有職転生〜関係ないけど本気だす〜   作:Tの決戦兵器※支援絵配り隊

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第六話『誕生日』

 

 

「ルディ、アル、五歳の誕生日おめでとう!」

 

 

俺達は、特に何事もなく五歳の誕生日を迎えた。

 

元気良く発せられた母の言葉で、ささやかなパーティーの始まりの合図となった。

 

 

「じゃあ、まず俺から」

 

 

そう言うと、まず親父はルディに剣を贈った。

 

五歳児が持つには長く重そうな1メートルほどの長剣と、短めの木剣。

 

長剣はおそらくガチの鍛造された代物だ。

 

ルディは親父のプレゼントに驚きつつも「ありがとうございます。父様」と礼を述べ、親父は機嫌良さげに「うむ」と頷いた。

 

もうプレゼントが無さそうな雰囲気だが、もちろんプレゼントはルディだけじゃなく、俺の分もちゃんと用意されている。

 

親父は「ちょーっと待ってろ〜」と言いニヤリと俺を見ると、奥の部屋からルディと同様に、剣を二本取り出してきた。

 

一本は鍛造の長剣と、もう一本は鍛造の短剣、というかどちらかというとダガーに近い形状をしている。

 

似たような形をした物を、生前()()()()に見せてもらったことがある。

 

巷でエジプシャンダガーと言われる物だ。

 

あまり装飾などはされておらず、実用性の高そうな形状をしている。

 

俺が長く使うことを想定してこれを選んだのだろうという所が窺える。

 

俺は素直に親父の慧眼に感心する。

 

が、問題は長剣の方だ。

 

長剣の刃は布で隠されており、鍔も良く見えないが、全長130センチほどのもはや大剣と言っても過言ではないほどデカい長剣。

 

見上げるほど巨大な長剣を見て、俺は目をパチパチとさせる。

 

そんな俺の様子を見て親父はニヤつき度を更に増すと、剣に被せていた布をバッと取る。

 

その刃は肉厚で、大剣なのではないか?という色を濃くさせる。

 

鍔は一般的な長剣のそれとは大きく違い、剣に沿って曲線を描くような形をしている。

 

その内側には、拳一つ分くらいの緑色に輝く丸い宝石が付いており、間には大きめの隙間が空いていた。

 

 

「アル、持ってみろ」

 

 

俺が長剣を見てポカーンとしていると、親父は俺と同じくらいの目線までしゃがみ、それを横倒しにして差し出しそう言った。

 

 

「あなた…さすがにそれは…」

 

 

「旦那様……」

 

 

そんな親父の驚愕のプレゼントに、母とリーリャは呆れ気味の様子だ。

 

だが俺はそうは思わなかった。

 

この世界に来て魔術を初めて使った時以来の感覚。

 

これは、そう、高揚感だ。

 

この()()を今のこの肉体で持ってみたい。

 

どこまで行けるのか試してみたい。

 

表面には出さないが、俺の心には忘れていた剣に対するモノが、今再び

熱を持ったのだ。

 

大剣を受け取った。

 

 

 

 

短くも、長い時間が流れたような気がする。

 

たぶん一分も経過していないと思うが、俺には一年は経過したような、そんな気分。

 

どうやったのかは覚えていない。

 

だが俺の手には、確かに鉄の塊のような大剣が握られ、持ち上がっていた。

 

 

自分の世界から戻ってきた俺は、周りを見渡し様子を確認する。

 

他のみんなは、親父を除いて全員驚いた様子だった。

 

そりゃそうだ、成人男性でさえ持ち上げられるか怪しい大剣を構えたんだから。

 

 

「フッフッフ、さすが俺の息子だ!」

 

 

何故か満足気な親父は「だがいいか二人共、よく聞けよ」と言うと、用意していたのであろうセリフを語りだした。

 

 

「男は心の中に一本の剣を持っておかねばならん、大切な者を守るにはー」

 

