「オギャー、オギャー!」
部屋の中には元気な産声が響き渡る。
今まさに、この場で新たな命が芽吹いたのだ。
ドカドカドカ……バタン!
産声を聞くなり、扉が壊れるほどの勢いで部屋の中には1人の男が入ってきた。
その顔は歓喜に包まれている。
「う、産まれたか!」
「ちょっと、まだ入って来ちゃダメでしょう?」
今赤ん坊を産んだばかりの女性から気だるそうな声が聞こえる。
「いやいや、俺は父親だぞ? 入っちゃいけない訳ねえだろ!」
「はいはい。全くもう、困ったお父さんでちゅねえ」
「ルミー、この野郎……」
「あら、野郎だなんてヒドイじゃない」
「ぐぬ……それはそうと、俺にも顔を見せてくれないか?」
「はい。ああ、強く抱きしめすぎて絞殺なんてしないでよ?」
「そんな事するか! ……おおお、元気な男の子だ……」
赤ん坊の父親からうるうると涙が溢れる。
「さてと、名前つけないとね……。ダスティン、何かいいのある?」
そう聞いた途端、外では突風が吹いた。
「……ゲイル。ゲイルはどうだ?」
「あら、いいわね。この子に、いい“風”が舞い込む事を願って、この子の名前はゲイルにしましょう」
「「よろしくね、ゲイル」」
こうして、この物語の主人公 プレアデス・D・ゲイルの人生が始まった。
初めまして。
俺の名前はプレアデス・D・ゲイル。
どこにでもいる赤ん坊(1歳児)です。
いや、前世分含めたら赤ん坊(18歳児)になるか。
まあ、495歳児よりかは全然マシか。
今話した通り、転生者でもあります。
かつて、俺は日本の高校生だった。
ちょっと漫画やアニメに詳しいのが特徴で、それ以上は特にない。
ただの高校生だった。
プ○ウスミサイルを食らうまではね。
そして、気づいたら生まれ変わってたという訳だ。
さて、今俺は父親に抱きかかえられている。
そして、目の前にはとても辛そうに身体を横にしている、俺の母親がいる。
母さんはふと起き上がり、腕を前に出した。
「ねえ……」
母さんがそう言うと、俺の父さんは俺を母さんに預ける。
母さんの表情は、どこか切なそうだ。
「ごめんね……。私、もう長くないから……これが最後のハグになるかも……」
そう言って俺を抱きしめた。
正直なところ、生まれたばかりの俺にそんな事言わないで欲しい。
死んだと思ったら、生まれ変わってたのだ。
最初は戸惑ったが、これはこれでいいと思えたのだ。
豊かではないが、中々楽しく生きられそうだと思ったのだ。
それなのに、いきなり母親が死ぬなんてそんなの嫌に決まっている。
だが、現実は非情だった。
母さんの心境が手にとるように分かる。
自身の死期が近い事を本能的に理解しているのだ。
だから、その事が余計に辛い。
そして、間もなくして、母さんは死んだ。
しかも、悪い事は続いて起きた。
母さんが死んで2年程経った頃、今度は父さんが体を壊した。
そんな頃に、1人の男がやって来た。
爺さんだった。
だが、爺さんのくせしてメチャクチャガタイがいいし、目つきもかなり鋭い。
正直言って、かなりおっかないというのが第一印象だった。
というか、なんか見覚えのある顔なんだけど。
「まさかお前さんから、子供を預かって欲しいと言われるとはな」
それがその爺さんの一言目だった。
「ははは。悪いな、頼れるのはアンタだけなんだよ、ガープのおっさん」
ゑ?
今、父さん“ガープ”って言ったか?
というかそうだよ!
この顔どう見ても某大人気海賊漫画の主人公の爺ちゃんじゃん!
この声でしかもガープ……決まりだわ。
俺、『ONE PIECE』の世界に転生したんだわ。
そういえば、なんか名前に“D”ってついてたわ。
はあ、なんで『ONE PIECE』なんかな……。
どうせならラノベっぽい世界だったらって思うな。
「はっはっは! 中々可愛らしい子じゃ」
恐らくこの流れ……このままこの爺さんに俺は引き渡されるんだろうな……。
「ええか? お前さんは、父ちゃんみたく海賊になるんじゃなくて、立派な海兵になるんじゃぞ」
「ああ、海兵になるのは却下で。アンタみたいなクソジジイに海兵として育てられたくはないよな、ゲイル」
「なんでじゃい! ワシが預かってやるんじゃから、そのくらいええじゃろ!」
「よくねえよ! 俺の子だ!」
そうして父さんとガープの爺さんの口喧嘩がしばらく続いた。
そして、最後にこう父さんに言われた。
「まあ、海賊になるも、海兵になるもゲイルの自由だ。だからとにかく、元気に育ってくれれば……それでいいから」
そして、この日を最後に俺は父さんと会うことはなくなった。
翌日、父さんは心臓病で亡くなった。
俺を抱えながら、ガープの爺さんはこう呟いた。
「まさかロジャーだけでなく、ダスティンからも子供を任せられるとはの。ワシは託児所じゃあねえってのに」
確かに、そうだね。
だが、俺からしてみれば笑い事ではない。
両親共々俺が赤ん坊の頃にあの世へ旅立つとかどうかしてる。
しかも、そんな俺を引き取ったのがガープの爺さん。
はあ、前途多難だ。