皆で歩む夢の話   作:月見草クロス

15 / 43
ちなみにこの作品の会長は四字熟語は言いませんしダジャレもあまり言いません。理由は思いつかないからです。


頼れる会長

「会長、相談がある」

 

珍しくアグネスタキオンから話しかけてきた。それに相談だというのだから驚きだ。

 

「私は彼らの邪魔にはなっていないだろうか」

 

「そんなわけないだろう。君は彼らの力になってくれたじゃないか」

 

「それは私のためだ」

 

タキオンは柄にもなく怒りを露わにしていた。誰でもない、自分に。

 

「今の私は二人にとって重荷だろう。彼女は私のためにも走っている。それは間違いなくプレッシャーになる」

 

「……タキオン」

 

『そんなことは無い』とは言えなかった。少なからずプレッシャーの要因になっているのは間違いない。

本人が言っていたのだがテイオーは元々、緊張しないタイプらしい。しかしあの皐月賞の時、トレーナー君は『テイオーは緊張していた』といった。

 

「大丈夫だ、テイオーはそんなことで止まるウマ娘じゃない」

 

「今からでもいい、私は退学でもいい。彼らのために何かをしたい」

 

タキオンは私と初めて会った時とは信じられないくらい変わった。それは彼らと出会ってからだろう。なぜ、彼らに力を貸すとかと聞いた時にいつも『自分のためだ』と言っていたが、あの退学騒動の日に彼女が『愛着が湧いたのは君だけではなかったようだ』と、トレーナーに言っていた。

 

「なら今は彼らを支えてやってくれ。トレーナー君は無茶をしすぎている。テイオーも君がお見舞いに行けば、喜んでくれるさ」

 

「本当に私を重荷だと思われていないだろうか」

 

「彼らを君はすぐ近くで見てきただろう?そんなことを考える二人だと思うか?」

 

タキオンは顎に手を当てて、思考する。そして、目を瞑り少し笑った。

 

「ふふ、言われてみればそうだな。なら、会長に言われた通りの事をしよう」

 

「あぁ」

 

タキオンは白衣の袖を揺らし、研究室に向かっていった。

 

 

トレーナー君の様子を見に、トレーナー室に行くと彼はパソコンに向かって作業をしていた。

 

「あ、会長?何か用?」

 

彼はパソコンで作業をしたまま私に話しかけてくる。

 

「少しは休んだらどうだ」

 

そこで彼はやっと顔を上げた。その顔見れば無理をしていることがわかった。目の下にはクマができており、顔色も悪かった。

 

「トレーナー君!?大丈夫か!?」

 

「それ今日タキオンにも言われたよ」

 

それはそうだろう。見るからに体調が悪そうだ。

 

「今日はもう休んだ方がいい」

 

「それもタキオンに言われた。けどそういう訳にもいかないよ。あ、折角だしお茶飲む?」

 

トレーナー君がお茶を出すために立ち上がる。足取りが凄く不安だ。

 

「トレーナー君……私はいい。お茶を飲んで休むべきは君の方だ」

 

「大丈夫大丈夫~」

 

トレーナー君はヘラヘラを笑ってみせた。

 

「……テイオーが君がこんなに無茶をしていると聞いたらなんと言うだろうな」

 

「その言い方はズルいですよ会長」

 

「ふふ……すまない」

 

トレーナー君は頬を膨らませている。

 

「そんな可愛い顔をしても、目のクマのせいで台無しだな」

 

「可愛くはないですよ」

 

お茶を二つ持ってきて、トレーナー室に置いてあるソファーに座った。

 

「折角だし話聞いてよ」

 

私も彼の隣に座り、彼の話を聞くことにする。

 

「ねぇ、会長。僕さ、テイオーに負担かけてたのかな」

 

「そんなことはない。君はテイオーのために頑張っているさ。それは君がテイオーのトレーナーになってからずっとな」

 

それは間違いない。トレーナー君は自分の身を顧みずに頑張ってきた。もう少し自分の体を大事にして欲しいと何回も言ってきた。

 

「僕さ、最初は二人の約束のために自分も頑張らなきゃって思ってたけどさ、結局走るのはテイオーでしょ?」

 

トレーナー君は私の隣で泣き始めた。

 

「約束なんて言って、テイオーに負担をかけてたのは僕だよね……プレッシャーで力をいれすぎて怪我したんだよね……」

 

「…君は本当に泣き虫だな」

 

トレーナー君の涙を拭ってあげる。

タキオンから自分が負担になっていないかと聞かれた時から恐らくトレーナー君も同じことを思っているのではないかと考えていた。

 

「だってぇ……!!」

 

「大丈夫、テイオーはそんなこと思ってはいないさ」

 

「でも!!……思ってなくても……それは事実でしょ!!」

 

タキオン程上手くはいかないな。何とか立ち直らせてやりたいのだが……

 

「……はぁ、僕は嫌になるくらい幸せだなぁ」

 

「どうした、トレーナー君」

 

「憧れの人にこうやって言って貰えるし、テイオーもタキオンも僕のことを沢山考えてくれる」

 

トレーナー君は目を瞑って、何かを考えている。きっと、皆のことを思い出しているのだろう。

 

「僕もテイオーがそんなこと思わないことは知ってる。これは僕の気持ちの問題。だから、自分でなんとかします」

 

「……そうか、君は強いな」

 

「そうでもないですよ。強かったら既にこんな気持ちどうにかしてますし」

 

相変わらず謙遜をする。

 

「大丈夫、君達はまだまだこれからだ。私が保証する」

 

「……」

 

肩に何か当たったので見ると、トレーナー君が寄りかかって眠っていた。

 

「全く……」

 

勿論、謙遜することも大事だ。人のために事を成すことも大事だ。でも彼は少しその割合が強すぎて、自分が疎かになる。このままでいい……とは言えないな。

 

「おやすみ、トレーナー君」

 

とりあえず今は眠らせてあげよう。ソファーに横にし、着ていた白衣を毛布の代わりにかけてやった。




ジェミニ杯はB決勝で2位でしたが、報酬で引いたガチャからセイウンスカイが出たので実質勝ちました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。