ありふれない青年が世界最悪   作:幻想者

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今書き上がりました。急ぎで書きましたので、かなり雑かと思いますので、よろしくお願いいたします。


顔を見せに

 

 

 

 

 ガタガタと馬車道を走る高速馬車。その中には、白シャツに黒いズボン。金で縁取りされた薄手の黒いロングコートを羽織り、マフラーを巻いた青年と、限り無く薄い桃色の髪に赤茶色の目を持つ少女。暗い紫色の髪と目を持つ少女が馬車に乗り込み、ゆらゆらと揺られていた。

 

「……アンリ、あとどれぐらいかかる?」

「まだ掛かるだろうな」

「………そ」

 

 紫色の少女、エルはそう京楽から聞くと京楽から渡されているハンバーガー(パン、具材は全て幻想郷産)をモサモサと貪り、桃髪の少女、アリスは京楽にもたれ掛かるように眠っている。

 

 幻想郷で過ごして大体一ヶ月半が過ぎた。

 

 京楽はアンリ・マユの書庫で魔法について研究した。研究したとは言っても、アンリ・マユが書き残した書籍を解読しながら読み解いていっただけだ。

 

 京楽、アンリ・マユの持つ〝幻想魔法〟は、魔法を作り出す、魔法の起源その物と言える神代魔法だ。何度も説明するが、魔法を作り出すためには、どういった魔法なのか。どういったルーツを辿って発生するのかが重要だ。どういった魔法なのかが決まってなければ式が生まれず、どういったルーツを辿って発生するのかがなければ属性も効果もない魔力を無駄射ちするだけのモノとなる。二つが確立していても、式として破綻していれば魔法の発動効率が悪く、膨大な魔力が必要になる。詳細を細かくし、イメージし、どうやって現象として生まれるのかを理解する。そうやって魔法を作るのだ。

 

 例えばだが、クラスメイト達がやっているような〝火球〟の魔法をどうやって発動するのかを京楽なりに表現すると、魔力を球状に集めて、魔力を酸素や炭、種火の代わりとして用いる。それを放つと同時に現象化させる。といった感じのイメージか魔法式が必要になる。

 

 ちなみに、魔力がどういったものなのかも理解し、イメージしなければいけない。

 

 ここトータスの魔法学でもまだ魔力については解明できていない。それ故に魔力を神より受けた恩恵と言う形で確立されている。しかし、京楽はそうイメージしても魔法が発動することも、魔力の流れも動く気配も感じない。となると、魔力がなんなのか? それは神からの恩恵などではなく、生物的、自然的エネルギーを生み出す不可思議なモノだと結論付けた。

 

 それからアンリ・マユの書籍を解読し、自分で何十回、何百回と試行し、実験した結果の果てに辿り着いた。

 

 京楽論で言う魔法とは〝法則〟だ。魔力を操り、魔力を使ってあらゆる現象を引き起こす。それが魔法だ。

 

 例えば、火を起こしたい場合。火の元となる種火とそれを保つための薪が必要になる。そして、その火と薪を燃焼を助ける酸素なども必要だ。

 

 しかし、魔力はそれら全ての役割を代用してくれるのだ。種火になる魔力と、薪の代わりとなる魔力。酸素の代わりに燃焼を助ける魔力があるお陰で火は起こり、現象として成立する。魔力とは、〝あらゆる自然物質に変換出来るエネルギー〟であり、それを攻撃や防御、支援に変換するのが魔法だ。

 

 京楽が辿り着いた答えは、魔力とはあらゆる自然物質に変換代用の出来る万能エネルギーだ。いい例としては、魔力による身体強化だ。

 

 魔力は魔法以外にも、自分の体内に魔法を巡らせたり、纏ったりすることにより、皮膚を硬くしたり、自身の身体能力を向上させたりすることが出来る。魔物は魔力の保有量が多ければ多いいほど高い身体能力と防御力を持つ。そうなると、魔物は魔力がどの様なものなのかを本能的に理解しているのではないだろうか? と推測している。

