有職転生〜関係ないけど本気だす〜 作:Tの決戦兵器※支援絵配り隊
第一話『まさか…異世界?』
どうやら、俺は生まれ変わったらしい。
あれから数日経った。
その間、俺は今の自分の置かれている状況が少しずつ分かってきた。
まず、今俺が居るこの場所。ここは病院ではなかった。
そりゃそうだ。
俺だったら、絶対自分の息子をこんな所で産まそうとは思わない。
ならここは家か?とも思ったが、それも違う。
ここは馬車の荷台の上だった。
母親が俺を持ち上げた際、馬が休む姿が見えたのでおそらく間違いないだろう。
引っ越しの最中か、もしくは新婚旅行といったところだろうか。
にしても馬車で移動て、どんな田舎だっての。
さて、お次は俺の両親の説明をしよう。
あ、両親っつっても前のやつではないからな?あんなのは、親のカタチをした親
話がズレたな。
まぁ、とりあえず本題に移ろう。
どうやらこの家族、父と母、そして
兄弟はいない。
母の身長は見た感じ170cm弱といったところで、先ほど言ったように髪の色は鮮やかな青。
顔は容姿端麗、瞳の色も髪と同じで吸い込まれそうな程鮮やかな青だ。
年齢は20代前半くらいか。
微笑む姿がとても美しい女性だ。
…えっ?アレのサイズはどうだって?
まぁまぁ、気になるのは分かるがそう焦るなブラザー。
それでサイズの方だがー
ー最っ高に立派なモノを持ってんよぉ(全世界のニキ達歓喜)
また話がおかしな方向に行く前にさっさと父の説明に移るとしよう。
父の身長は170cm強くらいか。
顔は母ほどではないが、十分整った顔つきをしている。
髪の色は薄い茶髪とこちらは普通だ。
瞳は碧眼、ごく一般的な外国人みたいな感じの見た目だ。
体格は筋骨隆々とは行かないものの、それなりに良い体格をしている。
この遺伝子なら俺も結構顔、期待できそーじゃん。
そんなことを考えていると、ふいに母が俺を抱き上げて子守唄を聴かせてくれる。
母は何故か少し心配そうな顔でこちらを見つめている。
まぁ、多分それは俺が生まれた時からただの一度も泣いたことがないからだと思うが。
とりあえず、俺は母を安心させるために大丈夫と言おうとした。
「あーおぉーうー」
当然、まだ言葉が話せるほど成長してないのだが…
そんな声でも効果はあったらしく、俺の声にニコッと微笑んでくれた。
「ーーーー、*@#&」
透き通った声で彼女は俺に何かを言う。
おそらく礼を言ってくれているのだろう。
最後に言った言葉は前に聞いたことがあったな。
多分だが俺の名前なのだろう。
だが、まだ身体が出来てないからかうまく聞き取れない。
後々覚えればいいか、と一人で納得していると母は俺の頭を優しく撫でてくれた。
うん、悪くない。
俺は前の親のせいで人付き合いが少し苦手だが、彼女ら両親に触れられるのは苦でないどころか、むしろ心地良かった。
両親だからであろうか?
こんな毎日が多分あと5年くらい続くんだろうな。
こんなヤツにはもったいないくらい優しさに溢れた時間。
…えっ?そんな状況でお前は母親のアレに興奮しないのかって?
大丈夫だぁ、問題無い。
自慢じゃないが、俺は前世の方ではEDと疑われるくらい性欲が物凄く弱くてね、
もしくはこの身体がそういうものに極端に反応しないか、相手が母親だからだろう。
その話は置いといて、とにかくだ。
親というものに愛された事がない俺からすれば、何もかもが新鮮で新しい毎日。
俺は、ここなら出来るんじゃないだろうか?
