有職転生〜関係ないけど本気だす〜   作:Tの決戦兵器※支援絵配り隊

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第八話『卒業1』

 

 

魔眼が発現してから早一週間が経過した。

 

一週間経ったこともあり、最近コイツ(魔眼)の使い方もだんだん分かってきた。

 

詳しい説明はアレなので省かせてもらう。

どちらも魔力に関係する使い方だった、とだけ言っておくことにする。

 

さて、俺はあの後日、早速剣の鍛錬を再開することになった。

 

あんまり休んで、腕が鈍ってもいけないからな。

その点は親父の考えは正解だろう。

 

だが、俺の習う剣術の件で少々揉めた。

 

揉めた、と言っても少し相談する、みたいな感じの意味だから誤解しないで欲しい。

 

親父が教えようと言った剣術は、剣神流と水神流の二つだった。

 

何故か北神流がなかったので気になって理由を聞いて返ってきたのはこうだ。

 

 

「あれは剣を使っているだけで剣術じゃない」

 

 

俺はこれを聞いてムッとしたね。

ちょっとため息すら出そうになった。

 

俺は強くなりたいから剣術をやろうと思ったのであって、ただ剣をブンブン振り回せるようになりたい訳ではないのだ。

 

たとえ剣術でなくとも、様々な相手に有効な戦術があるならそれを知るべきだし、使えるようになるべきだと俺は考える。

 

それなのに親父のエゴでその手段を教えなければ、本末転倒でありこの鍛錬の意味がなくなってしまう。

 

俺はその事をなるべく柔らかく説明すると、親父は「いや、しかしなぁ…」と渋り、しばらくうーんと唸っていたが、その後何か考えてから頭を掻き、

 

 

「分かった。そこまで言うなら教えよう。ただし、言ったからには絶対に泣き声は許さんぞ」

 

 

と、いさぎよく聞き入れてくれた。

 

俺は「もちろんです!ありがとうございます父様!」と言って、思いっきり抱きついた。

 

普段あまりこういうことはしないせいか、親父は俺の行動に驚きつつも喜んでいた。

 

とまぁ、そんな感じでこの一週間、魔眼に慣れるための自主練に、魔術の勉強、三大流派の習得の鍛錬、座学と、いよいよ俺のスケジュールがいっぱいになってきていた。

 

これはもう遊ぶ時間とかもうないかな?別にいいんだが。

 

そう思っていたある日、とあることをロキシーに告げられた。

そう、あれは、今から二日前の事だー

 

 

 

 

「魔法大学、ですか?」

 

 

きっかけはロキシーが俺に魔法大学なるものを勧めてきた所からだった。

 

 

「はい。ラノア魔法大学と言って、わたしの母校でもあります」

 

 

最初聞いた時は母校の宣伝か何かだろうか?と思ったが、話を聞くにつれどうも違うことが分かった。

 

 

「アルは強くなりたいと言っていたので、もし魔術関連のことで行き詰まった時は、ラノア魔法大学に行き、魔術を習うといいでしょう」

 

 

と、どうやらそう言うことらしい。

本当に気の利く師匠だ。

 

まぁ、たぶん自分の母校だから言っておきたかったってのもあると思うが。

 

誰だってそうする。俺もそうする。

 

 

「それに、ラノア魔法大学には変な格式やプライドがありませんから、人族と魔族のハーフかもしれないアルでも、自由に魔術を教われると思いますしね」

 

 

ほうほう人族と魔族のハーフでも行ける…ん?人族と魔族のハーフ?

