転生したらドラゴンだった件 作:炭酸水素水
私は「血族統率」のスキルを使って残ったアリ達を引き帰らせた。最初は発動しても何も起きなかったから焦ったんだけど、「血族統率」は文字通り同族にしか反応しない仕様らしい。
なので女王アリを使って発動させる事ができた。
傷を癒すためしばらく穴の中で休む私達一行。怪我も治り、アリ達が完全に去った頃だ。
穴の縁から見張りをしていたダグラが私に声を掛ける。
「なあ、クレア」
『ん?どうしたの?』
「ちょっとこっちに来てくれ」
穴の縁にて一人で仁王立ちするムーブが恥ずかしいなら、素直にそう言えば良いじゃん。
そんなことを思いながらダグラの横に立つ。
『えっ!これ、どうしたの?』
「驚いただろ?俺も驚いたぜ」
なんと言うことでしょう!そこには一面に若葉が芽吹く草原が広がっているではありませんか。
草は風を受けて気持ち良さそうになびき、元々ここに生えていたであろうサボテンには花が咲いています。
…ってアレ?ここはさっきアリと戦った砂漠だったはず。
『ここはどこ?私は誰?』
思わずそう呟く。
「何言ってんのか分かんねえと思うが、多分お前の力だ。」
『…記憶にございませんわ!』
本当に記憶にないからね、仕方ないね
でも私の力ってそれ本当なのかな?
「おう、それだけは確実に言えるぜ。」
と言うのも、私の力がここに満ちていくのを見たそうだ。
私とダグラは名によって繋がっている。だから、この地に命の芽吹きがもたらされた理由が、私の力によるものだと判ったと言っていた。
「その力があれば、汚染を払いのけ、土地を肥やし、いつまた住む辺を失うかって不安に怯えて暮らす必要も無くなる。」
ダグラ達の住むダマルガニアは魔王ダグリュールが守護する土地だ。しかしその地は汚染された魔素に浸食されて、年々住める場所が減っているのだとダグラは言った。
『じゃあ!私の力でこの砂漠を全部草原に――』
「だがよ、そいつはできねえ相談だぜクレア」
ダグラが私の言葉を遮る。
「何故なら、あの国の連中をどうにかするのはこの俺だ。」
ダグラは言葉を続ける。
「他の魔王をぶっ倒して、この俺が魔王の座を奪い取る。領地も根こそぎブン取って、汚染がどうとかうるせぇ奴らも黙らせる。」
そう語るダグラ、その瞳は夢見る少年のように澄んでいた。
以外とピュアな奴じゃないか、そう言うのは嫌いじゃないよ。
「俺は強くなる!この国の誰よりも、お前よりもな!」
『私よりも?』
そう笑って言うダグラ。
エネルギー量や身体能力的にはどう考えてもダグラの方が私よりも強い。けど、そう聞くとそう言う事ではないらしい。
「さっきの戦いでそう思ったんだ、俺もお前みたいに強くなるってな!」
私の戦いぶりを弟達に聞かされて触発されたんだろう。自分を慕ってくれる弟が違う相手をベタ褒めしていたら、兄として思うところもあるはずだ。
そうダグラに問うと、一瞬キョトンとした顔の後、ニッとした凶悪な笑みをこちらに向ける。
「お前よりも強くなって、安全な土地だって手に入れちまえば俺達巨人族は安泰だ。そうすりゃクレアの出番なんて無くなるって訳だ!ハハハ!」
誤魔化してるつもりかよ、下手くそか!
多分ダグラは、私の力が当てにされて国の為に囲いこまれるのを止めるつもりなんだろう。
ダグラあんた良い奴じゃん、でもそれは違うよ
私は自分の好きなようにしてるだけだしね。
やるだけやってダメなら戻ってくるさ!
『未来がどうとか分からないけど、私は私に誇れる選択をしていたいんだよ』
『だからそんな心配はいらないし、汚染の浄化だって終わらせられるかも知れない』
それこそダグラが魔王になるよりも早くね。
「クックック…!そいつはおもしれぇ!」
最初は額に手を当て笑いを堪えていたが、堪えきれなくなったのか、フハハハハと笑うダグラ。
「いいだろう!お前が汚染を浄化しきるのが先か、俺が魔王になって領土をぶん取るのが先か、勝負だ!」
『勝負するからには私が勝つよ!意地の張り合いにおいて、この私の右に出る者はいないと思い知るがいいさ!』
私はこの土地の浄化を、ダグラは魔王になること、それぞれの目標に向かうべく、私とダグラ達との特訓の日々は始まったのだった。
ヴェルドラVSダグリュールのバトルが好きなので書籍版でどうなるかワクワクします!