薫さんは生産職   作:紅 卍

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オリキャラのエピソードが続きますが、どうかご容赦ください。


花山、異世界で餅をまく(2)

 息子たちが、自らアミバの才への敗北を認めた。

 そうであれば、良かった。

 

 単純にそれだけのことであったら、慰め、叱咤し、アミバにどれだけの才があろうと、彼らのこの家の長男、次男、三男としての位置、そして未来が揺らぐものではないと――そういう父としての想いを伝え、彼らに信じさせれば良かったのだ。

 

 しかし息子たち(かれら)は――

 

「『アミバは実は男だった』ということにしませんか?」

「アミバを次代の当主にしては如何でしょう?」

 

――などと言ってきた。

 

 唯一無二の、冴えた、疑いなく実現可能な案であるかのように。

 

 もちろん、無理だ。

 そんなこと、出来るわけがない。

 

 実現など絶対不可能な――異常な案なのだ。

 それを、息子たちが揃って提案してくる。

 

 つまり、これがどういうことかというと……

 

(それほどまでに……受け入れ難い、ということなのだろう)

 

 父は、そう結論付けた。

 

『アミバを、男と偽って当主にする』

 

 この案の異常さは、そのまま『アミバが兄である自分より、優れている。どれだけ努力したところで追いつけないほど遥かに』という事実が、息子たち(かれら)にとって如何に受け入れ難い現実であるか、ということを示しているのだ。

 

 そんな、異常な回路を心に抱えてしまった息子たちを前に。

 父である自分は。

 では、どうするか――

 

(頼るしかない。相談するしかない。優秀な者に――誰よりも、息子たちよりも、自分よりも優秀なあの者(・・・)に)

 

――というわけで。

 

「アミバ。夜分にすまないが、ちょっと時間を頂いてよろしかりん?」

 

 父は、アミバの部屋を訪ねたのだった。

 話し方が変なのは、緊張しているからだ。

 

 実は息子たちより先に、

アミバ(あいつ)、ワシより優秀じゃねー?)

と、誰よりも早くアミバの才への敗北を悟ったのは、この父なのだった。

 

「おお、アミバ。ちょっと話があるのだもん?」

「お父様……やはり、そういうことなのですね」

 

 ドア越しにそんな父の表情(かお)を見ただけで全てを悟ったのは、流石に優秀なアミバだった。

 

 そしてその夜から半年が経ち――アミバが14歳になる、数ヶ月前。

『大森林』に接する領地を持つ貴族家に、アミバは40歳を過ぎた当主の後妻として迎えられた。

 彼女が自ら探してきた嫁ぎ先だ。

 

 嫁ぎ先には、アミバと同年代の息子たちがいたが、彼らは、実家の兄たちとは違った。

 アミバの才を前に、どれだけ差を見せつけられても卑屈になることが無かった。

 

『大森林』は、魔物の巣窟だ。

 

 そこに接した土地に暮らす者にとって、魔物との戦闘は非日常ではなく、日常の外縁にある出来事だ。

 そんな彼らにとって、アミバの才はこの上なく頼りになる、ただただ有り難いだけのものだった。

 アミバもまた、夫である当主やその息子たちより前に出ることはなく、常に彼らの面子を立てるように振る舞っていた。しかし、戦闘と内政のどちらでも飛び抜けた彼女の活躍は、彼女が陰に回ろうとするほど逆に際立ち、彼女の存在感を、領内に濃くしていくのだった。

 

 ただ、子供が出来なかった。

 

 子作りの営み自体は行っていたのだが、アミバが懐妊することはなかった。

 アミバが18歳の秋から子作りを始めて10年近く。

 家を継ぐ息子は既にいるのだから、アミバが子を生む必要は特段に無い。

 しかし、アミバに子供を与えてやりたい。

 そういう思いが、当主にも、そして彼の息子たちにもあった。

 

――息子たちの誰かの妻として、改めてアミバを迎えてはどうか。

 

 そんな話が、男たちの間で持ち上がり始めた頃だった。

 

『大森林』から魔物が氾濫し、アミバは夫を失うことになった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




このエピソード、次回か次次回あたりで終わる予定です。
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