半人半魔のトレーナーと頂点を目指すもの   作:ユリゼン

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第六話 魔剣士と皇帝のお出かけ

 初めての三人でのトレーニングが終わり、トレーナー室へと戻ったダンテ。

 

 『ほう、先ほどの小娘らの結果をまとめているのか』

 

 今日のトレーニングの成果をノートパソコンにまとめていると、不意にトレーナー室にこの世のものとは思えない無機質な声が響く。しかしダンテは驚くことなくノートパソコンを叩きながら当たり前のように口を開く。

 

 「珍しいな、お前がこっちに来てからしゃべるなんて」

 『貴様と同様、オレもこうして存在しているのだからな。別におかしくはあるまい』

 

 ダンテの言葉にそう返してくる無機質な声の主『バルログ』。ダンテが死んだ際にその手元にあった多くの魔具は魔界へと帰っていったが、バルログだけは最後までダンテの手元に残り、そして共にこちらの世界に魔具のまま生まれ変わったのである。

 

 『しかし、速さを持って競い合うとは。こちらの世界は非常に興味深い』

 

 バルログは悪魔共にしては非常に珍しく武人気質で、強者と競い合うことを喜びとしている。ダンテの魔具になったのも力を蓄え、再びダンテと戦うためであった。

 そんなバルログは速さによって強さを競い合うウマ娘達に珍しく興味を示していた。

 

 「なんだ、お前もあいつらと走ってみたいのか?」

 『確かにそうしてみたいところだが、オレには相性が悪い。やはりオレには拳で殴り合う方が性に合っている』

 「はっ、違いねえ」

 

 バルログの言葉に同意するダンテ。

 総合的な身体能力こそダンテの方が上回っているものの、走る速さに関してはいくらダンテでもウマ娘には勝てない。それだけウマ娘という存在はダンテやバージルにとって特異な存在なのである。

 

 『だからこそおもしろいのだがな』

 「そうじゃなきゃ、こうして今もトレーナーなんて続けられてねえよ」

 

 そう、未知の存在と触れ合えるからこそおもしろい。だからあのダンテがこうしてウマ娘のトレーナーを続けることができているのだ。

 

 『それはそうと、明日はどうするつもりだ? シンボリルドルフとでかけるのだろう?』

 

 バルログの言葉に思考が一気に現実に引き戻されるダンテ。

 バルログの言う通り明日は休日であり、約束通りルドルフと二人で出かける日だ。しかしダンテはルドルフが何を好んでいるのかよくわかっていない。なので具体的に何処に出掛けようかというのも考えていなかった。

 

 『オレは一切手助けしないからな』

 「わかってるよ。まあどうにかなるだろ」

 

 バルログの言葉に気楽に返すダンテ。

 まあこんなところであれこれ考えたってどうにもならない。行き当たりばったりではあるが、良さそうなところを回っていれば問題はないだろう。

 

 『せいぜいアレを怒らせないように気をつけることだな』

 

 その言葉を最後にバルログの声が聞こえなくなる。

 

 ダンテは肩をすくめると、再びパソコン作業へと戻っていった。

 

 

………

……

 

 

 ついにきた休日。本日はルドルフもといルナと出かける日である。

 ダンテは集合場所である駅前の広場へと到着する。やはり休日ということもあり、駅前の広場には若いカップルで溢れかえっていた。

 

 (さて、アイツは……っと)

 

 ダンテがルナを探すために周囲を見回すと、ベンチに座っているルドルフの姿が目に入った。しかしそのルナの前に金髪の若い男がおり、しきりにルナに話しかけていた。どうやらナンパしているらしい。

 

 「ねえいいじゃん、待ってる人が来る前にオレと遊ぼうよー」

 「いえ、遠慮しておきます。もうすぐ来ますので」

 「だからさー、ほんのちょっとだけだってー」

 「いい加減に────」

 

 あれはやばい。もうすぐでルナがブチ切れる。普段なら我慢できるだろうが、ここは学園外な上に今日はダンテとのお出かけだ。それを邪魔されるとなったらルナは我慢することができずにブチ切れる。最悪あのナンパ男を病院送りにするだろう。

 

 (仕方ねえ)

 

 ダンテはため息を吐くと、二人に近づいてナンパ男に声をかけた。

 

 「おい」

 「あ? 誰だ────」

 

 ナンパ男が不機嫌そうに振り返るが、背後に真っ赤なコートに身を包んだ、身長180cm近くの銀髪の大男が目に入った途端、目に見えて狼狽える。

 そんなナンパ男にダンテは笑みを浮かべながら声をかけた。

 

 「うちのウマ娘に何か用か?」

 「あ…いや…えっと……」

 

 ダンテの言葉にナンパ男は何も答えようとしない。

 ダンテはすぐにナンパ男から興味を失い、ルナに声をかけた。

 

 「こんなやつはほっといて行こうぜ」

 「うん!」

 

 ダンテの言葉に満面の笑みを浮かべてルナが腕に抱きついてくる。そして呆然とするナンパ男を無視してダンテはルナと共に歩き出した。

 

 「それにしても、今日の服装は似合ってるな。いつも以上に美人だ」

 

 ダンテはルナの服装を見て感想を言う。

 今日のルナはいつもの制服姿や勝負服とは違い、白いワンピースを身にまとい、ほんのちょっぴり化粧もし、いつも下ろしている髪も三つ編みにまとめている。

 そのため普段とは違って今日はいつも以上に清楚な雰囲気を醸し出していた。

 

 「あ、ありがとう……!!」

 

 ダンテに褒められたルナが顔を赤くさせながらも嬉しそうに笑う。それにつられ尻尾は取れるんじゃないかと思うほど激しく揺れていた。

 

 「さて、早く行こうぜ」

 

 ダンテはルナにそう言う。

 トレセン学園では生徒会長として、レースでは皇帝として振る舞わなければならないが、彼女だって一人のウマ娘であり少女だ。皆のように何のしがらみもなく遊びたいだろう。

 ならばせめてダンテと休日を過ごす時だけは目一杯羽を伸ばしてもらうとしよう。

 

 

 そんなわけでダンテはルナと共に最近できたという水族館へと訪れていた。

 

 「へぇ、中はこんな風になってるんだな」

 

 水族館の中に入ったダンテは周囲を見回しながらそうつぶやく。

 前の世界も含め、今までの人生で何気に初めて水族館へと訪れたダンテ。そのため水族館に興味を惹かれていた。

 

 水族館の中は大小様々な水槽があり、その中を色とりどりの魚や水棲生物がゆったり、もしくは忙しなく泳ぎ回っていた。

 

 その静かな空間をダンテはルナと共にゆったりと歩き回る。大小様々な水槽を眺めたり、イルカのショーに感心したり、ふれあい水槽で楽しそうにヤドカリやヒトデに触れるルナを眺めたりと、刺激的でありながら穏やかな時間を過ごしていった。

 

 

 夕方、帰りのバスの中でダンテはルナと隣り合って座っている。

 

 「すぅー……すぅー……」

 

 今日一日無邪気にはしゃぎ回ったために疲れてしまったのか、今はダンテの体にもたれかかるようにして眠っていた。前側に伏せているウマ耳が愛おしく思える。

 

 「お前が楽しめたんならいいんだけどな」

 

 そうつぶやくも、眠っているルナには聞こえていないらしく、少しだけ身動ぎするのみ。

 そんなルナにフッと笑い、ダンテはルナの頭を少しだけ撫でると、自分も少しだけ眠るのだった。

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