 

親父にしては珍しくいい事言ってんじゃん、と最初は感心していたが、これがまた長い。

 

最終的に母が全員の考えを代弁する様に「長い」と嗜めることで止まった。

 

母が親父を止める頃には、既にリビングは最初の楽しい誕生日の雰囲気に戻っていた。

 

親父は苦笑し「ついては、必要な時以外はしまっておくように」と人差し指を立てて締めくくった。

 

 

 

母のプレゼントは一冊の本だ。

 

 

「ルディとアルは本が好きだから」

 

 

そう言い手渡されたのは、植物事典だった。

 

 

「一人ずつ用意はできなかったから、二人で仲良く読んでね?」

 

 

「もちろんです母様。大切にします!」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

俺達がそう言うと、母は二人まとめて抱きしめた。

 

 

 

ロキシーからはロッドをもらえた。

 

30センチほどスティックの先に小さな赤い石のついた質素なものだ。

 

 

「先日制作したものです。ルディとアルは最初から魔術を使っていたため失念していましたが、師匠は初級魔術が使える弟子に杖を作るものでした。申し訳ありません」

 

 

そういうものか。

 

ふむ、一応覚えておこう。

 

何かの役に立つかもだしな。

 

 

「はい師匠。大切にします」

 

 

そう言い何故かイタズラが成功した子供のように笑うルーデウスの真似をして、俺も「ありがとうございます師匠」と言うと、ロキシーは苦笑いをした。

 

 

最後はリーリャからだ。

 

リーリャのプレゼントは服だ。

 

ルーデウスは黒地の上着。

俺は灰色のフード付きの服をもらった。

 

それらは、まるでリーリャの性格を表すように几帳面に畳まれた状態で手渡された。

 

 

「他の方々のような高価なものは送れませんが、お受け取りください」

 

 

謙遜気味に渡されたそれは、確かに装飾などはほとんどされていないものの、実用性はおそらくだいぶ高いだろう。

 

特に俺のもらった灰色の服。

この世界には伸縮性のある布はおそらくほぼない。

 

そんな中、動きやすいように服の脇と肩辺りには、長めの紐を使いわざと間を緩ませている。

 

しかも成長してもある程度使えるように大きめのサイズにしてある。

 

彼女の周りをよく見る性格も窺えるものだ。

 

 

「ありがとう、リーリャ。大切にするよ」

 

 

だからなのか、礼の言葉は最も自然に、スッと出てきた。

 

 

「いえ、気にしないでください坊っちゃま」

 

 

リーリャの返事は淡白で、周りから見れば少し冷たく見えたかもしれない。

 

だが少なくとも俺は知っている。

 

彼女は我が家で最も周りを見ていて、それを理解してくれていることを。

 

そしてそれは、我が家の大事な()()()()()を作り出す火の一つだということを。

 

 

ちなみに、アルクトゥルスは気づいていなかったがこの時の二人を見つめる目は、なんだか暖かかったんだとか。

 

 

 


 

 

 

二日が過ぎ、とうとう俺も本格的に剣術の鍛錬をすることとなった。

 

なぜ()()()()、というのかは、ルーデウスが先に前日から剣術の鍛錬を始めたからだ。

 

どうやら親父は、俺が主に剣術の道を進むと決めたからには、じっくり確実に剣術を教えていくようで、今までの感覚を一旦リセットさせるために一日置いたのだそう。

 

ちなみにルーデウスの剣の鍛錬の守備を興味本位で聞いてみると、ルーデウスの方はあまり才能らしきものはないが、鍛えれば中級剣士くらいにはなるだろうとのこと。

 

付け加えると、ぶっちゃけ俺の剣の才能にかなり期待しているのだそうだ。

 

 

この世界には槍術や杖術などの長物を使う戦い方は少ない。

 

