有職転生〜関係ないけど本気だす〜   作:Tの決戦兵器※支援絵配り隊

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第五話『魔術の調子』

 

 

午後、俺はロキシーを交えての昼食を終え、ロキシーに連れられ魔術の授業に入ろうとしていた。

 

 

「では、早速アルがどれくらい魔術を使えるのか試しましょう。そうですね…」

 

 

ロキシーは少し考えると、杖を前に突き出し何やらブツブツと唱えると、ドォッと岩の壁が地面から迫り上がってきた。

 

 

「あれに向かって水弾(ウォーターボール)を放ってください。あと、ルディからあなたも無詠唱が使えることは聞いているので、いつものように使ってください」

 

 

「あ、はい」

 

 

さっきの愚痴は聞こえていたのに、詠唱している時は聞こえないってどういうことよ。

 

さて、ふむ。

あれは…壊せば、いいのか?

 

だが威力が高すぎたら後ろにある母の大事な木に傷が付きかねんし…

 

かと言って壊せなくて失望されるのもな…

 

少し考え、俺は一つの答えに行き着いた。

 

相殺させればいいんじゃね?

 

出来るかは分からんが、よし、やってみよう。

 

そうだな…サイズ3、速度6くらいで行くか。

 

俺は、スーッと深呼吸をすると、手を前にかざした。

 

 

「行きます!」

 

 

そう言って、俺は水弾を勢いよく発射した。

 

 

ドッパァン!

 

 

岩の壁と水の玉は、計算通り破片を散らばらせることなく完全に相殺された。

 

よし!成功だ!母の木には傷一つ付いていない!

 

チラッとロキシーの様子を見ると、彼女は唖然とした顔のまま静止していた。

 

 

「ど、どうですか?」

 

 

恐る恐る質問する俺。

 

 

「え、えぇ。上出来です、想像以上ですね。壊れないようにしたんですがね…

 

 

あ、そうか。別に壊さなくてもよかったのか、しまったな…

 

 

「…あなた達兄弟は、こういったことはもう出来るんですか?」

 

 

「え、あ、はい。たぶんルディも出来ます」

 

 

「…そう、そうですか」

 

 

ど、どうしようか。自信を失わせてしまっただろうか…

 

そう思い、オロオロしていると、

 

 

「…これは兄弟揃って鍛えがいがありそうですね」

 

 

とロキシーがボソッと呟いた。

 

それを聞いて俺は、なんか、大丈夫そうだな、と思った。

 

 

 

 

その後、授業は順調に進み、グレイラット家は夜を迎えた。

 

今日は素振り、ではなく魔力総量の増強だ。

 

素振りをやっていたのは筋トレのためでもあるが、前世での剣の使い方を思い出すため、つまりリハビリでやっていた事なのだ。

 

それはもう大体思い出したし、何より親父から本格的に剣を教わる段階に入った今、もう必要ないと俺は考えた。

 

そこにちょうどルーデウスが、効率のいい魔力の消費方法を編み出したのだ。

 

この世界では、なぜかは分からないが細かな作業をした方が魔力を消費するようで、それを利用して出来た消費法が今やっているフィギュア作りだ。

 

だが、フィギュア作りに勤んでいるのは、俺達だけではない。

ほら、今日もギシギシアンアンという作業音が聞こえてきた。

 

今日も今日とて両親は生きたフィギュア作りに勤んでいるようだ。

 

俺は性欲が貧弱なので気にもならないが、隣の奴はそうではないようで、

 

 

「やれやれだぜ……」

 

 

と、どっかの奇妙な漫画の星の白金を操る主人公みたいなセリフを吐いている。

 

俺はそれにも特にこれといって反応する事なく作業を進めた。

すると、さらに今度は「まだまだこれからだぞぅ」と言う親父の声が聞こえてきた。

 

まったく、あの両親は音を抑えるってもんを知らねぇのかね?

