TS聖女見習いがダンジョンに潜るのは間違っているだろうか 作:大丈夫、問題ない
自然と目が覚めた。
起き上がると、朝特有の静かな空気が流れていた。周囲を見渡すとすぐ隣に黒髪の美少女と、奥のソファの上に白髪の少年がいる。まだ眠っているようだ。静かに被った毛布を上下させていた。
一番早起きだったのはどうやら俺らしい。とりあえず、ベッドから退こうとして俺はふと違和感に気がついた。
自分の腕に、何やらとてつもなく重量のある、柔らかなものが包み込むようにしてくっついている。
思わず見下ろして、すぐにででんと肌色の膨らみが視界に入ってきて、とっさに目をそらした。
「…ヘスティア様…」
「うへへベル君…」
だらしない寝顔を晒して何やらうわ言でもにょもにょと唇を動かすヘスティア様に、俺はなんとも言えない気分にさせられる。
仕方のない事ではある。なにせベルは男だし、ヘスティア様は女で今の俺は見た目だけとはいえ女。そしてこの部屋に寝れる場所はソファとベッドの2つしか無いわけで。どちらかをどちらかに分けざるを得ないのは当然のことだった。
だが、それでも俺の中身は男なのだ。こうも突然女体を意識させられると正直イケない気持ちが湧き上がってくる。そしてそれ以上に罪悪感もある。
俺はもう片方の手で自分の胸に触れた。見事なまでの微乳。それも自分の。途端に発生した虚無感が、湧き上がる羞恥心を打ち消しあった。
「よっ…っと」
「うーん…テレサく~ん…」
豊満なソレからなんとか腕を引っこ抜き、ベッドから速やかに脱出する。
「…ベル、ベル」
「…ん~…テレサ…?」
ソファで眠っているベルの肩を優しく揺らした。
ちなみに俺がファミリアに入って次の日には、ベルは呼び捨てで良いと俺に言ってきた。だったらと俺も呼び捨てで良いと伝えた。
「おはようございます。もう朝ですよ」
「…おはようございます…」
寝起きは良い方らしい。すぐにぱっちりと真紅の目を開けたベルは、眠たそうにしながらもすぐに起き上がった。
二人ずつ顔を洗って、歯を磨いて身支度をする。
おっと…今日はこれも持っていかなきゃだ。俺は、そっと、質素な杖を手にとった。
「今日はどうします?」
「うん。まずは1階層で練習…かな。エイナさんが言ってたパーティー戦の基本を一つずつ確認したいなって」
「分かりました」
音を立てないように石の扉を開きながら、ベルは我が事のように笑みを浮かべながら言った。
「テレサ、初の迷宮攻略だけど…忘れ物はない?」
「はい、もちろん」
ウキウキと、それはもう新しい友達ができた子どものようにするベルに、俺は力強く頷いた。
ヘスティア様の眷属になった(本神が言うには家族同然になった)あの日から、ちょうど一週間が経過した。
見ず知らずの俺を助けてくれるヘスティア様はもちろん親切な神だが、同じ屋根の下で暮らすことになったベル・クラネルという男は、更に度が過ぎるほどに良いヤツだった。
正直、ここ一週間、俺はヘスティア様とベルに、頭が上げられない程に世話になりっぱなしだったのだ。
まず生活基盤。人が一人増えるということは、着替え、歯磨きなどの生活用品、皿やコップなどが必要になるということだ。
それに加え、俺の場合は冒険者になるために必要な、最低限の装備品も必要となった。
武器―――すなわち杖はギルドからの支給品で都合したが、その他の、冒険用のポーチやバックパックなどの必須品もどうしても必要となってくる。
正直かなり心苦しかったのだが、ベルにとっては同じファミリアの新しい仲間というのは大きな意味を持っていたらしく、なんてこと無いように笑顔で全部そろえてくれたのだった。
加えて、俺は更にこの国の文字や通貨の価値さえも知らなかった。小さい子どもでさえ知っている常識さえ知らない俺に、ベルは最初こそ驚いていたものの、懇切丁寧に教えてくれた。文字はともかく、簡単なお使いくらいならこなせるくらいにはなっている。
