有職転生〜関係ないけど本気だす〜   作:Tの決戦兵器※支援絵配り隊

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第三話『列強博書』

 

 

「汝の求める所に大いなる水の加護あらん、清涼なるせせらぎの流れを今ここに

ウォーターボール(水弾)』」

 

 

ルーデウスがそう唱えると、右手から押し出されるようにこぶし大くらいの水弾が生成された。

 

 

「「おぉ!」」

 

 

その様子に、俺達二人は()()()()()()興奮気味に声を上げる。

 

 

「やったなルーデウス!実験成功だ!」

 

 

「あぁ!」

 

 

そう言い俺達は仲良くハイタッチをキメる。

 

何故こうなるに至ったか?それを説明するには、少し時を遡る。

 

 


 

 

あの後、俺達はどちらも同じ時代から転生した日本人だという事が分かった。

 

互いに日本人で、前世の歳もそれほど離れておらず、趣味も似ている為か、俺達はすぐ意気投合した。

 

ルーデウスと俺は前世の本名こそ触れなかったが、前世はどんなヤツだったのか、どんな人生を送ってきたのかを話し合うほどに仲良くなり、気が幾分か楽になれた。

 

ルーデウスは前はどうやら穀潰し(クソニート)だったらしく、俺とは正に真逆の人生を送っていたらしい。

 

まあ、俺が自身の前世について話してから嫌がっていた前世のことについて話し始めたところを見ると、根は悪いヤツじゃーないと俺は思うがね。

 

ちなみにルーデウスは今日まであまり俺と関わらないようにしていたようで、前世のいざこざで弟が苦手になったことかららしい。

 

俺はそんな血の気は多くないぞ兄よ。

 

 

色々語り合って、俺が敵ではないと認識したのか、ルーデウスは先ほど何をしていたのかを快く話してくれた。

 

その話によると、魔術教本と言う文字通り魔術の教科書を読んでいたらしい。

 

ほう!魔術!実に魅力的な単語だ!

 

伊達に高校時代にラノベを読みふけっていた訳じゃない俺は、餌を見つけた魚の如くすぐさまその言葉に反応した。

 

是非是非俺もその壮大な計画に参加させてくれと懇願すると、元からそのつもりさ、と漫画の兄貴みたいに土下座する俺に手を差し伸べた。

 

一生ついて行きます!

 

斯くして、ルーデウスと俺、アルクトゥルスの魔術大計画が始まったのだ。

 

 

 

 

ーそして今に至る。

 

現在は魔術を行使して出来た課題や、成果等をまとめて話し合っているところである。

 

 

「いやー、マジで助かったよ。アルが読み書きについて教えてくれなかったらもっと時間が掛かってた」

 

 

「いやいや、この本をルディが見つけなかったらそもそもこうはならなかったし、読み書きだってルディがある程度勉強してたから早めに終わったんだ。俺は特になにもしてないぞ」

 

 

「またまた謙遜して〜この色男めぇ〜」

 

 

そう言ってルーデウスは俺の頭をグリグリとして父親風な反応を返してくる。

 

 

「俺は色男なんて大層なものじゃないだろ…バカ言ってないで二回目の詠唱準備しろ、今回確認するのは魔術が使えるか、だけじゃないんだからな」

 

 

「分かってるよ。俺達の魔力総量の確認、だろ?」

 

 

「分かってるならさっさと準備する」

 

 

「へいへい」

 

 

適当な返事を返しながら、ルーデウスは手を前に突き出して深呼吸をする。

 

 

「すぅ……ふぅ……」

 

 

そろそろ詠唱が来るかな?

 

そう思った次の瞬間、

 

 

「ハァッ‼︎」

 

 

というルーデウスの掛け声と共に、水弾が生成された。

 

 

「「えっ?」」

 

 

ばちゃ

 

 

俺達が驚いて固まっている間に、水弾はあっけなく音を立てて落ちた。

 

 

「…今、詠唱してなかった、よな…?」

 

 

「…あ、ああ……」

 

 

本来、詠唱を使用しなければ発動しないはずの魔術が、詠唱なしの『()()()』で発動した。

 

それが何を意味するか。

 

それは、魔術という未知の可能性が、限りなく()()に近くなることを指す。

 

こ、これなら出来る…出来てしまう。

 

 

近接戦闘中の魔術行使が…!

