有職転生〜関係ないけど本気だす〜 作:Tの決戦兵器※支援絵配り隊
一階が騒がしいので、何事かと起きて下に降りると、パウロとゼニスが口喧嘩をしていた。
いつもの事と言えばいつもの事だが、”私“は子供達が起きてしまったら可哀想だと思い、二人に近付いて仲介をしようとする。
だが、どうも今回はいつもの口喧嘩とは少々話が違うようだ。
パウロが丁度良かったと言わんばかりに私に説明してくれた限りでは、アルクトゥルスとよく遊んでいたイオが誘拐された。その話をイオの両親と話していると、どうやらアルクトゥルスにそれを聞かれていたらしい。
話を聞いたアルクトゥルスは、説得する暇もなくイオを探しに走って行ってしまったそうだ。
その後、二人の捜索の準備をしていたが、すれ違いになってはいけないから、捜索の開始は日が昇った時にしようというパウロの意見に対して、ゼニスがそれでも今すぐに行った方が良いと反対。
最初こそその事について話し合っていたが、いつの間にか会話内容がズレ始め、そのうちにただの口喧嘩に変わってしまい、今に至る。
いつもの事だが、今はそうは言っていられない。私は、どちらにも非はあると伝えて、同時に自分はパウロの案に賛成だということも伝えた。
ゼニスは、パウロが私に事の
ゼニスは元々は優秀な冒険者だ。パウロの案の意図もきっと頭では理解していたのだろうが、それでも自分の息子が早々に行ってしまった事が心配でつい反対してしまっていたのだろう。
パウロの方も説明していて頭が冷えたようで、珍しく自分から謝る事で、その場は事無きを得た。
少し話して、パウロは出立するまで寝ていた方が良いという事になった。寝れるかどうかは分からないが、少なくとも身体を休ませるせる事が必要だろう。
すると、寝る前にパウロが一つ頼みたい事があると言ってきた。
「寝ている間、アルクトゥルス坊っちゃまが帰ってくるか待っててほしい、ですか」
「あぁ。身勝手なのは重々承知だが、それでももしアルが帰ってきた時に、身近な家族が見えた方があいつも安心するだろうからな」
身勝手などとは考えていない。むしろこちらが頼みたいくらいだ。
今はこうやって平然と振る舞ってはいるが、私の心臓は話を聞いた時から鳴りっぱなしだった。
断る理由もないから、私はそのまま承諾する。
「分かりました。では、帰りを待つのでしたら、やはりよく目につく玄関先がいいでしょうから、私は椅子と毛布を持ってくる事にします」
「あぁ。ありがとうリーリャ」
そうして、私は自室から持ってきた椅子を玄関先の天井下に置き、毛布に
春になったばかりの肌寒い夜に降る雨を見て、私は
俺は、今どうなっているんだ…?
倒れている、のか?
それとも立っているのか?