それにしてもベルは本当に良い奴だ。聖人と言っても過言ではない。
その純粋さは心配になるレベルである。俺が悪いやつだったり、後から裏切ったりしたらとか、考えないのだろうか。
まあ、俺は良いやつではないが悪いやつでもない…つもりでやっているので、その期待にできるだけ答えて、後々何かしらの形で恩返しするつもりではある。
まずはちょっとでもファミリアの稼ぎ頭、ベルの助けになるべく。俺は今日、初めてベルとともにダンジョンに行くことにしたのだった。
廃墟街を突っ切って大きめの階段を登ると、その先は普通の街と変わらなくなる。むしろ店があちこちに開かれ、昼間や夜などは人の往来も激しく、この世界ではまさしく最先端の都会。
中央に天を衝く塔を頂く迷宮都市オラリオ。俺がやって来た場所は、この世界で唯一の場所だったらしい。
まだ太陽の光も上がりきっていない今は、多少人通りは少ないものの、それでもそこそこの人でにぎわっていた。
「杖での戦い方は…相手を近づけさせないこと。基本こちらの間合いで戦うこと。ゴブリンは動きは鈍いけど鉤爪での攻撃が早い…コボルトは…」
俺がブツブツとつぶやいていると、ベルが振り返ってきた。
「それって、昨日の復習?」
「…まあ、はい。むしろ精神統一みたいなものですが」
「やっぱり最初は緊張するよね」
わかるなぁ、とベルが苦笑しながら言った。どうやら自分の初アタック時の事を思い出しているらしい。
「僕の時はずっと緊張しっぱなしで…。ようやくゴブリンを一体倒したら、その嬉しさで思わず神様のところに報告しに行っちゃって、すごく笑われたっけなぁ…」
それを聞いて、思わず吹き出す。
「ベルらしいですね」
「あはははは…あ、見えてきた」
バベルの足元。そこには大広間が広がっており、その奥には地下へと―――すなわち、ダンジョンへと繋がる螺旋階段がある。
その螺旋階段の深さを覗き込み、俺はごくりと喉を鳴らした。奥からかすかに風の通る音が聞こえてくる。それがやけに不気味だ。
これから行く場所が危険な場所だと、ギルドのアドバイザー…エイナさんや、ベルから話だけは聞いていたが―――今、やっと実感することができた。言葉にはできないが、やはりなんだか変な場所なのだ、ここは。こればかりは実際に体験してみないと分からない感覚だった。
「それじゃあ、いこうか」
「…はい」
ベルと2人で螺旋階段を降りていく。二人分の足音に、自分の喉がつばを飲み込む音だけが混ざっていた。
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「!」
『ギャッ』
ゴブリンの鉤爪攻撃を杖の腹で受けつつ、その威力に押されるようにバックステップ。距離をとってから先端を振りかざしその醜い頭にゴツンと当ててやる。ゴブリンはたたらを踏んで頭を押さえるが、ソレだけだった。
明らかにダメージにはなってない。そのことに歯噛みする。
『キシャー!』
「そこ!」
だが、ダメージにはなっていないものの怒りを誘うには十分だったらしい。怒りに我を忘れて奇声を上げるゴブリンの胸を、ベルのナイフが後ろから貫いた。
ゴブリンが魔石を残して消えるのを見送って、俺は杖に体重をかけた。
「はあ…はあ…」
「だ、大丈夫?」
「は、はい…なんとか…」
息も絶え絶えな俺に心配そうなベルにそう答える俺だったが、正直なところを言うとかなり消耗していた。
まだ3戦目。全てゴブリンが複数体で、一体を俺が、他のをベルが受け持つ形だ。つまり完全にベルに守られている形での戦闘。
だというのに、俺はまだ一体もゴブリンを倒せていない。原因は簡単、単純に攻撃力が足りていないのだ。俺の今の全力の攻撃は、たんこぶを作る程度らしい。
