sideコウ
あ、そろそろ時間か。
今日は道普請をする日。簡単に言えばこの村の用水路の掃除や伸びてきた植物の枝打ちを村のみんなでやる日。僕たち子供には仕事が重労働なため遊んでていいとのこと。
前もって呼ばれているため小鞠たちを呼びに行かないと。
「お〜い小鞠〜夏海〜兄ちゃ〜ん来たよ〜」
あれ、いないのかな?
でも靴とかはそのままあるし、なんだったらこのみさんもいるし。
廊下を歩いてみると電気のついた部屋があった。
「ここか?」
「いただきっ、へたレンジャいっ!!」
「何をやってるんですか、お三方」
こたつを囲んで目に柿のヘタを当てて叫んでいる。絵でも文字でも中々にヤバイ現場に思えてきた。
「え、コウ!いつからいたの?!」
「今来たばっかだよ。時間になったから呼びに来たけど、干し柿作りの途中だったかな?」
「え、なんでわかるの?」
「外に干し柿吊ってあったからさ、それよりさっきの何?」
「あわわ・・・・わ、忘れて。お願いだから!」
「まあ忘れることは構わないけど、干し柿作るなら僕も読んでくれたらよかったのに」
「それよりも、れんげやほたるんが待ってそうだから早く行こう!」
「?。じゃあ兄ちゃん呼んでくるよ」
「れんげー来たよ〜」
「あ、コウにぃ。このみ姉も一緒なん」
「とある条件付きで一緒に来たよ〜」
「条件ってなんな?」
「それは言えないよれんげちゃん。なにせ条件内容がシークレットだかららね」
「わかったのん!このみ姉コウにぃ知られたくないこと知られたんな!」
「え、いや、、、違うよ?」
(やっぱりれんげってカンが鋭いよな)
「あれ、違ったん?」
「うん、はずれだよ」
「それよりもほたるんはまだ来てない感じ?」
あ、自分のも暴露されたくなくて話し変えたな。
「ほたるんはまだ来てないん」
「おはようございまーす」
「お、来た来た」
「こんにちは、今日はこのみさんも来てるんですね」
「うん、今日はなにするのかな」
「今日はみんなで山菜でも取りに行こうかなって」
「山菜ですか?」
「そう、この山道を散歩しながら取っていこう」
「山菜ってなにが採れる・・・・・ちょっと待ってください。立ち入り禁止区域って看板があるんですけど」
「大丈夫なん。この山ウチの山なん」
「え、もしかしてれんちゃんの家ってものすごいお金持ち?」
「あ~ここらへんじゃそんなに珍しくないよ。東京ではなかなかないだろうけど」
さて、何があるかな~。
今の時期なら代表的なのはフキノトウやゼンマイ。ヨモギなんかも取れそうだな。コゴミとかは新鮮な状態だったら天ぷらにしたいな。
あ、いいものはっけ~ん。
「ほたる~ん。ちょっと来て~」
「はい、どうしました?」
「これ食べてみて、生でも食べられる山菜だから」
「はい、それででは。いただきま~す」
「・・・どう?」
「ちょっとピリッとしますけど・・・・辛い!」
「ほい水。な~んだとおもう? ちなみに味だけならほたるんも知ってると思うよ」
「え、もしかしてワサビですか?」
「ピンポーン。これはワサビ菜って言って、ワサビの鼻に来る感覚がこの葉にもあるんだよ。東京では愛彩菜って名前だった気がする」
「あ、名前だけなら知ってます」
「いやでも結構辛さ耐性あるね、辛すぎて顔真っ赤になった人もいるのに」
「コウ先輩も結構いい性格してますね」
「そっちの方が楽しく生きられる気がするからね」
それにここの人たちは弄ったら反応が面白い人たちばかりだし。
sideれんげ
ヨモギいっぱいなーん
天ぷら、お餅、パンにお茶。何にすればいいか悩ましいん。
「れんちょーん。ちょっと手伝って〜」
「なんなー?」
「今この花とってるんだけど、見渡す限り数が果てしないし」
「この花食べれるん、なんて言う花なん?!」
「れんげ」
「なっつん? どうしたんな?」
急に呼び捨てなん? 今の一瞬の間にウチ何かしたん?
「ははは、違うよれんちょん。この花がれんちょんと同じレンゲって言う名前なんだよ」
「ははーなるほどなん。でも同じ名前と知ってしまったから食べる気が起きないのん」
「え~もう結構な数取っちゃったよ。ん〜じゃあれんちょん目つむって待ってて」
「わかったのん」
「なっつ〜ん。もういんな?」
「うん、目を開けてもいいよ」
なにも変わってないん?
「れんちょん頭触ってみて」
あたま?
