを続けてきた人物。

 

 今気づけば、京楽はかなりユカリから影響を受けている。ロマン思考は、元々京楽が持ち合わせていないものだ。それを与えてくれたのはハジメやユカリだろう。京もそんなことを言うような人間ではないため、京の影響と言うのはない。

 

「………少し見てみるか」

 

 覗き見してるようであまりやりたくないが、生存確認も含めてユカリを千里眼を使って探す。

 

 ユカリの姿を思い起こしながら念じるように目を開いた。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 奈落の底のさらに奥深く。

 

 そこは居住地になっていた。

 

 ハジメとユカリ、奈落の底で二人に拾われた吸血鬼の少女、ユエの三人は大迷宮を突破した。大迷宮を突破しておよそ十日が経っている。

 

「はぁ~、いい湯だな~」

「……ん。気持ちいい」

「なぁ。何で俺も一緒に入れられてるんだ?」

「……ハジメと一緒がいい。だめ?」

 

 三人は仲良く風呂に入っていた。最初はハジメが一人で入っていたのだが、ユエとユエに連れられて来られたユカリと一緒に入っている。ハジメとユカリは兄妹であるためか、そこまで裸でも気にならない。だが、ユエは攻略し終えたあとハジメとその日で恋仲になり情事に至った。

 

 そのためか、ユエと一緒は少し危うかったりする。ユエがハジメを狙ってくるからではあるが……

 

 甘えるような声でハジメに寄り添い、ハジメもユエの誘惑に負けそうになるが、

 

「はい、そこまでね。いちゃつくな何て言わないけど、場所は選んでよね」

 

 ユカリが二人の間に割り入って、引き剥がした。ユエもハジメも不服そうな顔をするが、ユカリの最近の悩みの種になっているたのだ。ユカリは、別に自分の兄が誰かと、恋人といちゃつこうが気にはしない。だが、誰が好き好んで兄と恋人の情事を見たがるだろうか。

 

 兄の情事を見たいなんて感性は持ち合わせていないので、二人の間に入る。

 

 二人はところ構わず盛りだし、後片付けをこそこそやっているのはユカリなのだ。ユエの体液やらハジメの体液やらを片付けては見なかったことにする。こんなことを約十日間続けている。

 

「はぁぁぁ、先輩とお話ししたいよぉ」

「ユカリ、お前、最近そればっか言ってるな」

「だって、だってぇ。先輩がやっとでデレを見せてくれたんだよ? 一杯喋って、好感度をあげなきゃいけない期間なのに」

 

 ユカリはそう呟いて大きな溜息を吐いた。京楽との仲を進展させたいユカリ。京楽の事は好きだし、ずっとベタベタいちゃいちゃしていたいと言う願望はあれど、物理的な距離のせいでそれは叶わない。

 

 京楽は地上に、ユカリはオルクスの最下層に。いくらなんでも距離がありすぎる。会いたくても会えないのだ。

 

 ユカリの溜息を聞いて、ユエがユカリに尋ねる。

 

「……京楽って人。ユカリが好きな相手であってる?」

「うん。先輩が私をどう思ってるかは知らないけど、私は先輩のこと大好きだよ。人嫌いなのにお人好しで、あんまり素直じゃない優しい先輩が、大好きなんだよ」

「……京楽、変わってる」

「うん。自分で性質破綻者って言ってるぐらいには変わってるかな」

 

 ユカリがそうユエと話をしていると、ハジメが眉を潜めて辺りを見回す。そして、ユカリとユエもその行動の意図に即座に気がつき辺りを見回す。

 

「……一瞬、誰かに見られた様な気がしたんだが。気のせいか?」

「私も見られた様な気がしたんだけど」

「……ん。私も」

 

 三人は、一瞬だけ、何処からか視線を感じて辺りを警戒するが、

 

「……気のせいか」

 

 気のせいと言うことにするらしい。

 

 この大迷宮内において絶対的強者となった三人は、警戒しつつも余裕は崩さない。

 

 実際のところ、視線の正体は京楽の千里眼だったりする。開いた途端に見えた光景が光景だったので即座に遮断したのだ。ちなみに、京楽はユエの存在を見て驚いていたりしたが、何かしら関係があったのだろうか?