 

 

「え、僕魔族のハーフなんですか?」

 

 

「可能性は高いと思います。青い髪の人族なんて聞いたことがありませんから。アルは魔族側の特徴が強く出ていますし…知らなかったのですか?」

 

 

初耳だ。

そうか、魔族のハーフか。

 

 

「ちなみに、種族って分かりますかね?青い髪の魔族」

 

 

って目の前にいるか、青い髪の魔族。

ロキシーは確か…ミグルド族、だったか。

 

たぶんそれだな!(名推理)

 

 

「え?あぁ、そうーですね。すいませんが、そういう細かい部分は、わたしには分かりません」

 

 

そうロキシーは、何やら気まずそうに?言った。

 

む?分からないのか。

ロキシーのことだから、そういったところは詳しいと思ったんだがな。

 

なんか様子もおかしいし…いや、人のプライベートに触れるのはよそう。

俺を気遣って言わないのかもしれないしな。

 

とりあえず俺は話を戻すことにする。

 

 

「でも、なんで急に魔法大学の話を?まだ先のことっぽいですけど」

 

 

「いえ、そろそろ卒業も近くなってきましたので、先に言っておこうと」

 

 

そう言ってロキシーは寂しげに笑った。

 

 

 

 

そして今日、俺達は卒業試験を行う。

 

試験は家の外でやる。

だが、そこで愚痴を吐く者が一人。

 

 

「本当に外でやるんですか?」

 

 

「はい。村から離れたところでやります。もう馬は用意してあります」

 

 

そう言いロキシーは一頭の馬を見る。

 

ウチの親父の愛馬、カラヴァッジョだ。

俺も何度か世話をしたり、乗せてもらったことがある。

 

大人しいよい馬だ。

 

 

「そうですか…」

 

 

先ほどから沈んだ顔で愚痴を垂れているのは兄のルーデウス。

 

いつもと違う沈んだ表情に、ロキシーが「どうしました?」と聞くと、外には魔物がいるかもと言うが俺は知っている。

 

大方、前世でのトラウマとかで外に出たくないのだろう。

 

ルーデウスは極端に外に出ることを嫌がっていたから何があったのか大体予想がつく。

 

だがロキシーは前世云々のことなどもちろん知らないので、魔物はここじゃ滅多に出ないとか、会っても倒せるとか、さては馬が怖いんだとか、的外れなことを言っている。

 

 

「仕方ありませんね。よっこらしょ」

 

 

最終的にはロキシーがルーデウスを持ち上げ、カラヴァッジョに乗せることで事なきを得た。

 

その時、「アルも乗りますか?」と聞かれたが俺は「いえ、僕は歩きでついていけるので大丈夫です」と言い断った。

 

歩いた方が体力が付くし、ゆっくり周りの景色を見れるからな。

 

そして俺は、なんだかんだ初めての外出をした。

 

 

やはり馬の横を歩いていると注目を集めるのか、やけに村人から視線を感じる。

いや、おれは右目に包帯を巻いているから、それもあるのだろうか?

 

だが、大して鋭いと言うわけでもない、物珍しいものを見たっていう感じの視線だ。

 

ブラック企業で働いていた時の主任の視線の方がよっぽど鋭かった。

 

それに比べれば、気にもならないレベルだ。

 

そう思いつつ、俺は興味深く周りを観察する。

 

すると、すぐ上から話し声が聞こえてきた。

見ると、ルーデウスがロキシーにもたれかかっているところだった。

 

どうやら、もう慣れたっぽいな。

 

その後は、ルーデウスが村の様子を見てロキシーにあれは何かと質問したり、通り過ぎる村人に三人で挨拶をしたりしていると、次第に人も畑も見なくなり、いつの間にか広い草原に着いていた。

 

 

「このあたりでいいでしょう」

 

 

そう言いロキシーは、一本だけ生えている木にカラヴァッジョの手綱を結ぶと、ルーデウスをカラヴァッジョの上から下ろした。

 

 

「これからわたしは水聖級攻撃魔術『豪雷積層雲(キュムロニンバス)』を使います。この術は、広範囲に雷を伴う豪雨を降らせる術です」

 

 

「それを真似して使えれば、合格とします」

 

 

水聖級魔術の行使が試験の内容か。

 

試験。

試験をうけるのは二十年ぶりくらいか。

 

久しぶりの試験だからか、少し緊張するが、どちらかと言うと楽しみという部分の方が大きい気がする。

 

武道家の血が騒ぐ、とでも言うのだろうか。

何年経っても俺の本質は変わってないようだ。

 

 

「人のいない所でやるのは、秘伝だからですか?」

 

 

