スパッツ小隊in戦車道(まるで二次創作) 作:未確認動物
「演劇部、ですか?」
「そうそう」
私───西住 みほは転校してきたばかりの大洗女子学園の生徒会長、角谷 杏さんに連れられながら、戦車道にはあまり関係の無さそうな部活の名を聞かされていた。
大洗女子学園は今年から戦車道を復興させることになり、私は唯一戦車道の経験があるということで(半ば無理矢理に)参加することが決まった。今はようやく戦車道全国大会に出場出来る最低限の数の戦車が見つかって、洗車を始めようというタイミングで、会長達に連行されることになったのだ。
共に戦車道に参加してくれた
そして今、会長、そして生徒会メンバーである
「実はさっき、『もう一両の戦車が見つかった』って報告が来てね」
「まだ、使える戦車があったんですか?」
話によるとその戦車は、これまでの戦車のように森の中や池の底に放置されていたというわけではなく、なんと郷土館に保管されていた物だったらしい。
かつて戦車道が行なわれていたという歴史を残すために、かつての戦車道メンバー達の中でもエースとして扱われていたチームの車両なのだとか。
「けどさー、今いるメンバーだと数が足りないじゃん? 乗組員の。で、ちょうど4人乗りっていうから演劇部の子達に声掛けにいこうってこと。西住ちゃんも、隊長として仲間になる子の顔を先に覚えてて損は無いかなって」
「あの……いいですか?」
おずおずと手を挙げる私。強硬的に戦車道に参加させられたことから、この人達に何か意見するということに多少の恐怖があったものの、それでも聞いておこうと思ったのだ。
「なんで、演劇部の人達なんですか?」
「それは私から説明しよう」
そういって話を引き継いだのは、川嶋先輩だった。
「演劇部はバレー部ほど逼迫してはいないものの、部員数4人の小規模部だ。劇が出来なくはないが、4人では出来る劇のレパートリーも、出番も少なくなる。要するに暇しているということだ」
「はぁ……」
「生徒会もなんだかんだで多忙だからな。そんな時によく、仕事を手伝って貰っているのさ」
「そういえば会長、今日はどうやって説得するの?」
「んー、今日のこの時間帯は多分
小山先輩が会長に話しかけると、会長は懐から何やらカードケースのような物を取り出した。
『説得する』と言っていたが、その箱に入っているものでどうやって説得するというのだろう。
「まあ、なんだかんだで話せば分かってもらえると思うけどね、芥ちゃんは」
「えっ……」
会長が口にしたその名を聞き、私は自分の中で何かがドキンとしたのを感じた。
「ん、どうしたの西住ちゃん」
「えっと、その、芥さんっていうのは……?」
「ああ、演劇部の部長やってる子だよ。芥 慧留最。……ひょっとして、知り合い?」
「……はい」
忘れるわけが無い。……芥 慧留最さん。
「黒森峰の中等部で、一緒に戦車道チームに参加していました」
「おおっ!? まさかの経験者二人目かっ!?」
「そういえば彼女、高校入学までは転勤族だって言ってたねぇ。まさかそんな過去があるとは……」
会長のリアクションを見る限り、本当に知らなかったようだ。いや、これまでの彼女を見る限り、知っていたなら真っ先に声を掛けているだろう。
会長が私を見て尋ねる。
「西住ちゃん。芥ちゃんってさ、
どう、と言うと、やはり強さについて聞いているのだろう。
戦車道の優劣は個人の強さでは決まらない。車長を始めとした、戦車を動かすための各ポジションのメンバー。そしてそれらのチームが大勢集まった『部隊』で評価されるべきものだ。
だが、これについては断言出来る。
「もしも彼女が参加してくれるなら、
「着いたよ」
中学時代の芥さんについて話しながら歩いていると、会長はある場所で立ち止まった。
「おもちゃ屋、ですか?」
「うん」
私が頭をひねらせていると、会長達は店に入っていってしまった。慌ててその後を追う。
店内には子供向けの人形や特撮番組のなりきりセットといった商品が並んでいたが、平日の昼間ということもあってかお客の数は少なかった。
「───んだお前ら、今日は───」
「───やー、突然で悪いねスパ───」
「───ット、カットだ、いったん───」
その奥から聞こえてきた、会長と話しているらしき声に、私は確信する。
間違い無い、彼女だ。珍しい名前だからあり得ないとは思うけれども、それでも人違いという可能性が消えた。
思わず、
「芥さん!」
「えっ……みほ? なんであんたが此処に!?」
はたして彼女は、そこにいた。
ヒトデのような髪型をして、首からピラミッドのようなアクセサリー(手作り感溢れる)を下げた姿で。
「えっと、間違えました……?」
「いやちょっと待って、一応これカツラだから」
芥さんはスポンと珍妙なカツラを脱ぎ去り、見覚えのあるショートカットの黒髪が姿を現したけれども、それで中学時代からのイメージの崩壊が止まるわけもない。
おかしい、中学時代の彼女も少し変わった性格の人だったけれども、こんな奇行に走る人ではなかった。
というかその後ろでテーブルに着いている人達も何かおかしかった。
腰までの長い銀髪の上から栗色のカツラを被り、白いコートを羽織った女子だったり、左目が隠れるように前髪の伸びたカツラを被る女子だったり、果てには何か奇妙な形のステッキ(手作り感溢れる)を持った女子だったり。
ここはおもちゃ屋ではなく、伏魔殿か何かだったのだろうか?
