転生したらドラゴンだった件 作:炭酸水素水
『よーし、今日のトレーニングも終了ー!みんなおつかれー!』
「ハァ、ハァ…ハァ…クレア」
「ゼハー、ハー…」
「ふぇっふぇ…流石は…姉さんでヤンス~」
ここは巨人族の住む都、"聖墟ダマルガニア"。殆どの巨人がここで暮らしている。
そしてこの建物は通天閣って言って、この土地の長こと魔王ダグリュールの居城だ。
その建物の下の方の階で私達は生活してる。
三人と出会ってからもう一月は経ったかな?
『体はしっかり伸ばしとくんだよー?』
私達は丁度、日課となっているトレーニングを終えた所!
さあ!食堂が私を呼んでいるぜ!美味しい食事とデザートの時間だ!
アグっ…モグモグ!
ここで出てくる料理はやっぱりと言うかサボテンが中心。魔物の肉とかも食卓に並ぶけど、美味しく食べる為に長年工夫がなされたであろうサボテン料理はぶっちゃけ美味しい。
兄弟達も巨人だからか育ち盛りなのか食べる量が凄い。
『特にこのフルーティーなサボテンは美味しいわ~!』
サボテンらしく
「やっぱりこの暑さのなかで食うこのサボテンは最高でヤンス!」
そうそう!運動して汗を…? あれ、ドラゴンが?…うーん!
「こんなに沢山サボテンを食えるようになったのも姉さんのお陰でやんす~」
「俺達も頑張らねぇとな、クレアにばっかし頼ってられねぇ」
「驚きましたぜ、ここちょっとで底が見えていた集落の食料の在庫が、僅か一月でみるみる増えて行ったからな。」
『ング、ング…ゴックン』
そう、実はダマルガニアに着いてから私はこの土地の改良を始めたのだ。
とはいっても、特に何か難しい事をした訳じゃない。
今まで常時放出してた「汚染浄化」。これがどうやら良かったみたいで、
汚染によって生活に使える範囲が狭くなっていた土地を浄化し、元の正常な魔素に溢れた土地に戻すことが出来たのだ。
『最も、汚染の元を何とかしないとね』
この土地の同一座標にある異次元に、汚染の元とも言える莫大なエネルギーの塊がある。
そんで、表面のこの辺だけをキレイにしても、時間が経てば裏からまた染み出してくる…ってことらしい。
私は手元にある最後のサボテンを口に運ぶ。
『モグモグ…(焦っても仕方ないし、私の出来る範囲でコツコツやるとしますか!)』
この砂漠の汚染を全て駆逐する。それはこの地に生きる全ての巨人の夢なのだ。
ダグラ達兄弟は、私にばっかり負担をかけられないと自分達に出来ることがないか考えてる。
私は手の止まっていたダグラのサボテン料理に手を伸ばす。
『バク、ゴク…ゴックン!』
ダグラにはバレてないね。ヨシ!
「虚飾者」の能力を使えばこんなことだって出来ちゃうぜ!イエイ!
つまみ食いに気付かれる前に話を逸らそう。
うーん話題、話題…
「やっぱり、このトロピカルなサボテンは旨いでヤンス~!」
「トロピカルなサボテンいいよな、特訓の後に食うのは格別だ」
そうそう、トロピカルなサボテンいいよね。甘いし
「このサボテンってそう言えばなんて名前なんでヤンス?」
あっ、それ私も気になってたんだよね。なんて名前だろ?
「ん?ああ、 こいつはトロピカサボテンって奴だ。」
『そのまんまかーいっ!』
「なんたって親父のネーミングセンスだからな」
ダマルガニアにはこう言うユニークな名前の物がちょくちょくある。
大抵の場合、それはダグリュールが考えた名前だ。
ここで暮らすだけでもダグリュールのネーミングセンスを垣間見ることが出来る。
もうコレこの土地の名物だろ!