「いいえ、違います。人や農作物に被害が出るかもしれないからです」

 

 

まあ攻撃魔術だからな、そりゃそうか。

 

 

「では」

 

 

ロキシーは大きく深呼吸をすると、天高く手に持つ杖を掲げた。

 

 

「雄大なる水の精霊にして、天に上がりし雷帝の王子よ‼︎我が願いを叶え、凶暴なる恵みをもたらし、矮小なる存在に力を見せつけよ‼︎神なる金槌を金床に打ち付けて畏怖を示し、大地を水で埋め尽くせ‼︎ああ、雨よ‼︎全てを押し流し、あらゆるものを駆逐せよ‼︎」

 

 

詠唱が終わる頃にはすでに辺りは雨雲が広がっており、発生する暴風でルーデウスは吹き飛ばされないようロキシーの足にしがみついていた。

 

そして、最後の詠唱が終わる。

 

 

「『豪雷積層雲(キュムロニンバス)』‼︎」

 

 

瞬間、稲光と共に滝のような豪雨と暗雲が周囲を支配した。

 

すると、どこからかパリッとか、ジジッとかいう音が聞こえてきた。

 

なんだか自分の体がパリパリしてふと自分の手を見ると、細かな毛が逆立っているのが分かる。

 

静電気か?

珍しいな、この世界ではあまり静電気なんて見たことない気がするが…

 

そういえば雷が落ちるところには、静電気が発生して云々ってのをテレビかなんかで見たことがある。

 

 

 

…雷が落ちる?

 

その瞬間、背筋をゾッとさせる寒気が俺を襲い、一瞬で脳味噌がフル回転した。

 

そして、俺は半ば本能的に誰もいない方向を向き、背中に背負った剣を手に取り、振り返る勢いを利用して高速で剣を鞘から抜き取り、勢いを殺さず持てる最大の力でそれを投擲した。

 

 

「うおおぉぉぉっっっっらああぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

ここまでの時間、約1秒。

 

そして投擲から更に約0.5秒後。

 

俺の視界に、目が焼かれんばかりの眩い光が広がった。

 

あらゆるものがスローに見える。

 

ああ、やってて良かった、北神流(投擲術)

 

 

パガァァン‼︎

 

 

次の瞬間、俺の体は宙を舞い、受け身も取れずそのまま頭から落下した。

 

 

数秒意識が飛んでいた。

 

吹っ飛ばされる時、少しでもダメージを和らげるために後方に飛んだのが功を奏したか、俺は生きてる。

 

危なかった。

 

あれが直撃していたら、確実に死んでいただろう。

不幸中の幸い、と言う言葉が目に浮かぶぜ。

 

俺が死んだら、ロキシーの顔に泥を塗ってしまいかねないしな。

今はそれを喜んでおこう。

 

頭からもろに落ちたにしては体は十分動く。

 

ま、体を思いっきり地面に打ちつけたから、まだ全身がジンジンいたむが。

 

 

「だ、大丈夫ですかアル!本当にすいません今治癒魔術を使いますから!」

 

 

吹っ飛ばされたまま、仰向けになって色々考えていると、ロキシーがアワアワしながら駆け寄ってきた。

 

 

「大丈夫です先生。命に別状はありませんから

イテテ…

 

 

そう言って上半身を起こす。

 

吹っ飛ばされたせいか、あまり視線が安定しない。

そこに予見眼まで加わると、もう訳が分からない光景に変わる。

 

 

「そ、そうですか…ですが、頭から少し血が出ていますし、とりあえず治癒魔術はかけておきましょう」

 

 

「あ、そうなんですか。なら、よろしくお願いします。知っての通り、僕は使えないので」

 

 

ロキシーは念のためと言わんばかりに中級の治癒魔術を行使してくれた。

 

そのおかげで痛みは消え、頭の傷も綺麗に消えたようだ。

 

 

「よ、良かった…危うくパウロさんたちに顔向けが出来なくなるところでしたよ」

 

 

「僕も死んでしまうかもと心配しましたよ…」

 

 

俺の様子を見て、ロキシーとルーデウスはそう言い胸を撫で下ろした。

 