 

 京楽の研究アンリ・マユの書物の他には、自分で魔物の体を解体したり、人間、他種族の医学書などからの考察結果だ。

 

 例えば、自分の体に雷を纏ったり、する魔物がいるとしよう。

 

 その魔物は自身の体に雷を纏わせて放電するが、魔物の体を開いてみると、その魔物には発電器官を持たない場合がある。しかし、体の何処かに発電器官を代用する器官があるかと言われてもノーだ。発電器官を持つ魔物は、別に固有魔法を持っていることが多く、固有魔法がその系統だとしても、他の魔物よりも雷の出力が高い。そうなると、魔物は魔力を発電材料にしている考えられる。魔力とは自然物質に変換、或いは代用することの出来るエネルギーだ。発電器官と併用することにより出力が増していることもわかる。

 

 ちなみに、京楽が発電器官を破壊した際に魔物の放電の出力が落ちたので実験済だ。

 

 色々な実験や考察の結果、京楽は無事に魔法を生み出せるようになった。しかし、現象にするときのイメージはかなり難しいため、現在はメモに魔法を書き止めている。一応、魔法を生み出すことは出来たし、京楽はオリジナルの魔法を二つ所有している。

 

 まず一つは、〝結界魔法〟。

 

 結界魔法は、この世界既存の〝結界術〟とは違うモノだ。原理としては、既存の〝結界術〟は、相手からの攻撃を守ると言うモノで、自他共に侵入不可能の壁を築く。しかし、結界魔法は壁ではなく、相手と自分の間に境界を敷くと言うものだ。

 

 相手と自分の間に境界を敷くことにより、相手の侵入を拒んだり、受け入れたりすることが出来る。ちなみに、防御のための魔法ではないし攻撃用の魔法でもない支援系の魔法のため、あっても好んで使うものはあまりいないだろう。

 

 しかし、この結界魔法は境界を渡る、擬似的な転移も可能だ。

 

 理論としては、転移したい場所にピンを置いて、自分の場所にもピンを置く。そして、地図を畳むようにして自分のすぐ近くに目的地と現在地の境界を持ってきて境界を越え、移動する。そうすることで擬似的な転移が可能になる。この魔法が完成した際、京楽は世界の境界を越えられるのか実験しようとしたが、場所がわからないので断念した。原理が思い付いた理由としては、神代魔法の一つである〝空間魔法〟だ。

 

 空間魔法は、空間と空間を入れ換えたり、空間を広げたり、縮めたりと言った空間自体に干渉する神代魔法だ。しかし、その本質は世界のあらゆる境界に干渉する魔法のことだ。

 

 あらゆる境界に干渉して、その境界を超えることが出来るようになり、空想と現実の境界をあやふやにして、自分の想像上に存在するモノを現実世界に引っ張り込んだり、実態のあるモノを非実態物にすることができる。

 

 結界魔法は、空間魔法のように境界に干渉する。ではなく、自分で境界を敷き、操ることに特化させた魔法であるため、空間に干渉することは出来ない。しかし、かなり強力な魔法ではある。

 

 二つ目が、〝凍結魔法〟。

 

 凍結魔法は、熱を操る魔法で、温度その物干渉するオリジナルの魔法だ。

 

 凍結魔法自体は、熱の放出と回収が主な作用で、気温の上昇、気温の減少を操ることができる。そして、その副次効果で気候や風を操作することができる。支援も攻撃も防御も出来る万能的な魔法だ。

 

 ちなみに、幻想魔法自体は相手の魔法を霧散させたり、相手の魔法に使われる魔力を暴発させたりする妨害系の魔法だったりする。

 

 京楽は、神代魔法をも造り出せるような存在にはなったものの、アンリ・マユのように神性が少しでも残っている何てことはないので、神代魔法を劣化させた亜種系魔法しか作れない。

 