『私に名前を付けたのがダグラで良かったよ。』
「気にすんなクレア、俺達は兄弟なんだからよ。」
そういってダグラはニカッと凶悪な笑みを浮かべる。私も顔を引き吊らせながら笑い返す。
大分慣れてきたけど、兄弟達の笑顔ってこれがデフォルトなんだよねー
気直しにダグラから奪ったサボテン料理を口に運ぶ。
『アム、………ブフォオっ!』
熱した針山を刺したような劇痛が口いっぱいに広がる。
只ならない悪寒に全身の毛穴がブァっと開き、脂汗が滲み出る。
ヒリヒリとした痛みに朦朧とするなか、体中から滝のような汗が流れた気がした。
私の意識はそこで途絶えた。
◇
「姉さんが口から火を吹いて倒れたんだが」
「クレアはドラゴンだからな、火ぐらい吹くんだろう。」
「なるほどでヤンスー!」
「なるほど―ってバカ!」
違う、そうじゃない。リューラは思った。
「兄貴、一体何を注文したんだ」
「おうよ!辛さ魔王級・ロシアンルーレットサボテンパイだ!旨いぞ?」
「はぁ」
つまみ食いする姉さんも姉さんだが、兄貴も兄貴だ。と思うリューラ
クレアがつまみ食いをするのは周知の事実だが、図らずしも反撃されたのは初めてなのだろう。
「流石は姉さんでヤンス~!」
「あの辛さはデブラすら食おうとしないからな…」
三人は何事もなかったように食事を再開する。
一方、気を失ったクレアは夢の世界へ旅立っていた。
…………
……
…
私は今となっては懐かしくもある、兄弟と出会った日の夢を見ていた。
(爆発、クレーター、うっ…頭が)
私が名前を貰ったその日、既に日が沈み始めていたこともあり、私達四人はその場で夜を明かすことにした。
その時にお互いに情報を交換し合ったんだけど、兄弟は謎の爆発音の原因を調べに来ていたらしい。
そうしてもうすぐ夜が明けようとしていた頃――
「「「ギャリギギャギギリリー!!」」」
私達四人の目の前には巨大アリ達がいた、それも上位種。
爆音を響かせる危険探知に驚いて飛び起きたらこの有り様。
数は少なくとも10匹以上はいる。
昨日のアリのお礼をしに来たのかな? 私も思念伝達もらったし、ここは下手に出てお礼をするべきか。
アリが10匹であり――
ブゥオォォンツッ!!!
さっきまで私がいた場所を巨岩が猛スピードで通過する。
『そんな…最後まで言わせてくれないなんて!』
「そのままそこにいたら危なかったでやんすね」
ん?それはどちらの事を言ってるのかな?(威圧)
「や、やっぱ恐ろしい攻撃でさあ……」
身体だけでなくボケも潰す弾岩か、なんて恐ろしいんだ。
戦慄している私を余所に、弟達は余裕たっぷりだ。
「おうよ!回復薬もねぇから当たったら一発です!」
「ふぇーーっふぇっふぇ!一発勝負でやんす~!」
お前ら呑気だな!危機感を持て、危機感を!もうそれ完全に開き直ってるじゃん!
ボケはともかく。しかし一発勝負は無理にしても、短期決戦狙いって意外と悪くないかも知れない。戦いで使うのは初めての「虚飾者」と「浮遊者」、なんとなく感覚で使い方が分かる。
「姉さん!攻撃が来ます!」
『いいね、では…生まれ変わった私のこの力、目にもの見せてやろうじゃんか!』
三人には一旦私から距離をとってもらう。今からする攻撃は、近くにいると仲間も危ないものだからだ。
「――ガヴァアアアアアアアアアッッ!!!」
私は咆哮をあげ、アリ達を威嚇する。それで時間を稼げればよし、そうでなくてもまあ…何とかなるさ!
(スキル、「空間支配」、「重力支配」、「魔力場操作」!!)
二つのユニークスキルの能力を起動する。目には見えないけど、私の半径12mくらいは私のスキルの影響下に入った。
ーーザシュっ!
ヒュンッと風切り音がすると共に、襲いかかってきたアリは動きを止め、ズンっ…と倒れる。
風魔法と空間支配で切れ味を上げて、魔力場操作で放つ不可視の斬撃だ。
(フッ、背中がガラ空きだぜ…?)
この範囲内12mではこの斬撃をどこからでも放てるのだ!