自分の力の無さに涙が出そうになる。やはり女の体だと非力になるのは仕方のないことなのだろうか。
っていうか、一番の驚きはベルだ。ベルもまだ冒険者になって1,2週間程度だと言っていたのに、全然戦えている。殺す時も一つの躊躇いもないし、何よりかなり速い。相手が最弱のゴブリンとはいえ、ぴょんと一蹴りで敵の間合いに入って、喉にナイフを突き立てているのである。俺とは大きな違いだ。
これでまだ初心者とか、どんだけだ。俺は最初、動いているモノを杖で叩くことにも躊躇してしまったというのに。
そんなベルは俺に対して少し気遣い気な顔を浮かべていた。
「…そろそろ休もっか?」
「…そう、ですね…そうしてもらうと…助かります…って、あっ」
「わっ、わっ!」
歩き出そうとしたら、杖に足が引っかかって倒れそうになる。思わず目を閉じて衝撃に備えるが、いつまで経っても地面に倒れない。恐る恐る目を開けると、ベルの腕が目に入った。どうやら咄嗟に止めてくれたらしい。
「そ、そのっ!…だ、大丈夫…?」
「ご、ごめんなさい…」
手を煩わせてしまったことに申し訳なさを感じつつ、そっと身体を離した。
「か、壁に傷をつけるのは僕がやっておくから…テレサは休んでて?」
「お言葉に甘えます…」
顔を赤くしながらそういうベル。その言葉に素直に甘えることにして、俺はそっと壁際に腰を下ろした。
傷をつけ終えたベルが遅れて隣にやってくる。その頃には少し息も落ち着いてきていた俺は、用意していた水筒を差し出した。
ちなみに、今の俺は背中にリュックを背負っている。これはベルが見た目か弱い少女の俺に荷物持ちをさせている、という訳ではない。ベルの武器はその機動力で、さらに動き回ることが多い前衛、俺は動きも遅く基本後方支援なので、いわゆる役割分担という奴なのだ。
中身は水筒や弁当、倒したモンスターの魔石やドロップアイテムなどだ。後はベルも別で持っているが、ポーションも入っている。俺だけマナポーションもある。高いので一本だけで緊急用だが…。
それにしても、これがダンジョン。やっぱり簡単にはいかなそうだ。特に俺は回復特化。早い所攻撃の手段を得ないと、結構ヤバいぞこれ。
「はい、ベル」
「あ、ありがとう!」
一気に水筒をあおるベルに、俺はすぐに気が付いた。
「あ、す、すみません。そっち私のでした」
「ぶふっ、げほっ、かほっ…」
「あわわ、ご、ごめんなさい~…!」
ちなみに俺が今持っていて蓋を開けているのがベルの方だった。どうやら入れ替わっていたらしい。物凄く咽るベルの背中を撫でつつ、慌ててもう一回謝った。
「う、ううん…気にしてないから…!あ、あははは…」
そうは言うが顔が真っ赤だ。そんなに苦しかったのだろうか。
「あ、そ、そうだ。さっきちょっと攻撃がかすっちゃって…ここなんだけど」
「は、はい。分かりました。治しますね」
そう言って袖をまくったベルの腕には、確かに三本の爪痕が残っていた。俺はそこに手の平を向けて「ファーストエイド」と呟いた。
すると、緑色の光が傷を覆って、すぐに傷を消してしまう。この程度の傷なら、跡形もなく治せるのだ。
「わあぁ…いつ見ても綺麗だなぁ。いいなぁ、魔法。―――あ。ありがとう、テレサ!」
「い、いえ。これくらいしか役に立てませんので…」
俺がそう言うと、ベルは笑顔のまま首を振った。
「そんなことないよ!ゴブリンを一体相手にしてくれるだけでぐっと楽になったし、バックパックも持ってもらって魔石も多めに持って帰れるようにもなったし!僕はすごく助かってるよ?」
「…そ、そですか?」
真っすぐ見つめられながらそんな事を言われたので、俺は思わず視線をそらして聞き返した。それに対してもベルはすぐに、
「うん!」
と肯定した。あって数日しか経ってない人間相手に何だこの素直さは。ベルは正直恐ろしく感じるレベルの人たらしだ。