 

「ですが、さっきの雷でちょっと服の端が焦げちゃったので、もう隠すのは無理ですかね…」

 

 

「今回は自業自得なので、いさぎよく怒られます…」

 

 

少し落ち込むロキシーを尻目に、俺は自分の剣を探す。

 

 

「そうだ。僕の剣はどこでしょう、壊れてないといいんですけど…」

 

 

そう言い周りを見渡すと、剣はすぐ見つかった。

 

地面に深々と突き刺さっているものの、柄も鍔も傷一つ付いておらず、剣身に至ってはいつもより輝いていた。

 

電気を帯びて光り輝いてー

 

 

…え?

 

俺の剣は帯電し、自ら発光していた。

 

ロキシーとルーデウスも気づいたようで、全員の動きが完全に止まりバチバチと電気の流れる音だけが聞こえる。

 

そんな中、俺だけがその剣に歩み寄る。

 

 

「あ、アル!危険かもしれないので、近づかないでください!」

 

 

そうロキシーが呼びかけるが、俺はそのまま近づき剣の柄を手に取る。

 

感電する様子はない、それどころか静電気すらない。

 

剣を地面から引き抜いてみるが、それでも一向に帯電が治まる気配はない。

 

これは一体…?

 

 

「近づかないでと言ったじゃないですか、もう」

 

 

剣の方に気を取られていると、いつの間にかロキシーはすぐそばまで来ていた。

 

 

「あの、先生。一体なぜこの剣はこんな状態になったんでしょうか?先生の使った魔術の影響ですか?」

 

 

「…アル、これ魔剣ですよ。普通の剣でこんなことにはなりませんし、今使ったキュムロニンバスにこんな効果はありませんから間違いありません」

 

 

魔剣!なんて心踊るワードなんだ!

厨二心がくすぐられる最高のワードとは思わんかね!

 

ん?待てよ?

なんで魔剣がウチにあって、なんで親父はそれを俺に渡したんだ?

 

ふむ、これは後で親父に問いただす必要がありそうだな。

 

 

「こほん」

 

 

俺が色々と一人で考えていると、ロキシーが空気を入れ替えるためか咳払いを一つ吐く。

 

それに反応して考え事をしていた俺も、ボケーっとしていたルーデウスもロキシーの方に向き直る。

 

 

「では、アルも無事と言うことで試験を再開します。まずはルディからです」

 

 

「はい!」

 

 

ルーデウスがそう言うと、ロキシーはカラヴァッジョのいる木の方へ歩いて行き何かを詠唱すると、土の壁が木のてっぺんまですっぽり覆った。

 

土の上級魔術『土砦(アースフォートレス)』だ。

 

 

「アルもこっちへ来てください」

 

 

土のカマクラが出来上がるとロキシーに呼ばれ、俺は中へ入った。

 

 

 

 

すると、何を思ったのかロキシーは俺に魔力眼でルーデウスのキュムロニンバスを見てもらいたいと言ってきた。

 

 

「魔力眼で見るんですか?」

 

 

「はい。水聖級魔術を使う機会なんてあまりないでしょうから、今のうちに見てもらっておこうと」

 

 

ふむ、まぁロキシーが言うんだ、何か考えがあるのだろう。

 

 

「そういうことなら、はい。分かりました」

 

 

「では目をつぶっておいてください」

 

 

ロキシーがそう言うと、もう3回目になる眼帯の再装着をしてもらった。

 

ふむ、やっぱりいつ見てもおかしな景色だ。

まぁ、気持ち悪い景色というか、どちらかというと幻想的な景色なんだが。

 

そんなことを考えていると、ルーデウスのキュムロニンバスの詠唱が始まった。

 

 

 

 






髪の色を『蒼』から『青』に変更させて頂きました。
調べてみたところアオの漢字は『蒼』だと死体とかの真っ青とした様子を表してしまうようだったからです。

なので鮮やかとか空の青の意味がある『青』にさせていただきました。
修正報告は以上です。




【挿絵表示】
アルクトゥルスの剣

デザインは少々変えさせてもらいました。

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