分からない、分かっているのは、あれから蹴られ殴られされ、意識が朦朧としかけていることだけだ。
肋骨はもう何本折れたか、身体の節々が痛む。
だが、それでもそんな事はどうだっていい。
自分のことはどうだっていい。
イオの泣き叫ぶ声が聞こえる。
その度に途切れかけた俺の意識は、なんとか保てている。
だがそれだけだ。
痛む箇所が増える
血反吐も吐いた、
意識もこのままじゃ、もうあまり長くは
そう思った時、不意に殴る手が止んだ。
だが次の瞬間、俺の横腹はサッカーボールを蹴るように蹴り上げられ、俺はまた地面を転がった。
「…ッケホ…」
俺はもう咳の一つもまともに出来なくなってきた事を感じる。そうやって遠退く俺の意識は、またイオの声に引き止められる。
「アル!アル‼︎やめて!アルに酷いことしないで!」
「ったぁうるせぇガキだなエェ?耳に響くんだよ黙ってろ」
「オカシラ!どうしたんですかい!」
「あぁ?お前らが間抜けだからネズミに入られたんだよ。オレが気付いてなきゃ大事な商品がパァになるところだったんだぞ?ったく、ガキに忍び込まれるなんてお前らどんな見張りしてたんだ?ン?」
「す、すいやせんオカシラ。でもこんな月灯りもない夜じゃガキ一人の方が見つけにくい…」
「言い訳を聞きたいワケじゃねェんだよ。お前ら今度しくじったらタダじゃおかねぇからな?」
「へ、へい…」
「分かったらコイツを連れてけ!」
「分かりやした…」
声のする方を見ると、イオが両手を掴まれ上に上げられた状態で、カシラと呼ばれた男が大柄の男にイオを渡していた。
何故かは分からないが杖等を持っていない場合、魔術は手からしか発動出来ない。彼女は賢いが、パニック状態で両手が使えないなら、やはり逃げる事もままならないか。
「いや!離して、離してよぉ!アルを治してあげないと、いけないの!そうじゃないと覚えた意味がないの!」
「イ…オ…」
彼女だけでも助けなければ、その最後の
「アァン?…あのガキ、あれだけやってまだ動けるのかよ。どんなバケモンだ?それとも小人族かナニカか?おい!誰かそいつを押さえてろ!また邪魔されても困るからなァ!」
「分かりやした」
「…ィオォ…ガッ…!」
だが、ヤツらがそれを見逃す筈もなく、あっけなく俺は誘拐犯の一人に取り押さえられた。ほとんど残っていない力で抵抗を試みるも、それも虚しく俺はグッタリと泥の上に倒れた。
どうにか保てていた意識も、最初の後頭部への蹴りや打撲による重度の脳震盪で、先程から最早いつ意識を手放してもおかしくはない状態に俺は陥っていた。
とうとうまともに思考することも難しくなってきた。
とっくの昔に身体は限界を超えていた。
今、俺を保っているのは執念。
もう
その時だ、奴らの会話が耳に入ってきた。
「にしてもボロい仕事だぜ。こんな幼女一人攫うだけで金貨100枚たぁな」
「へへ、全くですねぇ。一年は遊んで暮らせる額でさぁ。でも、なんだってこんなガキ一人にそんな大金が出せるんですかァねぇ?」
「さぁな。言えない事情でもあるんだろ、アスラの貴族は変態が多いって有名だからな。それに
「おっとそうでやしたね。んじゃ、アッシはこのガキを馬車ん中に戻して来ますかね」
俺は話を聞いて焦る。アスラ貴族の変態性は、リーリャから聞いていたからだ。
誘拐を促したのはアスラ貴族か…だとしたらヤバイ…早く動か、ないと…
だが、今は手下の一人に腕を組まれ押さえつけられている。状況は絶望的であった。
無論、魔術を使えば脱出は出来たが、使えば確実に殺し合いになることは分かっていた。イオを守りながら誰も殺さないように出来るほど俺は強くはなかったし、そもそも身体このが状態で抜け出せても袋叩きに合うのがオチだと思っていた。
現代日本での俺の感性が、人を殺す事を最後まで躊躇わせていた。
「オラ!さっさと来い!」
「あっい、イヤッ…アル、アルぅ…!」
イオは連れて行かれそうな状況でもなんとか抵抗し、健気に俺の名前を呼んでいた。
だが、その抵抗を面倒に思ったのだろう。イオを引きずっていた男は、とうとうその怒りを彼女にぶつけた。
「アーもうメンドクセェ…オラッ‼︎」
男の膝蹴りがイオの腹部に深々と刺さる。その衝撃と痛みにイオは目を見開き、少し痙攣すると、
「ア…ル……」
