転生したらドラゴンだった件   作:炭酸水素水

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タマゴからドラゴンへ、ツルツルお肌からゴツゴツお肌へ…



4話 ハッピーバースデー!私!

 

 "原初の悪魔„

 それは、星王竜ヴェルダナーヴァが自らの補佐とする為して生み出した"始原の七天使„の対 となる存在。

 誰にも侵される事のない、何処までも深い深淵。その闇の大聖霊から派生し、眷族たる悪魔達の頂点に君臨する者。

 そんな原初の悪魔の七柱が一人、原初の黄(ジョーヌ)は、側近の悪魔達と不毛の大地にて佇んでいた。

 

「ジョーヌ様~、ヴィオレの奴がこの辺に居るんでしたっけ?」

 

 太鼓持ちポジションの彼女は金髪の少女の機嫌を伺いつつたずねる。

 

 

「ああ、精神系のスキルの跡を辿ってきたのだが、ここにはもう居ないらしい。これもあいつの嫌がらせなのか?」

 

「でも~スキルの感じもちょっと違いますし、ジョーヌ様の勘違いなんじゃーー」

 

「ん?何か言ったかな?」

 

「イイエ、なんにも」

 

調子のいい側近に辟易しつつもジョーヌは考える。

 拷問や陰湿な嫌がらせを好むあの悪魔(ヴィオレ)は精神系のスキルを好んで使う。

 しかし、その痕跡に跳んでみれば今回は謎のタマゴが落ちていただけ。

 ヴィオレの嫌がらせだろうが、それにしては可愛げがあると言うか…何か違和感がある。

 

「陰湿で姑息なあのヴィオレのことですから、今頃何処かに隠れているんですよ!ジョーヌ様の重力崩壊はとても凄まじかったですし!」

 

 太鼓持ちの少女に言われて一先ず、まあいいか、と結論付けるジョーヌ。

 

「まあ此処はヴィオレの支配域なのでな、こうして核撃魔法を撃ち込んでやれば、何時までも隠れようとはしないだろうと言う訳さ!」

 

「素晴らしい叡知…私は感服しました!!流石はジョーヌ様です!」

 

「そうと決まれば此所に用はないのでな、さあ、行くとしようか!」

 

 晴れやかな顔でそう宣言するジョーヌ、それに合わせて持ち上げる少女、そして何か言いたそうな侍。

 三人は転移門をくぐって何処かへ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《個体名 ー の意識の残滓を世界の言葉システム内及びに基軸世界に確認。》

《ユニークスキル「略奪者」(ラプター)の所有域内に個体名 ー の生存判定が存在します。》

 

《……》

 

 

 

 

 

 ―――生きてる。―――

 

 

 不思議空間で私は目を覚ました。

 あれからどれだけ経ったのか分からないけど、間違いなく生きている。

 

 私の目の前には今までの記憶……走馬灯って奴、が広がっている。私はいつの間にか拳を握り、肩を震わせていた。

 

 なんとなく過ぎていった私の人生。そうしてたどり着いた場所がこれか、と怒りが込み上げてくる。

強くなったつもりで、結局は弱さから目を背けただけ。何に抗うでもなく、最期のその時までただ弱いまま、圧倒的な理不尽に叩き潰される。

 いつから私はこうだった?

最初は仕方なく、でもいつの間にか私の選択は自分に嘘をつき続ける物ものになっていた。

 

 

 

 

 

 

 ――でも、もう逃げたくない――

 

 ――抗って、…強く成りたい――

 

 

 恐れから消極的な選択に流され続けていた私は、その時から他の誰でもない、

 他ならない自分自身に、今度こそ胸を張れる生き方をしていたい。

 

 ――どんな理不尽もぶっ壊して、それで――

 

 もう、こんな心がくすむような選択をし続けたくない。過去を振り返ってみて、後悔しかない人生なんて嫌だ!!