 

 辺りを警戒しながらもユエの一言で、二人の警戒は解かれた。

 

「……ハジメ。この辺りに人はいない」

「何でだ?」

「……ここに辿り着ける人間がまず少ない。あと、あの視線。たぶん魔法を使ったモノ」

「根拠はあるのか?」

「……私の師匠が似たような事をしてたから」

 

 ユエの師匠。ハジメ、ユカリパーティーにおける魔法のエキスパートであるユエの師匠は、吸血鬼族で世捨て人らしく、名前を名乗ってはくれなかった。

 

 しかし、魔法はユエが知る誰よりも秀でており、今ユエが戦っても勝てるかわからない上に、対魔法の魔法を使えるなど。かなりの奇才を持ち、魔法に関する知識は全てその師匠から教わったものなんだそうだ。

 

 当時の幼いユエの数少ない理解者であり、もっとも尊敬した人。そして、ユエが手にかけた人物でもある。

 

 卒業試験として、ユエは師匠と戦い、師匠を倒した。その際に、師匠は亡くなったのだとか。

 

「あらゆるモノを見渡す魔法か。ユエの師匠は神代魔法でも使えたのか?」

「……違う。師匠は神代魔法じゃなくて、自分の研究の副産物って言ってた」

「ユエの師匠って、何を研究してたの?」

「……魔法と魔力の研究。それ以外はわからない」

 

 師匠がどんな研究をしていたのはユエにはあまりわからないし、師匠がその事をあまり教えてくれなかったと言うのもある。ただ、異質な存在になった自分でも魔力の使い方を教え、魔法を教えてくれた。恩人故に信頼しているし、礼を言いたい。

 

「でも、何で今になってその師匠の魔法を使えるやつが生まれてきたんだ?」

「……たぶん、私以外の弟子の子孫。私以外にも弟子がいた可能性はある」

「なるほどな。それで、偶々見られただけで、今は見られていないと」

「……ん」

 

 ユエはそう言った。ユエも師匠から魔法を一つ授けられているのだ。魔法の名前は〝焦土〟。火属性の魔法で、〝蒼天〟よりも広範囲で、魔力の運用効率を底上げした魔法。魔力の燃費は良く、蒼天よりも強力だが、使用魔力は蒼天と同じぐらいしかない。蒼天よりも高火力で、範囲も広い。広域殲滅魔法であり、高温過ぎる故に視認することが出来ず、敵味方関係なく何故自分が燃えているのか知る間もなく焼き去ると言うかなり強烈な魔法だ。

 

 ユエが一人で国を守るための魔法が欲しい。と、頼んだ結果。教えて貰った魔法で、ユエは半径百メートルが限界だが、師匠はその数倍の距離を焼き払えるらしい。師匠がチートである。そして、師匠は体術や剣、弓、槍などの武器に加えて、ハジメの持つドンナーに良く似た銃器も持っていたらしい。

 

 それを聞いたハジメやユカリは、「この世界にも銃があったのか」と、密かに驚愕していたが、その師匠以外に持っている人間は見たことないらしい。

 

「まぁ、この世界にも、銃があったら戦況なんてすぐに覆るだろうな」

「それに、あったなら私達にも配備されただろうしね」

 

 三人はそんな話をしながら風呂から上がり、各々部屋に戻って夜を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

「くしゅんっ!」

《おや、風邪かい?》

「……気のせいだろう。私も寝るとするか」






お久しぶりです。更新期間が空いてしまい、まことに申し訳ありませんでした

急ぎで書きましたので、誤字、または脱字がありましたら報告ください
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