 

すると、先程まで静かだったルーデウスがおもむろに立ち上がった。

 

 

「ん?どした、便所か?」

 

 

「いや、今日は一つ声でも掛けてみるかな、と」

 

 

「マジかよ」

 

 

「マジだよ」

 

 

どうやらルーデウスは本気らしい。

 

さすがに痺れを切らしたか。

 

 

「やめたれよ…」

 

 

「だが断る。このルーデウス・グレイラットの最も好きな事は、お楽しみ中の身内の邪魔をする事だ」

 

 

また奇妙な漫画の漫画家みたいなセリフを…

 

 

「そうだな。おとーさん、おかーさん、裸で何してるの?とか聞いてみるか。言い訳が楽しみだぜ。ククク…」

 

 

笑い方が完全に悪役のそれなんだよなぁ。

 

ま、付いていくか。

なに、たまにはこういう楽しみも必要さ。

 

と、思っていた時期が僕にもありました。

 

なんとそこには、先客がいたのです。

母さんによく似た青髪の少女が、ドアの隙間から寝室を覗いていたのだ。

 

右手は下に伸びており、ナニをナニしてナニする動きをしていた。

 

俺達はそっと自室に戻った。

 

 

 

 


 

 

 

 

ロキシーが家庭教師になってから、早くも四ヵ月が経過しようとしていいた。

俺達は特に苦戦することもなく、中級攻撃魔術をマスターした。

 

俺達の予想以上に早い成長を見て、急遽夜の座学が追加された。

 

もちろんエロい意味ではない。

 

勉強するのは、主に雑学。

その日ごとに適当なことを、適当なだけ勉強するのだ。

 

この日の勉強は、魔族の話に発展していた。

 

 

「ーというと、魔族は魔獣が進化したものなんですか?」

 

 

「全然違います。魔族という単語は、大昔に人族と魔族が戦争をしていた頃につけられた名称です」

 

 

曰く、魔族とは7000年ほど前に起こった最初の人魔大戦につけられた名称である。

 

曰く、400年前にも人魔大戦は起こっている。

 

曰く、主に一番新しい戦争で魔族側についていた種族がそう呼ばれており、又例外も存在すると。

 

 

「あ、ちなみにわたしも魔族です」

 

 

「おぉそうだったんですか」

 

 

「はい。正確には魔大陸ビエゴヤ地方のミグルド族ですが」

 

 

ほえー、ロキシー魔族なのか。

あんま人と変わらん気がするが。

 

本人曰く、髪の色が青いのはミグルド族の特徴の一つらしい。

 

俺の母さんも俺も、髪が青いが、関係あるのだろうか。

 

そんなことを考えていると、いつの間にかロキシーが俺の顔を覗き込んでいた。

 

 

「アル、どうかしましたか?何か考え込んでいるようでしたが」

 

 

「あ、いえ。なんでもありません。続けてください」

 

 

「…そうですか。では続けます」

 

 

なんとか誤魔化せた様子を見て、俺は内心少しホッとする。

 

 

「先程、魔族は髪が派手な色ほど危険と言いましたが、それはまったくの迷信です」

 

 

「迷信なんですか」

 

 

む、どうやら考え事をしている間に、話を少し聞き逃していたようだ。

 

集中集中。

 

 

「はい。バビノス地方にスペルド族という、髪が緑の魔族がいたのですが、彼らが400年前の戦争で暴れまわったため、そういう風に言われるようになったんです」

 

 

「暴れまわったんですか」

 

 

「はい、たった十数年の戦争で敵味方両方に恐れられ、忌み嫌われるほどに。戦争が終わった後、迫害を受け魔大陸を追われるほど危ない種族でした」

 

 

いや敵味方両方て、バチバチの戦闘民族やんけ。

 

 

「一体何したんですか?」

 

 

「さぁ、なにせ噂話も多いですからね。それはわたしにも…あ、いえ。一つだけ歴史に残るほどの事件がありました」

 

 

ん?そんな事件あるのか?