 そして、その造り出した魔法に対する適性がなければ、当然のごとく扱うことは難しく、最悪使えないものもある。

 

 だが、これらの魔法を使用可能にするアーティファクトも所持している。それが、京楽が万能なアーティファクト扱いしている空白の本だ。正式名称は〝アルカナ〟という。

 

 アルカナは、アルカナ自体に魔法を登録し、持ち運べるアーティファクトで、アンリ・マユ専用のアーティファクトだ。アルカナ自体に意思があり、アンリ・マユに使われることを至高の喜びとするアーティファクト。

 

 登録してある魔法を、適性関係なしに、詠唱のみで発動させることが可能な上に、魔法の出力を上げる効果も持つ破格なモノだ。アンリ、又は京楽以外に扱うことができず、下手に扱おうとすると、アルカナに登録されている情報をいっぺんに頭に流し込まれて、手を離すまで脳を処理落ちさせるという嫌がらせをする。

 

 そして、京楽から離れようとしないので、常に持ち続けないといけないのがかなり不便だが、便利だ。

 

 ちなみに、今の京楽は、馬鹿げたステータスと、技能を持つようなアンリ・マユではなく、人間としての京楽だ。ステータスはこんな感じになっている。

 

==================================

八雲京楽 17歳 男 レベル:57

天職:賢者

筋力:340 [半竜化+4080]

体力:340 [半竜化+4080]

耐性:340 [半竜化+4080]

敏捷:670 [半竜化+8040]

魔力:1020

魔耐:1020

技能:剣術[+斬撃速度上昇][+斬撃威力上昇][+抜刀速度上昇][+居合][+無拍子][+剣速通し]・弓術[+射撃術][+射撃速度上昇][+射撃威力上昇][+連射速度上昇][+気配遮断][+気配察知][+矢製][+龍墜射]・槍術[+薙術][+棒術][+突撃速度上昇][+突撃威力上昇]・体術[+受け身]・格闘術[+身体強化][+浸透勁][+砕拳]・高速魔力回復・並列思考[+思考加速][+情報処理速度上昇]・幻術・縮地[+摺縮地][+震脚]・先読[+幻視][+直観]・言語理解・反転化[+人類悪]・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収][+循環効率上昇]・半竜化・千里眼・幻想魔法・魔法適性[+詠唱時出力上昇Ⅳ][+詠唱時効率上昇Ⅴ][+詠唱時魔力効率上昇Ⅴ][+詠唱時魔力出力上昇Ⅲ][+詠唱省略][+イメージ補強率上昇]

==================================

 

 こんな感じになっている。まぁ、十分すぎるほどのチートスペックなのだが……

 

 京楽になると、竜化が半竜化になり、大体の技能が消えた。おそらく、八雲京楽とアンリ・マユで生物としての情報に違いがあるからだろうが、ステータスは十分高く。魔法も使えるようにはなっていた。

 

「……アンリ」

「なんだ?」

「……まだ食べる。ちょうだい」

 

 ハンバーガーを食べ終えたエルが、京楽にもっと食べたいとねだる。京楽はそれに応えるようにハンバーガーを取り出して渡す。

 

 目の前でハングリー美少女がハンバーガーを貪り、隣で可愛い少女が肩に頭を預けて寝ている。まさに両手に花である。

 

「………そろそろで着くな」

 

 しばらく馬車に揺られていると、見るのは二度目となる町。ホルアドが見えてきた。

 

 ホルアドに来た目的は、顔を出すと約束した雫への生存報告だ。千里眼で雫が何処にいるかを特定し、雫は一部のクラスメイト達と訓練で再度オルクス大迷宮の表層に潜っているらしい。なので、王都にではなく、直接会いに来ているのだ。

 

「……会うのは大体二ヶ月ぶりか。元気にしてるだろうか?」

「…………元気だと思う」

 

 食べ掛けのハンバーガーから顔をあげ、紫色の瞳で京楽を見つめる。

 

「……ごはん一杯食べて、寝て、起きる。元気だと思う」

「そうか」

 

