皆で歩む夢の話   作:月見草クロス

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キングの固有スキルの演出が神すぎる


やり直し

苦しい状況なのは分かっている。完全に集団に埋もれて、スパートをかけるタイミングが遅れたことも分かっている。

普段の私なら、もう心の中で諦めてしまったかもしれない。悔しくて走りながら泣きそうになってしまったかもしれない。

 

でも、今日だけは。今日だけは何があっても負けたくない。ここで負けたら一生後悔する。

 

トレセン学園に残りたい……という事もある。でも今はそれと同じくらい、見に来ているであろう彼に見せつけてやりたい。

 

重荷も重圧も邪魔になんかならない。確かに少し重くて泣いてしまうこともある。でも、それはここ一番という時に力になってくれるのだと、彼に教えてあげたかった。

 

負けられない、絶対に!!何がなんでも絶対に!!

 

 

『キングヘイロー物凄い末脚でグラスワンダーを追い抜いた!!しかし、まだ前にはセイウンスカイがいる!!差し切れるのか!!』

 

信じられないことが起きていた。あの埋もれていた直線に入る直前にキングが無理矢理抜け出し、物凄いスピードで上がっていた。

 

「いや…でも…!!」

 

セイウンスカイは前を譲る気は全くないらしい。逃げていたはずなのにまだ足が衰えている様子がない。一方のキングは流石に一気にあげたので少しバテてきていた。

 

『これはセイウンスカイの独壇場か!!キングヘイロー追うがなかなか差が縮まらない!!』

 

セイウンスカイは安定したペースで走り続けている。これじゃあ……

 

「やぁぁぁぁぁ!!」

 

『いや!!これは!!』

 

キングが大きく声を上げ、更にスピードをあげる。必死にセイウンスカイを追っている。

 

「なんで……」

 

「……なるほど、興味深いねぇ」

 

タキオンが顎に手を当ててニヤリと笑う。

 

『差が縮まり出した!!あと1バ身!!』

 

「負けるもんですかぁぁぁぁ!!」

 

またキングの雄叫びが聞こえた。

 

「なんだよ今日のキングヘイロー。今までとは見違える気迫だぞ」

 

「何かあったのか……でも、物凄い追い上げだ!!」

 

今日のレース……何かキングにあったのか…僕は知っている。負ければトレセン学園をやめなければいけない。それがいつものレースと今日のレースの違いだった。

 

「あぁ……なんだ」

 

なんだか大事なことを思い出した気がする。僕自身も言ってたじゃないか。テイオーが怪我をした理由はプレッシャーで力を入れすぎたって言った。それを言い換えれば力を入れすぎるほどに勝ちたいという思いがあったんだ。

 

それを与えていたのは間違いなく……

 

『キングヘイロー並んだ!!いけるか!!いけるか!!』

 

「行け!!勝てキング!!」

 

思わず叫んでいた。

 

『もうゴールは目の前だ!!セイウンスカイ!!キングヘイローどっちだ!!……これはキングヘイローだ!!キングヘイローが抜けた!!そしてそのまま一着でゴールイン!!』

 

こうしてキングヘイローは強豪を打ち破り、1位をもぎ取った。

 

 

「どうかしら、私の走りは」

 

「感動した」

 

レースが終わり、キングの周りにトレーナーが集まったが全てキングが追い払い、僕たちの元にやってきた。

 

「ふふ……いい顔をするようになったわね、私の伝えたかったことが伝わったようで何より。おーっほっほっほ」

 

言葉にしなくても伝わった。

 

「トレーナー君、後ろを見たまえ」

 

タキオンに言われて後ろを向くと、そこには歩いてくるテイオーの姿があった。松葉杖も使っていない。

 

「テイオー」

 

「トレーナー、何か吹っ切れた顔してるよ?」

 

「ごめん!!」

 

僕はその場で頭を深く下げた。僕の行動でテイオーを沢山傷つけてしまった。

 

「ふーん……謝るんだー……でも、許してあーげない」

 

そこはいいよってくる流れではなかったのか。

 

「でーもー!!トレーナーがまだボクの担当でいてくれるなら、許してあげてもいいなー」

 

「……はぁ」

 

全く……

 

「そんなこと言わなくても辞めないよ」

 

「……ふふ、まだまだよろしくね、トレーナー」

 

テイオーは顔はニッコリ笑っていたが目からは涙が落ちていた。

 

「あれ?泣いてる?」

 

「泣いてないやい!!」

 

「そういう君も泣いてるじゃないか、トレーナー君♪」

 

「あれ?おかしいな」

 

なんだか目にゴミでも入ったみたいだ。

 

「あれ?トレーナーもしかして泣いてる?」

 

「なわけ!!」

 

お返しとばかりにテイオーが泣きながら煽ってくる。

 

「キングヘイロー」

 

「何かしら……って!!会長!?」

 

後ろを見てみると会長が立っていた。

 

「君には感謝してもしきれない。ありがとう」

 

「当然のことをしたまでよ!!なんたって私は一流なんですもの!!」

 

「会長にもそれを言うとは……君はなかなか強いねぇ」

 

あの皇帝に対して、この上から目線はキングにしか出来ないだろう。会長は優しいし、そんなことを言われても何も言わないだろうが普通は言えない。

 

「僕からも、ありがとうキング」

 

「ボクからも、ありがとう」

 

「私からも感謝しておこう。ありがとう、キング君」

 

「……流石に照れくさいからやめて欲しいわ」

 

キングは顔を赤くして、下を向いてしまった。

 

「あ、そうだキング。何か1つ願い事を叶えてくれるんだったよね?」

 

ニヤリといたずらっぽく笑ってみる。

 

「あぁ……そういえばそんなことも言ったような……」

 

「とぼけないでよ?」

 

「……えぇ!!言ったわよ!!それが何!!」

 

キングが少しビクビクしながら僕の声を待っている。少しいじりすぎたかな。

 

「実は僕、チームを作りたくてさ。タキオンはもうチームが出来たら入ること決まってるんだけど……どう?」

 

「どうって……スカウト!?」

 

「チームを作れないって可能性がゼロじゃないけど……」

 

そういった瞬間、テイオーの肘が僕をつついた。

 

「その可能性はゼロだよ。トレーナーについてるウマ娘が誰か忘れてない?」

 

「……そうだったな、無敵のテイオー様」

 

「ニシシ!!よく分かってるね!!」

 

トレーナーが一番すべきことはウマ娘を信じることだ。最初から気持ちで負けちゃいけない。

 

「ふふ……面白い願い事ね。聞き入れてあげるわ!!」

 

「ほんと!?」

 

「えぇ!!あなたがチームを作った時、私も入らせてもらうわ!!一流のキングが、約束するわ。おーっほっほっほ!!」

 

「全く……」

 

こうして、やっと僕達は新しい戦いのスタートをきった。




次回からほのぼのが帰ってきます
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