そう言ってダランと全身の力が抜けると、何も言わなくなった。
…あ
「おい!大事な商品だぞ!壊れたらどうすんだ!」
「あっ、すいやせんオカシラ!このガキがしつこいもんでつい…」
「お前はいい加減そのキレやすい性格をどうにかしろってんだ!」
その時、俺はようやく本当に気付いた。
ああ…そうか。俺が甘かったのか。
分かってたじゃないか。この世界が命の安い世界だなんてコト。
頭じゃ分かってたのに前の世界の価値観を引き摺って、どうしようも無い奴だ、俺は…
最初からそんな事考えず、さっさとコイツらをブチ殺しておけば、今みたいにしくじって、イオが傷付くことも無かったってのに。
イオの為ならなんでも出来るなんて思っておきながら、結局コレだ。
自分で決めた事も成そうともしない、中途半端なクソ野郎。あの頃から何も変われてないじゃないか。
…でも…そんなクソ野郎のままでもいい。最後くらい、決めた事を成したいんだ。
…そうだ…成したいんだ。せめて、イオを助ける事だけでも—
—ちゃんと、しないとなァ
瞬間、奥歯にヒビが入る音がした。
いつの間にか、俺は後ろに
他の連中が空を見上げて静止している中、俺はゆっくりと立ち上がる。先程の痛みを消し、動かない筈の手脚を動かした。
空を舞っていたミンチが重力に従って落ちてくる。止んだ雨に成り代わる、血の雨。その血肉と臓物から成る雨を浴びながら、俺は背中の柄を握った。
ふと風が吹き、近くにあったランタンが倒れる。ランタンの火は、先程雨が止んだばかりだというのに一瞬で燃え広がり、辺りを明るくした。
誰かがオレに囁いた。
朝日の眩しい光に照らされて、リーリャは目が覚めた。
どうやら、眠ってしまっていたらしいと起きてすぐに確認したリーリャは、眠っていた事を反省しつつ、周りを見渡す。
いつの間にか帰ってきた自身の息子が、傍らにでも座って、いつもの小さな寝息を立てていないかと期待するが、期待も虚しく、彼女は傍らにも、それどころかその周辺にも、自分を母と慕ってくれた息子の姿を見つけることは出来なかった。
その事を残念に思い少し俯くが、すぐに顔を上げて昇ったばかりの赤龍山脈から顔を覗かせる太陽を見遣る。
日の出たばかりの日光は、夜の闇で冷えた自身の体をそこそこに暖めるが、それと同時にそれ以上の残酷な事実も見せるのだ。
——日が、昇ってしまった…
そう思い、悲観になるリーリャだが、それを改め、逆に一早くパウロに報告して、捜索隊を出してもらわなければと冷静な考えを持てるのは、流石と言うべきだろう。
そうして彼女が振り向き、家に入ろうとドアに手を掛けた時だ。
ピチャ
その
一瞬、雨水が屋根から滴り落ちる音かと思ったが、瞬時に違うと彼女は気付いた。
屋根から落ちたのなら、もっとハッキリ聞こえる筈だ。だが、件の音はもう少し遠くから、自分から後方に落ちたと感じた。
ならば何の音か、そう考えを巡らすうちに行き着いた答えに、彼女はまさか⁉︎と勢いよく後ろに振り返る。
そして振り返った先、十数メートル先に、彼“ら”は居た。
一歩、また一歩と、ゆっくり小さな歩幅でこちらに向かって来る影が一つ。何かを、いわゆる『お姫様抱っこ』状態で抱えて来ていた。
太陽の光で影になっていてその顔は見えないが、それでもリーリャにはハッキリと分かった。
そのまだ小さな背に見合わない、着衣でも分かる筋肉。その肩幅。
その
アルクトゥルスの姿であった。
やっぱ段落って大事なんだな、と思う今日この頃。
どうも皆様、今回はいつもより早めの投稿です。
今回は話の書き方を少し変えてみました。
色んな人の作品を見て、大体の作品に段落がある事に気付いたのが発端です。他にも細かい所を他作品の書き方になぞって書いてみたつもりです。
あと、他話の前書き後書きを必要な所以外消させて頂きました。
念の為、後から一気見してくる読者の方々に配慮した結果です。
それとも、息抜きという点で後書きは必要でしょうか?
自分は作品投稿はいかんせん始めてで、分からない事の方が多いのですが、どうなのでしょうか?
詳しい方意見お願いします。と言ったら来なさそうですが…
いらないと思った場合は、この後書きもいずれ必要な部分以外消去という形になりますので、ご了承のほどをお願いします。
※追記:評価、感想もよろしくお願いします。