 

 私は叫ぶ、不甲斐ない自分に。

 

 もう後悔したくないって、心から強く願った。

 

「何が正しいかなんて分からない……けど!!」

「私は私自身の、正しいと思える生き方をしていたい!」

「その意志を貫けるように強くなるんだ!! 絶対に!」

 

 

《確認しました。》

 

《個体名 ー に破棄された一部の人格を再利用し、ユニークスキル「略奪者」(ラプター)を強化可能です。実行しますか?  yes/no?》

 

「…小さな一歩だとしても、今の私にそれを逃す選択肢はない! イエス!」

 

《確認しました。ユニークスキル「略奪者」(ラプター)をユニークスキル「虚飾者」(ホロウ)へ進化させます。》

 

 

 強化したからどうとか関係ない、やれる事はやっておきたい。

 その為に、私は自身の心と向き合う。……すると体が火照るような感覚と共に、胸の奥で熱い物がうねる。それは私の意志に答えるように形を変えていくーー

 

 

 私は前に進むって、そう決めたんだ。やわな選択なんてしない、強くなる為にもがいて足掻いて、最後の瞬間まで諦めてたまるかって言う、私の意地。

 そう思っているうちに私の内にある熱い物は徐々に霧散していき、スキルとしての形を成していく。

 

《確認しました。…ユニークスキル「虚飾者」(ホロウ)への進化、成功しました。》

 

 今までの私を取り込んだスキルの名前が、中身のないって意味なのは皮肉が効いてるよね。

 でもそれは間違いなく、今までの私との決別の証。余計なものが取り除かれたからなのか、思考は澄んでいる。今なら何度ぶちのめされても立ち上がれるような、そんな気がする。

 

《ユニークスキル「虚飾者」の能力により、規定量分のエネルギーをコストに、個体名 ー の再生を行います。》

《基軸世界に残存する魔素と「虚飾者」及び、世界の言葉内の残滓をベースに肉体、及びスキルを再構築…》

《個体名 ー の再構築に成功しました。》 

 

 えぇ? その言い方だと私の体って、消滅してたの……?

 恐るべき事実に戦慄していると、冴えていた思考は霞んで、意識がボンヤリしてくる。

 

 

《個体名 ー の「虚飾者」により、意識の残滓を肉体に統合します…》

 

 

 

 ――その声が聞き終えた時、私の意識は現実へと浮上していく――

 

 

 

 

 

 パキ、パキ、と音を立てている楕円形の物体。そう、それはタマゴこと私だ。今まさに殻を破って外に出ようとしている。

 力を込めて、伸びをするように全身を震わせて、殻を破り外に出る。スキルによる視界ではない、本当の世界が私の前に広がる。

 周囲一帯は私を中心として巨大なクレーターになっている。

 

 

(なんか、どこぞの侵略的な野菜人になった気分…)

 

 だってクレーターができてるんだよ、それも凄いデカイやつ。どんだけでかいポッドならこんなふうになるんだろう?

 少なくとも一人用のポッドではないよね。

 

(おっと話が逸れてるっと)

 

 体の調子も確認しないと、まずは…えーと!

 

 

 

私の体は頭から尻尾まで白い鱗で覆われていて、魔力感知で外の視点から見た大きさは大体50㎝ぐらいだ。金色の瞳に、肉食獣みたいな縦に割れた瞳孔、手には鋭い鉤爪が付いている。

 額に生える一本の角は、今はまだ短いけど伸びたらエヴァ初号機みたいになりそう。

 そしてなんと言ってもその翼!翼は1対で、前脚とは別に背中に生えている。これが六脚型って奴か!

 見た目で言えばこんな感じかな?

 

 ドラゴンの本能なのか知らないけど、″強くなりたい〃って脅迫観念じみた感覚が、体の奥底から湧いてくる。

 

(まあ、ドラゴンの本能じゃないとしても、あんな目にあったらねー…)

 

 私は意識を手放す直前の事を思い返した。

 

 ……うーん、それはもう酷い目にあったよ。

 謎の色物パーティ三人組が現れたと思ったらいきなり攻撃されて死にそうになるなんて…。

 

(この世界の人間強すぎないかな?タマゴ相手にオーバーキルにも程があるでしょ!)

 

 実際、周囲のクレーターの範囲は地平線の近くまで広がっていて、こんだけの破壊力を実現するのに、どれだけの力が必要かなんて計り知れない。

 

(確か、重力崩壊(グラビティコラプス)って言ってたよね。…私の重力支配を限界まで高めてもあんな威力は出ないはず?)

 

 

 …重力崩壊(グラビティコラプス)は核撃魔法。つまりは魔素を構成する霊子に働きかけて発動する最上位クラスの魔法である。人族のいわゆる熟練魔術師でも、そもそも一人では発動出来ないような代物なのだ。とは言えタマゴがその事実を知るのはもっと後の事になるのだが。

 

 

 (でもこんな攻撃をモロに受けてるはずなのに、なんで無事なんだろう?)