 言いたいことは言えたようで、ハンバーガーに意識を戻す。京楽はそんなエルを横目に、だんだんと近づいてくるホルアドを眺めていた。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 馬車から降り、ホルアドに来たアリスとエルの反応は違った。

 

 アリスは辺りを見回しながらビクビクと恐がり、エルは焼けた肉の匂いや露店飯を見て感嘆の声を漏らしている。

 

「どうだ。初めて来た町は」

「ひ、人が多くて恐いです」

「……美味しい匂い、一杯」

「後で買ってやるから今は待て」

「……うん。私、ちゃんと待つ」

 

 アリスは京楽の腕にしがみついてビクビクと怯え、エルは目をキラキラと光らせ、口元から涎を垂らしている。それを京楽があきれ気味にハンカチで拭う。アリスの様に人を怖がらないのはいいが、別の意味で手がかかる。

 

 アリスは先祖帰り吸血鬼。エルは純粋な人族。だが、エルは帝国のスラム育ちだそうで常識はない。そんな二人を連れてきた理由は、生きていく上での常識を教えるためだ。

 

 二人が満足するまで幻想郷で面倒を見てもいいが、京楽は旅があるし、アリスはそれについてくる。エルを幻想郷に置いていてもいいが、空腹で暴れられても困るのだ。屋敷にいるオートマタに食事の世話を頼んでもいいが、確実に好きなものだけを食べ偏食する。過保護だと言われればそれまでだが、幻想郷にいる間の保護者として偏食を許すつもりはない。

 

「さて、宿探しからだな。アリス、エル。行くぞ」

「は、はいぃ」

「……アリス、恐くない恐くない」

 

 京楽の腕にしがみついたままのアリスと、その頭を撫でるエルを引き連れて適当に宿を探し、二人の服を服屋で新調させる。

 

 アリスは青いジャケットに黒縁のキャミソール。赤いミニスカートに水色のローファーに黒のニーソックス。マフラーは生地が痛んでいたため、京楽が襟巻きにした。エルは黒のベレー帽に毒々しい紫色のぶかぶかパーカーをワンピースの様に着て、ヒールサンダルをはいている。

 

 ちなみに、京楽が服を選んだわけではない。服屋に連れていって服を店員に選ばせ、本人達の好みを足した結果こうなっただけだ。アリスはミニスカートで顔を赤くし、エルはだぼっとした大きな袖から指だけがギリギリ見える。

 

「は、恥ずかしいですぅ」

「…………ダボダボ~」

「お似合いだと思いませんか? お客様」

「似合っているとは思うが……アリス、……この子はミニスカートじゃなければダメなのか?」

「はい! 大きな胸に、括れた腰に肉付きの良いお尻。そしてそこから伸びる足! それを際立たせるニーソックスとミニスカートの絶対領域! 色香を漂わせるも、顔は幼く可愛らしい! 良い組み合わせじゃないですか!」

「そ、そうだな」

 

 どうやら、店員の趣味らしい。アリスに視線をやると、顔を真っ赤に染め上げて、羞恥でプルプルと震えている。それをエルが慰めていた。身長的にアリスの方がお姉さんっぽいが、逆だった。

 

 アリス用で長めのスカートと、京楽の変装用で幾つか服を購入して店から出る。

 

 店から出た京楽が目にしたのは──

 

「良いじゃん。たまには二人でお洋服見ようよ」

「仕方がないわね」

「やった。じゃあ、あっちから見に行こ?」

 

 幼馴染みである親友、香織と楽しげに話す雫だった。

 

「……? アンリ、探し人、見つかった?」

「………ああ」

 

 見付けはしたが、行動を起こすつもりはない。せっかく行方を眩ませたのに、見付かってしまえば勇者、天之川光輝に何を言われるかわかったものではない。行動を起こすなら夜だ。

 

 エルとアリスの二人を引き連れて、京楽は宿に戻っていった。






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