「な、なら、よかったです。あ、所でさっきの魔石、まだ拾ってませんでしたね!ちょっと拾ってきます!」
よし、この話はもうおしまい!はいやめやめ!話をぶった切って悪いが、俺は立ち上がって地面に転がる魔石を拾い始めた。
「あ、じゃあ僕も手伝――――」
そうベルが中腰になったその時だった。
『グルルルル…』
通路の奥から、そんな声が聞こえてきた。
「! コボルト!」
影からのっそりと現れたのは、頭が犬の形をした二足歩行の生物。コボルトの姿だった。それも一つだけじゃない。一つ、二つ…五体。数が多い。
「せ、戦闘隊形!数は五体です!」
「了解!」
俺は言いながら、すぐに後ろに下がった。そしてベルが前に出る。
喉を鳴らした。相手はコボルト。同じ一階層のモンスターであるゴブリンと比べると、一回り体格がデカく、爪や牙による攻撃がある。それに動きもゴブリンよりも早い。
というか、顔が犬ってだけでなんかゴブリンよりも怖い。
「べ、ベル…」
この時、俺はというと完全に腰が引けていた。いや、普通に怖い。生前野良犬に絡まれた時も普通に怖かったのに、それが二足歩行で複数体いるとか、考えたくもない。人は鋭い牙と爪を持つ生き物は、本能的に怖がるようにできているのである。
だが、その時だった。ベルがすっと片手で俺を制してきた。
「…大丈夫。今回は僕がやる!」
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夕方になって、俺は拠点のソファの上でふと目を覚ました。
ダンジョンから帰ってきたのは昼ぐらい。朝からダンジョンに挑んだので、だいたい4,5時間程度のアタックだっただろうか。休憩も頻繁に挟み、昼頃に終わって今までずっと休んでいたというのに、まだ疲労が抜けていない。節々が痛い。
ちなみに、ベルは昼食を食べた後、すぐにダンジョンへと戻っていった。本当は俺もついていきたかったけど、今は足手まといにしかならないから泣く泣く拠点にお留守番だ。
というか、俺眠っていたのか。昼過ぎから泥のように寝てしまった所為か寝覚めが物凄く悪い。夕方の睡眠は体に悪いのだ。
「…?」
起き上がって周囲を見渡すと、ベッドの上にベルとヘスティア様がいた。ベルがうつ伏せに寝転がり、その上でヘスティア様が背中に手をかざしている。どうやらステイタスを更新しているらしい。
同じファミリア内の仲間でも、ステイタスの覗き見はご法度だ。俺はソファに寝転がった。
それにしても、ベル凄かったな。あの時―――コボルトの群れが出てきた時、ベルは一人で全てを倒しきってしまった。
危うい所もあったが、まさしく鎧袖一触。かすり傷一つ受けた程度で後はほぼ無傷で、結果は圧勝だった。
俺のような中身青年のなんちゃって少女と違って、ベルは普通の14歳…つまり日本で言うところの中学生のはずだ。俺が中学生の時にベルと同じ条件で同じことをしろと言われても、できる気がしない。これが異世界育ちと現代日本育ちの違いなのだろうか。
異世界での生活になれるのも大変だし、ダンジョンでの戦いも予想以上に疲れるし、ベルとは物凄く差があるし…異世界生活は、俺の考えていた以上にめちゃくちゃ忙しい。
でもまあ、悪い忙しさじゃないし、なんだかんだ楽しいし。とりあえず、ベルが終わったら俺もステイタス更新してもらうかな…。
「か、神様のばか~~~!」
…っていうか、さっきから騒がしいけど、あの二人、何してんだろ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…大丈夫。今回は僕がやる!」
僕は―――ベル・クラネルはナイフを抜いて駆け出していた。
今日が初日のテレサに無理をさせるのは避けなければいけないことだったし、それ以上に恐怖で身体を震わせるテレサを見ると、身体が勝手に動いていた。