手を頭の上に置くと同時に髪の毛とは別の何かの感触。それをとって目の前におろしてくると。
「な、なんなんこれは?!」
「あ〜とっちゃダメだって。それは花冠だよ」
「冠!お花で冠つくれるん?!」
「うん、作れるよ。あとは〜でっかい葉っぱを背中あたりにさして。妖精のできあがり〜」
「おぉ!妖精さんなん。背中に羽があるのん!なっつん、これほたるんたちに見せて来ていいん?」
「うん、いっといで〜」
「ほたる〜ん」
「あ、かわいい。れんちゃんそれどうしたの?」
「なっつんに作ってもらったん。この格好ふぁ・・・・ファンキーなん?」
「ファンキー?!」
「まあ、見ようによってはファンキーかも?」
「ファンキーなのーん!」
sideコウ
よし、こんなもんかな。
「こっちはどんなかんじですか?」
「こっちもいっぱい採れたよ」
「じゃあ、そろそろ合流しましょうか」
「コウくんはどんな感じ?」
「こっちも相当採れましたよ。おそらくこんばんは山菜パーティーでしょう」
「お、呼んで呼んで」
「じゃあ全員分作っときますよ」
「あ、コウにぃにこのみ姉!」
「れんげちゃんその格好どうしたの?」
「なっつんに作ってもらったん。ファンキーなんな〜」
(ファンキーってなにかわかる?)
(おそらくなにかの間違いでなってるんでしょうけど、もとが全くわかりません)
「どう?野草とれた?」
「ああ、たんまり採れたよ」
「コウにぃ。うちコウにぃの天ぷら食べたいん!」
「今夜おいで、今日採ったぶん揚げて待ってるから。あ、ちゃんと親御さんに許可取ってね」
「それじゃあそろそろ戻りますか」
家の前は道路だけど、どうせ夜になれば車は来ないし。
「このあと何する〜?」
「私たちはちょっと予定があるので〜」
「え、小鞠ちゃん?」
「小鞠先輩?!」
(お願い二人ともちょっと相談にのって)
「じゃああっちは遊べないから〜。コウはどう?」
「僕は天ぷらの準備しないと。この量だったら家の材料だけだったら足りないし」
「じゃあウチとなっつんで妖精さんごっこするん」
「えーさすがにウチも妖精ごっこはむりだよ」
「大丈夫なん、腕を前にだしてぶぉぉぉーん!とするのん!」
「ぶぉぉぉーん!!」
えぇっと、サラダ油が底切れてたっけ。小麦粉は問題なかったはずだし。
「おかえりー。あ、コウ。あっちでコウのこと探してた人いたよ」
「なんでですか?」
「なんでも、用水パイプの中身が詰まってるらしいから現役中学生の知恵を借りたいんだとさ」
「現役教師の知恵は借りられないんですか?」
「まあ、頼んだ」
「はぁ〜了解です」
side小鞠
「ねえ小鞠ちゃん、そろそろ引き止めた理由言って欲しいんだけど・・・」
「うん、ここなら大丈夫かな。このみちゃんにほたるん正直に教えて、私がコウのこと好きなの知ってる?」
「え、え〜と。はい、知ってます」
「私は前から」
「他に知ってる人は?」
「もうみんな知ってるよ。一人を残してね」
「コウのこと?」
「はい、唯一の鈍感なので」
「じゃあ、コウは大人の雰囲気の女性の方が好きかな?」
「どうでしょう、コウ先輩は好きなものもや嫌いなものなどのことが全くわからないですし。このみ先輩はどうですか?」
「私も同じかな、嫌いなものなさそうだし」
「そっか・・・」
私もそこまで知ってるわけじゃない。好きな人のことを知りたいとは思うけど、コウは自分の好きなものとかを言わないし嫌いなものも言わない。家にあるものもこれと言って何か特徴があるものはない。ついでに言えばコウの部屋にもない。
「元気だしてよ小鞠ちゃん。好きな人のことを知りたいって思うのは確かにそうだろうけど、恋人になったとしても何もかも知ってるってわけじゃないからさ」
「え、私そんなにわかりやすい?!」
「うん、わかりやすい」
「なんでコウ先輩が気づかないんだろうってくらいわかりやすいです」
こんなにわかりやすいんだったらみんなにも知られるか。
「お〜い小鞠〜いる〜?」
「・・・・///!」
「ほら、そういうところだよ」
確かに。この反応を目の前でされたらわかるか。
「あ、小鞠。ごめん大きめのビニール袋ある?2枚欲しいんだけど」
「え、確か台所にあった気がするけど。何に使うの?」
「さっき用水パイプが詰まってるって言ってたじゃん?それを取り除くのに必要なの」
「そうなんだ。はい、大きめのビニール袋。どうやって使うの?」
「見にくる?」
「じゃあ行きたい」
「このみさんとほたるんはどうですか?」
「なんで私たちいるのわかったの?」
「靴があったのでね」
「私は行きたいです」
「じゃあ私も行こうかな? さっき言われてた現役中学生の知恵が見たいし」
「そんな壮大なことはしないですよ」
sideコウ
「すいません、遅くなりました。パイプの大きさに合う石見つかりました。楓さん?」
「ああ、こんなんでどうだ?」
