「テイオー、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ほらほら、早く行かないとたづなさんに怒られちゃうよ」
「はいはい」
今日はテイオーを車椅子に乗せて、ある場所へ向かうことになっている。
まぁ、そんな楽しい場所じゃないけど。
「トレーナーは何話すか考えてる?」
「いーや、もうその場しのぎするしかないかなって」
「そっか」
今から行こうとしているのはいわゆる記者会見と言うやつだ。まぁ、二冠を取り、三冠を期待されていたウマ娘が骨折とあれば、マスコミが黙っているわけもない。
「はぁ……やだなぁ……」
「ほら、トレーナー。押してくれないと進めないよ」
僕の足取りは重たい。正直、マスコミは苦手だ。何を聞いてくるのかかわかったものじゃない。
「ねぇ、トレーナー。大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
「ならいいけどさぁ……顔色悪いよ?」
「ウッ……」
最近は会長やタキオンに言われて早く寝る様に心がけているのだが、眠れないことが多い。昨日は今日のこともあってほぼ寝ていない。相変わらず、心が弱っちい。
「トレーナーが無茶ばっかりしてるって会長から聞いてるよ。ありがとうね、ボクのために」
「……いや、いいんだ」
足取りが重い。なんでこんな思いをテイオーにさせなければいけないんだろう。情けなくてたまらない。
会場についたのは記者会見の時間ギリギリだった。たづなさんに案内され、すぐに会見開始となった。
そこでは、僕とテイオーにこれでもかというくらいに容赦ない質問の嵐が待っていた。
「テイオーの怪我について、トレーナーさんはどのように対応するおつもりですか?」
「僕の命を削ってでも、治しますよ。もちろん、それがトレーナーの役目ですから」
「テイオーさん、菊花賞についてお聞きしたいのですが」
「出るよ。治してみせる。ボクは諦めきれないから」
「トレーナーさんはそのようなことは可能だと思いますか。世間では既に『テイオーは残念だった』というムードがありますが……」
「そりゃあ、やって見ないと分かりません。ただ、やる前から諦めるよりは百倍マシですし、テイオーがそうしたいなら僕も諦めません」
「今、怪我の状態は大丈夫なのでしょうか。テイオーさんは未だに車椅子での生活となっているようですが」
「一応、歩けるよ。ボクは車椅子いらないーって言ったんだけど、トレーナーが無茶はダメって言うからしょうがなくね」
「トレーナーさん、本当ですか?」
「えぇ、テイオーの回復はかなり早いです。この調子なら来週には車椅子なしでも生活できるかと」
「今回の怪我の件はトレーナーの責任だとの声も多く挙がっております。若手のトレーナーがいきなり才能あるウマ娘の担当になるのは少しばかり厳しいものがあるのでは」
「あぁ……」
ここに来て、ついに嫌な質問をされた。そりゃあ、聞かれるはずだ。怪我をしたウマ娘がいればそのトレーナーは糾弾をくらう。それでトレーナーを辞めてしまう者も少なくない。
「まぁ、言われて当然ですしその通りだと思いますよ。僕はまだまだ新人ですから。だからこそ今、頑張る必要があるんです」
「それなら、なぜテイオーさんのトレーナーになろうとしたのですか?」
「そこまでは話せません。話す必要もありません」
「分かりました。ただ、一人のウマ娘の夢を危ういものにしてしまったのは変わりありません。どのようにお考えですか?」
無理矢理にでも僕を悪役にしたいらしい。まぁ、テイオーが悪役になるよりはいいか……
「ケガは全部ボクの責任だよ。トレーナーに言われた通りに走らなかったのはボク。トレーナーは、ボクのために必死に頑張ってくれてる。ボクが怪我する前も、僕がケガしたあとも。トレーナーはボクのことをしっかり考えてくれてる」
隣のテイオーがそんなことを言った。
「それに、トレーナーはレースの途中でボクの怪我に気づいたんだよ?すごいよね」
「本当ですか?」
「えぇ……まぁ……」
それは事実だ。ただこれだと全部テイオーのせいになってしまう。あまりそれは宜しくない。
「テイオーの責任じゃないよ、大丈夫」
「それじゃあ、トレーナーの責任ってこと?そんなのおかしいよ」
「テイオー……」
その優しさが嬉しくないといえば嘘になる。でも、今はその優しさは欲しくない。
「テイオーは必死に走ってくれたよ。走るのも教えた通りにしてくれる。それで怪我したなら僕の責任だよ」
「違う!!ボクの責任だ!!ボクは……トレーナーに約束したのに……!!」
約束……あぁ、約束だ。
「テイオー、もう約束のことは考えるな。今は自分のために動いていいんだ」
「そんなの……おかしいよ!!約束は約束!!忘れるわけないじゃん!!」
「こういう時は言うこと聞いてよテイオー。約束を重荷にして走るより自分のために走った方が楽だよ。そうしてれば今回の怪我だって……」
「ちがっ……違うよ!!それは違う!!」
「あの……」
「「…あ」」
僕達はマスコミに声をかけられようやく、冷静さを取り戻した。そして、今の状況も理解した。
「お見苦しいところをお見せしました」
僕は頭を下げる。テイオーも隣で頭を下げている。
「諸君ッ!!今日の記者会見はここまでとする」
「二人はこの状況で頭を悩ませている。今回はお引き取り願います」
理事長と会長が出てきて、記者会見を止めてくれた。それを聞いて、マスコミの人達は撤退を始めた。
「謝罪ッ!!君たちの状況を考えず、このような場を設けた私に責任がある!!」
理事長は僕達に対して頭を下げてくる。
「大丈夫ですよ、理事長」
「しッ…しかしッ…!!」
理事長の責任は少しもない。
「もう今日は帰ります。疲れました」
「トレーナー君……」
会長が何か言いたげだったが今は聞く気にもなれない。荷物をまとめてそのまま帰った。
次の日の新聞やネットニュースでは先日の会見での僕達の喧嘩について色々書かれていた。
「はぁ……ダメだ」
やる気も出ない。何もしたくない。いつもならテイオーのために何かをしている訳だが今日はトレーナー室のソファーで寝っ転がっていた。
「走ろうかな」
走るのは大好きだ。走っている間は何も考えずにいられる。あの日、僕が叶わない夢を見てからずっと走ることは続けている。夢を諦めても走ることだけはやめられなかった。
「行こう」
僕は着替えて、いつもの河川敷へ向かった。
気づいてら3000UA行っててビビりました。それでも他のウマ娘二次創作作者からすれば伸びてない方なので驚きですよね。