転生したらドラゴンだった件 作:炭酸水素水
ドバアァアアアンンン!!
アリ達の本陣にて爆発が起こる。投石に夢中だったアリ達はまだ状況を把握できていない。どよめき、混乱が広がっている今が攻めるチャンスだ!
「おらららあああああ!!!」
ドォオオオン!
ダグラの横蹴りを受けてアリが爆発四散する。
『ガヴアアアアアアアァァ!!』
私の周囲に不可視の斬撃の嵐が吹き荒れ、目にも止まらぬ早さでアリを切り刻む。
でも手応えが薄い、どうやら今の範囲に敵の頭はいないみたいだ。
『思念伝達の履歴からして、この辺のどこかにいるはず!』
アリの思念伝達を逆探知したんだけど、回数のやたら多かった個体がこの辺りにいる。そいつが持っている配下を使役するスキルを奪うことが出来れば、私達の勝ちだ。
敵の頭が分かりやすい見た目をしてるなら助かるけど、どのアリも見た目は同じ。取り敢えず片っ端から倒していくしかない、頑張ろう。
「オラァッ!!ヤアァ!」
「ふぇーーっふぇっふぇ!」
リューラの右ストレートがアリの胴体に大穴を穿つ。アリはギャーと断末魔を上げて動かなくなる。
敵の中央で戦っている為か、やはりアリ達は誤爆を恐れて岩を撃てない。これなら不意討ちを恐れずに戦える!
アリの顎が目の前に迫る、それをクルリと背面飛びで回避して風の刃を撃ち込む。
次々とアリ達が襲ってくるけどそれらを切り伏せていく。
「おどれらぁ!これが巨人族の一番星、ダグラの力だ!!」
「でやんす――!」
くっ…あまりの敵の数にダグラがおかしくなってしまった…。あのアリにそんなスキルがあったのか。
でも体の動きはキレッキレだし、素があれなんだろうきっと。
私は大人だからね、現在進行形で黒歴史を生み出す若者をそっとしといてあげるのさ!
とその時、地面が大きく揺れ、ダグラのいた辺りから大量の土煙が飛び散る。
「うあ――!!」
吹き飛ばされて大空へ旅立つダグラ。そしてあっという間に視界から見えなくなった。どうしよ
「あっ兄貴いいぃ――!」
うーん…心配だけど、ダグラに対して私が出来ることがない。
ダグラは他の兄弟よりも強いし、あの高さから落ちたぐらいなら平気だろう。
大丈夫、オゾンより下なら問題ない(白目)
(まあ、落ちてきた時にはちゃんと空間支配で保護するけど…)
星になったダグラをどうこうすることは出来ないし、残った三人で戦うしかない。そう二人を納得させ、敵と向かい合う。
土煙が晴れたその時、私の脳内に検索結果が表示される。
……
個体名:ー
種族:
EP:16万1500
魔法:地属性魔法
EXスキル:回復妨害・思念伝達・思考加速・食物連鎖・身体強化・重力支配
スキル:強酸攻撃・飛行・岩石砲・危険感知・自己再生
耐性:自然影響無効・範囲結界・熱変動耐性・物理耐性・魔法耐性
固有能力:産卵・血族統率
敵の頭は量産型個体とは違うってね。私はそう思ってたよ。地面の下にいそうだな~とか思ってたし!
取り敢えず「権限奪取」を使おう。敵の方が格上なのもあって、権限を奪うのに時間がいるしね。
相手はアリの上位種よりも更に巨大なアリ。昆虫の部位で言う腹、…まあ尻尾でいいかな。
その尻尾が長く肥大化している。その上、羽までついているので、もはやアリと言うよりトンボだろ!
(女王アリに羽がある時期って腹は膨れてないよね)
思わずそんな事を考えてしまう。
でもそんな事より、この状況は頂けない。スキル構成的に相手は飛行できる。
(上に行かれるのはまずい!)
私達がアリ達の数を相手に上手く立ち回れているのは、敵の懐に潜りこんでいるので、相手が遠距離攻撃を使えないことにある。女王が飛行してこの場を離れた時、それを追いかけて飛び上がれば、周りのアリに蜂の巣にされてしまう。
(アリに蜂の巣にされてしまうぞ!)
大事な事なのでにk
「ひゃあっ!!」
ちょっとジャンプしたリューラが悲鳴をあげる。頭スレスレを岩が掠めたのだ。
このようにあのアリ達の射撃は正確だ。それこそゲームに出てくる敵キャラの狙撃ばりに。
それは味方のアリを巻き込まない絶妙なタイミングで岩石砲を放ってくる事からも明らかだし。
(勝てるとしたら地上戦しかない!)
『二人とも、あのデカイのを飛ばせてはダメだ!気をつけて!』
「分かったでやんすー!」
「あいつ飛ぶんですかい……!」
そうして私達は女王アリと向かい合う。
女王アリは羽を使って飛ぼうとしているが、生憎私が「重力支配」を使って抵抗しているのでなかなか飛び立てずにいる。
「チャンスでやんす!ここでぶっ潰すでやんすよ!」
「おらあぁ!」
殴りかかる兄弟達を女王は尻尾を振り回してガードしている。
(そこって産卵用の大事な部分じゃないの!?)
