転生したらドラゴンだった件 作:炭酸水素水
不毛の大地によって外界から隔離された都市「聖墟ダマルガニア」
その中心にある巨塔、― 天通閣 ―
その王座に座すは青髪青眼の大男。十大魔王が一人、「
彼が治めるこの地にある知らせが届く。
"ジュラの大森林から暴風竜ヴェルドラが消失した、と„
距離が離れている事もあって、実際にヴェルドラが消失した時期は4~5ヶ月前だろう。
ダグリュールは考える。
あの土地を、自分の支配領域として認めさせられないかと。魔物の楽園とも呼ばれるあの大森林は、暴風竜の魔素により清涼とした気候で、豊かな森の実りは多種多様な生き物達の飢えを満たしてもなお、有り余る程である。
(ワシがあの地を手にしたとして、いずれヴェルドラが復活した時、上手く顔繋ぎもできる事だしのう)
ヴェルドラとは旧知の中であり、昔は暇を見つけては…と言うより向こうからやって来て、よく戦った喧嘩仲間である。
ダグリュール達、巨人族の置かれている状況を知り、何とかしようとするくらいには良き理解者でもある。
しかし、「我に任せるが良いぞ! クアハハハ!」と言って、暴風魔法で土地ごと吹っ飛ばそうとするのはやめてほしい。
そもそも異空間から汚染の原因が漏れ出しているのだから、土地を吹っ飛ばしても解決になっていないのだ。
「とは言えジュラの大森林は魔王間の不可侵協定により、守られておるしのう。」
思わず声が漏れる。
「親父!それなら他の魔王をぶっ殺して、俺が魔王になれば領地も奪えるぜ!」
と言うのはダグリュールの息子三兄弟の長男ダグラだ。
「そうだぜ、最古参の魔王ならいざ知らず、ここ500年で魔王になった奴なんざ兄貴の目じゃね―ぜ!」
長男に追従するのは次男リューラ、何かと兄に対してブラコンの気がある。
「その通りだリューラ、俺は昔親父と
ふんぞり返る長男ダグラ。
育て方を間違えたか?と思うダグリュール。息子達なりに巨人族の現状を何とかしようと考えている辺り、一族の長を受け継ぐものとしての自覚が出来ていると思うのだが、どうも血の気の多い嫌いがある。
「ふぇーーっふぇっふぇ、腹がなるでやんす!」
と言うのは三男のデブラ。大柄、と言うか腹やら出る所が出る体型だ。
(その熱意をもう少し違う方向に向けてくれると良いのだが…)
息子達の意見はさておき、ジュラの大森林を支配するのは現実的ではないと結論付けるダグリュール。
理由としては不可侵協定や、そもそもの距離が離れ過ぎている事が挙げられる。
そして何よりここ最近、自分の支配地である不毛の大地が妙なのだ。
(目撃者によると大体は、下級悪魔ばかりだと言うが…)
しかしいくら濃密な魔素で満たされていて、精神生命体でも顕現しやすい環境とは言っても、あくまで汚染された魔素だ。
そこにいるだけで深刻なダメージになるこの砂漠では、下級悪魔にとっての旨味など無く、むしろ害にしかならない。
(となるとやはりヴィオレが手引きしていると考えるべきだが…目的が検討も付かないのう)
考えるのを一休みしたダグリュールはチラリと息子達を見る。
放置したままの息子達3人は何かを話しているが、会話の内容も段々ヒートアップしてきている。
このまま息子達を放っておくと本当に他の魔王に喧嘩を売りに行きかねない。
そうなるとちょっと困るので、息子達を怒鳴り付けて黙らせておく。
「ひとまず暫くの間、聖墟ダマルガニアの外部へ向かう際に、悪魔を刺激しないよう民達に知らせるとしよう。」
悪魔の目的が分からない以上は様子見に徹する事にしたダクリュール。
巨人族は武勇に優れ、戦いに生きる種族といえど、流石に事を構えれば大きな痛手は免れないであろう、
当面の対応を決めたダクリュールは報告に耳を傾けるのだった。
~その大体1ヶ月前~
「
砂漠地帯に生息していて、複数体で行動する。
その強力なアゴとスキルの砂岩弾で獲物を追い詰める。
そんな蟻を狩りまくり、EPを溜めまくっているのがタマゴことこの私!
あれから戦いを繰り返し、蟻も片手間に倒してエネルギーを吸えるようになった。フハハ、蟻は飲み物ですよ!
世界には蟻ジュースとかもあるらしいし、あながち嘘でもないよね。
あれから3ヶ月位たったけど、未だにタマゴのまんまだ。
どっかのダメなタマゴさんなら決して孵化することは無いんだけど、まさか私もずっとタマゴのままって訳じゃないよね?