 

 

「な、なあルディ。今の、どうやったんだ?」

 

 

俺は少々興奮気味にルーデウスに聞く。

 

夢にまで見た魔術を混ぜた近接戦闘。

 

そのためなら何としてでもやり方を会得しなければならなかった。

 

 

「いや、さっき魔術を使った時の感覚を意識したら…出来た」

 

 

「どんな感覚だ?」

 

 

「なんつーか…右手に血液を集めてから水をイメージしてポンとー」

 

 

「よし大体ルールは分かったゼ!」

 

 

テンパって思わずどこぞの決闘者のセリフが飛び出したが、そんな事はどうでもいい。

 

俺がそう言い右手を前に出しそこに血液を送るイメージと水弾をイメージする。

 

 

「え、ちょっ」

 

 

「フンッ‼︎」

 

 

と掛け声を出すと、先ほどと同じく空中に水弾が発生した。

 

 

「お、出来た」

 

 

「エェ…(困惑」

 

 

よし、俺も魔術が使えるという確認は取れた、ヤッタゼ。

 

と、俺が感傷に浸っていると、ルーデウスが、

 

 

「…まぁいっか」

 

 

と言い、「じゃ、考察をしますか」と考察が始まった。

 

 

何故、魔術教本に詠唱して魔術を使うことが一般的だと書かれていたのか。

 

まず第一に出てきた理由は、教えやすい。

 

というのも、詠唱と無詠唱は車でいうところの、マニュアルとオートマのようなもので、詠唱すれば自動で魔術を使えるのでは?という説が出たからだ。

 

第二に使いやすい。

 

まぁ自動でやってくれた方が楽っちゃ楽だしな。

 

だが先ほどやった感じ、無詠唱はさほど難しいものではなかった。

 

少しの想像力があれば、十分使えるくらいには。

 

そこで、考察班はこう考えた。

 

一般的魔術師は下から上まで詠唱を使って魔術師をやっている。

 

そうやって使い続けている間に、詠唱に慣れ、無詠唱を使えず、どうやればいいか分からなくなり、教えられる者も居なくなっていき、一般的ではないと()()()され、教本には詠唱が一般的だと書かれてしまった。

 

これが一番辻褄が合っていると俺達は考え、考察はひとまず終了とした。

 

 

 

 

「よーし、見とけよ見とけよぉ〜」

 

 

考察が終了すると、ルーデウスは真っ先に右手を構えて水弾を出す準備をする。

 

妙に張り切っているがどうしたのだろう?

兄貴の威厳ってものを見せたいのだろうか。

 

俺はルーデウスの様子を何も言わず見守る。

 

が、一向にルーデウスが水弾を生成する様子がない。

それどころかなんかダルそうな様子に、俺はあることを察した。

 

 

「お前…もしかしてMP切れたか?」

 

 

そう言うと、ルーデウスはギクっとした顔になり、沈黙すると、

 

 

「ち、ちげぇし⁉︎なんか〜…そ、そう!筋トレ!さっきまで筋トレしてて、ちょっと休んだだけだし⁉︎」

 

 

そんなところ見たことないのだが…

 

するとルーデウスは、さっきのことを誤魔化すように勢いよく手を突き出し、「イクゾー」と言って水弾をもう一発出した。

 

そして案の定、ルーデウスは白目を剥いてぶっ倒れた。

 

 

「あーあ、無理して使うから…」

 

 

とりあえず俺は、念のためルーデウスが死んでないか確かめると、俺も水弾をもう一発出すと、身体がものすごくダルくなった。

 

俺は自分のMPが切れたことを察すると、倒れて気絶しているルーデウスを運ぼうとする。

 

だが、その前に母様が上がって来てしまい、ルーデウスを放置して俺は自分の部屋に戻った。

 

すまねぇ〜

 

 

ちなみに、帰って来たルーデウスの話によると、あの後ゼニスに見つかり、寝小便をしたことになっていたそう。

 

しかしMPが水弾二つ分て。

 

魔術教本によると、魔力量は親から遺伝し、そのまま固定されると言う。

 

その新たな課題にその夜は頭を悩ませる俺達であった。

 

 

 

 

だが次の日、水弾はルーデウスは五つ目、俺は四つ目で疲れを感じた。

 

