「トレーナー君……」
テイオーの元に行っていたトレーナー君が帰ってきた。その顔は夢の舞台でテイオーが勝った後とは思えないほど悲しい顔をしていた。
「会長……どうしよう」
「何かあったのか!?」
「……テイオー、左脚怪我してる」
「……本当なのか」
信じたくない事実をトレーナー君が口にした。
「大丈夫そうなのか!?菊花賞に間に合うのか!?」
「………」
トレーナー君が目を背ける。
「トレーナー君!!何か分かるなら聞かせてくれ!!」
思わずトレーナー君の方を揺さぶる。
「会長、落ち着きたまえ」
「あぁ……すまない」
隣にいたタキオンが私の手を掴んで、止めてきた。
「……医者に見せないと詳しくは言えません。だけど……正直……」
トレーナー君は目に涙をためている。口には出さないがかなり危険な状態なのだろう。
「……テイオーは?」
「笑ってましたよ。ウィニングライブはやっちゃダメって言いたかったですけど行かせました。テイオーは絶対にやりたいと思っているから……」
私達の空気が一気に暗くなる。
「何暗い話ばかりしているんだい。勝ったことを喜びたまえ」
「……うん、そうだね」
トレーナーは涙を堪えて必死に笑って見せた。
「……そうだな。怪我をしても勝ったんだ。まずは喜ぼう」
それが一番、テイオーのためになる。そう思いみんなで笑いあった。
「折れてます」
「……ぇ」
でも、現実は残酷だった。
「大丈夫!!菊花賞までに治してみせるよ!!」
テイオーは僕の肩を持って、ニッコリ笑ってみせる。
「……テイオー。ちょっとくらい泣いてもいいんだよ」
「アハハー!!泣くわけないじゃん!!……ってあれ?なんでだろ……あはは……」
泣くわけないと言った矢先にテイオーの目から涙が零れ出した。
「テイオー……」
「ぅぅ……とれぇ……なぁー……ごめん……」
泣きながら謝ってきた。
「謝るなって」
「約束……どうしよう……」
「……」
約束、僕とテイオーの大事な約束だ。
「大丈夫、まだ走れるよ!!」
「ほんとぉ……?」
「僕に任せてよ!!」
僕は今できる精一杯の笑顔を作ってみせた。
「タキオン!!怪我の治りを早くする薬品とか作れない?」
あの日から数日が経った。今、テイオーは入院している。
あの日から僕はテイオーのための復帰プランを練り、使えるものはなんでも使えと、怪我を少しでも早く治す方法、治った後のトレーニングの準備を次々にしていった。
「そろそろ来る頃だと思っていたよ。一応、試作品は出来ている……が、まだ試していない。意味はわかるね」
「もちろん」
タキオンは僕に青白い薬品を渡してくる。それを一気に飲みほす。
「ふむ……いい飲みっぷりだ、それでどうだい?」
「特になにも!!」
「それはそのはずだ。怪我をしてない君に飲ませても効果はない。問題は副作用だ」
何か起きないかと体を見ていると突然、体の力が抜けた。
「うぁ……」
「おっと、副作用だね。大丈夫かい?」
「ね…眠い……」
どうやら物凄い睡眠作用があるらしい。僕は抵抗も出来ないで、そのまま地面に倒れ込んだ。
「一旦眠るといい」
「うん……」
タキオンに持ち上げられる。
そして運ばれてながら、僕の意識は完全に落ちた。
「無茶のし過ぎだ、トレーナー君」
私が渡した薬品は、会長の協力で副作用として少しの疲労感が出るくらいだと分かっていた。もちろん副作用に個人差があるとはいえ、すぐに眠ってしまうのは流石におかしい。恐らく、元々かなり疲れていたから眠ってしまったのだろう。
「困ったものだな」
トレーナー室にトレーナー君を背負って運ぶ。トレーナー君はかなり軽く、ウマ娘の力なら余裕で運ぶことが出来る。
「すぅ……」
後ろから寝息が聞こえてくる。テイオー君のために相当頑張っていたのだろう。起きる気配は全くない。
「トレーナー君、頑張れ」
「……おー」
返事が返ってきたのでビックリしてトレーナー君の顔を見たが、まだぐっすり寝ている。寝言だったらしい。
「私は君達を信じているよ」
トレーナー君とテイオー君を見ているうちに、いつの間にか二人を応援したくなっていた。きっと、愛着が湧いているのだ。
「相変わらず、感情というのは難しいねぇ」
誰にも気づかれないほどの声でそう呟いた。
皆さんはジェミニ杯どうでしたか?
僕はボコボコにされました。