碇ゲンドウの憂鬱、碇シンジの奮起 ~碇親子の和解旧劇版~   作:朝陽晴空

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第十話 葛城ミサトの奮起(2022/09/02 16:23改稿)

 ゼーレの量産型エヴァ九体が、初号機と弐号機を取り囲んだ時、私は最悪の光景を想像した。

 初号機と弐号機が生贄となりサードインパクトが起こる、その瞬間を。

 

 

 

 私と碇司令は、オリジナルのロンギヌスの槍が衛星軌道上にあるため、サードインパクトは起こらないと考えていた。

 戦略自衛隊によるネルフ本部の占領。

 それは目くらましで、ゼーレの本当の狙いは初号機と弐号機の排除だった。

 九人の選ばれた人間によって、統治される世界。

 

 

 

 彼らは、今まで人が繰り返してきた、愚かな歴史を止めるためだと大義名分を掲げていた。

 だが私に言わせれば、九人で世界人類を支配しようとしたゼーレの方が、ごう慢だ。

 

 

 

「シンジ! 次は九時の方向にヤツを叩く!」

「分かった!」

 

 

 二人は数的に不利にもかかわらず、量産型エヴァを圧倒していた。

 それはそうだろう、二人は今まで命懸けで使徒と戦ってきた。

 対して量産型エヴァに乗るのは、戦闘経験の無い老人達。

 

 

 

 どんなに理想を語っても、行動する力がなければ絵空事に過ぎない。

 九体のエヴァが地面に叩き伏せられている姿。

 それを発令所から見た私は、安堵の息を漏らした。

 

 

 

「アスカ、後ろ!」

「! このくたばり損ないが!」

 

 

 倒れ伏していた量産型エヴァが再び立ち上がり、弐号機に襲いかかろうとした。

 シンジ君の警告で気が付いたアスカは素早く攻撃を交わし、必殺の一撃を叩き込む。

 

「今度は息を吹き返さないように、首をはねてやるわ!」

 

 宣言通り、量産型エヴァの頭は弐号機のソニックグレイブにより吹き飛ばされた。

 

 

 

 首を引き千切られては、もう動く事は出来ないだろう。

 私もそう思っていた。

 しかし、首を斬られた量産型エヴァは頭部を再生させて再び動き始めたのだ。

 

 

 

「こんなの、インチキよ!」

 

 アスカの叫び声に呼応するかのように、残る量産型エヴァも続々と起き上がる。

 中には身体を切り刻まれた者もいたはずだ。

 

 

 

 初号機が弐号機の背中を守るように立つ。

 再び包囲する形となった九体の量産型エヴァは持っていた剣を、赤い槍へと変化させた。

 

 

 

「あれはまさか、ロンギヌスの槍!?」

 

 驚いた私は、リツコにロンギヌスの槍の所在を尋ねた。

 

「間違いなくオリジナルは衛星軌道上に漂っているわ。あの九本の槍は、コピーね」

 

 

 

 ゼーレは欠けた要素があっても、強引に人類補完計画を遂行しようとしているのだ。

 倒しても無限に蘇る敵を相手に二人が勝てるわけがない。

 包囲の輪が狭まり、絶体絶命と思われた。

 

 

 

「アスカ、君を守り切れなくてゴメン」

「良いのよ。その代わり、最後の瞬間までアタシを抱いていて……」

 

 二体のエヴァは死の覚悟を決めて抱き合う形となった。

 私達も甘んじてサードインパクトを受け入れるしかないのか。

 そう思った時、伊吹二尉から報告が入る。

 

 

 

「セントラルドグマに、高エネルギー反応!」

「! ロンギヌスの槍が!?」

 

 宇宙空間を漂っていたロンギヌスの槍が、猛スピードでこちらに向かって降下してきたのだ。

 MAGIによると目標は……セントラルドグマ。

 

 

 

 そして引き起こされたサードインパクト。

 周囲の人間が次々とA.T.フィールドを失い、L.C.L.へと変わっていく。

 

「よっ、葛城!」

「加持君……」

 

 やがて私の元へも、迎えの使者がやってきた。

 私は彼の腕を取り、そして……。

 

 

 

 

 

 

 ゼーレのシナリオによる人類補完計画は、失敗に終わった。

 シンジ君の手によって、サードインパクトが引き起こされたのだ。

 今、私達は彼の創った新世紀に居るらしい。

 

 

 

 まるで長い夢でも見ていたようだが、実際に起こった事。

 その証拠は、ジオフロントにある十体のエヴァンゲリオンの成れの果ての姿だった。

 大きな彫像となった弐号機と、九体の量産型エヴァ。

 

 

 

 ネルフはその遺物を調べるための組織として存続している。

 所長は私の敬愛する……碇ゲンドウ。

 副所長は私……碇ミサト。

 

 

 

 まだ結婚式は挙げていないけど、『けじめ』をつけるために入籍した。

 確かに加持君のことは好きだった。

 でも碇所長への気持ちがそれを上回ったから。

 

 

 

「明日はドイツから、惣流博士が来日する予定でしたよね?」

「うむ、彼女にはシンジとレイと同じ年頃の子がいるらしいな」

 

 私と所長はしばらくの間、顔を見合わせた。

 考えていることは多分同じだ。

 

 

 

「彼女は二人と上手くやっていけますよね?」

「もちろんだとも」

 

 三人はまだ出会ってもいない。

 でも仲良くなることは知っている。

 

 それは私と所長が見てきたから。

 こうして知識を共有していることからも、あの世界がただの夢はでなかったと分かる。

 

 

 

 ゼーレの老人達はエヴァが無くなっても、まだ愚かな野望を抱き続けているのだろうか。

 人類補完計画などと言う馬鹿な計画を掲げているのか?

 今度こそ、私達の手で叩き潰してやる。

 

 

 

「よっ、葛城!」

「碇所長、分析結果をご報告します。あの眠る巨人に異常はありません」

 

 調査に出ていた加持君とリツコが戻ってきた。

 二人は組んで調査に出ることが多い。

 一人だと思い込みで変化を見落としてしまう可能性があるとの話だが、それだけの理由?

 

 

 

 エヴァだったものに、私達は『眠る巨人』と呼称を付けた。

 そのネーミングはマスメディアにも受け入れられて、一般的な名称になりつつある。

 今となっては、あれをエヴァンゲリオンと呼ぶ者はほとんどいない。

 

 

 

 シンジ君が創った新世紀の世界。

 今度は私達が守る番だ。

 だから眠る巨人の監視は怠らない。

 二度と悪用されることのないように。

 

 

 

 新世紀を創るための依り代となった初号機は、この世界から完全に姿を消した。

 ありがとうユイさん。

 これからは私が碇司令を支えて、シンジ君とレイの……お姉さんではダメでしょうか?

 

 

 

 そう言えば、この世界のアスカはどうなっているのかしら?

 母親にベッタリ甘えて、自堕落な生活に戻っていなければ良いけど。

 碇所長の花嫁修業は厳しいわよ。

 

 

 

 その様子は、二人の口から語ってもらうことにしましょうか。




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