部下のアリ達が見たら昏倒しそうな光景だよ!もっと体大事にしろよ!
そう思って周りのアリ達を見れば、なぜか女王から距離を取り、離れた位置からこちらを窺っていた。
ブシャアアアア!!
突然そんな音がしたかと思えば女王アリの尻尾の先端から謎の液体が吹き出した!
「「蟻酸だ!」」
蟻酸ってあんなにぶっといレーザーみたいだっけ?しかも横凪ぎに放ってきてないか!?
あの古龍級生物だって真っ直ぐにしか打てないのに!
そして周りのアリ達も円陣を組み、岩石砲の岩を盾替わりにしてゲロビもとい、強酸攻撃に備えている。
女王アリの尻尾はぐるりと一周する軌道を描いていて、某狩りゲーならば敵の内側に入って回避するのが正解のはず。
尻尾がこちら側に到達する前に、女王アリの元へ走るんだ!
(相手の足元へ行かないと!……んん?)
イヤ、待て、何かおかしい
「デブラー! 早くこいッ、急げー!」
「いま…行ってるでやんす――!!」
まずい、これは誘われている? アリ達に円陣を組ませて外へ逃げられなくした上に、相手の足元だけが安置になる攻撃。これが狩りゲーなら、"ターン制が出来ていて面白い"で済むけど、あの女王がわざわざそんな攻撃をするとしたら、その意図は――!
『行くなー!これは罠だぁー!!』
既に駆け出していた私は踏ん張って勢いを殺す、それでも止まりきれず地面を転がりながら叫ぶ。
しかし、先に駆け出していた二人は既に女王アリとの間に距離はない。二人は「えっ?」と、こちらを振り返ろうとする。嫌な予感は当たるもので、足元を見れば女王アリから10m圏内の地面がなくなっていた。
不意に重力から自由になった私達はそのまま下へ落ちる。
……ドサッ
(落とし穴かよ!)
竜は落とし穴に引っかかるものだからね。
そう前向きに思考を切り替える私。女王は地属性魔法も持っていたから、私達と戦ってる間に落とし穴を準備していたんだろう。
(急いでここから出ないと!これじゃアリ達の良い的じゃん!)
しかし辺りが急に暗くなる。落とし穴のふちが盛り上がり、天井が出来ていく。
女王アリはその天井付近で留まり、極太の強酸攻撃を放った。
まずい…上を塞がれた。逃げ場がない!
ブシャアアアアアア!!!
「姉さん!避けるんでやんす――!」
デブラに突き飛ばされた直後、私のいた横を強酸が通り過ぎた。
強酸は地面にぶつかり、広範囲でジュワアアと蒸気をたてて消失する。
私を庇ったせいでデブラの腕に蒸気が少しかかってしまった。それでもかなりの激痛に顔をしかめ、歯を食いしばって痛みに耐えている。
『デブラ大丈夫!?今回復を―』
虚転身を使おうとそう思った時だ、女王アリを見れば既に第二射の姿勢に入っていた。
(くっ…ドラゴンシールド!!)
咄嗟に生成したそれはその名の通り、複数の鱗を合わせ板状にして、範囲結界や防御に使えそうなスキルをありったけ詰め込んだものである。
『――コレで強酸の雨を迎え撃つ!』
…敵がこの場で決着をつけるつもりなら好都合だ。
思念伝達で二人に作戦を伝える。
私はドラゴンシールドで耐えながら相手のスキル「血統統率」を狙う。
「血統統率」さえ盗ってしまえば、後は数の暴力でなんとでもなる。女王と言えどあの物量には敵わないだろう。
リューラ達二人はアリ本体の撃墜を狙う。
女王アリは私の間合いに入るのは危険だと知っているのか近寄ってこない。
でも、墜落させれば一気に距離を詰めて「権限奪取」を確立できる。
『敵さんもこちらの思惑に気づいてるみたいだし、ここからが正念場だよ!!』
「へい!任されたぜ姉さん!」
「分かったでやんす!」
デブラは先ほど女王アリに貰ったダメージが響いている。参戦には時間がいりそうだ。
リューラはすでに女王アリの背中側にしがみついて攻撃を仕掛けていた。仕事がはやい…っていうか、落ちた時に既にそこにいたんじゃない?
(秘境スタートって! なにそれ裏山)
リューラにそんな怨念をぶつけつつ、私は強酸攻撃に耐えている。
ドラゴンシールドに強酸がぶつかり、ジュウウゥと音をたて蒸気が充満する。
強固な竜鱗と結界を合わせ持つシールドといえど数秒もすればボロボロに。シールドが朽ちる前に次々と追加のシールドを張っていく。
(くっ…)
…蒸気が目に染みて、跳ねた酸が体にかかり燃えるような痛みを走らせる。私は歯を食いしばり、必死にシールドと権限奪取に意識を集中させた。
ブシャアアアアア!!