くそっ!最終形態がタマゴだなんて認められるか!私は殻の外に出るぞ!
折角ドラゴンに転生したのだから、翼を広げ大空を自由に飛んでみたいと思うのは自然な事なのだ。タマゴの姿で飛べるのは、地上から2m位が限界だし安定もしない。
《一定以上の飛行技術・飛行の心得、の条件を満たしました。》
《エクストラスキル「重力支配」、「風魔法」、「地魔法」、「空間把握」を統合、ユニークスキル
《スキル効果により、常に空中移動の性能が大幅に上昇します。》
…これでタマゴのままでも、問題なく飛べるようになったね(白目)
嬉しいけども、なんか…こう、違うじゃん? 貰えるならば貰うけども。
これでユニークスキルが「略奪者」と「浮遊者」の2つになったよ。
略奪者も結構強いスキルだったけど、浮遊者はどんな能力何だろう?っと
●
「重力支配」「空間支配」「地属性魔法」「風属性魔法」「思考加速」
スキルの能力に思考加速が入ってるのは飛行中に大量の情報を捌いてたからかな?
後は魔法が進化していて、以前よりも威力、汎用性が共に増しているみたい。そして、統合される前は「空間把握」だったのが進化して「空間支配」になっている。
そう、"空間„ だ。使いどころとしては例えば……
――あ、野生の甲殻モンスターが現れた! 攻撃すると武器の耐久値が蒸発してしまうぞ!
剣士A「ハアァ!!」 バッキャォ!
剣士Aの 武器は こわれてしまった!
剣士A「馬鹿な…! 刃が通らない…だと!?」
しかし、その間に甲殻モンスターの甲殻が剣士Aに迫る―!
攻撃が効かなかったことに呆然とする剣士Aは、その攻撃に気づかない!
剣士B「避けろ剣士A!!後ろだ!!」
剣士A「ーえっ!?うわあぁあ!」
そんな時でも、この能力を使えば空間ごと物体をスパッと切ったり出来ちゃうぜ!イエイ!
とは言え、空間属性では無く、あくまで空間支配なので指定した空間座標にしか影響しない。
なまくら剣に付与して切れ味MAXにしようしても、最初に設定した空間しか影響しないので剣はなまくらのままなのだ。
何なら残った指定座標に腕とかが当たるとスパッと逝くので恐い。普通に危険だし、結界とセットの運用になりそうだね。
ちなみに今の切れ味は、時間を掛けて蟻の足を切断できるぐらい。
鍛えていけばイメージしたような使い方もできそう。
…………
……
…
新技を試すべく、私はすっかり顔馴染みとなった
(こんにちは!しね!)
(スキル発動!「砂岩弾」、「風魔法」!)
蟻はアゴを広げて襲い掛かってくるが、私がお前の接近を許すと思ったか!
砂岩弾をぶつけて怯ませている間に、新技の準備を整える。
(さらにスキル「各種結界」、「空間支配」を組み合わせて!)
結界内に限界まで圧縮した空気を、風魔法で蟻にぶつけて吹き飛ばす。
そしてその背後には網目型にした空間支配。
蟻はそのまま網目に押し付けられ、網目を通ってサイコロステーキ状になる。
スパッと!
魔物裁断機!タマゴスライサー!!
(あれ?この名前だと私が細切れになりそうじゃない!?)
蟻はモザイクなしでは見られないような姿になり、息絶える。
(ちょっとやり過ぎだよねこれ…!)
――正気度を失いそうな光景を前に、私はこのスキルを封印すると決めたのだった。
スキルの検証も終わり、私は蟻から魔力を吸収するべく、ここで腰をおろす。
その間、私はあることについて考えていた。
(何度もあの蟻と戦ってきたけど…だんだん手応えがなってきてる気がする)
新しい強力なスキルを使って敵を圧倒!…したは良いけれど、今までの行き当たりばったりな戦い方でも、割と楽に蟻は倒せる。
つまり私が強くなったせいでこの辺の魔物なら、どんな攻撃をしても大体すぐに勝てるようになったのだ。
(ゲームの序盤敵にマダンテとかミナデインみたいな大技を使うような感じ。 レベル帯に合わない場所じゃあ、レベリングの意味ないよね)
もうこの辺では私より強い魔物はいないのか……。
まあ、探せば出てくるだろうけど、たまにしか会わないレアモンスターがEP稼ぎに効率的かは疑問だしね。
元々は安全地帯を探しに行くはずだったけど、もうこの場が安全地帯になってるんだよねー
(私がこの地を統べる主!って感じかー、やったぜ!)