普通に生きて普通に死ぬという、普通の人生というものを。
この空間を守っていこう、自然にそう思えた。
とりあえずそのためにしばらくは、子供らしく…しよう……か、な……ーーーー
すると、俺の意識は少しずつ遠のいていく。
母の子守唄の効果はバツグンであった。
さらに数日が経ったところか。
今回は自分についても知ることが出来た。
まず、俺は宙に舞う毛から自分の髪の色が母と同じ青であることを知った。
次に、ここが地球ではない異世界であることを知った。
そして、俺の右目はもう見えなくなったことを知った。
最期に、俺は今から迫り来るモノを知った。
恐怖と怒りと悲しみと憂い、そしてー
ーー死だ。
ゴウゴウと音を立て燃えるのは周りに生える森の木々と俺が乗っていたであろう
途中で途切れ、見えなくなっている右側の視界。
それに共鳴する様に何か流れてはいけないモノが流れる感覚と熱、そして激痛が、俺の右目があった部分から呪詛のように溢れ出てくるのが分かる。
欠けた視界の先には父と母がぐったりとしておりそこには真っ赤な血溜まりが出来ている。
更にその先に佇む赤い鱗を纏った竜。
こうなるまでの事は思い出したくもない。
その地獄絵図のような光景を目にした時、俺は本能的にただひたすらにこう思った。
死にたくない
だが、だからといって身体が動く筈もなく目の前の赤い竜は俺にとどめを刺す為にゆっくりとその牙をこちらに近づける。
あぁ、終わった
俺は目を閉じ静かに死を覚悟した。
しかし、一向にヤツが近付いて来る気配はない。
ふと、目を開けるとそこには一瞬で二つに分かれる竜の姿があった。
何が起こったのか分からず呆然としていると、目の前に見知らぬ人が現れた。
銀色に輝く髪、威厳のある形の立派な髭。
黄金の瞳。
もし、見ず知らずの誰かがこの人はどこかの国の王なんじゃないか?と言っても頷ける。
それくらい威厳のある立ち姿をしていた。
すると、その人は急に俺を抱き上げたまま何処かへ歩き出した。
だが、不安や恐怖などの感情はなく、代わりに深い安心感がそこにあった。
「ーーー、ーー」
突然、何かを喋り出すがそれが自分に放った言葉ではないことはすぐに分かった。
視界に映ってはいないが、周りに他の人の気配がしたからだ。
唐突に右側が光り痛みが消えた。
そのことを考える暇もなく周りが強く光り、目を閉じる。
一瞬、地面に吸い込まれるような感覚を覚え、目を開けるとそこは燃える森ではなく物静かな農村だった。
その人は、またしばらく歩き続けるとふいにピタリと足を止めた。
そこには通る道で見たどの家より大きな家、いやこの場合
その人は俺をその邸宅の玄関手前に置く。
「ーーーー」
なんて言ってるんだろう…?
何かを俺に言うと、その人は邸宅の扉をノックした。
まあ、ノックっていうか正確には扉を叩いたと言った感じだが。
邸宅中にドンドンという音が響く。
すると、近くから風切り音が聞こえ周りを見渡すと、いつの間にか誰も居なくなっていた。
何も出来ずただボーっとしていると、邸宅の中から誰かの話し声が聞こえた。
それから少しすると、ゆっくりと扉が開いた。
そこには20代前半くらいの男性が立っていた。
男性の視線は俺に向いておらず、周りをキョロキョロと見渡している。
ノックの音からもっと大柄な人を想像していたのだろう。
とにかくこのまま帰られても困るので、声を掛けることにする。
「ぁー、ぁーぁ」
出血は止まっているが、その前に血を流し過ぎたせいか俺の声はどれだけ頑張っても羽虫の飛ぶ音くらいにしかならなかった。
それでもなんとか届いたようで、計画通り男性は俺を見つけた。
だが驚いたのか固まってしまった。
どうしたものかと考えていると、邸宅の中から男性の妻であろう女性が出てきて俺を見つけると驚いた顔で何か言いながら俺を抱き上げた。
「ーーー、ーー!」
男性の方は女性に何か言っているが、そんな事はお構いなしに女性は邸宅の中へと入っていく。
家の中に入ったと同時に俺は、血が足りていないからか、もしくは家の中に入って安心したからか、急激な眠気に襲われた。
とりあえず、今日は寝よう。なんか凄く、疲…れた……
俺は何かを話し合っている二人を横目に、深い眠りに着いた。
こんな時間に一体誰だ?
