転生したらドラゴンだった件   作:炭酸水素水

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大会のその後のお話。



11話 穏やかな一時

闘技大会が開かれてからしばらく経つ。

あの後、私はダグリュールの取っておいた秘蔵の酒を勝手に飲んでいた事がバレてしまった。

その罰として、私は毎日ダグリュールに修業させられる事になっている。

 

一方、ディーノは罰として、竜命酒の製造監督を押し付けられる事になった。…んだけど、

「怠惰者」の事を私がダグリュールにバラさなかったからなのか、対応は甘め。

内容としては、ディーノの元に運ばれてくる試作品。それに対して、あれこれ注文つけてるって感じだね。

 

 

その内容を聞いた時のディーノだけど、

「え?俺ニートしてて良いの?」

みたいにパッと明るくなったと思えば

「いやーお互い大変だな!」

とかなんとか言ってた。

甘い蜜を吸うって言葉があるけど、物理的に吸うやつがあるか!

うむむ、これは納得いかない。不公平だ!

 

と言う訳で、ダグラ発案の竜命酒「ロシアンルーレット味」の企画を猛プッシュしよう!

そして、流行を取り入れるのも忘れない。 最近の野菜ジュースは濃縮還元ばかりだ。私達もその例に倣おうじゃないか。

 

「今頃はディーノの手元に届いてる頃かな?」

 

濃縮はされていても還元されてないのがミソ。

最後まで濃厚デリシャスな味わいさ!

きっとディーノも喜んでくれるに違いない

 

 

そんな私は今、通天閣ではなく外の広場にいる。いわゆる気分転換。

鉄棒のような遊具っぽい物に乗っかり、足をブラブラさせながら空を眺めている。

 

「たまにはこうして、のんびりするのもいいよねー!」

 

近くでは5~6才くらいの子供達が楽しそうに遊んでいる。牧歌的でとても目に良い。

しかし巨人故か、身長は既に私と同じぐらいある。

 

ちなみに今の私は12~13才ぐらいの見た目で、髪は背中まである白金髪(プラチナブロンド)

二本の角がこめかみから上向きに生え、逆にドラゴンの短い角があった額には、翡翠色の楕円型のオーブがついている。

ただでさえ短い角だったけど、人化したら角ですら無くなってしまった。

 

(もしかして、額の角って伸びないんじゃ…)

 

この額のオーブは角が伸びない事を暗に示しているのかも知れない――

そんな恐ろしい想像が頭をよぎるが気にしない!なんせ未来は誰にも分からないんだから。

 

 

「あ、クレア(ねえ)だー!」

「ほんとだー」

 

おー、子供達が寄ってきた。私って人気者!

 

「皆元気にしてたー?」

 

久しぶりに合ったような挨拶だけど、ここ最近は毎日会ってるんだよね。

 

「げんきー!」

 

「クレア姐も元気?」

 

「もちろん!」

 

腰に手を当てて胸を張る。

私はドラゴンの生命力故、病気や怪我に強いからね。

 

「ねえ、クレア姐、またアレ見せて!」

 

「僕もまたアレ見たい…」

 

「見せて!見せて!」

 

「うん、分かった!ちょっと準備するから!」

 

子供達にせがまれている"アレ"とは、闘技大会で私が披露した立体映像の事だ。

この間、子供達に見せたらとても喜んで貰えたんだよね。

 

「準備オッケー!でも、あまり近づきすぎないでね!」

 

テレビを見るときは部屋を(以下略)

私は早速闘技大会の映像を再生する。

 

「おおー!!」

 

「すげー!」

 

「かっこいい…」

 

映し出される光景を前に、子供達は釘付けだ。

私の前世で言えば、ヒーロー物の特撮を見ているような感じだよね。

戦っているのはガララさんとダグラだ。

 

「いけ、負けるなダグラ!」

 

「そこ!そこで一発!……あーあ、」

 

「……負けちゃった」

 

「なにやってんだよ」

 

「また負けてるー!」

 

これは映像だからね。どれだけ応援しても、絶対にダグラが勝利する瞬間は訪れないのだ。

私は心の中でダグラに合掌しつつ、決勝戦の映像を流す。

 

「このガララって女の人強いな!」

 

「うん!グラソードさんと互角に切りあってる」

 

「二人ともすごいつよい…」

 

うんうん、私もこの決勝戦は凄いって思ったもんね。

お互い玄人同士の闘いって感じで!

ちなみに、大会の主催者さんは「見た目の派手さとか、華が無くて地味、見てて眠たくなる」とか何とか。

…最もその主催者は、最初から終わりまでずっと寝てたそうですね。

 

「すごい戦いだった!」

 

「ガララさんもすごかったな、」

 

「グラソードさん…」

 

熱い決勝戦も終わり、優勝商品の贈呈に移る。

 

「地酒…デブラ……うっ、頭が!」

 

精神的に宜しくないものが顕在化しようとするのを、私は必死に阻止する。

その奮闘は、映像が途切れる事により無事終了した。

 

「これでおしまい?」

 

「楽しかったー!」

 

「満足…した…」

 

うんうん!喜んで貰えて私も嬉しいよ。

でも「これでおしまい?」なんて言われると、何かもう一発なにかネタが欲しくなるよね。

 

ここで「もう無いよ?」とか言ってたら、なんか嫌だし。

 

「クレア姐ー、他に何か無いー?」

 

ぐっ、食い下がるね君ィ!

だがしかし、私にもとっておきの秘策があるのだ。

 

「あるよ!」

 

子供達は目を輝かせて「見せて、見せて!」と寄ってくる。かわいい。

今回初公開する映像だけど、結構自信はある。

なんせ次の映像は私自ら出向いて集めたものだからね!

