碇ゲンドウの憂鬱、碇シンジの奮起 ~碇親子の和解旧劇版~ 作:朝陽晴空
目を覚ましたのは、アタシの部屋のベッドの上だった。
窓の外に広がるのは、懐かしいドイツの街並み。
おかしい、アタシは日本にいたはず。
また幻を見せられているのだろうか?
それにしては感覚が現実的な気がする。
窓から飛び降りれば夢かどうか一瞬で分かるけど、さすがにその方法は試したくない。
コン、コン。
部屋の中で呆けているとドアがノックされる。
グランマがやってきたのかしら?
「はーい」
返事をするとドアが開かれる。
部屋に入ってきた人物を見て、身体が硬直してしまった。
それはアタシのママだったからだ。
「ママっ!」
「どうしたのアスカ、まだ着替えもしないで? もうそろそろ出発の時間よ?」
思わずママに飛び付いてしまったアタシ。
指摘されてカレンダーを見ると、今日の日付の場所に『いざ日本へ!』と書き込みがしてあった。
「い、急いで用意するから待ってて!」
アタシは大慌てで服を着替え始めた。
どうやら昨日までの『知らないアタシ』はしっかりと出立の準備をしていてくれたようだ。
状況がつかめないまま、スーツケースを持って部屋を飛び出す。
リビングでは、ママがグランマと話ながらアタシを待っていた。
「アスカが寝坊するなんて珍しいわね。何かあったの?」
「ちょっと、変な夢を見ちゃって」
グランマに尋ねられたアタシはそう答えた。
きっと『ゴルドラック』とか日本のアニメを観すぎたのが原因だと思った。
ママと二人でタクシーに乗って、空港へ向かう。
弐号機が生み出したイメージじゃない、血の通った人間のママが側に居る。
そう考えただけで、アタシの胸はドキドキが止まらなかった。
「アスカ、変な夢を見たって話していたけど……あれは本当に起こったことなのよ」
タクシーの後部座席で隣り合って座ったママは、真剣な表情でアタシに告げた。
それならアタシが日本に行って、弐号機に乗ってシンジ達と一緒に使徒と戦ったのも、夢じゃなかったんだ……!
「今度はずっと側にいてあげるわね」
ママに優しく手を握られ、空港に着くまでの間、ずっとママの肩に頭を乗せて甘え続けた。
ドイツから日本への直行便へのフライトは12時間の長旅になる。
飛行機の中では、今まで溜めていたママへの想いを吐き出していた。
「アスカは日本に行ってシンジ君達と会うのが楽しみ?」
「バカシンジはともかくとして、ヒカリ達に会えるのは嬉しいわよ」
「うふふ」
照れ隠しをしているアタシの気持ちはママにはお見通しみたい。
これからはずっとママと一緒に暮らせるんだし、幸せで楽しい日々が続くに違いない。
アタシはそう思っていた。
「娘さんのことはお任せください、きっとシンジ君に相応しい女性に致します」
「えっ!? どうしてアタシが碇所長の家で暮らさなきゃならないのよ!」
ミサトが胸を張ってアタシの保護者役を引き受けると、ママは笑顔でお願いをしていた。
「だって、シンジ君のお嫁さんになるんじゃないの?」
「まだそうと決まったわけじゃないわ!」
アタシはママに裏切られた気がした。
夢見ていた、ママとの甘い生活は打ち砕かれたのだ。
「あんたはまだ修行中の身。料理に掃除、洗濯、精進しなさいよ」
再び始まった楽しくてしんどい憂鬱な日々。
前と違ったのは、ファースト……じゃなかった、レイとも同居して五人家族となったこと。
やはりと言うか、レイも家事を初めてしたアタシと同じくらい、いや、それ以下だった。
紅茶の淹れ方さえ分からないんですもの。
碇所長やミサト達はネルフでシンジが創ったこの世界を守るために頑張っている。
ゆくゆくはアタシ達も、ママ達の仕事を手伝ってネルフの研究者になるのだろう。
え? チェリストになりたい?
何を言ってるのよ、バカシンジ!
「もし本格的なチェロ奏者になりたいのなら、父さんはドイツに留学するべきだって」
「はぁ!? アタシがドイツからはるばる日本へとやってきたばかりじゃないの!」
「そ、そうだよね。やっぱり僕が留学なんて無理だよね」
シンジはその場ではそう納得していた。
でも同居を続けるアタシ達には、彼がチェリストへの未練を捨てきれていないのが丸分かりだった。
ぬけぬけと復活して、人間となったフィフス……渚カヲルとの合奏をしている時も憂鬱な表情をしていた。
中学3年になり、進路を決めなければならなくなった頃。
アタシはシンジのドイツ語の教師役を買って出た。
「向こうでドイツ語が喋れないと困るでしょ。まして音楽は専門用語が多いんだから」
「えっ……?」
「チェリストになりたいんでしょ。夢を簡単に諦めるなって言ってるの」
「でも、何年もドイツにいることになるんだよ?」
シンジはアタシ達に対して遠慮をしているようだ。
そんなことをされても、アンタの憂鬱な顔を見ている方が辛いのよ。
「そうだシンジ、夢は大きく持て!」
「シンジ君は世界を救ったんだから、今度は自分のためにいきなさい」
「父さん、ミサトさん……」
レイも喜んでシンジの夢を応援した。
本当は付いていきたかった。
でもまだアタシ達は15歳、それに花嫁修業の途中だしね。
「恋しくなって直ぐに日本に帰ってくるような根性無しだったら、婚約も考え直すからね」
「アスカは厳しいな」
中学校の卒業式からしばらくして、シンジがドイツへと旅立つ日がやってきた。
彼はグランマがいるアタシの実家で暮らすことになる。
一人実家に残すことになってしまったグランマを、そばで見守ってくれるのは一石二鳥だ。
アタシ達二人は空港で飛行機の時間を待っていた。
「これは、元気が出るプレゼント」
そう言ってシンジの顔をつかむと、初めてのキスをした。
「ありがとう、とってもやる気が出てきたよ」
次にシンジとキスをするのは数年後のドイツの地で。
アタシが碇アスカになった時。
押しかけ女房のような形で実家に戻ることを計画していた。
だからさようならは言わない。
「素敵な女性になって、シンジを驚かせてやるんだから!」
アタシは空へと消えたシンジの飛行機を見送って、そう誓った。
外伝第二話『碇アスカの奮起』を予定しています。
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リメイクで設定や説明文を削りましたが、どうでしょうか?
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スッキリした
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設定があった方が良かった