この家の主、パウロは眠い目を擦りつつ音がした方へ向かっていた。
横には彼の最愛の妻である、ゼニスが付き添っている。
「危ない人だったらどうしようかしら…」
ゼニスは少々怯えた声音でそう言う。
音の大きさから相当大柄な男が居ると考えているためだ。
そんなゼニスのことを考え、パウロはゼニスを安心させるために声を掛けることにした。
「大丈夫さ、多分郵便の配達か何かだろう。もし危ないヤツだったとしても、俺がなんとかするさ」
「そう、ね…」
ゼニスはまだ不安そうな顔をしているが、パウロは大丈夫だろうと考えそのまま進む。
道中は特に何もなく、二人は玄関の前に立った。
パウロは少し身構えながらゆっくりと扉を開ける。
だが、そこには大柄な男どころか郵便の配達員も居なかった。
しばらく辺りを見渡し、ただの悪戯か?と思い扉を閉めようとしたその時、
「ぁー、ぁーぁ」
という赤ん坊の鳴き声が微かにだが足下から聞こえた。
見るとそこには、生まれて1ヶ月も経っていなそうな赤ん坊が居た。
…魔族…か?
見てすぐパウロはそう思った。
何故ならその赤ん坊の髪は青く、左目の瞳は黄色で、右目の瞳は
何も言えず止まっていると、パウロの様子が気になったのかゼニスが扉から顔を出した。
ゼニスはパウロの先に居る布に包まれた赤ん坊を見つけ、
「まぁ!この子顔に血が付いてるわ!」
と、驚いた様子で赤ん坊に駆け寄る。
赤ん坊の顔を再度見ると確かに右目の周りにべったりと血が付いていた。
それに合わさるように何かに抉り裂かれたような
「早く家に入れましょう!」
そう言い、ゼニスは赤ん坊を抱え足早に家に入って行く。
それをパウロは慌てて止めようとする。
「待て、まだ家に入れるって決まった訳じゃないだろ!それにー」
その赤ん坊は魔族だ、そう言おうとしたがゼニスに睨まれ押し黙るパウロ。
「あなた?本気で言ってるの?こんな小さな子を見捨てるの?」
ゼニスの冷たい口調にパウロはすぐに反論する。
「違う!ただ助けたらおかしな事に巻き込まれるかもしれないから、様子を見てだな…」
「そんな悠長に出来ないわ!この子、体が冷え切っているのよ⁉︎早く暖炉で暖めてあげないと!」
「いやしかし…」
玄関の扉が叩かれ向かってみれば血だらけの赤ん坊が捨てられており、
しかも赤ん坊は魔族なのだ。
怪しく無い訳がなかった。
パウロには敵も多く、これが何者かの罠という事も考えられた。
可能性を挙げればキリがなかった。
スゥー…スゥー…
すると、どこからか寝息が聞こえてきた。
「あら?疲れて寝ちゃったのね」
目をやると赤ん坊はゼニスに抱えられたまま寝ていた。
その赤ん坊の寝顔を見て、パウロはハッとした。
いや待て待て、俺は何を考えてんだ。
こんな小さな子供に警戒?そんなもんする必要ないだろ。
そもそもだ、俺なんかがそんな事考えても分かる訳ねぇ。
やめだやめだ、柄にもなく考えんなくだらない。
そう考えを改め、パウロは顔を横に振った。
「…悪かった、おまえの言う通りだ。子供に警戒なんて馬鹿馬鹿しいことはやめるよ…」
パウロはそう言い頭を下げた。
それにゼニスは満足そうに、
「分かってくれたならそれでいいわ♪」
と言い、パウロを許した。
「それで、どうするんだ?」
「家に迎え入れましょう。ルディにも兄弟が出来るし、丁度いいじゃない」
主語の抜けた会話だったが、そこは流石夫婦といったところか、二人共ちゃんと会話が成立していた。
かくしてここ、
赤ん坊は『アルクトゥルス』と名付けられ、グレイラット家の次男となった。