さらにその翌日は昨日の倍、そのさらに翌日は倍出せるようになっていた。

 

つまり、魔術教本に書かれていたことはウソだった訳だ。

 

ま、もしかしたら鍛えても魔力総力には限界があるとかそう言う話なのかもしれんが。

 

またしばらく話し合い、俺達はある仮説を立てた。

 

幼児の頃に魔術を使うと飛躍的に魔力量が増えるという、魔力成長期説だ。

 

普通の子供は小さな頃から魔術なんて使えないだろうから、その結果魔力が伸びず固定化。

 

そうした例から魔術教本には魔力量は遺伝で、固定されたものだとされた。

 

と、こちらも辻褄が合っていると言うことで今後の目標は決定された。

 

成長期が終わる前に鍛えられだけ鍛える。

 

もしこの説が間違っていても、デメリットがある訳でもないし、それより少しでもその可能性があるならそちらを優先した方がいいだろうという考えだ。

 

そして、俺達の秘密の特訓が始まった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

突然だが俺の最近の毎日のルーティーンについて話そう。

 

 

早朝・ランニング

朝・リーリャの手伝い

昼・魔力量訓練

夜・筋トレ、または素振り

 

 

これが俺の一日の主なルーティーンだ。

魔術の研究とかはルーデウスに丸投げだ。

 

ちなみにランニングと言っても、家の周りをグルグル回るだけである。

 

外に出て誘拐でもされたら大変だからな。

 

そんな、俺の毎日のランニングが終わった後だった。

 

家族が起きないようにそっと家の中に入り、書斎へと足を運ぶ。

 

たまにこうやって書斎に行くのだ。

 

俺は、何かいい本は無いかと本の入った箱を漁っていると、ある違和感に気づいた。

 

箱の底がほんの少しだが沈んでいたのだ。

 

すぐに二重底だと分かった俺は、自身の好奇心のままに板底を退けた。

 

ゆっくりと板底を退けた先。

 

そこには一冊の本が隠されいた。

真っ黒に塗られた地味な本。

 

だが、その表紙の金色の枠のせいか、地味な中にどこか気品のようなものを感じた。

 

その枠の中にはこう記されていた。

 

『列強博書』と。

 

俺は徐に本のページをめくった。

 

 

 

 

 

この本を読み進めて、色々と興味深いことが分かった。

 

まず、この世界には七大列強なるものが存在しており、そこにはこの世で最も強いとされる七人が選ばれるらしい。

 

そして七大列強には、序列というものが存在し、順位付けされているそう。

 

序列は以下の通りである。

 

 

序列一位『技神』

 

序列二位『龍神』

 

序列三位『闘神』

 

序列四位『魔神』

 

序列五位『死神』

 

序列六位『剣神』

 

序列七位『北神』

 

 

と、なっている。

 

この本は、主にこの七大列強について書かれているようで、七大列強関連の話や、歴代の列強の情報、現列強の情報が書ているといった内容だった。

 

口で言ってもしょうがないので、俺が興味を持った列強の情報を一部、紹介しよう。

 

 

 

 

七大列強序列二位『龍神 オルステッド』

 

この世のありとあらゆる技と術を使うことが出来る世界最強の龍神。

 

この世のありとあらゆる生物から拒絶され、恐れられる存在。

 

本気を出せば技神をも打倒出来る力を持っているが、なんらかの理由で本気を出すことが出来ない。

 

それでも誰にも劣らぬその力から、序列二位の座を維持し続けている。

 

外見は古代龍族の特徴である白銀の髪と黄金の三白眼が特徴。

 

 

 

みたいな感じだ。

 

本当はもっと長かったのだが、あまりに長文だったので少々省略させてもらった。

 

ちなみにこの作者、どうやら文才だけでなく画才もあるようで、ご丁寧に似顔絵まで載っていた。

 

だが、他の七大列強の情報は剣神と北神と死神は載っていたものの、一位の技神と四位の闘神はほとんど情報がなく、魔神もそこまで情報はなかった。

 

これにはちゃんと理由があるようで、400年ほど前に起こった人魔大戦にて、ほかの列強三名が死亡。

 

技神はそもそも参加しておらず、闘神重症、魔神封印と、五体満足で帰ったのは龍神だけだったそうだ。

 

現在の上位四名の状態は、

闘神・行方不明

龍神・行方不明

技神・行方不明

 