「あー待って待って待って説明させて、っていうか説明してっていうか、あれ?」
「芥ちゃん、とりあえず落ち着こっか」
どこかから椅子を持ってきて座る会長。正直生徒会メンバー以外の全員が困惑していたので、今回ばっかりはその存在が有り難かった。
川嶋先輩達が人数分の椅子を追加で持ってきたので、座らせて貰うことにする。
「えっと、はい……」
「あっ、ああ、サンキューな……」
私と芥さんが座ったのを確認して、会長は話し始める。
「まず最初に言っとくと、西住ちゃんは今年から大洗に転校してきたんだよ。で、戦車道に参加するの」
「あぁ、転校……転校!? みほが!? いや、だけど……妥当っちゃ妥当かな」
驚く芥さん。たしかに私とある程度親しく、事情をある程度知っている彼女からすれば、転校してくるというのは驚くことであったが、同時に納得出来ることだったのだろう。
まさか自分のいる高校に転校してくるというのは予想出来なかっただろうけど。
「で、今年から戦車道、復活させるじゃん? 西住ちゃんに参加してもらうことになったじゃん? で、芥ちゃん達にも手伝って貰おうかと思って」
「……まあ、大体の状況は分かったぜ」
色々とざっくりした解説ではあったけれども、芥さんは私達の事情を理解したようだ。
そういえば、彼女は昔から会話の流れや概要を掴むということに長けていたということを思い出す。
「それならなにより「けど、それを受けるかどうかは話が別よ」……へえ?」
会長の言葉を遮り、芥さんは真剣そうな表情で言葉を続ける。
「私達にだって予定があるの。それをいきなり変えろったって無理があるでしょ。私達に何かやらせようってんなら……」
「ふふっ、やるかい?」
会長と芥さん、両者の間の空気がぴりついていくのを肌で感じ取った私は、川嶋先輩と小山先輩の方を向いて助けを求める。
「あの、これって大丈夫なんですか……?」
「大丈夫だ、問題無い」
「喧嘩とかじゃないから大丈夫だよ~」
二人は静観の構えを見せる。
そして会長と芥さんは、それぞれ手を突き出す。
───その手にカードケースを携えて。
「「───
……はい?
「「お互いのデッキを、カット&シャッフル!」」
あれよあれよという間に、芥さん達はテーブルに付いてカードを広げ始めた。加えて、芥さんは先ほど外したヒトデのようなカツラを被り直している。
何か珍妙な格好の人達も、テーブルの上の物を片付けたり、カメラらしき物をテーブルの上にセットし始める。
事態を飲み込めない私は、川嶋先輩達の方を向く。
「あの……」
「静かにしろ西住。今は撮影中だぞ」
「一応説明しておくと、これから会長はあのカードゲームで勝って、芥さん達と話を付けようとしてるの」
小山さんがこっそり耳打ちで教えてくれたことで最低限の事態は理解出来たけれども、起承転結の承が飛ばされたような気がする私にはまるで意味が分からないことだった。
なんでカードゲームで? どうして撮影してるの? あの格好はいったい?
「今の連敗数は3回……これ以上負けたらヤバいって、俺の中の勘が悲鳴を挙げているのが分かるぜ」
「あたしは楽しいよ? あたしは勝つことで君を好きに出来る、君は生徒会の活動の助けになれる。誰の心も傷付くことの無い、Win-Winのいい関係だ」
「調子づいていられるのも今のうちだぜ? 運命のダイスロール! ……よし、6。俺は先攻をいただくぜ☆」
「そんじゃ、あたしは後攻ね」
お互いにサイコロを投げ、芥さんが6、会長が1を出す。どうやら出目の高さで先攻後攻を決めているようだ。
いつの間にか口調が変わっている芥さんも、会長も、楽しさと真剣さを両立させた表情をしていた。
置いてけぼりの私でさえも、ゴクリと息を飲んでしまう。
「
「
会長に促された川嶋先輩の甲高い声が響き、ついに戦いが始まった。
「「───