別世界の自分になったけど親友は変わらないようです   作:kumakiti

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後編

 連休が明けてからも俺は変わらない日常を送っていた。ユウキと放課後にはお店に寄ったり、休日にはユウキの写真撮影に付き合ったりしていた。正直に言うと、元の世界のユウキと遊ぶときと同じかそれ以上に楽しんでいる自分がいた。

 元の世界にもどることを諦めたつもりはない。ただ、夢の中の話をユウキには話せないでいた。夢の中で楽しそうに遊んでいるもう一人の俺の話を伝えてもユウキを傷付けてしまうんじゃないかと怖かった。そんなモヤモヤとした気持ちを抱えたまま夏休みに入ろうとしていた。

 

 終業式から帰ろうとしていたら、背後から抱きついてきたユウキに持ち上げられた。

 

「おろせー」

 

「ねぇ、夏祭りの日には予定がある?」

 

 降ろしてくれたユウキを見上げながら俺は答えた。

 

「その日は予定入れてないなぁ。夏祭りとか元の世界でもあまり行ってないかも。」

 

「じゃあ、一緒に行こうよ。花火が上がるから写真を撮りたかったんだ。」

 

「それは楽しみだね。撮った写真を後で見せてよ。」

 

「見せてもいいけど、カズキにもお願いしたいことがあるんだ。」

 

「何をすればいいの?」

 

「浴衣で夏祭りに来て!」

 

 

 

 最近はなぜか夢を見る頻度が減ってきている気がする。夢を見る頻度か減ってから漠然とあったもうひとつの世界とのつながりのようなものが薄らいできていることを感じていた。それがすごく怖くて、ユウキとより一緒にいるようになっていた。ユウキは性別が違うけど行動の節々で元の世界を感じることができ、とても居心地が良かった。

 

 久しぶりに、夢を見ている男の自分が知らない人と楽しそうに遊んでいる。場面が飛んで女の子と二人で帰っているところを俺はぼんやりと眺めている。その子と自分は部家に行って、幸せそうにキスをしている。

 

 そのときになって、元の世界に戻っても自分の居場所はもう一人の自分に塗りつぶされて失くなってしまったことにようやく気付いた。

 

 

 最悪の目覚めだった。今まで何となくあったもうひとつの世界と繋がっているような感覚もなくなり、喪失感しかなかった。今日はユウキと花火を見に行く約束をしていた、その事に気付いたのは昼過ぎだった。

 

 母親に着付けてもらいながらぼんやりと時計を見ていた。約束の時間にはまだ1時間程早いがユウキの前で今の顔が見られたくなかったので、気分転換がてら早めに花火会場に向かった。

 

 

 会場には着いたけど一人だと楽しめずに、結局は人の流れをぼんやりと眺めているだけになってしまった。ぼんやりとしていたら急に肩を叩かれたので、ユウキかと思って振り返った。そこにいたのは同じクラスの男子たちだった。いつも教室では騒いでいて女の子と付き合ったことを大きな声で自慢したりしていて正直苦手だった。あまり接点もなかったため、話しかけられたことに驚いていると、

 

「カズキちゃんだよね。誰か待ってるの?暇だったら俺たちと一緒に遊ばない?」

 

「えっと... ユウキを待っているから今日は無理かな、ごめんね。」

 

 一緒に遊びたくなかった俺は、待ち合わせをしていることを正直に話して断ろうとした。

 

「じゃあ、ユウキちゃんが来るまで一緒に待つよ。一緒に回った方が楽しいよ。」

 

「でも、彼女がいるんじゃないの?誤解されちゃうよ。」

 

「大丈夫、大丈夫。この前別れて今フリーなんだよ。カズキちゃんもユウキちゃんもかわいいから一緒に回りたいな。」

 

 自分が女として、そういう対象として見られていることに気がついて鳥肌がたった。さっきまでただ微笑んでるようにしか見えなかった男子たちが、急に気持ちの悪い笑みを浮かべているように見えてきて恐怖で身がすくんで、言葉に詰まってしまった。それを彼らは同意だと思ったのかさらに近づいてきたところで、俺の前にユウキが割り込んできた。

 

「ごめん、今日はカズキと二人で遊ぶ予定だから」

 

「みんなで回った方が楽しいと思うけど?」

 

「昨日まで彼女と遊んでたみたいだけど、今日分かれたの?そんな人とは私は遊びたくないな。じゃあね」

 

 言い終わると同時にユウキは俺の手を引いて人混みに入っていく。

 

「何で分かれたの今日だって分かったの?」

 

「さっき女の子と喧嘩してるところ見たから、そうなんじゃないかなって。そもそも別れてすらいないんじゃない?」

 

 ユウキは少し怒ったように前を見ている。

 

「ありがとう、正直少し怖かった。」

 

「気にしないで、私ももう少し私も早く来れば良かったね。早く来てたんだけど、会場の写真を撮っていたら時間ギリギリになっちゃってて…」

 

「ううん、助けに来てくれて嬉しかった。」

 

 感謝の気持ちを込めて微笑んだら、ユウキは強く握り返してくれた。

 

 

 花火まで二人で出店で食べ物を買って河川敷で待っていると、ユウキが俺を心配そうに覗き込んできた。

 

「今日はなんだか元気ないみたいだけどもしかして体調悪い?無理しなくていいからね。」

 

 ユウキの前では元気にしていたため、隠せていると思っていた俺は思わず今までの事をを話してしまった。夢の事、元の世界に戻れないだろう事、ゆっくりしすぎたのが良くなかったとそんなことまで言ってしまった。ユウキは手伝ってくれただけなのに、そんな自分が情けなくて、そのまま逃げ帰ってしまった。