全国の剣士の皆さんは泣いていい。
(後は敵が全員この辺にいればいいんだけどね…)
殆どのアリ達は40m程先で纏まっていて、ここからでは攻撃が届かない。
しかも卑劣なことに、こちらが近場のアリと戦ってる隙をついて岩を飛ばしてくる。
そして、私達がアリを撃破する度に追加のアリを送りこんでくるので一向に数が減らない。
こちらが岩を飛ばしても向こうから飛んでくる岩に迎撃されるから、敵の本陣を叩くこともできない。
(このままじゃラチが開かないって…!)
私達の目の前にいるのは多分、先発部隊的なやつだろう。
…あの上位種のアリ達は思念伝達を持っていた。つまり他にも仲間同士で連携するスキルを持っていても不思議じゃない。
先発のアリ達も私に近づき過ぎると危険だと判断したのか、私と距離を保ちつつ攻撃してくる。
――ブゥオォォオンツッッ!
こうして仲間の攻撃の隙を縫って岩を飛ばしてくる辺り、予想は正しいはずだ。
私は先発隊アリの注意を引き付ける、他の兄弟達は外から遊撃にまわる。
…用意が整うまでの間、この戦線を維持しないとね。
(ではさっそく、「虚転身」発動!)
ポトっポトッポトポト・・・・
地面に鱗が沢山転がった。え、それだけって? フッフッフ、そいつはどーかな?
(思った通り、鱗はほとんど存在値を消費しないんだ!)
皮膚や爪、鱗みたいに再生が容易な器官は「虚転身」で生成してもかなり低コストみたい。
換算すると、鱗500枚=存在値1 ぐらいの感じ。これ街に売り出したら大儲けできるんじゃない?
…あっダメだ、相場がガタ落ちする奴だコレ。
(おっと、気が反れてたっと)
思考を切り替えて作業に集中する。
地属性魔法を駆使して鱗を粘土で繋ぎ、ドラゴンの形に形成する。
(ちょっと形が歪だけどまぁヨシってことで!)
そこにあるのは3体のドラゴン人形。巨大アリに匹敵する大きさで威圧感もバッチリだ。
ハリボテなので中身が空洞なのは言うまでもない。
虚飾を使えば見た目はある程度偽造できるし、多少形が変でも気にしない!
(大丈夫、軽くて大きさがあればOKなのさ!)
ドラゴン人形を「浮遊者」で浮かせて、この辺の上空で旋回させる。
結構な大きさがあって目立つから、そっちにアリの攻撃がいくはず。
ちゃんと狙われ易くなるように「虚飾者」の能力も付与してある。
(私のすべきことは、お前らを立派な囮に仕立てあげることだからな!)
卑劣な思惑により、早速アリ達の岩石砲に晒されるドラゴン人形達。しかしその軽さにより、飛んでくる岩の風圧で軌道がブレて攻撃が当たらない。
これで私達の負担を減らして、リソースを他にまわせる余裕ができた。
敵の本陣を落とすなら敵の注意が他に向いている今しかない。
(三人とも!こっちへ!)
遊撃にまわっていた三人を呼び戻し、生成した皮の絨毯に乗りこむ。
「浮遊者」でそのまま敵本陣の上空へ向かう。
ごうごうと風が鳴る中、眼下には大量に蠢くアリ達の姿が見える。
『敵の頭がこの辺りの何処かにいる!必ず仕留めるよ!』
「「「「おお!!」」」」
私達の狙いは一つ。この本陣にいるアリの頭を潰すこと。
「んじゃ、暴れるとしますか!」
「へへへ、さっきまで好き放題してくれやがってようコイツら!」
『ホントにね、でも今度は私達のターンだよ!』
「ふぇ――っふぇっふぇ!腹がなるでヤンスー!」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、肩を鳴らす三人。こめかみが盛り上がってるのに、その顔は嬉々としていてなんだか危ない雰囲気。…今の私も似たような感じなんだろうか?
『3、2、1で飛び込むよ!構えて!』
「いくぜ!」
「おうよ!」
『3…2…1……』
…ゴクっ
誰かがごくりと唾を呑み込む。
『バンジー――!!!』
敵の本丸へと急降下していく私達。
腕にも思わず力がこもる。
――さあ、反撃開始だ!!
巨人三兄弟の喋りかた(丁寧口調)は原作を見て書いているんですが、「姉さん」や「~でヤンス」、「~でさあ」の口調のせいでガバルやギドに見えてきます。