sideコウ
うぁ〜寒!防寒していてもやっぱり冷えるな。早いけどもうカイロ開けよ。
現在時刻は朝の5時半。まだ辺りは暗く東の方向を見ても明るみは一切見えない。
「あ、来た来た」
「このみさん早くないですか。30分前にはいましたよね?」
「いや〜今日は寝れなくてね。オールしちゃった」
「元気ですね〜」
この人なら2日ならオールできそうだな。
「あ、ごめんね〜。夏海たちまだ起きなくて」
「やっぱりか」
「予想どうり集まったのはこの4人だね」
(コクコク)
なぜ、この時間に僕や兄ちゃんやこのみさんが越谷家の前にいるかというと。今日は1月1日、そしてまだ夜中。つまりは初日の出を拝みに行こうってことだ。
「とりあえず車に運びませんか。二人とも今日はパジャマで寝てないんですし、車に乗ったら30分くらいなら追加で寝れますし」
「そうだね。じゃあ私夏海運ぶからコウ君は小鞠お願いしていい?」
「了解です」
「小鞠〜起きてる〜?」
「・・・・・」
「だめだ、これ本当に起きないな」
一言謝ってから小鞠をベッドから持ち上げる。そのまま靴を持って車に乗せる。ここまで起きる気配は全くない。ちなみに昨日は今日を楽しみにして二人とも寝れなかったらしい。まったくなにをやってるんだか。二人らしいっちゃ二人らしいけど。
「ほいっと、雪子さ〜ん車出してもらって大丈夫ですよ〜」
「じゃあ近くの山に行くよ〜」
というわけで初日の出を見に出発。ちなみに、宮内家は楓さんと一緒に別の場所で初日の出を見に行って、ほたるんは家族で見に行くらしい。さてと、小鞠起こさなきゃ。夏海の方はこのみさんがやってくれるらしい。
「小鞠〜もう少しで着くよ〜」
「ん〜」
「返事だけはするんだけどな」
いやほんとにそろそろ起きないと寝ぼけたまま山を登ることになるぞ。
「ついたけどまだ起きそうにないかい?」
「半分起きて半分寝ている状態ですね」
「姉ちゃんウチは起きたんだから姉ちゃんも起きてよ」
「ん〜・・・・・後十分・・・」
「はぁ、ほんとに後十分で起きる?」
「・・・・・・・うん」
仕方ない。僕も初日の出が見れないのは嫌だし、小鞠を車に一人残すわけにもいかないし。仕方ないか。
「それじゃあ小鞠。おんぶしてあげるから一瞬だけ起きて」
「ん・・・・わかった」
「ほら、しっかり腕組んで」
(お、小鞠ちゃんやるね〜)
(いや、たぶんあれまだ寝ぼけてるね)
(ウンウン)
「じゃあコウ君に小鞠任していいかい?」
「大丈夫ですよ。山登ましょ」
side小鞠
んぅ〜。あれ・・・・・ここは?
目を開けるといつもの畳の自分の部屋ではなく、森の中。そして黒い髪の毛の後頭部。たぶんコウだよね。
え、コウ?
