有職転生〜関係ないけど本気だす〜   作:Tの決戦兵器※支援絵配り隊

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第四話『特訓終了のお知らせ』

 

 

俺達は三歳になった。

 

最近は、魔力の特訓中に水弾を出しながら腕立て伏せをするという無茶っぽい特訓をしている。

 

しょうがないじゃないか、これが一番効率的なんだ。

 

ルーデウスもやるか?とこの前誘ってみたが、やんわりと断られた。

 

そんなんじゃ体力付かないぞ!

 

ちなみにこの筋トレ方をしようと思ったのは、体力が付いてきたのもあるが、魔力量がもうだいぶ増えたからという事もある。

 

この筋トレ方に問題があるとすれば、床に両手をついたまま水弾を出すため、床かビチャビチャなのと、両手がチベたいってことだ。

 

さて、魔力量が増えたということは、そろそろ新しい魔術も試しても問題ないということだ。

 

というわけで、今回は中級の魔術の実験だ!

 

いつも通り桶を用意して、準備完了。

 

使う中級魔術は水砲。

 

俺達は、ちょっと溢れるかもな〜ハッハッハ、とか言って位置につく。

 

俺は一応、ルーデウスの後ろの方に位置取り、胡座をかいて、

 

 

「よーし、いいぞー」

 

 

と、合図を出すとルーデウスは、「よっしゃぁ!イクゾー」と言って詠唱を始めた。

 

正直、バカな試みだったと思う。

 

結果あんなことになったんだから。

 

 

 

 

詠唱が始まるとすぐに、ルーデウスの右手に水蒸気のようなものが集まっていく。

 

詠唱が第二段階になっていくと、右手に集まっていた水蒸気が、水に変化し始めた。

 

その時、俺はようやく、あれっ?と思った。

 

なんか、デカくね?と。

 

 

「『水砲(スプラッシュフロー)』」

 

 

ルーデウスがそう唱えた瞬間、超巨大な水砲が発射された。

 

水砲は家の壁に大穴を開け、大空に飛んでいった。

 

すると、俺の途切れた右の視覚の奥で、何かがキラッと光った気がした。

 

 

「えっ?あれっ?」

 

 

俺はその光に戸惑いながら、右目を抑える。

 

だが、特にこれといって変化がある訳でもなく、右目は沈黙したままだった。

 

…幻覚?

 

 

「何事だ‼︎うおあっ……」

 

 

自分の右目の状態を確認することに夢中になっていると、親父が部屋に飛び込んで来た。

 

壁に開いた大穴を見て唖然としながら。

 

 

「ちょ、おい、なんだこりゃ…ルディ、アル、大丈夫なのか?」

 

 

まったく、ダメ親父なのか出来た親父なのかどっちかにしろっての。

 

俺達がやったようにしか見えない現場で、俺達の身を案じる父の様子を見て、そう思っていると、

 

 

「あらあら」

 

 

と、母が部屋に入ってきた。

 

母はまるですべてお見通しだったかのように、冷静に穴の開いた壁、濡れた床と順番に見ていき、最後に開いたまま床に落ちている魔術教本を見て足を止めた。

 

 

「あら?」

 

 

わざとらしいとも言える動作で本を持ち上げ、開いていたページを見ると、母はそれはもう嬉しそーなニンマリとした笑みを浮かべ、俺達を見た。

 

 

「ルディ、アル。もしかしてこの本の内容、声に出して読んじゃった?」

 

 

「ごめんなさい」

 

 

母の言葉にルーデウスは真っ先に謝るを選択した。

 

すぐに謝るなんてなかなか出来ることじゃないな、ルーデウス選手に10点‼︎

 

そんなことを考えている横で、母のうれしそーな笑みは更にニンマリ度を上げていた。

 

親父は母の持っている魔術教本のページを後ろから覗き込むと、ムッとした顔になり口を開こうとした。

 

 

「いや、だっておまえ、これは中級のー」

 

 

「きゃー‼︎」

 

 

だが何かを言う前に母の黄色い(?)悲鳴によって親父の話は途切れた。

 

 

「あなた聞いた⁉︎やっぱりウチの子は天才だったんだわ‼︎」

 

 

いやどこからそんな根拠が出てきたよ。

 

…いや、あるにはあるか。

 

俺はリーリャから色々教えてもらってたし、ルーデウスだって事あるごとに本を片手にボソボソと呟いていたと聞くしな。

 

そりゃあ天才だろうな。

なにせ俺達はまだ三歳なんだから。

 

俺が一人色々考えこんでいる間に、母は歓喜し父は困惑している。

 

 

「ねえあなた、明日にでもロアの街で家庭教師を募集しましょう‼︎アルもね!才能は伸ばしてあげなくっちゃ!」

 

 

む、家庭教師か。

それもいいな、魔術素人の俺達が学ぶよりよっぽど良さそうだ。

 

 

「いやまだアルも魔術が使えると決まったとは…」

 

 

「あ、僕も使えますよ」

 

 

「ほら!」

 

 

「エェ…」

 

 

話の腰を折られてばかりの親父には悪いが、家庭教師というこの千載一遇のチャンス、なかなかないからな。

 

