半人半魔のトレーナーと頂点を目指すもの   作:ユリゼン

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第十三話 夜

 あの後、止まることを知らずさらにハイペースで飲み続けたたづな。

 瓶ビールどころか日本酒を何本も空けておきながら酔い潰れることなく、むしろ『次の店に行きましょー!』と連れ回され、挙げ句の果てには『カラオケしましょー!』と完全に出来上がってしまっていた。

 とはいえいくら明日が休日で何の予定も無いとはいえ、朝帰りだけは勘弁願いたいものである。なのでダンテはタクシーを呼び、たづなを呼んだタクシーに放り込んで彼女の自宅へと送りつけた。

 

 

 たづなを乗せたタクシーが走り去るのを見送ったダンテは、その足で自宅へと向かう。

 この時間帯ならもうルドルフは寝ていることだろう。仮に起きていたとしても明日は休日で何の予定も無いので、注意する必要もない。

 ダンテは帰る途中でコンビニに立ち寄り、缶ビールとおつまみ、あとついでにルドルフ用ににんじんジュースを買っていく。決して飲み足りなかったわけではない。ただ家に帰っても暇を持て余してしまうので、それを防ぐために買っただけだ。

 

 

 ダンテが家に帰ると、部屋の電気は全て消えている。どうやらルドルフはすでに寝ているらしい。

 ダンテはコートを脱ぎ捨てると、ソファにドカッと座りテレビを点ける。そして先ほどコンビニで買ってきたビールとおつまみを開けた。

 

 

 「トレーナーさん………?」

 

 一人でビールを飲みながらテレビを眺めていると、不意にルドルフの声が聞こえてくる。

 声のした方を見ると、パジャマ姿のルドルフが寝ぼけ眼で立っていた。

 

 「どうした? トイレならこっちじゃないぜ」

 「トレーナーさん…帰ってきたんだね…」

 

 ダンテの冗談混じりの言葉にも反応せず、ルドルフはポワポワとした言葉でそう返してくる。どうやら寝ぼけているらしい。

 こんなルドルフの姿、生徒会の面々はおろか仲の良い連中も見たことはないだろう。

 

 「にんじんジュースあるが飲むか?」

 「………んーん」

 

 ダンテの言葉にふるふると首を横に振るルドルフ。そしてダンテのそばまで歩み寄ってくると、そのままダンテの膝の上に頭を乗せて横に寝転がった。

 

 「おいおい、寝るならちゃんとベッドで寝ろ」

 「……ここがいい」

 

 少しルナの面が出ているのか、珍しく駄々をこねるルドルフ。これでは何を言っても言うことを聞かないだろう。

 

 「えへへ、トレーナーさんの膝あったかい」

 

 そんなルドルフはダンテの膝枕が気持ちいいのか、にへらと気の抜けた笑顔を浮かべる。

 そんなルドルフの様子にダンテは口を出す気も失せ、ルドルフの好きなようにさせることにした。

 

 そのままダンテがビールを飲みながらテレビを眺めていると、いつの間にかルドルフは穏やかな寝息を立てて眠っていた。

 

 「うぇへへへ………」

 

 ………何の夢を見ているのだろうか、普段なら絶対に見せないであろうだらしない顔を浮かべている。

 こんな顔、威厳もへったくれもないが、皆の前ではトレセン学園の生徒会長として、『皇帝』という絶対強者として振る舞わなければならないのだ。ならばダンテの前にいる時だけは歳相応の少女でいられるようにしよう。

 ダンテは周囲を見回し、少し離れたところにルドルフが持ち込んだブランケットが置いてあるのを見つける。手を伸ばして取ろうとしたものの、ルドルフが膝の上で寝ているために動くことができず、ギリギリのところで手が届かない。

 ダンテはため息を吐くと、軽く手のひらをブランケットに向ける。するとブランケットが淡い赤い光に包まれ、ゆっくりと宙に浮き上がりダンテの手のひらに収まる。

 こっちの世界に来てから魔力を使うことなんて皆無に等しいし必要も無いのだが、まあこれくらいなら使ってもバチは当たらないだろう。

 

 

 「ゆっくり眠りな、麗しの皇帝様」

 

 

 いつになくキザったらしい言葉を呟きながらルドルフの頭を撫でるダンテ。

 柄にもなくその言葉を呟いたのは、ダンテが無自覚に酔っている証拠なのだろう。

 

 

………

……

 

 

 「んっ………」

 

 窓から射し込む日の光によって、ルドルフはゆっくりと目を覚ます。

 

 最初はまだ冴えていないのかボーッとしていたが、頭が冴えてくるのと同時に顔が熱くなってくる。

 

 昨夜、ルドルフは寝ぼける余り居酒屋から帰ってきたであろうダンテの膝枕で眠ってしまった。

 普段なら絶対にしないであろう行動に加え、想像以上に気持ちが良かったダンテの膝枕を思い出し、羞恥心が溢れ出てくる。

 

 (私はなんてはしたないことを………!)

 

 そんなことを思うが、それ以上にダンテに膝枕をしてもらったという揺るぎない事実に嬉しさを感じる。

 そんな恥ずかしさやら嬉しさやらごちゃ混ぜになった感情に掛けられていたブランケットを抱きしめ、ソファの上で身悶える。身体を冷やさないようにブランケットを掛けてくれたさりげない優しさに、ルドルフの感情はさらに昂る。

 

 「ようルドルフ、もう起きたのか」

 

 するとダンテがダイニングの方からルドルフに声をかけてくる。それによりハッとしたルドルフは跳び上がるように起き上がった。

 

 「お、おはようトレーナー君! すまない、こんな恥ずかしい姿を見せてしまって!」

 「謝らなくていい。ここには俺以外誰もいないからな。それに今日は完全オフの日だ。もう少し休んでてもいいんだぜ」

 「心遣いはありがたいが、久しぶりのオフの日を無碍にするのはもったいない。だから起きることにするよ」

 

 そう言ってソファから起き上がるルドルフ。そして部屋着に着替えるために一旦自室へと戻る。ダンテの前で着替えるのはいくら一つ屋根の下で生活する仲であろうと、掛かっていない時はまだ恥ずかしくてできない。尚、掛かっている時は真っ裸になっても羞恥心すら覚えない。

 

 ルドルフが寝間着から部屋着に着替えてリビングに戻ると、机にはすでにダンテが用意した朝食が並べられていた。

 

 「さて、今日はどうする?」

 「今日はオフの日なのだろう? ならば今日は何もせずに家でゆっくりするとしよう」

 

 そう言って席に着くルドルフ。

 たまには何もせずに過ごすことがあってもいいだろう。

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