「うわぁ!コウ?!」
「びっくりした〜いきなり大声出さないでよ」
よく考えろ私!好きな人の背中で安心してる場合じゃないよ。ここどこ?!周りはまだ暗いし森だし怖いし!とりあえず。
「でもなんでコウと私がこんな場所でおんぶされてるの?!」
「覚えてないの?今日はみんなで初日の出を見に行くって予定立ててたじゃん」
「あ〜そういえば。ってそうじゃなくて!なんでおんぶされてるのって!」
「小鞠が車から降りるときに起きないから初日の出見れなくならないようにおんぶしてるの。それに、小鞠を車に放置したら怖がるでしょ」
「それはそうだけどさぁー・・・」
心臓の音がうるさい。密着状態とわかってから鼓動が早くなってる、幸いにもコウには気づかれてないけど。何か、何か話さないと気まずいよ。
「それより、目は覚めた?」
「え?」
「目が覚めたならそろそろ降ろすよ」
そうだ!日の出を見に行くために今山道をおんぶしている状態でコウはここまで来たんだ。・・・・まって。
「ねえコウ。夏海やこのみちゃんは?」
「前にいるよ?」
そうういいながら、コウは前が見えるように首を横の倒す。3歩先に夏海、そのまた3歩先にこのみちゃん。
どう考えてもさっきの会話が聞こえる距離。
必死に自分が何を言ったか思い出そうとするが、起きてすぐとコウの背中にいるのとで会話文が全く思い出せない。特に意識が覚醒するのより前は寝ぼけて何を言っていたかわからない。それよりさきに会話の感覚の方が思い出してくる。さっきはコウと私だけだと思って二人でいるときにしか言いそうにないものを言ってそうな気がする。いや、気しかしない。
「小鞠〜目は覚めた〜?」
「うん、覚めた」
あとでこのみちゃんに聞いてみよう。
sideコウ
着いた〜!
ある程度道ができているとはいえ、やっぱり山登りはきついな。まだ空は暗いけど東側は少し明るくなっている。ちょっと早めに着きすぎたね。
「なんか早めに来ちゃったね」
「そうですね〜・・・コンポタかおしるこでも飲みますか?」
「お〜、おしるこで」
「兄ちゃんたちはいる?」
「欲しい!」
「ウチも欲しい!」
おぉ、大盛況。両方作ってよかったな。あずきとコーンって何か正月のおせち料理のような意味はあるのかな?
紙コップ紙コップ。
「はぁ〜寒い日のおしるこはいいな〜」
「雪子さんはどうですか?」
「おぉ、助かるよ。ちょうど体を温めるものを忘れて来ちゃったからね」
「コンポタとおしるこどっちにします?」
「じゃあコンポタをもらおうかな」
「どうぞ」
そんなこんなしているうちに空が明るくなってきて。気づけば日の出の時刻まで10分を切っている。
「コウ!おしるこおかわり!」
「小鞠おせち料理入る?」
「あ・・・」
静止しといてよかったかもしれないな。これ。
そんなことを考えながら、山と山の間から出てきた赤い丸を見つめる。綺麗な初日の出だこと。
「よし、じゃあウチから皆さんに言いたいことがあります!」
「ここにいる全員がそうだろうよ」
「「「「「「あけましておめでとうございます!」」」」」」
side小鞠
「このみちゃん準備できたよ〜」
「よしじゃあ行こうか」
「姉ちゃんどっかいくの?」
「初詣〜」
「なんだ〜遊びに行くんじゃないのか〜。じゃあ私レンチョンのとこ行ってくる」
夏海は来ないから今年こそ願うチャンス。今年こそ身長を伸ばしてもらう!
いつもは夏海にバカにさせれて願えてないけど、今年はいない。一緒に行くこのみちゃんや蛍やコウはバカにしてこない。というか早くコウの身長に追いつきたいし。
「お待たせ〜ってコウは着物じゃないの?!」
「いや着物は持ってないんだって」
「私と全く同じ反応ですね」
あ、そうえいばそうだった。
「おいっす〜今日は街の方まで電車で乗るけど時間とかは大丈夫?」
「時間は大丈夫ですけど近くの神社じゃないんですね」
「だってあそこ小さいからお祈りの効果薄そうだもん」
「なんつ〜罰当たりな」
「あはは・・・小鞠先輩なにか願い事するんですか?」
「身長伸ばしてもらう」
毎日煮干し食べてるし、牛乳も飲んでるからこれでもっと伸びやすくなるよね。
「な、なるほど。そういえば、夏海先輩と兄ちゃん先輩はどうしたんですか?」
「夏海はれんげのところに遊びに行って。兄ちゃんはおせち料理作るの手伝ってたよ」