タマゴが天下を取れるとは、いい時代になったものです。
とは言え、安全が確保された途端に次のものが欲しくなるのが哀しき人の
(安心できても24時間365日休まず砂嵐、って言うのはちょっとね。)
テレビ局の放送スケジュールなら論外。なので、東の山脈を目指すルートはそのままでいこう。
蟻の魔力もほぼ吸ったし、そろそろ移動を再開しようかなっと。
そして私は「浮遊者」を起動して浮かび上がろうとする。
その時、目の前の空間が歪み始めた。
私がした訳じゃなくて、スキルの誤作動でもない。
何よりもその魔力の大きさが、私が持っている魔素量の何倍もある。
術式もその精巧さ複雑さが、私とその存在との格の違いを言外に主張する。
空間の揺らぎからして、恐らく空間転移だ。何者かがここに来ようとしている。
(何!?なんなの!!)
少なくともここは誰かが好き好んで来るような所じゃない。
この砂漠には常に強力な腐食の砂が吹き荒れ、周囲には汚染された魔素が満ちている。
スキルで完全耐性を持ってる私はともかく、 弱い魔物ならいざ知らず、強い魔物だってこの場所でずっと生きている事はできないのだ。
逆に言えばそれらが何ともない程強ければ、何も問題ないわけで……。ここに来ようとしてる相手は恐らく、物凄く…強い。
(まさか…!この土地の本当の主が来てるの!?)
そんなお方が一体何の用だよ!
心当たりがあるとすれば…あれかな
(調子に乗って「私はこの地を統べる何とか」って確かに言ったけど!いやいや!)
ここに来ようとしてる主が、実は読心術スキル的なのを持ってて、勝手に自分の土地宣言した私を締めに来たとか。
あれはその、 言葉の綾といいますか…ええ、 その様なつもりは毛頭もございません。ほほほ…!
(戦いになったらまず死ねるから、うまくコミュニケーションとって回避しないと)
唸れ私の舌力!イメージトレーニングはバッチリ!声を出す練習だ!あーあーあー。
大丈夫、私は悪い事をしたと思ったらちゃんと謝れる良い子なのだ。大丈夫、何も問題ない。
等と考えていたら、相手はもう出てきた頃だった。
空間の裂け目の門から出てきたのは三人。こちらに向かって歩いて来る。
先頭に立つのは女子高生っぽい見た目の、金髪金眼の少女。でもその存在感は圧倒的な風格を感じさせる。見た感じ、この子がこの三人のリーダー格かな?
二人目は同じく女子高生っぽい少女だけど、金髪の子にお金でも借りてるのかな?太鼓持ちに徹してるような印象を受ける。
そして三人目、壮年の白髪の男性なんだけど、刀を持ってる。それも、どう見ても日本刀にしか見えないような奴。そして見た目も何だか侍っぽい。
JK二人と侍一人、なんと言う色物パだよ。なのにあんな見た目してて強さは私より圧倒的に上。
しかも相手は三人、向こうがその気なら此方に成す術すべはない。
私はごくりと唾を飲み込んだ。
(唾を飲み込めるなら、ある程度は体も出来てたんだね。知らなかったよ)
最も、この場を何とかやり過ごせないと何の意味もないけど!
「ジョーヌ様、あれですか?」
太鼓持ちっぽい雰囲気の子が声をかける。良かった、話をする気はあるみたいだ。
そっと胸を撫で下ろす。
侍が一人いるのが余計だけど、女子トークと洒落こもうぜ!
金髪の少女が口を開く。
「やあ、こんにちは、死ね!」
彼女の手から黒い塊が発射され、私の目の前で爆発する。
周辺の空間が軋み、特異点へと向かって終息していく。
ーー
メキメキ、パキボキっと嫌な音を立てて私の体は在らぬ方向に曲がり始める。
(ぐぅっッーー痛いッ痛い!!止めて、止めっ…)
私の願いも虚しく、空間の軋み具合が加速度的に早くなる。私の体は潰れたタマゴのようになり、激痛が全身を貫いた。
(や、ヤバイ!! ほんとにこれアカンやつ――)
私の意識はそこで途絶えた。
まだ名無しの悪魔の皆さんの名前対応はこんな感じです。
ヴィオレ→ウルティマ ジョーヌ様→カレラ
太鼓持ちの娘→エスプリ 侍っぽい人→アゲーラ
名前って大事ですね。
カレラは普段、レオンの大陸の辺りにいますが、今回はウルティマの所に遊びにきています。…確か不毛の大地にも、地獄門があったはずなので、受肉しなくても外に出てこれたはず。