 

「い、いや。まだアルがウソをついている可能性も…」

 

 

「あなた!アルがそんなウソつく訳ないって分かっているでしょう!」

 

 

そこまで信用されているとは、嬉しいねぇ。

 

まあ、なんでそんな信用されてんのかは分かんねぇんだケドね。

 

 

「そ、そもそも、男の子が生まれたら剣士にするという約束だったろう」

 

 

む、剣か。

剣も捨てがたいなぁ。

 

 

「けど、この歳で中級の魔術を発動できるのよ‼︎鍛えればすごい魔術師になれるわ‼︎」

 

 

「約束は約束だろうが‼︎」

 

 

「なによ約束って‼︎あなたいつも破るじゃない‼︎」

 

 

「俺のことは関係ないだろうが‼︎」

 

 

あぁ、マズいまた修羅場になってしまった。

 

ど、どうしよう。

 

二人が口論する中、俺はどう治めたものか…とオロオロしていたが、掃除を終えたリーリャが、

 

 

「ルーデウス坊っちゃまは午前中に魔術、午後から剣を学んで、アルクトゥルス坊っちゃまが午前中に剣、午後から魔術を学べばいいのでは?」

 

 

と、去り際に提案すると口論は止んだ。

 

ありがてぇ。

 

 

 

 

と、いうことで、家庭教師を雇うことになった。

 

両親の予想によると、来るのはすでに引退した冒険者で、ヒゲを蓄え長年研鑽を積んだまさに魔術師って感じのが来るだろうって話だった。

 

そういう話だったのに…

 

 

 

 

「ロキシー・ミグルディアです。よろしくお願いします」

 

 

そこには中学生くらいの茶色のローブを着込んだ少女が立っていた。

 

その姿を見た時、俺は心の底から驚愕していた。

 

なぜならその瞳と髪は、透き通るほどの()だったから。

 

その姿は、そう、まるで、まるで…

 

 

「母…さん…」

 

 

俺がこの世界で最初に母と認めた人。

 

この世界でもう一度、家族とは何かに気付かせてくれた人。

 

最初に護ろうと決め、護れなかった人。

 

母さんに、彼女は似ていた。

 

 

「えっ?」

 

 

彼女、ロキシーの驚きの声で、俺は我に帰った。

 

し、しまった。

声に出ていたか。

 

落ち着け俺、確かに瞳と髪の色は同じだ。

 

だが母さんの身長はもっと高かったし、胸もご立派ぁ‼︎だっただろ。

 

顔も似ているが、他人の空似ってこともある。

 

とにかくまずは訂正!それに尽きる。

 

 

「す、すいません。変なこと言って…」

 

 

「…いえ、お気になさらず」

 

 

「アル、大丈夫か?」

 

 

「どうしたのアル、顔色が悪いけれど…」

 

 

見ると、両親は俺を心配そうな目で見ていた。

 

 

「いえ、大丈夫です。父様、母様」

 

 

「そう?アルがそう言うならいいのだけど…」

 

 

「アル、あんまり無茶はするなよ?」

 

 

「はい」

 

 

とりあえず、この場の収拾はついた、か。

 

 

「…それで、わたしが教える生徒はどちらに?」

 

 

そう言って、話題を変えるロキシーの言葉に反応したのは母だった。

 

 

「それは、この子達です!」

 

 

母は、フフンといった感じで抱えているルーデウスと、足元に立つ俺を紹介した。

 

ルーデウスはなぜかロキシーに向かってキャピっとウィンクをキメている。

 

 

「…はぁ、たまにいるんですよねぇ。ちょっと成長が早いだけで自分の子供に才能があると思い込んじゃうバカ親……」

 

 

呟いたようで聞こえているんだよなぁ。

 

母がそれに「なにか?」と怖い笑みを浮かべて言うと、ロキシーは「い、いえ」と、慌てて返した。

 

 

「しかし、そちらのお子様方には魔術の理論が理解できるとは思えませんが…」

 

 

「大丈夫よ、うちのルディちゃんとアルちゃんはとっても優秀なんだから‼︎」

 

 

その母の親バカ発言に、ロキシーは再度「はぁ」ため息を吐くと、

 

 

「分かりました。やれるだけのことはやってみましょう。どちらから先にやりますか?」

 

 

と、どう言っても無駄だと考えたようだ。

 

ルディが「あ、じゃあ僕からいいですか?」と言うと「ではルディ、ついて来てください」と言って庭に向かって行った。

 

 

 

 

 

「よし!ついて来いアル!」

 

 

そう言い、腕を大きく振って必死に威厳のありそうなポーズをとりながら足を進める親父。

 

親父は息子に良いところを見せるチャンスというのもあってか、いつもより張り切っているようだ。

 

 

「まずは体作りからだ!体力がないと、剣なんて使えないからな!」

 

 

親父はやる気満々な様子で、得意気に語る。

 

もしかして、未だに俺の特訓に気づいていないのか?

 

ウチの親父ってもしや息子には鈍感?