 

 部家に閉じ籠った後に、ユウキが家に来てくれたみたいだが泣き腫らした顔を見られたくなかった自分は出たくないと言ったが、両親に仲直りしなさいと、明日会う約束をさせられユウキは帰っていった。

 

 その日はユウキに嫌われたんじゃないかと怖くてほとんど眠れなかった。

 

 次の日に両親が仕事で出ていった後に玄関のチャイムが鳴った。玄関のモニターにはユウキが不安そうな顔で立っていた。

 

「ご両親はお仕事?」

 

「うん… 二人とも夕方まで帰ってこないよ。用事があった?」

 

「いや、そういう訳じゃないよ!」

 

 ユウキの目が窓に行ったり俺に行ったり忙しそうだ。そんなユウキをみてたら少しだけ不安が薄れて、素直に昨日のことが話せそうだった。

 

「ユウキ… 昨日はごめんなさい。ユウキが一生懸命帰る方法を探してくれてたのにたくさんひどいことを言ってしまって……」

 

「カズキ、実は私からも言わないといけないことがあるんだ。」

 

 ユウキが真剣な目をしてこっちを見ている。俺のことが拒絶されるんじゃないかと急に不安になってきて、見捨てられないようすがり付く。

 

「ごめんなさい!ユウキにばかり頼ってて、私からはなにもしてなかったよね。今まで私のためにしてくれた分は何でも言うことを聞くから、だから許して、見捨てないで、この世界は顔は同じでも私のことを知らない人ばかりでっ、だからっ、一人にしないで………」

 

 感情があふれてき途中から泣いてしまった。この体になってから全然、涙も感情も制御できていない。ユウキも呆然とした顔をしてみている。

 あはは…もう完全に駄目だな。この世界に来てからこんなことばかりしている。ドン引きされただろうな、なんだか体が芯から冷えてきて寒いな。

 

「カズキ、私からも謝らなきゃ行けないことがあるんだ。」

 

「謝ること?」

 

「カズキは私が真剣に探してないって言ってたけど、その通りなんだ。前のユウキが遊んでくれなくなったて話をしたよね。今のユウキと一緒にいるのが楽しくなっちゃって、ずっとこのままでいいやっ思ってたんだ。」

 

「そんなことっ、私も楽しかったし全然謝ることじゃないよ!」

 

「それだけじゃないんだ。カズキがこの世界にきたのも多分私のせいなんだ。」

 

「えっ…」

 

 信じられなくて思わずユウキの目を見たけど、嘘を言っているわけではないようだ。

 

「この世界のカズキと疎遠になってるのが辛くて、流れ星が流れたからお願いしたんだ。カズキともっと仲良くなれますようにって。」

 

「そうしたら次の日からカズキと入れ替わってて…ごめんなさい、謝るのは私の方で、ずっと言わなきゃと思ってたけど、言えなくて。」

 

「それだけ?」

 

「それだけって?」

 

「いや、流れ星にお願いしただけだよね?しかも入れ替わりを要求したわけでもなくて。」

 

「でもっ、入れ替わったのは事実で」

 

「ふふっ、あははは… はぁ」

 

 なんだか、今までこんなにも悩んでたのがバカらしくなってきた。ユウキも俺も罪悪感で遠慮して、謝ればすむことを一人で悩んでいた。

 

「笑わないでよ……真剣に悩んでたんだから。」

 

 そんなことを言いつつユウキも笑ってる。

 

「仲直りしよう。」

 

 俺の差し出した手をユウキはずっと見つめている。不思議に思って彼女を見ていると

 

「さっきの何でもするって今も有効?」

 

「うん、ジュースでも何でも奢るし写真の被写体くらいにはなるよ」

 

 急に彼女は俺の手を引いてベッドに俺を押し倒す。状況を読み込めず目を白黒させていると

 

「ごめん、さっきはちょっと嘘を言った。仲良くなりたいじゃなくて、付き合いたいんだ。好きなんだカズキのことが」

 

「でも、私は前の私じゃないよ?」

 

「今のカズキがいいんだ、カズキは私のことをどう思ってるの?」

 

 緊張で喉がカラカラで声がかすれてうまく声がでない。仕方がないから、顔を近づけて唇を合わせる。恥ずかしくて当てただけですぐ顔をはなそうとしたが、頭を押さえられて舌まで入れられてしまう。くぐもった声が部家に響く。自分の声じゃないみたいだとぼんやりと考えていると、満足したのかユウキが顔を離して潤んだ目で俺を見ている。ずっと見られるのが恥ずかしくて顔を横に向けてユウキの押さえてる手を離そうとする。でも、離してくれない。力が入りすぎて少しいたいので

 

「ユウキ、痛いよ…」

 

「大丈夫。優しくするから」

 

「えっ?」

 

 このまま終わると勝手に思っていたが、彼女が満足するまで終わらなかった。

 

 

 この前の告白騒動の後ろくに遊べなかったから海に行くことになったが、水着コーナーで立ち往生する俺、押し入れようとするユウキで押し問答になっていた。

 

「ねぇ、水着着ないといけない?Tシャツでいいんだけど。」

 

「駄目だよ。被写体になってくれるんだよね?」

 

「うっ、でもそれはそのあとのあれで、終わりじゃなかったの?」

 

「それはそれ、これはこれ。」

 

「ユウキのヘンタイ」

 

 この後もなんだかんだ色々あったが、それでもこれからこの世界で楽しく生活していけそうだ。

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