有職転生〜関係ないけど本気だす〜 作:Tの決戦兵器※支援絵配り隊
ーーとある家電会社のトイレにて、洗面台の前で顔を洗う男が一人。
「(バシャバシャ)ーふぅ…」
服装から見てこの会社の社員であろう男は、顔に付いた水を腕で拭うと、顔を上げ、鏡を見る。
鏡に映ったその顔はとても健康的とは言い難く、痩せ細った頬に目元の隈。
青白い肌に加え、その死んだ魚のような瞳には一切の感情がない。
これを一言で表すなら『死体』という言葉が一番妥当だろう。
すると、男は唐突に独り言を始めた。
「ここに就職して、もう16年か…俺も慣れたもんだ…」
男は今年で34になる。
おっさんと言われてもおかしくない年齢である。
「最初はまったく徹夜なんて出来なかったのに、今じゃ最長21徹。
人間の環境適応力はすごいもんだ…」
そう、男が就職した会社はいわゆるブラック企業であった。
この男も昔はこんなブラック企業に就職するような人間ではなかった。
高校も通っており、成績も学年で中の上くらいとそこそこ優秀。
おまけにスポーツはアスリートレベルに出来た。
しかし高校3年の秋、育て親である祖父が心臓発作により他界。
唯一の家族である祖父の凶報に深い喪失感を抱え、受験シーズンと時期が重なってしまった。男は大学への進学を希望していたが、当然そんな状況で勉強に手がつく筈もなく。
成績を落とし受験に失敗。
就職の波に呑まれ今に至る。
「就職するまでここがブラック企業とは思いもしなかったな…」
そう言い男は時間を確認する。
時計の針はもう10時を指している。
「もうこんな時間か…そろそろオフィスに戻るか…」
そう言うと男は眠気覚まし用のカフェイン剤を取り出す。よく見ると、洗面台一面に栄養剤や栄養ドリンクなどの空瓶が所狭しと並べられていた。
男はカフェイン剤の蓋を開け、10粒ほど手に乗せると、
「そんじゃぁ…15徹目と洒落込むか…」
本来なら元気よく言うようなセリフを、まるで重病人のようなトーンで口走ると、男はカフェイン剤を勢いよく流し込みー
ー膝から崩れ落ちた。
ーーうっ…ここは…?
目を開けるとそこには、俺の知らない景色が広がっていた。
どこだ…?ここ…
俺は、意識がはっきりしない中、なにが起こったのか思い出す。
たしか…俺は15徹目の突入して、カフェイン剤を飲んで…まさか…倒れたのか…?
21徹してもなんら問題なかった俺が?そんなバカな…
だが、倒れたことには変わりない。
だとしたら、ここは病院の病室か…?
だがこの天井、布で出来てるぞ?
もしここが病院ならあまりにずさんな設備だ。
というか、倒れたはずなのに倒れる前より楽な気がするのは一体…?
そんなことを考えていると周りから何か物音が聞こえてきた。
…?
なんだ…?
俺は物音に気付き、辺りを見渡す。
すると、
「ーー*@#?」
急に目の前に女性が現れ、俺の顔を覗き込む。
うぉっ…!ビックリした…
スゲェ美人さんだけど、この人誰だ?
急な登場に驚きつつも、俺はその女性を見ながらそう思った。
女性の容姿はとても美しく、整っている。その肌は白く、世界中探してもいないんじゃないか?と思うほど綺麗な人だ。
だが俺にとって重要なのはそこではなかった。
重要なのは彼女の髪は鮮やかな
彼女の髪は明らかに染めたものではなく、大空のような長い髪に今にも吸い込まれてしまいそうだ。
生まれた頃から髪が青い人なんて聞いたことがない。それに今の言語、少なくとも英語ではない。どういう事だ?
とりあえず、ここがどこかを聞こう。
声は出なさそうなので、俺は自分の手を前に出す。
しかし、俺の目に映ったのは
ー赤ん坊の小さな手であった。
は?…
…なっ、なんじゃこりゃぁーーー⁉︎
「あーあうあぁー」
俺の発した言葉が声帯に届くことはなかった…
初投稿です。
お手柔らかにお願いします。