転生したらドラゴンだった件 作:炭酸水素水
やあ皆、私はタマゴさ!
劇的なビフォーアフターの結果がこの姿さ!……え、タマゴの時と姿が変わってないって?
それがどうやら熟練度的なものが足りないらしく、何度かやってみたけどタマゴの姿になってしまう。
(でも考えたら今すぐ人に合う訳でもないしね)
これからも合間を見つけて練習すればその内に出来るでしょ!と前向きに考えることにする。
どんな時でも大体ポジティブなのが私の良いところ。
(何時までもタマゴに変身してても仕方ないしね、虚飾を解除っとーー)
そうしてスキルを発動した私。しかし丁度その時、東の方から爆音が響いた。
(また例の三人組か!?くそぅ、こうなるならやっぱり人化の練習をしとくべきだったか!?)
しかし、それにしては爆発の音が小さい。それに、あの金髪の娘が暴れてるなら、その余波だけで普通に死ねる自信がある。
もしかするとあの娘が魔法を打てるのは一日一回だけで、その一回に全魔力を乗せているって可能性もある。
そうだとすると、今の小規模な爆発音にも納得できる…けど。
(それってあの三人がピンチってことだよね? そんなのありえないわー!)
少なくとも私の貧弱な想像力では、あの三人がやられる光景を思い浮かべることが出来ない。
(ピンチに颯爽と現れて、「ここは俺に任せな(キリッ!)」って出来れば、私が人に危害を加えない魔物だって分かって貰えるかもだけど…)
そうしていると、段々音が小さくなってきた。気のせいか人の悲鳴みたいな声も聞こえる。
…ちょっと向こうに行って、様子を見てから決めよう。虚飾の能力の一つに認識阻害って言うのもあるし。
バレないバレない、大丈夫だって!ダイジョーブ!
(見るだけならタダ!これ大事よ!)
私は気配を消して音のする方角へと向かった。
…………
……
…
声の発信源にたどり着いた私。遠目に見えたのは三人組の大男だ。
(巨人って、うーん…モンスターなのか、人なのか、判断に困るな…)
前の世界にあった創作では、神の敵だったり、普通に人類と共存してたり、はたまた人間を食うだけの無垢な殺戮兵器だったりするんだよね。
作品によって扱いが違いすぎて、全然検討がつかない。
しかし何やら様子がおかしい。更に近づいてみると、そこには頭から大量の血を流して倒れている巨人と、倒れた巨人に必死に声を掛け、応急処置をしている二人の巨人の姿があった。
「リューラ!!おい、しっかりしろ!」
そう叫ぶ巨人は、リューラと呼ばれる怪我をした巨人の傷口を抑え、包帯を巻いている。
でも見た感じ、余りにも血が流れすぎている。巨人は体が大きいから、その分血液も多いんだろうけど、それを鑑みても助かりそうにない。
「ダグラの兄貴…、俺…う…ここ…まで」
「喋るんじゃねぇ!!体力を、持たせるんだよ…おい…!」
成る程、この三人は兄弟だったのか…三人ともお揃いのピアスをしていたり、仲が良いんだろうな。
「リューラにいちゃん、オイラはにいちゃん達二人と、一緒に飯を食えなくなるなんて嫌でヤンス!」
「…デブ…ラ……!」
「そんな怪我、リューラにいちゃんなら何ともないではずでヤンス!また三人で飯を食うんでヤンス!」
そんな二人、ダグラとデブラの目からは、大粒の涙がこぼれ落ちていた。
…私にも、弟がいる。私よりも、自分の方がしっかりしてると思ってる、そんな生意気で背伸びした弟だ。
昔は素直で可愛いかったけど、今は何だか素っ気ない。私はもう死んじゃったけど、弟は悲しんでるかな?