僕は鋭く引き絞られた矢のようにコボルトの群れに突っ込んだ。なんだか、一人で戦っている時よりもずっと身体が思うように動いている気がする。
先頭の一体が一人で突っ込んできた敵に反応して、嘲るような顔で爪を振りかぶる。それを屈んで避けて、ナイフを喉に突き立てた。横に刃を引いてコボルトの喉を切り裂くと、切って返す刃で次のコボルトの喉を続けざまに切り裂く。
残り三体。そのうち二体が同時に腕を振り下ろすが、バックステップでそれを避けて一体を蹴り飛ばした。
「そこ!」
そのまま地面を蹴って、鋭い突きを放つ。僕の攻撃はコボルトの胸に吸い込まれ、その奥の魔石をカチンと割った感触の後、身体を崩した。残り二体。
だが、その突きは他のコボルトから見ると隙だらけだったのだろう。すぐに残りの二体の攻撃が左右から飛んで来た。僕は身を捻ってそれをよけようとしたけど、頬に爪がかすってしまいピリッとした痛みと共に血が舞った。
「っ、シィッ――」
身を捩った勢いのまま、鋭く息を吐き、お返しの斬撃。血を吹き出して後ろに倒れるコボルトを尻目に、残り一体。群れというアドバンテージを切り捨てられ、単体となったコボルトになんか、脅威は感じない。
「終わり、だ!」
最後の一体を、噛みつこうと開かれた牙だらけの口を避けてカウンター気味にナイフを身体にねじ込んだ。びくんと身体を震わせて、一拍置いた後、コボルトは身体を霧散させた。
「はあ…はあ…」
戦闘、終了。どっと汗が吹き出した。
こんなに多くの敵を相手に戦闘したのは初めてだったけど、なんとか乗り越えることができた。でも今になって疲れがどっと押し寄せてくるし、やっぱりものすごく緊張していたんだと今更自覚した。
もしかしたら死んでいたかも知れない…けど。
「…、凄い、凄いです、ベル!」
あっけにとられていた彼女が、笑顔で目を輝かせる。
そんなテレサの姿に、僕の胸は燃え上がっていた。
やっぱりそうだ。お爺ちゃんの言葉は間違っていなかった!
『可愛い女の子のピンチを救い、強敵に打ち勝つことができる男こそ、一番格好のいい男子だ』…だよね、お爺ちゃん!
強敵と言うには、僕はまだ弱いし、相手できる敵も少ないけど。
それでも、僕にとっての冒険が、やっと本格的に動き出したような、そんな気がした。
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ベル・クラネル
Lv.1
力:I63
耐久:I14
器用:I88
敏捷:I141
魔力:I0
《魔法》
【】
《スキル》
【英雄願望】
・仲間がピンチの時、全能力値に補正
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「で?ベェルゥくぅーん…詳しく話を聞こうじゃないか」
「辞めてください…」
夕方。帰ってきた廃教会の拠点で、僕は更新したステイタスの内容を書いた紙を手にした神様に、それはもう迫られていた。
スキルが現れた理由は、そのスキルの中身を見れば一目瞭然。僕にとっては心の中でだけ決意したはずの、男の子としての部分が暴かれたみたいで物凄く恥ずかしい。僕はさっきから手で顔を覆って防御態勢に入っているというのに、神様からの猛攻は依然として続いていた。
っていうか、神様!本人が直ぐ側にいるんですからね!?さっきからチラチラとソファからこっち覗き見てますからね!?
「テレサ君と初めてダンジョンに潜ったその日にこれかぁ…わかりやすくてかわいいねぇ?ベ・ル・君?」
「か、神様ぁ~~~~!」
甘い声色でそんなことを囁かれて、僕はついに限界を迎えて悲鳴を上げた。そんな中、話には入ってきていないけど、ある意味話の中心的な当の本人は、僕と神様のやり取りをみて、ただただ不思議そうに「?」と小首をかしげていたのだった。
訂正:7月1日 スキル『英雄願望』の効果を変更