半人半魔のトレーナーと頂点を目指すもの   作:ユリゼン

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第十四話 トレーニンング

 一日の授業が終わり、トレーニングの時間。ダンテはトレーニングをしているであろう担当バ達の様子を見にトラックに訪れていた。

 

 基本的にダンテはトレーニングに対して口を出すことをしない。というのも、レースに出場するのは彼女達であり、そのレースで何が足りて何が足りないのかは本人しかわからない。

 なのでダンテは本人達に足りない部分を補う、もしくは長所をさらに伸ばすといったトレーニングを各自にやらせている。

 ダンテはレースやトレーニングのデータをまとめたものを渡し、トレーニング施設を借りたり、マッサージ等のケアをしたり等のサポートを主に行なっている。

 

 

 トラックでは近々開催されるクラシック三冠の最初の関門『皐月賞』に向けて、ブルボンがスズカとグラスと模擬レースを行っていた。

 ブルボンがライスに菊花賞で敗北した原因として、一番は最後の最後でライスの気迫に負けたのが大きい。まあこれは当時のブルボンがただ義務感として走っていたから敗北したのであり、今回のブルボンは『絶対に勝つ』という気迫を纏っているので、精神面での問題は無いだろう。

 しかしレースに絶対なんて言葉はない。何が起こるかわからないのがレースだ。

 なので今回ブルボンは皐月賞を見据えたトレーニングを行っていた。

 

 内容としてはブルボンが『逃げ』で走り、スズカが今回『先行』で追いつつプレッシャーを与え、最後に『差し』のグラスが直線で一気にプレッシャーを与えながら追い抜こうとする内容である。これによりブルボンが後ろから追ってくる他のウマ娘達の気迫に負けず、レース運びを操れるようにするという目的である。

 

 

 「やってるな」

 

 本番のレースさながらに走る三人を見ながらそうつぶやく。すでにデビューを果たし多くのG1に参加しているスズカと、まだデビューして間もないが実力は本物であるグラス、その二人の気迫を受けてながらも流されることなく逃げ続けるブルボン。仕上がりは完璧に近いと言えるだろう。

 

 

 次にダンテはテイオーとライスに視線を向ける。

 怪我が完治していないテイオーはまだ本格的なトレーニングができないため、身体が固くなってしまわないようにストレッチをメインとしている。また、ライスは目標が定まっていないので、今はテイオーのサポートをさせている。尚、ルドルフは生徒会の仕事があるのでここにはいない。

 

 「あ、トレーナーだー!」

 

 テイオーがダンテに気がついたらしく、テテテッと近づいていく。

 

 「ねえトレーナー、ボクも早くトレーニングしたいよー」

 「まだ怪我が治ってないから駄目だ。怪我が治ったら思う存分やらせてやるから、今は我慢しろ」

 「むー、わかったよー」

 

 ぶー垂れるテイオーの頭をダンテは笑いながら頭を撫でる。それにより機嫌が良くなったのか、気持ちよさそうに目を細めウマ耳がピコピコと動く。

 そんなテイオーの頭を撫でながら、今度はライスに方に視線を向ける。

 

 「ライス、どうだ? 目標は決まったか?」

 「えっと……ごめんなさい…トレーナーさん……ライス、まだ走りたいって思えなくて………」

 

 ダンテの言葉にライスが表情を暗くさせながらそう返してくる。

 まだ走りたいと思えない、それはブルボンを破った菊花賞で理想と現実の違いをこれでもかと言わんばかりに叩きつけられてしまい、心が挫けそうになった。さらに前任者がライスとの契約を解約したためにライスの精神は叩きのめされた。ダンテがライスに目をつけていなければ今頃どうなっていたことやら。

 

 「まあそう深く思い悩まなくてもいい。出たいレースが見つかればそれで勝てるように努力すりゃいい。そん時はしっかりサポートしてやるし、トレーニングだってルドルフ達も協力してくれるだろうよ」

 

 そう言いながらダンテは空いているもう片方の手でライスの頭を撫でる。ダンテに撫でられているライスは恥ずかしそうにしていながらも満更でもなさそうな表情をしていた。

 

 二人の頭を撫でていると、ジトッとした視線を感じる。そちらに視線を向けると、いつの間にか模擬レースを終えたらしい三人がジト目でダンテのことを見つめていた。忙しなく尻尾が揺れていることから、どうやら三人もダンテに頭を撫でてもらいたいらしい。

 

 ダンテはフッと笑うと、三人を手招きする。それによりパアッと表情を明るくさせる三人。普段『サイボーグ』と揶揄されるほど無表情のブルボンでさえ表情が明るくなっているのがわかるくらいだ。

 

 

 その後しばらく『褒めて褒めて』と担当バ達に纏わりつかれる赤いコート姿のトレーナーの姿があったとか。

 

 

………

……

 

 

 今日一日のトレーニングを終え、皆を寮へと追い返したダンテはその足でトレーナー室へと戻る。

 

 扉を開けると、中には生徒会の仕事を終えたであろうルドルフが備え付けのソファに座って本を読んでいた。

 

 「やあ、トレーナー君。皆のトレーニングご苦労様」

 「おう、ルドルフ。お前も生徒会の仕事ご苦労なこった」

 

 ルドルフの言葉にそう返すと、ブルボンから受け取った今日の模擬レースの結果をノートパソコンに打ち込んでいく。

 しばらくデータを入力していると、ルドルフがソワソワしながらこちらをチラチラ見てきていることに気がつく。普段のようにただ見られるだけなら気にしないが、何か言いたげにチラチラと見られると、さすがに気が散ってしまう。

 ダンテは入力する手を止めると、めんどくさそうにルドルフの方を向いた。

 

 「………なんだよ? 言いたいことがあるならはっきり言え」

 「……ん、いや、先ほど仕事をしている時に皆のトレーニング風景を見て、その、だな………」

 

 ダンテの言葉にルドルフが珍しくタジタジとしながらそう返してくる。それによりルドルフが何を言いたいのか理解したダンテはため息を吐くと、徐にルドルフの頭を撫でる。

 

 「これでいいか?」

 「! ああ!!」

 

 ダンテに頭を撫でられた途端ウマ耳がピンと伸び、パアッと表情が明るくなるルドルフ。どうやら先ほどテイオー達の頭を撫でているところを見て、自分も撫でてもらいたかったようだ。

 それならそうと素直に言ってくれれば、いくらでも撫でてやるというのに。まあルドルフは辺なところで意地を張ってしまうので、もうしばらくは無理だろうが。

 

 

 その後、ダンテに頭を撫でてもらったことによりルドルフのやる気はしばらくの間絶好調を保ち続けていたのだとか。

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