…それがどうかは分からないけど、今目の前にいる二人はそうだ。
(私はこの人達を助けたい…けど)
私は魔物だ。ゲームとかでは人を襲い、勇者達の当て馬となるだけの存在。
この世界での魔物がどうかは知らないけれど、アリ達は間違いなく私を襲ってきた。私もきっと人からすれば、そんな危険でどうしようもない魔物に違いないだろう。
(…怖い、こわいよ)
確かな物は何もない、あるのはただ目の前の現実だけ。
現に、巨人達の近くには、怪我の原因となっただろうアリの上位種の死骸が転がっていて、周辺には争った形跡がある。あの巨人を助けようと姿を現したとして、私が攻撃されないって保証はどこにもない。
なんならあの巨人達がそっち側ってこともあるかも知れないし…
「……あ…にき……デブ…ラ…すま…ぇ」
「リューラ!逝くなっ!…リューラッ…………」
「にいちゃん!! にいちゃん!!」
(…でも、倒れた仲間を見て涙を流せる奴が、そんな奴な訳ないよね。)
前世で見た名言集で「人の為に流せる涙、それは愛の証明だ」みたいな言葉があるし、少なくとも、ここにいる彼らは心無いバケモノなんかじゃない。…糞野郎を助けようとは思わないけど、この人達の為になら…私も一肌脱ぐとしよう。
(確か虚転身を使えば、魂さえ残っていれば死者を生き返らせる事ができる…はず)
私もそうやって生き返ったんだし。出来ないはずがない!
スキルや存在値を消費するけど、丁度その代品になりそうなアリの死骸もある。私の知ってる奴の上位種っぽいし、エネルギーも十分だ。…ここでやらなきゃ女が廃るってもんでしょ!
《ユニークスキル「虚飾者」を使用しますか? yes/no?》
勿論イエスだ!見るだけならタダと言ったが、もう私にそんなつもりはない。私はこの三人に肩入れすると決めたのだから。
すると、私の認識阻害が解けていく、この能力は「虚飾者」をフル稼働させるので、その間に他の事を両立できないのだ。しかし幸いにも、巨人達はお互いに声を掛け合っていて、私に気付いた様子はない。
そうしているとアリと私と、リューラ…つまり、倒れた巨人との間に魔力の流れが起こり、光に包まれる。
「…お前は?」
ダグラ…多分、長男の巨人が私に気付いたのか話かけてくる。
だが済まんな、他人の魂と肉体の復元とか言う、ベリーベリーハードなアクションを敢行している私には、それに応答できる余裕などないのだ!!
(つまり攻撃されたら、多分そのままあの世行きさ!)
タマゴから孵ったとは言え、今の私は貧弱なベビードラゴン。圧倒的物理な攻撃を食らえばひとたまりもない。
なので、攻撃されないように祈る。
そうして暫くして光が収まり、倒れていた巨人、リューラは目を覚ます。
「…兄貴、それにデブラ、…ここは?俺は…助かったのか?」
「にいちゃん!!…ヴアアアアン!」
「リューラっ!ヴッグ…よく、帰ってきた!!」
抱き合う三人。…こう言う兄弟愛っていうのも悪くないね。
私は弟と色々あって拗れちゃった感じだけど、この三人にはずっとこのままでいてほしいな。
…っといけねェ、この私としたことが湿っぽい雰囲気にながされちまうとはな、HAHAHA!
(とは言え、フーッおわったぜぃ!イエイ!)
メッチャ神経使ったからね、疲れたね、フゥ。
チラリと向こうを見てみると、探るような視線で三人の巨人がこちらを見てくる。何か答えなけねば…!えーと、拙者はータマゴで候…。と思ったけど、ここで今の姿を確認してみる。
今の私は虚飾が完全に解けて、ビジュアルがちっこいとは言え狂暴なドラゴンの姿になっている。虚飾を使ってる時は、タマゴの姿なんだから余計ややこしい。
(私は何者か、タマゴかドラゴンか…うーん悩ましい)
たま○ラではない、断じて。
「ギャォ…」
おっと声に出てしまった、いけない、いけない。
これは威嚇ではありません。OK? でも、これじゃ話できないよね。困ったな。
そう思って自分のスキル一覧を見てみると、これ使えるんじゃね?ってスキルを見つけた。
●「思念伝達」
牙狼族や、群れで生活する魔物、一部の社会性甲虫の魔物が持つスキル。仲間内での魔力回線による意思の伝達を可能とする。
あったよ!ホンヤクコンニャク!…でかした!
