side小鞠
学期末の試験も終わりあとは夏休みに向けて予定を立てるのみとなったこの頃。外は雲一つとないカンカン照りの状態。こんな日にやることと言えば。
「ウチちりとりやる~ん」
「あ、私がちりとりだから。」
校舎の掃除だね。
前にあった田植えみたいに先生から無理やりやらされているとかではなく、前々から決まっていてからなんにも問題ないんだけど。ここまで晴れなくてもいいじゃん、校舎に来るまでに汗ダラダラだよ。家にいてもエアコンとか使えないからいいんだけど。あれもしかしてコウの家に避暑を理由に上がり込める?
「ふぅ~とりあえず、床は終わりそうだね~」
「あとは後ろのロッカーの水拭き、窓ふき、蛇口周りの清掃でしたっけ?」
「そうだね~廊下は今回はやらなくていいから。あとは黒板とかだね。」
今日ばかりは先生も私たちと一緒に掃除している。始まる前は職員質で一人冷房をつけて寝ようとしていたけど、コウの説教もあって渋々参加させられている。
「じゃあこまちゃんに塵取り任します! ウチはほたるん見てくるん。」
今更だけど蛍と夏海は校舎横の菜園で雑草取りと水やりをやっている。蛍がいるからサボってはないだろうけど。あの二人が一緒にいるところってなかなか見ないな。どんな会話してるんだろう?
「小鞠~このごみお願い」
「はいは~い」
「よしじゃあ後は~兄ちゃんは机乗っていいから窓を、小鞠とコウは蛇口周りの清掃をお願いね~」
「わかりました。蛇口清掃用の雑巾って前回使った後どこにしまいました?」
「えっと確か~、前回使ったものは捨てちゃったから新しいの使っていいよ」
「じゃあ取ってくるから小鞠さきに行ってていいよ」
「わかった」
蛇口周りの掃除か~、あの濡れた状態のほこりはあまり触りたくないんだけどね、激〇ちくん使いたい。
「とってきたよ~」
「.......なにそれ」
コウの手にはゴム手袋・雑巾・中身が入った筒・細長いトイレットペーパーのようなもの、洗剤なら粉のものが蛇口の上にあるし雑巾もあるんだけど。
「これはキッチンペーパーとクエン酸を溶かした水溶液だよ。なめてみる?」
「え、いやいや洗剤でしょ!? なめないよ!」
「残念、これは食用のクエン酸だよ」
「わかってるもん!レモンの中に入っているやつでしょ!」
「いやまあその面においてはあっているんだけどさ、じゃあなんで今クエン酸を持っているかはわかる?」
「うっ、わからない、教えて。」
「じゃあ話ながらやろ? ちょっと時間がかかっちゃうから。」
クエン酸の水溶液とキッチンペーパーをおいて雑巾を濡らす。
「え、使わないの?」
「まずはほこりとかを取らないとね、使うのはそのあとだよ。」
そういい濡れた雑巾を絞って上部分を拭きはじめる、慌てて私も反対側から濡らした雑巾を同じように拭いていく。これだけでも雑巾の当たっていた部分は黒く汚れ、かわりに上部分は黒ずみがなくなっていく。時間がかかるらしいからできる限り早めに終わせる。
「よし、それじゃあ使っていくよ。」
「えっとね~、じゃあ小鞠は水垢とかは知っているよね?」
「ばかにしすぎ!さすがに知っているよ!」
「ごめんって」
笑いながら謝ってくる、長年一緒にいるからコウにその気がないのはわかっているけどからかわれている気がする。しかも笑顔で言うのだからなおさらたちがわるい。
「じゃあ水垢がなんででてくるかは知ってる?」
「え、いやそこまでは」
「水道水には人が飲めるように色々な成分が入っているのね、飛んだり跳ねたりした水が蒸発を繰り返すとその成分が壁にどんどん層を形成するの。」
「それが水垢ってこと?」
「そ、多く含まれている成分は確かカルシウムとマグネシウム、これらは主にアルカリ性の成分なの、ちなみに小鞠は理科で中和ってやったかな?」
やってたっけ? この前コウにそれらしいものを教わった気がするけど。
「この前教えてくれたもの?」
「それは中性の話かな~、でも惜しいよ、今度教えてあげる」
そういいながらコウは酸性の液体をさっきのキッチンペーパーにしみこませている。
「あ、言い忘れていたけど、酸性は本来素手でさわったり皮膚に付着すると赤くなったりして痛みを伴うの、だから触る場合は必ず耐酸ゴム手袋をついけて弱酸性かどうかを確かめてからにすること。それと目などの粘膜はたとえ弱酸性でも刺激が強すぎるから霧吹きなどで使ってしみこませる場合は必ず保護用のゴーグルやマスクを使うこと。」
「え、じゃあそれを触った手とかで目をかいたりでもしたら」
「最悪視力を失う可能性もあるから絶対にしちゃだめ、もしそうなったら綺麗な水ですぐに洗って救急車を呼ぶこと。あと肌が弱い人とかは弱酸性でも炎症が起こるらしいから」
「そこは重要な部分じゃないの?」
「実際肌が弱い人にまだあったことがないからね昔調べた内容だし、それじゃあこれで水垢をこすっていこう。こっちはそれなりに時間がかかるかな?」
コウからキッチンペーパーを受け取り、蛇口の付け根部分にある水垢を何回かこすってみると水垢の輪の右上が途切れ始めて次第に途切れが広がっていく。完全に消えるころには周りのも一部が途切れている状態になっていた。
「コウ!凄いよ!水垢が取れていく!」
「お~そうかそうか~」
これすごい!家だと全く取れなかった水垢が段々取れてる!これを家でやれば!「ちなみに一部の水回りには防腐加工として酸に弱いものをつかっていることがあるから家でやる場合は注意してね~」......絶対わかってから言ってるでしょ。
「えっと~なにか?」
「なんでも」
考えていることすべてわかられているようでモヤモヤする。私はコウの考えていること少ししかわかんないのに。
「あ~小鞠?少しじっとしててね」
声を掛けられ、手の甲に何かが乗っている感覚に気づく。考えながら無意識に手を動かしていたからいつから乗っていたかわからない。けどまあそこまで衝撃がなかったから蛇口の上に置いてあった掃除道具だろうと思っていたが、手の甲に乗っているのは
少し大きめのヤモリだった。
........っ!