酸が降り注ぎ、シールドが作られては消えていく。しかし私がシールドを用意するスピードよりも、酸の侵食速度が若干上回っている。今残っているシールドは六枚。これが全て削られるより先に、私は女王のスキルを奪わなければならない。
「こいつを喰らえやぁっ!」
リューラが殴る、女王に目立った変化はない。
「待たせたでやんすー!」
デブラが参戦し、二人がかりで女王をタコ殴りにする。その間にシールドが四枚まで減る。
ダメージ入ってる分、侵食は進みやすくなっている筈なんだけど…
ジュワアアア!!
酸の勢いは止まらないし、私も大分キツイ。激痛を訴える体に鞭打ち、権限奪取を限界まで強める。
侵食率は40%くらいで、シールドは残り三枚。
『このペースじゃ間に合わない!』
シールドが再び砕け散る
その時、リューラとデブラの会心の一撃が入った!侵食が一気に進み、60%を超えた!
「「おりゃあああぁあ!!」」
リューラ達は一心不乱にその腕を振るう。
連なる拳がさながら弾丸のように女王の背を穿つ。流石の女王もこれには堪えたのか、耳を貫く金切り音を上げて暴れまわる。
『いっけぇえええ!!!』
女王アリがふらつき、高度が下がってくる。
デブラの腕力により、メキッと音を立て甲殻が歪む。侵食率は75%!
「ギャリリャギャッ!!」
その時、最後のシールドが砕けて私は強酸の雨をモロに浴びる。
『痛ってぇえええ!!!』
瞬く間に肉が煙をあげて蒸発していく。でも、ここで退くわけにはいかない!
私に余力は殆ど無いし、ここで退いたとしても、その後私に何か出来ることなんてないのだ。
(なら、私がすべきことは一つだけ!)
私は「虚転身」を全開に発動し、吹き荒れる酸の雨に立ち向かう。
存在値がガリガリ削られるが、必死に耐え続ける。
(どのくらい経った? 時間が経つのが遅い…!)
もうそろそろ残りエネルギー量がマズイ。虚転身での再生も暫くすれば出来なくなる。
「姉さん、離れてくだせぇ!それ以上は死んじまいます――!!」
「まずいでやんす――!」
浸食率は90%か、…もう後ちょっとっ!!
存在値もほぼ空っきしだ。復活する為のエネルギーもないし、このまま死んだら本当に死んでしまう。…もう打つ手はないのか!?
万事休すかと思ったその時、突如として天井が崩れ落ちて穴の中に光が差し込む。
「――誰か忘れちゃいせんかーーって話だ!!!」
ドゴォン!
空から降ってきたダグラの踵落としがアリの脳天を打ち抜いた。ズシーンっと良い音が響き、女王は地面にめり込む。
そしてそのまま動かなくなり、息絶える。
『勝ったの…!?』
血統統率のスキルを盗るより先に体力を削りきったのだ!
「やったでやんすかー!」
「兄貴!無事だったんだな!」
『正直言って助かったよ、ありがとう!』
星がなんとか言ってた奴が本当に星になった時は驚いたけど、無事でよかった~
「おうよ、このぐらいどうってことはねぇさ!」
《確認しました。「権限奪取」による使用権限の樹立、成功しました。固有能力「血族統率」の獲得、成功しました。エクストラスキル「食物連鎖」の獲得…失敗しました。代行処置として使用権のみ行使可能になります。》
その声が聞こえると共に、体の奥底から力が湧いてくる。その事を不思議に思っていると、虚転身で減った魔素量がみるみる回復していた。
《体内魔素量が一定量に達しました。進化を開始します。》
私の体が黄色い光に包まれてメキメキと音を立てながら大きくなる。しばらくすると光が収まり、進化が完了した。
進化後の大きさは大体70cmくらい。…幼竜だし、大きさは年齢に比例するんだろう。そうだろう。
鱗は相変わらず白いし、見た目はそんなに変わってないかな。
名前はえーっと、
「おいなんか、姉さんでかくなってないですかい?」
「ええ?姉さんは全然太ってないでやんすよ!?」
デブラ君?おねーさんとちょっと話そうか?
「あ、あれ、姉さんなんで笑ってるんでやんす――」
――こうしてこの地に新たな闘いの幕が明けたのだった。
……
個体名:クレア
種族:上位龍族・
EP:15万2000
加護: ー
称号: ー
魔法:地属性魔法・風属性魔法・光魔法・回復魔法
ユニークスキル
…虚飾・虚転身・完全記憶・魔力場操作・権限奪取・検索
…重力支配・空間支配・思考加速・(地属性魔法・風属性魔法)
EXスキル:回復妨害・思念伝達・思考加速
スキル:危険感知・酸攻撃・岩石砲
耐性:呪縛無効・各種耐性・範囲結界
固有能力:竜鱗・汚染浄化・聖属性体質・血族統率
シオンに特訓される前の巨人三兄弟ですが、甘やかされて育ったせいか、ダグリュールに旧魔王クラスの魔素量を持ちながら大して強くない(意訳)と言われてしまっています。
巨人族の強みは圧倒的な回復力ですが、この時点で三人はそこまでではなかった…はず!