いつの間にか、エクストラスキルの項目に追加されていたのだ。状況からして、アリの上位種のスキルかな?
「虚飾者」でスキルを消費したから残らないと思い込んでたけど、意外とあのアリの上位種って、存在値高いのね。
まあせっかく残ったんだし、「思念伝達」ありがたく使わせてもらいましょうか!
『あーあー!マイクテス、マイクテス!!』
「「「ぐおぉ!!」」」
三人の巨人が同時に仰け反る。動きがシンクロするのって、仲が良い証拠らしいね。
でも、別に今更「俺達仲良し」アピールされてもって感じ、私は既にお腹いっぱいだよ。
「…体から感じる魔素は大したこと無さそうだと思ったが…」
「ダグラにいちゃん、こいつは」
「ああ、分かってる。相当やるみたいだな、お前」
長男のダグラと三男のデブ…ラって人が話かけてくる。ちょっと怒って…イヤ、これは緊張しているのかな?
確かに話しかけようとして、いきなりマイクテストしだす奴いたら慎重にもなるよね。
…でも今のは確認の為ですよ。そう、まさかちょっと意識しただけで、ポロっと声が出るとか思わなかった訳で。
『えーっと私はー―』
「兄貴、デブラ、ちょっといいか?こいつと話をしてえんだ」
「悪い奴ではなさそう…だしな、分かったぜリューラ」
そう言うと次男、リューラは私を真っ直ぐ見て話しかける。
「俺を助けてくれたのはあんたなんだな?」
『うん、私がそうだけど?』
うう、正面からみるとやっぱし怖い。デカイ上に、お揃いのピアスが柄の悪さを引き立てているよ!
こう言うヤンキーを相手にする時は、ビビったら負けだ!絶対に退くなよ?(持論)
私は自信満々に見えるように、リューラの目を真っ直ぐに見つめ返す。
(頑張れ「虚飾者」!!私の豆腐メンタルと尊厳を守るのだ!)
最も、「虚飾者」にそんな能力があるのかは不明だけど。
「ありがとう、礼を言う。あんたがいなけりゃ俺はここで終わってたぜ」
『ううん、私は気が向いたから助けただけで、感謝される謂れはないよ。』
己が
嘘をついてる訳でもないし、私は私らしく堂々としていれば良いのだ。
「あんたの威風、佇まい、そして何よりその心意気!」
フンフン、そうだろ!そうだろ!って、嬉しくなってちゃいけない。ここは冷静に――
「惚れました!姉さんと呼ばせてください!!」
――ファッッッッ!? えっ、えーっ…ええー!
「にいちゃんがそう言うならオイラもでヤンスー!」
コラコラ、三男デブ…ラ君。悪ノリは後で後悔すると、親に教わらなかったのかな?
「弟二人がすまねぇ、俺もアンタを姉さんと呼びてぇンだが、長男としての矜持って奴があるんでさあ。」
おお、流石は長男ダグラ君!君は話が分かる。
ドラゴンが長女の、巨人四兄弟っておかしいもんね、そうだよね。
「そこで、だ。俺達三人と兄弟の契りを結んで欲しいんでさあ。」
『兄弟か、……うん、良いよ!私でなんかで良ければ!』
くっ!私の隠されし能力、NOと言えない日本人が発動してしまった…!
だって、三人揃ってそんなキラキラした目で見られたら、断れないじゃん!?
(まあ、…でもいっか)
この人達…イヤ、我が兄弟は不器用そうだけど、悪い奴じゃないってことは良く分かるしね!
よーし、姉さん頑張っちゃうよー!
「なあ兄貴、兄弟の契りって具体的に何をするんだよ?」
「ん?リューラは知らなかったっけか?あれだ、名付けだよ、名付け!」
成る程分かったぞ、いわゆる名字…ファミリーネームを名乗れって事か!