 

 あの時、確かに身体中の骨や肉がひしゃげていた。けど、今私はこうしてピンピンしている。不思議だ。

 

これが俗に言う主人公補正か!と考えて一瞬嬉しくなるが、勿論そんな訳はない。

なんかそういうスキルあったかな?と自分に検索を掛ける。

 

 

……

個体名: ー

種族:龍族・風竜(ウインドドラゴン)

EP:3万4500

加護: ー

称号: ー

魔法:地属性魔法・風属性魔法・回復魔法

ユニークスキル

「虚飾者」(ホロウ)

…虚飾・虚転身・完全記憶・魔力場操作・権限奪取・検索

 

「浮遊者」(スカイウォーカー)

…重力支配・空間支配・思考加速・(地属性魔法・風属性魔法)

 

スキル:危険感知

耐性:各種耐性・範囲結界・呪縛無効

固有能力:竜鱗・汚染浄化

 

 

 

 

 

 

 まず目につくのが種族。EPが2万を超えて、劣風竜から風竜(ウインドドラゴン)に進化している。今のEPが3万ちょいだから、タマゴの段階で既に進化してたみたい。

 そしてなにやら見慣れないスキル。虚飾って確か、八つの枢要罪の内の一つだったはず。

 

 私の生還した理由はこの新たに追加されたスキルの効果かな?

「略奪者」が無くなっているけど「虚飾者」と能力が共通してる辺り、私が気絶してる間に進化したんだろうな。

 気になる能力の方は…

 

 

 ●「虚転身」

 "自身、或いは他人の魔素を核として、その同位体を生み出す。その際に元々の体は破棄される。

 この方法による擬似的な死者蘇生も可能。

 

 必要なエネルギーは自身の存在値(EP)が消費され、不足する場合は、保持スキルを還元して補填される。

 使用した回数に応じて消費するエネルギーも増えていく。"

 

 

 フムフム、つまりは死んでも復活できるよ! でも、だから平気と言って死にまくるとスキルが無くなる!

 復活する度に、要求されるスキルやEP量が増える!だからあんまし当てにするなよ!

 …纏めるとこんな感じかな。

 

 

私が生き残れたのは「虚転身」の能力のおかげだったみたい。

森羅万象と自己強化が無くなったのは痛いけど、命には変えられない。死んでも次があるって言うのは気持ち的にも有難い。

さっき殺られた時みたいに、そうなった時点で既に詰んでるって言う場面でも、これで安心だ。

 でもスキルを消費されるのは嫌だし、予め必要なEPを貯めておかないとね!

 

 

(アリさん、弱いとか言ってゴメンよ、これからも末長くお世話になるからね!)

 

 

 EPを貯める理由がまた一つ増えた私は、これからもアリ達とヨロシクすることを心に誓ったのだった。

 これからの方針を決めたし、早いとこ能力の確認を済まそうっと。 えーと次のは…

 

 

「虚飾」

 "自身が使用権を持つ物質・エネルギー・スキルの情報を別の物に誤認させる。実際に変化する訳では無い。"

 

 

 使い方としては落とし穴やシビレ罠の上に掛けてカモフラージュとかかな?

地属性魔法も持ってるし、相性いいかもね。

でもこの能力の目玉は、多分だけど人の姿になれるって事。

実際には周りにそう見えてるだけで、姿が変わる訳じゃない。でも、人の姿をしていれば冒険者やハンターに狩られる事も無くなるはず。これで街の中にも入れるよね!

残るスキルも気になるけど、先に人の姿を試すことにしよう。

 

(ドラゴンが人の姿に化けるってのはファンタジーではあるあるだよね!そして大抵は凄く強い!)

 

生まれたてのドラゴンである私が強いのかは疑問だけど、どんな姿になるのかは気になる。

 

 

(角とかのある竜人っぽいタイプかな?それとも鱗や尻尾とかのあるモンスター娘タイプ?てっ言うかそもそも私は雌なのか?)

 

人と見分けがつかない見た目なら困ることはないと思う。でも、いかにもな亜人っぽい見た目でも異世界っぽくていいな~と夢想しつつ、私は「虚飾者」を発動する。

 

(さあ、劇的ビフォーアフターの時間だぜ!)

 

そして私の体は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なお、今回の不思議空間内での出来事を、主人公は忘れてしまっています。
主人公がドラゴンの本能だと思っているのは「虚飾者」に残ったこの時の意思の残滓です。
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