 

「じゃあ、早速!」

 

「よっしゃー!」

 

「まじで!」

 

「楽しみ…」

 

三者三様の反応をみせる子供達。

これから見せる映像は戦いでは無く、砂巨大蟻の生態を纏めた映像。

正直、喜んで貰えるかは不安だけど、子供って以外と他の事にも興味を持ちやすいからね。

 

『(試すだけタダ!当たって砕けろって奴だ!)』

 

私は自信を持って、映像を再生し始めた。

 

 

…………

……

 

 

――と、このように女王蟻は滅んだ場合、生き残った上位種が、環境による遺伝の発現により新たな女王個体へと変化し――

 

今、映されているのは蟻の視点からの映像だ。

巣の中や、砂漠で餌を取る光景が鮮明に捉えられている。

 

 

「……………!」

 

子供達も蟻の視点からの生活なんかは見たことが無いんだろう。目を見開いて、新たな知識に食いついている。

 

「(うんうん!良い感じ!)」

 

やっぱり人の好奇心って偉大だね!と、つくづく思う今日この頃。

でもどうして、私がそんな映像を撮ることが出来たのか?

その秘密は、私のあるスキルによるものだ。

 

 

「(魔力場干渉に、思念伝達を組み合わせれば、あら不思議!)」

 

なんと魔力で繋がっている相手の視界を、私も見ることが出来たのだ。

アリ達の「食物連鎖」は、既に私とは切り離されてしまっているが、魔力的な繋がりはしっかり残っていたらしい。

 

「(そのお陰でこんな映像が撮れたって訳!)」

 

 

でも、その繋がりはアリのみならず、竜命酒を飲んだ巨人達にまで及んでいたのだ!

 

「…間違って見えた時は慌てたなあ」

 

そう、視界が見えてしまうのである。

あんな事や、こんな事まで。勿論、それ以降は一度も見ないようにしてるけど…

 

 

「ん?クレア姐どうかしたの?」

 

おっといけない、声に出てしまったよ。

 

「ううん、なんでもないよ!」

 

 

困ったような笑顔を向ける私。その子は少し頭を捻って不思議そうだ。

しばらく見つめあった後、その子は再び映像に目を向ける。

 

 

――こうして蟻達は命を繋いでいます。また来年になれば、新たな女王が新天地を求めて飛び出していくことでしょう――

 

 

蟻の特集映像が終わったー!

いい話だったわ、とっても感動した!

コレ作るの結構大変だったから余計にね。

 

「(アレ、なんだか目頭が熱く…!)」

 

涙ぐむ私に対して、子供達の感想や如何に――

 

「全部倒さないと復活するのか!」

 

「ふっかつするとかズルい!」

 

「…大変」

 

思考が完全に殲滅方向なんですが!?

なんかこう、生命の神秘みたいな、ドキュメンタリー風にしたはずですけど!

物騒すぎるぜオイ!

 

「よっしゃ!強くなるぞ!」

 

「うん、いっぱい食べて強くならないとね……ハハハ」

 

くっ、でも私はお姉さんだからね。こう言う場合の対応だって心得ているのさ。

 

「…一杯食べると言えば…知ってる」

 

「…ディーノさん」

 

ディーノ?いっぱい食べる?デブラの間違いじゃなくて?

つまりどう言うことだってばよ?

 

そう思って聞いてみると、ディーノはこの土地で採れた作物の毒味を任されているそうだ。

あいつのタダ食いにそんな理由が!?

竜命酒の試作だけでなく、それも一緒にやらされているみたいだ。

 

私が汚染を取り除いた後の土地では、たまに汚染が再発したりする。

その確認の為に、多少の毒物など効かないであろうディーノが毒味の役を任されたそうだ。

 

そんな割とぞんざいな扱いを受けつつも、ディーノはその役目をしっかり果たしている。

 

「(自分から何かするのが面倒ってだけかも知れないけど…)」

 

 

それでもこんな小さな子がそう言うなら、ディーノは良い奴なのかも知れない。

 

今度会ったら謝っておこうかな?と思わず思う私。その時、三人の内一人が私に声を掛ける。

 

「そうだ、クレア姐!これあげる!」

 

「えっいいの?」

 

「さっきのお礼!」

 

おお、この歳でお礼ができるとか凄い子だね。

私は食い意地が張ってたから、そんな事はなかったけど。

 

「トロピカサボテン貰っちゃっていいの?」

 

「うん!オレもがんばる!クレア姐もがんばれ!」

 

そう言って腕白そうな子が駆け出していった。

 

「あ、まてよ!」

 

「…クレア姐、またね」

 

「うん、またね!」

 

残された二人も腕白少年を追いかけて行ってしまった。

貰ったトロピカサボテン……折角だし、頑張ってるディーノに差し入れようかな?

 

「(基本的にやな奴だけど、良いとこもあるんだよね、アイツ)」

 

思わずフフっとなる。

 

ちょっと思念伝達でもするとしますか!

 

「おーい、ディーノ!」

 

 

……………

 

アレ?返事がない。もしもーし?

 

 

「(心配だし、ちょっと見てみよう)」

 

私は魔力回路を伝って、ディーノの視界に繋げる。不思議と抵抗されなかったけど、どうかしたんだろうか。

 

「おっ見えてきた!」

 

 

見覚えのある瓶と、仰向けになり泡を吹いて倒れるディーノの姿が見える。

…ロシアンルーレット味、本当に採用されたのか。

 

「み、水…」

 

ディーノ、あんたは良い奴だったよ…

 

この後、私にはダグリュールとの修業が待っている。

私も私の責務を全うするとしよう。

そう心に誓い、私はその場を離れていった。

 

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