まぁそれについてはほぼ確実にスペルド族の影響があるだろう。

仕方ないっちゃ仕方ないことだ。

 

俺が生前やっていた杖術の知識は、ここではあまり役に立たなそうだ。

まぁ、そもそも杖術は二十年くらいやってないから、出来るかどうかも怪しいんだけれども。

 

 

故に、この世界の剣術はどちらかというと()を体現したものが多いように思える。

 

もちろん、()()などの生前の知識を使えるものも存在する。

 

この世界で主に存在する三つの剣術の一つの『水神流』や『北神流』などがそれに当たると思っている。

 

水神流の受け流しやカウンター技は日本の剣術に通じるものがあると思うし、北神流の柔軟性の高い動きは古武術に通じるものがある。

 

だがこの『剣神流』というのが厄介だ。

 

生前の知識を上げるのなら辛うじて薩摩示現流などを上げられるが、それでも生前の世界とは似ても似つかないこの剣神流。

 

探せばあるのかもしれないが、どうもそういう方向性の剣をあまりやってなかったというのもあり、習得が難しそうだと感じた。

 

更に厄介なのがこの三つ流派で最も強いと言われているのが剣神流であり、一番使い手が多い流派だということだ。

 

他の剣術と戦うならそちらの剣術の方も熟知していなければいけないのはもはや当然のことであり、そうしなければ対策を取れないのだ。

 

しかしこの剣神流の出来ることはもうめちゃくちゃ。

 

まず岩を斬れる。

ジャ◯プかよと思ったが親父がやってみせたから間違いない。

 

もっと上となると光の速さで剣撃を繰り出せるらしい。

 

ナニソレ?

ヒカリ?ヒカリってあのヒカリ?ナンデ??

 

親父の友達にはその技が使えるやつがいるらしい。

 

まっさか〜と最初は思ったが、ガチっぽいのでおそらくホント。

 

だが、よくよく考えてみる。

頭を冷やして考える。

 

確かにヤバい速度だ、光なんだから。

 

だがそれ言ったら魔術だって大概おかしい。

何もないトコロから水生み出して、しかも飛ばしてんだから。

 

たぶん、この世界でそれを知って今ほど驚かなかったのは、「まあ、そういうもんか」と柔軟に吸収したからだ。

 

生前のラノベの知識が俺にそう()()させたのだ。

 

だが今回は驚いた。

 

何故か、それは俺が生前武を修めていたからだ。

生前の常識が、俺をそうさせたのだ。

 

だがここは違う、生前の世界とは違う異世界なのだ。

 

例えばこう考えてみよう。

この世界の武術には対魔物を想定したやり方があり、足りない力を魔力で補っていると。

 

ある程度理屈は合っているはずだ。

 

ラノベにだって、身体強化やらなんやらとか似たようなものがあるじゃないか。

 

そう考えるなら、可能性は限りなく無限に近い。

ましてこの体はこの世界のものだ、なら俺に出来ないハズがない。

 

気楽に考えるんだ。

 

もしかしたら、これを機に俺の力が何か目覚めちゃったりするかも?とか。

 

生まれた頃から鍛えてきた自分の身体を信じ、やれる事をやろう。

 

まずは、岩を斬ることからだ。

一気に飛んだように見えるがこれくらいできないと話にならないのだ。

 

親父の説明はこうだ。

 

 

「クッと踏み込んでザンッ‼︎って感じだ」

 

 

親父はどうやら感覚派らしく、説明文のほとんどが擬音で作られている。

 

いやまぁ分からなくもないよ?

これでも生前は剣士の端くれだったしな。

 

しかしこのやり方は教える側にはあまりにも向かなすぎる。

 

経験者だから分かったものの、ルーデウスがこの説明で理解できるとは思えん。

 

ま、とにかくやってみるか。

試しに魔力を力むみたいな感じでガチガチに固めてみたりする。

 

お、なんか力が強くなった気がするような…

 

これでいってみるか。

えーっと確か…

 

 

「クッと踏み込んで…」

 

 

ピシッという音を立て、地面にヒビが入る。

 

お、おお?今までにない力を感じるぞ⁉︎

 

よし、いける‼︎

 

 

「ザァン‼︎」

 

 

 

 

ーバキャァァァン‼︎

 

 

手答えは、あった。

 

どうだ?