『んーでも私って、生まれたてで下の名前もないよ?』
そうそう、私は生まれてこのかた三ヶ月、ずっと名も無き小市民なのだから。
「ああ、思い出しました!それで合ってます姉さん!その下の名前を付けるんです。」
なんと!それはマジかリューラ!って言うか、兄貴のダグラにはタメ口で、姉さんの私には敬語なのか。
リューラェ、君はそれでいいのか……
「ふぇーーふぇっふぇ!名付けをすると、腹が減るでヤンス!」
「ダグラ、腹じゃなくて魔素量が減るんでさあ」
「魂に名を刻む時には、名付ける側の魔素を必要とするんですぜ。」
デブラ、ダグラ、リューラが"名付け"とは、どういうことなのか、私に具体的に説明し始めた。コイツら意外と文字に強いぞ!?
話をかい摘まんで説明すると、名付ける側が魔素を消費して、名付けられる側が、力と名前を得るってことらしい。
ここで言う名前とは、ゲームとかで言う「○○の○○」みたいな二つ名や、ネームドモンスター的な物って言う認識でOKみたい。
「でもよ兄貴、それなら俺達と同じで親父に付けて貰うのが筋ってもんじゃねーか? 」
「普通に考えたらそれでいいんだ。親父は強えから、名を貰えれば進化だって夢じゃねぇのさ」
「だったら姉さんも親父に名を貰うべきだぜ。姉さんの力なら、親父も認めるレベルなのは違いないんだしよ。」
「そうも言ってられねえさ、親父のネーミングは……」
二人はチラリとデブラを見る。
「ふぇ?」
なんのことか分からないと言った顔をするデブラ。
「成る程、理解したぜ兄貴…もう被害者を増やす訳にもいかないしな。」
「あぁ、だから俺達の兄弟たるこのドラゴンには、俺が名前を付ける!」
な…成る程、デブラ君すまなかった…!君の犠牲は忘れない。
私は三人を助けたつもりが、逆に三人に助けられようとしていたのか…
「では、俺達の恩人よ、あんたに兄弟たる証の名を与える!」
『うん!お願い!』
贅沢は言わないけど、出来ればカッコいい、もしくは可愛い名前よコイコイ!
「よし、今日からあんたの名前は「クレア」だ!」
『クレアかー!何かいい響き。ありがとう!』
確かイタリア語で作るって意味だったっけ?でも、意味よりもこの響きがいいよね!
すると私を黄色い光が包み込む。「クレア」の名が魂に刻まれたのだ。
『わあ!力が溢れてくる……!』
それに、心がポカポカと暖かい。不思議と気分は晴れやかで、胸に訪れる安心感に私は心身を預けた。
三人との、イヤ、私含む四兄弟の間に、確かな繋がりを感じる。
魂に名を刻むって、こう言うことなのか。
『ダグラ!リューラ!デブラ!これから宜しくね!』
自分が思ってたよりも嬉しかったのか、自然とそんな言葉が口から出ていた。
「こちらこそ頼む、って奴でさあ!」
「クレアの姉さん、宜しくお願いしますぜ!」
「姉さんよろしくでヤンスー!」
この日、私は異世界で新たな名と、家族とも呼べる存在と出会ったのだった。
……
個体名:クレア
種族:龍族・
EP:6万9800
加護: ー
称号: ー
魔法:地属性魔法・風属性魔法・回復魔法
ユニークスキル
…虚飾・虚転身・完全記憶・魔力場操作・権限奪取・検索
…重力支配・空間支配・思考加速・(地属性魔法・風属性魔法)
EXスキル:思念伝達
スキル:危険感知
耐性:呪縛無効・各種耐性・範囲結界
固有能力:竜鱗・汚染浄化・聖属性体質
今回仲間に加わった巨人三兄弟。原作ではシオンにもっとボコボコにされたりしています。
今の三人には回復薬の持ち合わせが無かったので、ケガが重症化しています。
え?自己再生?…し、知らないな~。
テンペスト印の回復薬は偉大だって、はっきりわかんだね