「あ〜メガネ君料理うまいからね〜家事大体できるしお嫁にもらいたいくらいだよ〜お婿さんには別にいいけど」
「なかなかに爆弾発言してませんか?」
「そういうコウ先輩は一人暮らしなのにおせち料理準備しなくていいんですか?」
「僕はもう、準備終わってるから大丈夫」
「え、いつ?」
「初日の出見に行った前から作り始めていたからね」
「じゃああとでコウ君のおせち料理食べに行っていい?」
「このみ先輩の家はおせち料理準備してないんですか?」
「いや、してるよ。単純にコウ君の料理は美味しいからね」
「自分の家のもの食べてください。人一人が追加できる量はないです」
なんだ〜コウのおせち料理食べたかったんだけどな。来年くらいには頼んでみよっかな。
「それよりコウ君。女の子3人が着物着ているんだよ〜感想は〜?」
「はいはい、華麗ですよお三方」
やばい、顔が熱い。恥ずかしい。コウは見た感じ流すように言ってるけどどう頑張っても流せない。嬉しい。
結局その会話の後。話す内容がなくなったのか。会話がなくなり目的地まで揺られるようになった。
「ついた〜建物いっぱいだー!都会だー!」
(やっぱり郊外だ。コンビニは久しぶりだけど)
何か蛍がボソボソ言ってたけど。キコエテナイキコエテナイ。
でもやっぱり東京ってここ以上に建物は多いのかな?ここでも十分に建物はあるはずなんだけどな。
「神社はこの通りをまっすぐに行ったところにあるから」
「この通りですか?」
「そうそう、出店とかあって人が多いから固まって行こう」
出店をの文字を見て種類を見てみる。焼きそばや焼き鳥にわたあめなど。
わたあめ?!
?
走り出したはずなんだけど前に進めない。というか引っ張られてる?
首を後ろに向けると手を握られている。あ、これで進めなかったんだ。今になって引っ張られてる感覚を認識したけど。握っている人の手から腕に向けて目線を向けると。
「ちょっとコウ!なんで手握ってるの?!」
「さっきも同じようなこと聞いた気がするけど。聞こえなかった?固まって移動するよって会話をこのみさんと蛍でしてたじゃん」
あ、そういえば。 わたあめを見つけてそれどころじゃなくなっちゃったんだよね。
って違う!
「わかったから離して!」
「もう急に走らない?」
「走らない、走らないから!」
まずい、今は蛍だけじゃなくてこのみ姉までいる。今朝のこともあるから一刻も早くにどうにかしないと。
「まったく、急に飛び出したら危ないからね?」
「うん、ごめん」
あ~もう。恥ずかしい!このみ姉はまだ後ろだから気づかれてないだろうけど。
「それで、何が欲しいの?」
「え、買ってくれるの?」
「そりゃあまた走られたら困るからね」
「じゃあ、わあため」
結局買ってもらっちゃった。
side蛍
「ねえねえ、どう思う?」
「なにがですか?」
「あの二人の現在の関係だよ」
「あ~」
見たところ。小鞠先輩はいつもどうりアタックして、コウ先輩はそれを素面で避けるかカウンターを出す感じだからな~。
「コウ先輩ほんとに鈍感なんですね」
「正直、私たちが手引きしないと絶対に認識しないと思うんだ。見てて楽しいんだけどね」
「高校や大学に行ったら小鞠先輩どうするんでしょう?」
「ん~小鞠ちゃんのことだからそこまではまだ考えてないかもね」
「じゃあ、やっぱりいうタイミングは今年か来年くらいですね」
「そういうこと。全く、コウ君は鋭いのか鈍いのか」
「鋭いけど、恋愛に対しては経験がないですからね」
「そこが鋭ければ問題ないんだけどな~」
小鞠先輩。まだまだ苦労しそうですね。
side小鞠
「うわ~人多」
「街の方から来てるから仕方ないよ。コウ君は人込み苦手だっけ?」
「はい。まあこれくらいなら大丈夫ですよ。東京の神社はもっとすごいんで」
「コウ先輩東京のこと知ってるんですか」
「知ってるも何も僕が小6の頃に東京の学校から転校してきたからね」
「それで、その話を聞いて東京の高校に行ったのがひかげちゃんだよ」
「ひかげさんの場合は元々東京に行きたがってましたからね」
「じゃあ私よりも長くいたんですね」
「でも、僕が東京を離れて三年たつから多分何もかも変わってるよ」
「そんなことより、三人とも私の背が大きくなるように念込めて」
(それは僕たちも必要なのかな?)
