スパッツ小隊in戦車道(まるで二次創作)   作:未確認動物

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プロローグ

「『スパッツ小隊』に関する特集記事を組め」

 

一介の新聞記者である私に下された仕事は、そういったものだった。

就活で連敗を重ねた挙げ句に此処、茨城県のローカル新聞社に就職した私は、そもそも彼女達のことを知らなかった。正確には、名前は知っていたけれども詳細を知らなかった。

勉強して、良い企業に就職する。彼女達が有名になった当時、私はそんな雑事に目も向けず、勉強に腐心していたのだ。おかげで勉強だけでは身につかない経験───主に対人経験───が不足し、就活で連敗する羽目になった。

今となっては遅い話だが、あの時もっと世俗に触れていればまた別の人生を歩めていたのだろうか。

ともあれ、仕事は仕事で真面目にやらなければならない。いつものようにそつなく、淡々と情報を探し始めた。

ネットに広がっている情報を、触りだけ抜き出すとこうなる。

 

曰く、「世界最高のパチモンズ」。

曰く、「1人あたり5つ以上の人格を持ってるキ○ガイ集団」。

曰く、「無駄に可愛い奴らで構成された、無駄に高い技術を持つ、無駄にクオリティの高い動画を上げるYouTuber」。

 

この時点で私の頭はこんがらがり始めていたが、所詮はネットから集めた根拠の無い情報だと思い込み、意識を切り替えることにした。やはり必要なのは、確実な情報。

彼女達がYouTubeに投稿している動画を幾つか視聴することにした。

 

───視聴中───

 

うるさい。あと意味が分からない。

私がサブカルチャーに疎い人物であることを差し引いても、あの内容を完璧に理解出来る人間は少ない筈だ。

だが、不思議と面白い。動画の各所に元ネタが何か分からないパロディが多く含まれていながら、最初から最後までその気持ちが途切れる事は無かった。

だが、これでも彼女達の『素』を見れたとは言えないだろう。

私は『スパッツ小隊』に関するデータを集めることを継続しながら、彼女達の知名度を確固たるものとした『第63回戦車道全国大会』の参加者の内、数人とのインタビューを取り付けることを試み、そしてそれは成功した。

 

 

 

 

 

取材①:秋山 優花里さん(理容師)

 

「うるさ……賑やかな人達でしたね」

 

秋山 優花里は『スパッツ小隊』をそう評した。

彼女は母校の存在する大洗学園艦で、理容師の仕事を営んでいた。時折母校の戦車道部にOBとして顔を出し、後輩達の指導をしているという。

 

「いえ、今のはそのぅ……すみません、『うるさい』と言おうとしました。実際に仕事中の彼女達の姿を見れば、たぶん同じ感想になると……」

 

たはは、と苦笑しながらも彼女は続ける。

 

「でも、鬱陶しいとか耳障りだとか、そういうものではなかったですね。むしろ賑やかし、あるいはムードメーカーのようなポジションでした。言ってることの意味は分からないこともありましたけど、共にあの全国大会を全力で戦った、大切な仲間ですよ」

 

 

 

 

 

取材②:五十鈴 華さん(華道家)

 

「うるさ……いえ、騒々しい方々でした」

 

五十鈴 華は『スパッツ小隊』をそう評した。

彼女は華道で高名な五十鈴流の娘であり、まだ二十代前半という若さでありながらその腕前と作品が評価されている才媛でもある。

いずれは家元を襲名することが確実視されているという彼女が高校時代に戦車道に参加していたということは驚きだが、第一印象が秋山さんと同じだったことには納得があった。

 

「かつてのチームメイトをこのように評することは躊躇いがあったのですが、その、つい口を突いて出てしまいまして。ただ、尊敬しているところもあります」

 

───尊敬ですか?