 

次の瞬間、ピキと岩にヒビが入ると、バァァン‼︎と音を立てて真っ二つになった。

 

しかし、それとほぼ同時に木剣もパァン!と繊維状に割れた。

 

 

「惜しい!今のはどちらかというとクッと踏み込んでダンッ‼︎って感じだったな。だが、一発で岩を割るとはさすが俺の息子だ!」

 

 

そう言って親父はやや乱暴に俺の頭をワシワシと撫でくりまわす。

 

木剣は砕けたが、何はともあれ岩を斬ることができた。

今は、それでいいとしておこう。

 

すると、さっきの轟音でロキシーとルーデウスが何事かと駆け寄ってきた。

 

 

「大丈夫ですか?なにやらすごい音が聞こえましたが」

 

 

「ああ、ロキシーちゃん。ちょうどいいところに来たな。実は今、アルが木剣で岩を斬ったんだ。すごいだろ!」

 

 

ロキシーはえっ!と驚いた様子で奥の真っ二つになった岩を見た。

 

後ろでは、ルーデウスがそれを見てウエェ⁉︎となっている。

 

 

「岩を斬ったって…本当ですかアル?」

 

 

そうロキシーが俺に聞いてくる。

 

めっちゃ自慢したい気分だが、ここは抑えてとりあえず謙遜しとくか。

 

 

「ふっふっふ、どうですかスゴいでしょう!まぁ、とは言え木剣もダメにしちゃいましたし、まだまだです。それにー」

 

 

俺がさらに謙遜ムーブを続けようすると、急に視界がぼやけた

あれ?なんか頭がフラつくような…

 

急に頭がフラフラし、俺はとっさに俯く。

 

 

「?どうしましたアル。なんだか顔色が悪いですよ?」

 

 

「い、いえ。なんでもありません。ただ少し目眩がしただけです」

 

 

ロキシーに声を掛けられ、心配はかけまいとあわててのそっちを向こうと顔を上げたその時だった。

 

 

「そうですか…ですが万が一の事もありますし、一応治癒魔術をかけておいた方がいいでしょう」

 

 

「…先生は分身魔術も使えるんですか?」

 

 

ロキシーの体が、()()()見えるのだ。

 

何故唐突にこんな状態になったのかは分からないが、とにかくブレて見えるのだ。

 

だが、なんだ?この違和感は。

 

まるで、まだなにか忘れているような…

 

 

「…いえ、そんな魔術使えませんし、聞いた事もありません」

 

 

「いや、でも確かに…」

 

 

すると、今の状況をロキシーに説明しようとした瞬間、俺の頭は急に割れそうなほどズキズキと痛みだした。

 

 

「ーウッ!」

 

 

俺は頭を抱え、うずくまることしか出来ないほどの痛みに襲われ、会話が途切れる。

 

 

「えっ!だ、大丈夫ですか⁉︎やはり具合が悪いですよ!とにかく一旦治癒魔術をかけて、家の中で休みましょう!」

 

 

ロキシーは俺の元へ近寄り、治癒魔術をかけようと詠唱を始める。

 

 

おかしい、この違和感はなんだ?

 

今回は目に異常があった。

なら、まだ目に異常があるのか?

 

だが、左目に異常はもうない、ハズ。

 

右目だって、そもそも見え…

確認をしようと、左目を抑えた時、俺の視界にはー

 

 

ー光が灯っていた。

 

 

え?

 

そこで、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 






【挿絵表示】
アルクトゥルス全体図(旧)
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