よ~し、これで3倍だ!
「そういえば、願いごとって口に出したら叶わないんじゃなかったっけ?」
へぇ?
「え?!あれ願い事するときじゃないの?!」
「いや、あまり詳しくはないけど。そういう話をよく聞くなっと思って」
「じゃあなんで言ってくれなかったの?!」
「だって小鞠ちゃん速攻で言うんだもん。言ってる暇なかったよ」
え、うそでしょ。じゃあ今日遠出した意味って一体・・・・
「そ、それでは。間接的に背が伸びる別の願い方をしたらいいんじゃないでしょうか?」
「じゃあ、明日から私以外の人の身長が半分になるとか」
「言い方がアレですがそういう感じで」
「だから、小鞠ちゃん声に出しちゃダメだって」
あ、そうだった!
え~と。
「お賽銭って五円がいいんでしたっけ?」
「そうそう、あとは五十の縁の意味の五十円とか始終の縁の意味で四十五円とか。逆に十円は遠縁になるから避けた方がいいよ」
だめだ、身長に関連する願い事って何?全く思い浮かばないんだけど。
「小鞠~次の番だよ~願い事は決まった?」
「まだ、全然思い浮かばない」
「じゃあ先願いごと言っちゃうよ?」
「え?」
前を見ればコウや蛍が前にいて、すでに願い事をしている。やばい!早く願い事・・・・・願い事・・。
「もう、この際だから願い事身長以外にしたら?何かないの?」
・・・そっか。その方がいいかも。思いつかないし。
身長以外・・・・・・身長以外・・・・・・身長以外・・・・・・身長
「はい、じゃあ次小鞠」
「うわぁ!急に来ないでよ!」
「急って目の前にいたじゃん」
「あ、そっか」
「相当考えてたね。願い事決まった?」
「・・・・・・・・・うん」
よくよく考えたら、身長以外で私の願い事なんてこれしかないか。この神社に恋愛成熟のご利益があるかどうかは別だけど。
財布から5円玉を取りだして賽銭箱に投げ入れる。鈴を鳴らし、二拝二拍。
最後に一拝。
「終わったよ~」
「ちゃんと願い事は言えた?」
「そういうコウは何を願ったの?」
「僕は願いが叶わなかったら嫌だから言わない」
「あそっか」
「なんか小鞠ちゃん機嫌いいじゃん」
「とびっきりの願い事してきたからね~」
「じゃあ、帰りましょうか。そろそろおせち料理もできてる頃でしょうし」
「うん、帰ろ帰ろ~」
sideこのみ
あそこまで機嫌がいい小鞠ちゃん久しぶりに見たかも。十中八九願い事はコウ君のことだろうね。
「小鞠ちゃ~ん危ないよ~」
「大丈夫~」
あれ、幼くなった?
「コウ君、小鞠ちゃんお願いしていい?」
「了解です。というか小鞠めっちゃ機嫌よくないですか?」
「私も久しぶりだよ。だからお願いね」
「了解です」
ってもうすでに転んでるじゃん。
「小鞠ちゃん大丈夫?」
「私は大丈夫だけど君は大丈夫?」
「うん、ごめんなさい」
「全くこの子は」
多分親子できた人だろう。
「すいませんね、ほらあんたも謝りなさい」
「うん、ごめんなさい」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「同年代の子があんな落ち着いてるんだからあんたももう少し落ち着きなさい」
あ・・・・
「えっと・・・小鞠ちゃん?」
微動だにしないよ。
「小鞠ちゃん?」
「小鞠~?」
「小鞠先輩?」
「来年は絶対に身長伸ばしてもらうもん‼」