私がそう問い返すと、彼女はその名の通り、たおやかな『華』を思わせる微笑みを見せながら語った。

 

「私は華を活けることで、あの方々はその『演技』で。それぞれ方法は違っていましたが、誰かの心に潤いを与えることに真摯なその姿は、たしかに敬意を抱くに値するものでした」

 

 

 

 

 

取材③:角谷 杏さん(文部科学省学園艦教育局役員)

 

「とにかく、うるさかったね!」

 

角谷 杏(かどたに あんず)()()()をそう評した。

多忙と噂の彼女に取材許可を取り付けるには困難だと思っていたが、ダメ元で申し込んでみると、偶然にも大洗学園艦に寄る用事があるからと30分だけ時間をいただくことに成功した。

かつて問答無用で母校の存在する学園艦が廃艦の危機にさらされた時、戦車道の復興、そしてその年での全国大会優勝という荒唐無稽な企画を実行に移し、見事成功させたことで廃艦の危機を免れた彼女は、一度は廃艦を決定した文部省に入職していた。

 

「あの頃のあたしは、とにかく廃艦を避けるためだって色々無茶にやってさ。色んな人を頼って、振り回して、助けられた。だから、次はあたしがそんながむしゃらな誰かを助けてやれるような、そんな仕事がしたいって思ってね」

 

そして、おそらくもっとも振り回した2人の少女のことを話し始める。

1人は西住 みほ。先述した『復興初年で大洗女子学園を全国大会優勝に導く』という快挙を成し遂げた時の戦車道チーム隊長を務めた人物であり、現在もプロリーグで活動中の選手だ。彼女のことは、わざわざ説明するまでもないかもしれない。

そしてもう1人は、芥 慧留最(あくた えるも)。これまた言わずと知れた『スパッツ小隊』リーダーであり、当時の大洗戦車道チームにおいて副将格として見られていた女性だ。

 

「西住ちゃんには、すっごく迷惑掛けたと思ってる。最初は戦車道への復帰を嫌がってた彼女を無理矢理巻き込んだんだからね。だけど彼女───芥ちゃんがいたからね」

 

───そのお2人は、仲が良かったのですか?

 

「良いも何も、中学時代に一緒に戦車道やってたっていうんだよ。納得だよね」

 

───納得ですか?

 

「うん、納得。だって西住ちゃん、芥ちゃんが大洗にいるって分かった瞬間に『いけるかも』って言ったんだよ? 再興したばかりで、素人ばっかりの戦車道チームを率いるって事になったのに」

 

 

 

 

 

ここまでの取材で分かったことをまとめるとこうなる。

 

①関係者が口々に述べるほど、日常的にうるさかったらしい。

②チームメイト達からは厚い信頼を得ていたらしい。

③隊長の西住 みほとは中学時代に戦車道で共に戦い、とりわけ信頼されていたらしい。

 

興味深い情報ではあるのだが、残念ながら①を除く情報は既に過去に何度も行なわれたインタビューで取り上げられた情報であり、このままではこの記事は目立つ事無く忘れ去られる、凡庸な記事のままに終わっていただろう。

だが私は、望外のチャンスを手に入れることが出来た。なんと、西住 みほへのインタビュー申し込みに成功したのだ!

こちらもたまたま母校のイベントにゲストとして招かれ、その時に余裕のある時間帯限定ではあるがインタビューを受け入れてくれたのだった。

彼女なら、おそらくもっとも『スパッツ小隊』に近かったであろう彼女の話を聞けば、私が何故彼らに大きな興味を持っているのかという疑問への答えが得られるのではないか、そう考えていると、待ち合わせた喫茶店に西住 みほが現れる。

高校生の頃からの穏やかさを面影に残しながらも、強かさを身につけた大人に成長していた彼女は、興味津々でメモを取ろうとしている私の対面に座り、当時の思い出を振り返りながら話し始めた。

 

 

 

 

 

何故、彼女達はその名を轟かせることになったのか。

少女達の汗と涙と笑顔の物語に、密着。




アルコールにそそのかされて書きました。
怒られたら消します。
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