 

 

「なんて事件ですか?」

 

 

「『イル族大虐殺事件』です」

 

 

大虐殺。

 

もう名前からヤバそうな事件だわ。

 

 

「イル族というのは、黒い髪に紫の瞳を持つ種族です。戦争当時は魔族側についていましたが、基本的に戦闘をしない穏やかな種族だったと聞きます。魔族側についていたのも形だけだったとか」

 

 

うん?黒髪に紫の瞳?なんか聞いたことがあるような…

 

 

「ですがある時、突然スペルド族が彼らの集落を襲ったそうです」

 

 

「彼らは戦闘は好みませんが、一方で純粋な単体での力なら魔族で一番強いと言われる種族でした。ですがその個体数は少なく、集落も一つしかなかったようです」

 

 

「いくら一個体が強くとも、数の差はどうにもなりません。しかも相手はスペルド族です。戦いは一方的だったらしいです」

 

 

「結果、一夜の内に当時100人程いたイル族の集落は全滅。戦争に行く者もいなかった為、生き残りは皆無。イル族は完全にその姿を消したそうです」

 

 

「これが、『イル族大虐殺事件』です」

 

 

シーンと静まり返る部屋。

 

絶滅とは、なんとタチの悪い…

 

 

「…悲惨な事件ですね」

 

 

「はい。ですから二人共、エメラルドグリーンの髪を持っていて、額に紅い宝石のようなものがついた種族には絶対近づかないでください」

 

 

「分かりました。額に紅い宝石ですね?」

 

 

「ええそうです。それで彼らは魔力の流れなどを見るそうです。第三の目ですね」

 

 

「もし話をするとなっても、相手を尊重して喋れば問題ないですよね?」

 

 

一応聞いておいた方がいいだろう。

 

コミュニケーションが取れるかどうかは重要だからな。

 

 

「そうですね、あからさまに侮蔑したりしなければ問題ないと思います。ですが人族と魔族では常識も大きく違います。ですから、どんな事がきっかけで爆発するかわかりません。遠回しの皮肉もやめておいた方がいいでしょう」

 

 

ふむ、一種族を絶滅させるほど強いなら、あまり戦闘もしない方が身のためか。

 

だがどうも引っかかるような気がする、なんだっけ…

 

考える暇もなく、今日の講義は終了となった。

 

 

 

 


 

 

 

 

また時は過ぎ、一年が経過した。

 

魔術はもう上級攻撃魔術が使えるようになった、もちろん無詠唱で。

 

授業はとても順調に進んでいる、と言いたが、そうもいかないのが現実だ。

 

上級攻撃魔術も覚えたので、他の魔術に移ろうとした時だ。

 

俺は、治癒魔術が使えない事が発覚した。

 

体を回復させたり、解毒したりするための部類が使えないのだ。

 

それについてロキシーに聞いてみると、どうやら魔術は本人にトラウマがあると、使えない魔術があることがあるらしい。

 

例えば、幼い頃火傷を負ったため火魔術が使えなかった、とか。

 

本人はもう大丈夫でも、一度トラウマになったものは基本使えないらしい。

 

おそらくだが、これは俺が死んだ原因が、カフェインの過剰摂取だからだと思う。

 

俺は気にしていないが、体が本能的に『回復』というものを拒絶している、ということだ。

 

だが困ったな。

 

元々は剣術を使い、負った傷を治癒魔術で瞬時に治す『不死身の戦士』的なのをする予定だったんだが、使えないとはな…

 

まあいい、今度は無詠唱で魔術を使い剣術で敵を薙ぎ倒す『無敵の戦士(笑)』を目指そう。

 

だが上級攻撃魔術は使い勝手が悪いかつ何に使うかよく分からない魔術が多いからなぁ。

 

基本的に中級攻撃魔術を使うことが多くなりそうだな。

 

使うとしたら、中級土魔術の『岩砲弾(ストーンキャノン)』と中級風魔術の『風裂(ウィンドスライス)』あたりかな。

 

火魔術は味方に当たるかもだし、水魔術は決定打とはならなそうだからな。

 

岩砲弾(ストーンキャノン)なら射程も長いし、風裂(ウィンドスライス)なら近距離で威力を発揮するだろう。

 

よし、今後の大体の目標は決まった。

 

三大剣術の上級までの習得、魔力量の増強、岩砲弾(ストーンキャノン)風裂(ウィンドスライス)の強化。

 

これが今のところの目標かな。

 

あ、そういえばそろそろ俺達の誕生日だったか?

 

すっかり忘れていたが、数日後、俺達は五歳になる。

 

この世界では、誕生日は毎年行うものではないものの、5歳、10歳、15歳の誕生日を祝うのが風習らしい。

 

プレゼント貰った時なに言うか考えとかないと。

 

そんなこんなで、俺達は、五歳の誕生日を迎えた。

 

 

 

 

 

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