魔神・封印中

と、こんな状態のため、ロクな情報がないらしい。

 

しかも当時の七大列強のほとんどがいなくなった影響により、最近は廃れつつあるのが現状なのだ。

 

ちなみに七大列強四位の闘神と五位の死神の間には、絶対に越えられない壁があり、上位四名の序列は最近まったく動く様子がないそう。

 

当時の列強の強さが窺える一文だ。

 

とりあえず龍神には絶対会いたくないな、なんだよこの世のありとあらゆるの技と術を使うって。

チートやん。

 

そんな感じで読み進めて、本ももうすぐ終わりというところに差し掛かった辺りで、俺は興味深い文を見つけた。

 

 

 

ーと、ここまで七大列強について語らせて貰ったが、この世には一人だけ、七大列強に数えられていないにも関わらず、龍神を越えていると言われている者が存在する。

 

その人物についてもう少し語らせて頂こう。

 

 

 

うせやん。

 

龍神最強ちゃうんかい。

 

もうそれただのバケモンやないかい。

 

…とりあえず読んでみるか。

 

 

 

 

()()は『武神』と呼ばれていた。

 

 

(彼女?女なのか?)

 

 

彼女は神子であり、視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚等の感覚器官が常人の幾百幾千倍高く、龍神同様、全ての技と術を使いこなす。

 

その存在を知る者は少なく、その名を知る者は片手で数えるほどしか居ない。

 

黒い髪に紫の瞳、透き通るほど白い肌が特徴と言われている。

 

 

 

その下には似顔絵が載ってあり、これだけ色付きだ。

 

これまた美人だなぁ、俺の好みでは無いがね。

 

俺の会いたくない人リストにまた一人会いたくない人が追加された。

 

ところでこの本、七大列強について書かれている訳だが、それなら序列変わったら意味なくね?と思った方も多いだろう。

 

だがご安心!

 

この本、どうやら魔導具らしく、列強の序列が変わると自動的にこの本の序列も変わる便利機能付きらしい。

 

一体誰が書いたんだよコレ。

 

そう思いページの下の方を見ると、

 

 

 

ーこの人物について知っていることがあれば図書迷宮にすむネン族の魔王、ベトーべ・トベーターまで。

 

 

 

と、書かれていた。

 

…魔王、ね。

 

 

「ほう。俺の秘蔵の本を探し出すとは、さすが俺の息子だ」

 

 

「⁉︎」

 

 

唐突に声をかけられ、俺は振り返る。

 

 

「と、父様…」

 

 

そこにいたのは父パウロであった。

 

なんでこんな所に…そうか!ここはそもそも、親父の書斎だった!

 

 

「どうだその本。面白いだろ」

 

 

驚いて固まっている俺を気にせず、親父は置いてある本を拾い、ペラペラとページを捲る。

 

 

「そ、そうですね。実に興味深いと思いまー」

 

 

「特にココ‼︎この胸‼︎」

 

 

「え?」

 

 

先ほど読んだ武神のページの似顔絵のところに描かれたその胸を指差して、親父はそう言った。

 

いや確かにデカいが…

 

 

「…イエ、僕にはよく分かりません、父様」

 

 

「なに⁉︎胸のデカいことは男のロマンだろ⁉︎」

 

 

「まだ三歳になったばかりの息子になに言ってるんですか…」

 

 

目の前にいる性魔王パウロに、俺は呆れて言葉が出てこない。

 

その時、俺は親父の後ろから、言い表しようのない殺気を感じた。

 

 

「ま、いずれ分かるようになるさ。それにー」

 

 

「それに、何かしら。ア・ナ・タ」

 

 

修羅場突入である。

 

 

「ぜ、ゼニス⁉︎違うんだ。コレには深い訳がだな…」

 

 

()()違うのかしら?」

 

 

ひとまず俺はこの場から脱出するべく、できる限り気配を消して、母のいる扉の間から部屋を出た。

 

 

「な、なぁアル。母さんに説明してくれないか?これは違うんだって…あれアル⁉︎」

 

 

すまんな親父よ。

 

あんたなら、うまく母を言いくるめて、弟か妹を作る作業に発展すると信じてるよ。

 

 

その日の夜は、いつもより少し二階が騒がしかった。

 

 

 

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