 

ちなみに、例の俺の特訓はもうリーリャと母は知っている。

 

その証拠に俺の手には、血の滲んだ包帯が巻かれている。

 

これは、ある日リーリャがマメの潰れた手に、何も言わず巻いてくれたものだ。

 

あと、朝のランニングを終えて部屋に戻った時も、ベットの上にタオルが置かれていたりと、ガッツリバレている。

 

母は特に干渉してくる事はないが、リーリャに読み書きやらなんやらを教えてもらっている時、窓から見ていたり偶にその輪に入って来たりしているから、特訓のこともバレているだろう。

 

まあ、知らないなら知らないでいいがね?

 

 

「はい、分かりました!」

 

 

俺は、ワクワクした感じを出しながら返事を返した。

 

 

「よーし、始めはランニングからだ!行くぞアル!お父さんについて来い!」

 

 

そう言い、親父と俺は走り出した。

 

 

 

 

 

 

数時間程経っただろうか。

 

俺は親父と家を十周ほどランニングしたあと、腕立て伏せやスクワット、腹筋に体幹トレーニングなど、色々筋トレのメニューをこなした。

 

俺の体力は、特訓の甲斐あってかまだまだ全然余裕があった。

 

親父の方も特に疲れてはいないようだ。

 

だが、予想以上に俺の体力があったのか、「あれ、おかしいな…」とか「こんな筈じゃ…」とかブツブツ言っている。

 

この反応を見るに、おそらく親父は自分のカッコいいところを見せて、やる気を出させる算段だったのだろう。

 

残念ながら失敗に終わったがな。

 

だが安心しろ親父。

 

俺は最初からやる気があるからね。

 

とか思っているうちに日は昇り、もう昼になるか?と思うくらいの時間になっていた。

 

開始してから大体四時間くらい経っても、体力はまだまだ残っていた。

 

 

にしても、いくらなんでも体力ありすぎだよなぁ、俺。

 

もはやアスリート並かアスリート越えくらい体力使ってるんだが…

 

俺、まだ()()ぞ?

 

 

「…あー、アル。無理しなくても、いいんだからな?」

 

 

もう何回目か分からないスクワットを考え事をしながらしている時、そう親父が声を掛けてきた。

 

 

「え、あ、はい。分かりました。ですが、無理はしてませんよ?」

 

 

「えっ?そ、そうか。無理はしてないのか…」

 

 

俺の無理をしてない宣言に、親父はうーんと口をへの字に曲げて考え込む。

 

すると、俺の()に目が行き、

 

 

「アル、その包帯はどうしたんだ?」

 

 

と聞いてきた。

 

本気(マジ)で気付いてなかったのかよ…

 

まぁいい、気付いたなら気づいたで、話を進めればいいんだ。

 

 

「実は、この両手には魔神ラプラスが封印されているのです…」

 

 

「なにっ⁉︎それは本当かアル!」

 

 

「いえ冗談です」

 

 

「冗談かよ…」

 

 

そんなもん、封印されてるワケないだろ。

 

なに騙されてんだか。

 

俺の華麗な冗談で空気が和んだところで、俺は本台を切り出した。

 

 

「ふっふっふ、コレはですね、僕の特訓の成果なのですよ」

 

 

「成果?」

 

 

親父は首を傾げてそう言う。

 

 

「そう成果です。ほら、父様が読み聞かせてくれてたあの(三剣士と迷宮)。あれを聞いて、強い剣士になってみたいと思ったんですよ」

 

 

「ほうほう」

 

 

親父は若干ニヤつきながら相槌を打つ。

 

 

「でも、強くなるにしても剣を持つにしても、力がないと意味がない。そこで僕は、毎日筋トレをする事にしたんです」

 

 

「ほうほうほう…!」

 

 

親父のニヤつき度が増す。

 

 

「そのおかげでもうだいぶ体力も付きましたし、リーリャの家事も手伝っていたのでそちらもマスターしました」

 

 

「ほうほ…ん?おまえ、リーリャの家事を手伝っていたのか?」

 

 

いやそっちも知らんのかい。

 

 

「…はい、手伝ってますよ。ちなみにこの包帯はリーリャが巻いてくれたものです」

 

 

「いや、待て。この家でおまえの特訓を知らないのはあと誰だ?」

 

「父様だけです」

 

 

「……」

 

 

俺の言葉に親父はしばらく沈黙した。

 

 

「いやー剣士を目指してくれるとは父さん嬉しいぞー!」

 

 

そう言い俺を抱きしめる親父。

 

おい今完全に誤魔化しただろおい。

 

 

「そうかー、そこまで体力が付いているなら、今度からはもう剣術の方に移った方がいいかー」

 

 

親父は後ろの空の方を向いたままそう言った。

 

 

「そうですね。僕も早めに剣を教えてもらいたいですし、ね」

 

 

とりあえず深追いはせずにそう返事を返す。

 

 

「よ、よーし。じゃあ明日から本格的に剣術を教えてやる。そろそろ時間だから、今日は終了!」

 

 

「はい、ありがとうございました」

 

 

そう返した時、ちょうど母に「お昼が出来たわよ〜」と呼ばれ、昼食となった。

 

 

 

 

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