「はい、十分です」
「コウくん、私たちはなんか手伝うことある?」
「じゃあ落ち葉をこの袋に詰めてください。僕は上の方のパイプの入り口でちょっと様子見て来ますので」
「わかった」
このパイプは僕が来る前から詰まり始めており、年々水の量が減っていたが。いよいよ水が回らなくなってきていたらしい。
全長20メートルくらいのパイプ。
上の方は、見た感じ水が流れてない。そして下の方は詰まりが見えない。つまり、だいたい中間地点で詰まっている。
「コウくん、準備できたよ。こんぐらいでいい?」
「うん、大丈夫。もう一ついいかな?」
「今度は何かな?」
「この袋と石をパイプに詰めて、上から水を押すから石と袋が出て来ないように押さえていて」
「わかった」
「でも、まずはこれをはめて、ちょっと放置」
「これは何をやってるの?」
「中に水を貯めてるんだよ。こうしないと中に空洞ができちゃうからね、詰まったものが出て来なくなっちゃうよ」
「よし、そろそろ溜まったかな。結構重いからかなり力を入れて押さえてていいよ」
「うん、わかった」
それで、上の方からは袋で詰めてっと。
よし、これで押すときに速く、引くときにゆっくりと。これを4回程度。
「そっちは大丈夫〜?」
「途中4回すごい押されたよ」
「中に水が溜まっている証拠だね。それじゃあどいて」
side小鞠
「中に水が溜まっている証拠だね。それじゃあどいて」
「うん」
パイプに挟まった石を取り出して、袋を掴むコウ。
「ねえ、コウ。それどういう原理なの?」
「えっとね、中の水圧を上げてから出口で一気に開けることで中の圧力を解放する。解放したときの勢いで詰まったものを流すって感じかな。ようするに圧力を利用しただけだよ。さっき4回押されたって言ったでしょ。それが内部の水圧が高くなった瞬間だよ」
「あ、なるほど」
「え、このみちゃんわかったの?」
「うん、なんとなくだけどね」
「ほたるはわかった?」
「いえ、私にもあまり」
「まあ小五だったらわからなくても無理はないよ。やっと理科が科目になったばっかだしね。それでこっちは押し込むときをゆっくりに、引くときを速く・・・・ほいさ!」
「あまり取れてないよ?」
「まあ待ってって」
「?」
出て来るどころか、徐々に水の勢いが弱まってるんだけど。
ガゴン!
え、なに?!今の音。
「くるよ〜」
徐々に水が茶色い泥を含んだ泥水になっていき。
・・・ドプン!
「うわぁ!」
びっくりした〜何今の。何かでっかい黒い塊みたいなのが出て来たんだけど。
「ほら、これが詰まっていたものさ」
「落ち葉の塊?」
「これがパイプの中で詰まってたんだろうね。ほら、水の量がさっきより多いよ」
「あ、ほんとだ」
「楓さん。これでいいですか?」
「この量なら十分畑に水が回るよ。ありがとうな、しかし本当に中学の知識でやるとは」
「高校とかの知識はまだ持っていませんからね。この方法なら実践できる人はだいたい詰まりを解消出来ると思ったからね。なので今度からは楓さん、お願いしますね。中学生の知識ってわかってるならできますよね」
「な!くそ、またやられた!」
「いや〜ここの担当が楓さんでよかったです。楓さんなら力もそれなりにあるし」
コウの好きなこと、他人をいじることかもしれない。
「さ、今晩の天ぷらパーティーの準備しないと」
「お、天ぷらするのか?」
「はい、楓さんもどうですか? 確か山菜料理得意でしたよね」
「なら私も参加しようかな、久しぶりに腕が鳴るぜ」
「コウにぃー来たの~ん」
「お、いらっしゃい」
「私達も来たよ~」
「おお、一気に来たね、いらっしゃい」
「今日採った山菜みんなで持ってきたん」
今日呼んだ7人に雪子さんや一穂先生に一条家の夫妻さんまで
「じゃあ楓さん料理お願いしていいですか? 僕はBBQの用意があるので」
「まかせとけ」
「三野君、私達も料理していいかな?」
「マ…お母さん山菜料理できたの?」
「東京ではあまりやらなかったけどこれだけ新鮮な山菜があるからね、期待してて」
「うん!」
「私もいいかな?」
「雪子さんも、大丈夫ですよ。それとコウでいいですよ」
キッチンの広さの問題を加えなければだけど。4人もはいるかな?
「それじゃあみんなはBBQの用意するよ」
「なら私炭取ってくるよ、裏の倉庫だよね」
「僕も行くよBBQセットとかあるし」
「じゃあウチたちは燃えるもの取ってくるよ」
「なっちゃん点数の低いテスト持ってきちゃだめだよ」
「持ってこないよ!」
「それじゃあみなさん、今日は道普請お疲れ様でした。かんぱ〜い!!」
「かんぱ〜い!!」
結局あの後。この家の付近の人たちが自分で下ごしらえをした食材を持って集まって、お疲れ様会になってしまった。
あれ、うちの前ってパーティー会場だったっけ?
ご丁寧にBBQセットを持参してるし。