sideコウ
「えっと小鞠~大丈夫?」
だめだ聞こえてない。最初乗っていたことに気づいたときはヤモリ嫌い克服したのかなと考えていたが、目線が動かずに同じところをこすっていたから何か考え事をしていることは分かった。へたにそれを取ろうとすると触れた瞬間に暴れるし小鞠にも気づかれることもあるから迂闊に手を出せないし。運ゲースタート?
「あ~小鞠?少しじっとしててね」
聞こえるか聞こえないくらいの大きさの声で発したはずだけど小鞠の耳には届いたようで首より上が少し揺れる。
「ひっ.....」
運ゲー失敗
「いやあぁぁぁ!」
あ~いってしまった。
......とりあえず、残りやっちゃうか。半分終わってるし。
side小鞠
ひ、ひどいめにあった
何なのさ!いつの間にか手にヤモリ乗ってるし、夏海にはプリティキュットって言われるし、追い払ったと思ったら二匹に増えてきたし。なんでこうなるの
溜息と同時にさっきまで騒いでいたせいか疲労感が急に来た。冷静に考えると叫んで全力疾走して叫んだのだから疲れるのも当然だろう、教室のなかに椅子はないから床にそのまま座ることになるがこの際いいやと割り切って。立った状態から半ば力を抜くように教室の壁にもたれた。衝撃で少し背中が痛みをを訴えたけどなかったことにした。
「おつかれ、気分は落ち着いた?」
上からコウの声が聞こえて目線と首を少し動かすと、窓から首だけ出してこちらを見ているコウと目が合った。
確認しに来た人が落ち着きを払おうとしているんだけど。
「な、なんとか~」
「うん、まだ休ませたほうがよさそうだね」
そしてすぐにばれると
「ほかのみんなは?」
「れんげとほたるんはウサギのところ行って、先生と兄ちゃんは保健室の掃除、夏海は花壇のほうに行ってから消えた」
「え~夏海絶対さぼってるじゃん」
「仕方ないよ、正直ウサギの方にも保健室にも行かせたくないから人数的にこうするしかないしさ」
「コウは?」
「蛇口終わったから今は休み、おそらく報告したら次は家庭科室の掃除だね」
「私もいる?」
「いや、いいよ。普段から使い終わった後に掃除しているから掃き掃除だけだろうし」
「そっか......じゃあさコウも一緒に休まない?」
「やめとく、後回しにしているだけで一番掃除することが多い図工室も掃除しないといけないからね」
「いいからいいから」
横の床を軽く数回叩いてコウを呼ぶ。本人は少し難しい顔をしてからため息をつ零して横に座ってくれる。優しいコウのことだから強く押せば向こうが折れてくれる。人の優しさにつけこんでいるからあまり考えてはだめだけど疲れてるからいいよね。
「押しに弱いとか思ってるね」
やっぱりすぐばれると
「まったく、せっかく元気の出す方法とか考えてたのに、やらないよ?」
「いやだ! やって!」
正直もう甘えられる嬉しさが大きいから疲れもなくなっている気がするけど気にしない!
「図工室掃除するときに夏海いたほうがいい?」
「いや、やめとこう。途中で脱線したら大変なことになる。とくにのこぎりとかやすりとか怪我しやすいものも多いから。なんだったら入れないほうがいい。」
「さすがに夏海もそこは大丈夫だと思うけど」
「正直、夏海はできれば掃除終わりと同時にもどってきてほしい。夏海もそうだけど僕らも危険だし。」
sideコウ
「それじゃあ、そろそろ」
「.......もう終わり?」
「小鞠はリラックスしていたから気にしていなかっただろうけどもう20分以上たってるからね」
「え!?」
勢いよく上体を起こして時計の方に向く、髪の毛がおもいっきり流れてくるのを何とか手で静止して続ける
「理解ができたら図工室行くよ。さぼった分手伝ってね」
「夏海とかにばれてないよね!?」
「さあね、多分見られてるんじゃない?」
なんか頭抱えだした。別に見れれても問題ないと思うけどな、小鞠ずっとこんな感じだし。とりあえずこのまま放置していたらそれなりに長い時間そのままでいそうだから額を小突いといた。
「ほ~ら、いくよ」
「.........うん」
先に立って差し出した左手に申し訳なさそうに右手を重ね、軽く上に引くと少しよろけながらも立ち上がる。急に立たせてしまったため立ち眩みするかと予想したが、思ったよりも回復がはやかった。この調子なら思ったより早く図工室の掃除も終わりそうだね。
「とりあえず、まずは工具の拭き掃除からはじめようか」
「は~い」
実際に水垢に対してクエン酸使って掃除したことないから間違ってたらすみません。